超・週刊プロレス 第十九号「師弟対談二者二様 その1〜バトラーツ崩壊〜 後編」
■日時:2001年10月24日
■書き手:愚傾(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

愚: 「今週は先週号の最後に触れた『残された探偵団は今後どうなるのか?』『バトラーツ崩壊が与えるプロレス界への影響』について話を進めていきましょうか。」
品: 「その週刊ゴングの菊池御大みたいな仕切り方はいつ身に付けたんだ?(笑)」
愚: 「『激辛評論家』ですか? いや手前はむしろ『ぼやき評論』門馬さんですよ。まぁ最近は評論もしないでボヤいてばっかりですけど。」
品: 「そんなことより、いいのか? 今週もこの形式で? 結構、否定的な意見も多かっただろう。」
愚: 「本当は今週はバトラーツネタはいったん置いといて『観戦記ネット一周年総括』みたいなのをやりたかったんですけどね。でも前回のアレが、このコラム第一回のとき以来の反響の多さだったじゃないですか。だったらもう、今週も続けてやっちゃおうと。」
品: 「なるほどね。まぁそれに来週の時点でバトラーツを取り扱ってもフレッシュじゃないしな。」
愚: 「またヒデぇこと言ってら(笑)」
品: 「ていうかさ、お前がよく言う理論に『インディー団体三年目のジンクス』っていうのがあるじゃない。」
愚: 「あ、ありますね。このコラムの第三号でも言ってます。簡単に言うと『キャリアが少ない選手が中心となって盛り上がった団体は三年めあたりから失速する』というやつ。」
品: 「やっぱり三年程度でアイデアとか、選手の体力的な部分も含めて出尽くしちゃうんだろうな。バトラーツにしてもやっぱり同じことが言えたわけだろう?」
愚: 「そうですね。バトの場合、旗揚げが96年4月、ピークと言われた両国大会が98年11月。この間が二年半だから、ぴったり符合するんですよね。で、息切れしてからはジジイの小便みたいにダラダラとキレの悪い…って手前の言葉じゃないっすよ? 知人のバトファンの言葉を借りただけで……。」
品: 「ウソつけ(笑) 先週号もそうだけど、お前は本当にやり方が汚いよなぁ。悪口という悪口は全部、自分じゃなくて私に言わせたり他人の口を借りたりしてるじゃねえか。」
愚: 「い、いやそんなことは無いですって! まぁ、とにかくバトラーツは『三年ほどで出せるものを出し尽くしちゃった』ということで。」
品: 「出し尽くし、というので言えば、今回の『石川vsモハメド・アリ』っていうのは、石川にとって『猪木へのオマージュ』の極みだと思うんだよな。」
愚: 「そうかもしれませんね。やっぱり猪木の一番の偉業って言ったら『アリと闘った』ことなんでしょうし。」
品: 「ただな。いくらオマージュとはいえ、『モハメド・アリ』という同姓同名の別人と、石川が闘うことを、お客さんがどれだけ望んでたことなのかってことを考えると、まったく望んでいなかったじゃない。」
愚: 「そうでしょうね。同じモハメドでも「ヨネ」のほうがよっぽど、お客さんの期待っていうか声援は、大きかったと思います。」
品: 「誰が見てもそれは明らかだよな。勿論、島田レフェリーだってわかってたはず。で、私が今回、一番思うことなんだけど、バトラーツっていうのは石川が作った団体なんだから、石川が何をやっても個人的には良いと思うんだよ。あくまで個人的にはな。でも、一応『株式会社』としてやってるわけだろ?」
愚: 「はい。」
品: 「石川には弟子もいるし、若手もいるわけだ。食わせていかなきゃならないわけだよな。自分だってそうやって藤原のところを出ていったわけだから。そうでありながら、石川が『本当にやりたいことだけをやってしまった』ということが、その後にどういう影響があるのかってことを考えた上でのことだったのか、私には全くわからないんだよな。」
愚: 「それは手前も、最初は『アリ戦? なに考えてんだ?』と思いましたけど、でもやっぱり『最後』だから『わがまま』を通したっていうことでいいんじゃないかという気もするんですよね。いざ、こういう事態になってみると(笑)」
品: 「『最後のワガママ』ね。なんだか徳永英明みたいだな(笑) まぁでも、私は『それはおかしい』と思うのは、石川と同じくアントニオ猪木の落とし子である存在として高田延彦っていうのがいるだろ?」
愚: 「出ましたね、高田最強理論(笑)」
品: 「高田っていうのはUWFを経験して、前田と袂をわかって、Uインターを作って、それもダメになってていうときに、金原だとか高山だとか、そういう当時は華なんてまったく無かった選手も全部引き取ったわけだよな。面倒みてやろうとして。」
愚: 「そうですね。」
品: 「途中からキングダムは潰れたけど、高田っていうのは自分についてきた連中の面倒をみるために、あるときは新日リングに上がったり、選挙に立候補したり、ヒクソンと戦ったり、フジテレビでキャスターやったり、嫁さんをガンにしたりってこれはしたんじゃないか・・・。そういうことまでして、『団体』というものを背負っていこうという器量があったんだよな。だから、いまの桜庭があるんだし、元リングスの山本まで高田道場に練習にきたりっていう状況があるわけじゃない。」
愚: 「高瀬大樹も、出稽古に行ってますよね」
品: 「私の大好きな高瀬な(笑) ちなみにヤマヨシは道場生に笑われてるらしいぞ。寝技がヘタクソだって。それともかく、そうやって若い連中が自然に集まってくる高田の器量というか、猪木や前田にも平気で頭を自然に下げられるというか、そういう部分って石川は持ち合わせられてるのかね? 『自分の団体』への愛情っていうのがあるのかどうか疑わしいんだよな。『猪木への愛情』っていうのは感じられるんだけど。」
愚: 「うーん、厳しいっすね。」
品: 「だって自分が作ったのは『会社』だろ? 『興行』だろ? この期に及んでも、石川の中に『バトラーツへの愛情』っていうのが私には正直見えてこないんだよな。」
愚: 「活動休止を宣言したコメントを見ても、確かにそれは感じますよね。」
品: 「まぁプロレスラーは個人商売なんだから個人主義で良いと言われたら、それは確かにその通りなんだけど、でもお前の好きな三沢光晴には 『NOAH』 っていう団体への愛はあるじゃない? 『自分のやりたいこと』よりも『団体の存続』を選ぼうとするよな。いま活動休止という事態になって、その後のビジョンというか、そういうものが現時点ではまったく見えてこないんだよ。」
愚: 「そこが共感できないところだ、と。」
品: 「自分の好きなことをやりたいっていうのはわかるけど、その前に、やらなきゃいけないことがあるだろう、っていうな。まぁ、もうちょっと時間を置いてみてもいいのかもだけど。」
愚: 「うん。やっぱりこれから石川が問われるのは『嫌いなヤツにも頭を下げれるか』っていうことじゃないですかね。例えば、もし仮に若手の一人が『僕はZERO-ONEに行きたいです』って言い出したとして(笑)、そこで石川は橋本真也に対して頭を下げられるかどうかっていう。」
品: 「私は、それは『すべき』だと思う。でもさすがにツライな、橋本には(笑)」
愚: 「そうですよね。同じ焼き肉系列ですもんね(笑)」
品: 「それが脈々と受け継がれてきた、新日本プロレスのいい部分の遺伝子だと思う。ただ石川には、猪木の悪い部分の遺伝子ばっかり集まってるような気がしてならないな。」
愚: 「一番タチの悪い DNA ですよね(笑)」
品: 「猪木っていうのは確かに自分勝手だったけど、それを補う器量があったから、アントンハイセルであれだけの借金を抱えながらも、結局、団体は潰さなかったじゃない。まあ廻りが偉いんだけどさ。借金かかえてボクシング世界チャンピオンのモハメド・アリをリングに上げても、それをバネにして新日本という団体を大きくしていったわけだよ。」
愚: 「石川は世界チャンピオンじゃないほうの モハメド・アリで、しかも団体を活動停止させちゃいましたからね(笑)」
品: 「差がありすぎるよな(笑) だから、本当に猪木の悪性遺伝子を引き継いだのが石川だっていう、現時点ではそういう印象があるな。」
愚: 「猪木も若い衆をよく逃がしてますもんね。佐山も長州も前田も、一度は猪木の元を離れてるわけですし。石川だって、田中とか池田とか土方っていうのに逃げられてる。」
品: 「『猪木なら何をやっても許されるのか?』っていう言葉があるけど、『石川なら何をやっても許されるのか?』っていう言葉なんて誰も言ったことが無いじゃない。で、島田という優秀なブレーンが傍にいながらも、こういう状況になったっていうのは、やっぱり悲しいことだよな。」
愚: 「うーん。」
品: 「石川雄規っていう人間が『猪木イズム』っていうものを、良しにつけ悪しきにつけ全て身に付けようとしたという、個人的な気持ちに関しては私は良いと思う。でも猪木っていうのは「一代年寄」なんだよな。誰も猪木にはなれないんだよ。それでも猪木になりたいんだったら『ブラジル行ってこい』って思うよ。実際に行ったのは臼田だけだろう?(笑)」
愚: 「ヴァリッジ・イズマイウ戦(笑) あったなぁ、そういえば。」
品: 「で、猪木って『プロレス』だけじゃないじゃん。『世間』相手にも『プロレス』してたじゃん。」
愚: 「そこへいくと石川は『世間』には届いてなかったですよね。残念ながら。結局、『世間』という意味で露出してたのってアレクと島田だけですもんね。TVとか一般誌で石川の姿って見た覚え無いですもん。まぁそういうメディアに出ることが全てだとは言わないですけど。」
品: 「今回、申し訳程度に『ワンダフル』に出てたけどな。」
愚: 「まぁでも、『最後のワガママ』もいいと思うんですよ。プロレスラーなんだし。船木がヒクソンと戦ったのだって、手前に言わせれば『ワガママ』だと思うんですよ。勿論、それを悪く言うつもりは毛頭無いですけど。ただし、あの試合はパンクラスのリングじゃ無かったし、その後のパンクラスの展望にもまったくと言っていいほど反映されてないですよね。一時期、近藤がヒクソンとやるやらないって話があったけど。」
品: 「それは確かにそうだな。」
愚: 「まぁ潰れちゃったモノは潰れちゃったということでしょうがないと思うんですよ。手前は石川の評価っていうのは、残された若手の再就職先というか、次のリングが決まるか、自主興行が再開するまでは留保してもいいという気はしますね。」
品: 「だけど大変だぞ? みんながみんな、コンプリートプレイヤーズみたいな売れっ子になれるわけじゃないんだし。」
愚: 「コンプリほどの売れっ子になれるのは一人もいないでしょうね。まぁ何人かは次のリングの目星がついてそうというか、ファンから見て『この人はあそこに行くんだろうな』というのはありますよね。ヨネは全日本だったり、アレクは猪木軍だったり、MrさかいがDDTでMIKAMIと闘ったり。」
品: 「Mrさかいについてのアレが妙に具体的だな(笑)」
愚: 「日高とかJunji.comもいい選手ですからねぇ。どうすんだろ、日高。メキシコかなぁ。」
品: 「小野なんかどうするんだよ? クラブの店員か?(笑) しょっちゅうナンパしてるんだろ?」
愚: 「店員よりもバウンサーのほうがいいかも。それで数年後に『リングス六本木』所属選手としてリングスマットで再デビュー(笑)」
品: 「やっぱり誰もコンプリみたいな売れっ子にはなれそうもないなぁ。それと、自主興行を再開したとしても、所謂『バチバチ』はもうできないかもしれないし、必要とされてないかもしれない。そうすると若手が大変だろうなぁ。焼肉屋の店員になるってのはどうだ? さかいさんに引き取ってもらうの。」
愚: FMWとフランスベッドの関係みたいなもんですね(笑)」
品: 「またミクロな例えを出してきたな(笑)」
愚: 「まぁそろそろ話が膠着というかネタ合戦になりつつあるようなのでそろそろシメたいんですけど、バトラーツが活動停止となったことによって、プロレス界はどう変わりますかね?」
品: 別に影響無いだろ?
愚: 「ですか(笑)」
品: 「だってバトの興行を見たいやついるのか? いないから、こういう事態になったんだろ?」
愚: 「NKホールの客入りだって三〜四割くらいでしたもんね。ディファ有明にしたって99人。これが水増しなのか水下げなのかわからないですけど。」
品: 「まぁ、第二第三のバトラーツが出てくる可能性はあると思うよ。というか出てくるだろ。今年から来年にかけて、もっともっと淘汰されていくだろうし。よくメジャー団体の選手が『プロレスラーの風上にも置けない』っていう風にインディーを批判したりするけど、だからこそメジャーの団体には真似の出来ないアナーキーさ加減がインディーの面白さなんだよな。でも、それを長続きさせるのは非常に難しいってことが、図らずしも実証されてしまったと。」
愚: 「手前もこういう形で自説が補完されたところで、素直には喜べないですよねぇ。」
品: 「闘龍門にしろDDTにしろ大阪にしろ、いま伸びてきているインディーズはバトの失敗を繰り返さないようにして欲しいというところか。」
愚: 「ですね。ただ、最後に言いたいのは、かつてバトラーツという、選手もファンも熱気に溢れまくった凄まじい興行を連発した団体が存在したということは紛れも無い事実ですし、平成のプロレス史を語る上で外せない団体であることも間違いないということですね。」
品: 「いかにもとってつけたようなフォローだな。最後にいい子ちゃんになろうとしてるのがバレバレだぞ(笑) で、この方式はまたやるのか?」
愚: 「どうしましょうかねぇ? まぁ読者の意見を拝聴して、それから決めるってことで。次回はとりあえず通常の形に戻ります。そいではまた来週。」



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