「週刊タカーシ(仮題)」第十八回 <ビューティフル・ネーム>
■投稿日時:2002年8月13日
■書き手:タカハシ(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

「最強」と思う人を挙げるとしたなら今でも鶴田とブローディだ。現実的な話をすればそれはプロレスというジャンルでの言わばファンタジーでしかないのだけれど、それでも2人の名前を挙げないわけにはいかない。
ところで世間的に「世界最強の男」というと、まだまだヒクソンの名前は商品価値が高いのかもしれない。
「誰が買うんだ、10000円もする写真集」とは思うものの、出版社は採算が取れるものと判断しているのだから、これはこれで立派な事だ。少なくとも他にできそうな人はいないものな。
今回も余りにも不入りなUFOドーム大会のためにテコ入れとして呼ばれ、ノゲイラや小川の上位概念としての扱いを受けていた。ヒクソンのゲスト出演が観客動員に影響を与えるとは思えないが、一般観客層には自分などが思っている以上に有効なのかも知れない。

さてプロレスファンの自分がヒクソンの強さを評する話で一番ハマったのは、有名なホイスの「兄のヒクソンは僕の10倍強い」発言ではなく、夢枕獏がブラジルに行った際に各道場で聞いたというこのエピソードだった。

夢枕獏「それじゃあブラジルで一番強いのは?」
道場主「う〜ん、まぁオレかな?」
夢枕獏「へ〜、ヒクソンよりも?」
道場主「おいおい(苦笑)、ヒクソンは別だよ」

実際のところUFC初登場当時に限って言えば、たくさんいる黒帯所有者の一人であったホイス(グレイシー姓の場合はハードルが少し高く設定されているそうだが)と、柔術界の真のトップであるヒクソンとに10倍の実力差があったというのも実はアングルでも何でもなかったのかも知れないが、これはブラジルで語られる「ヒクソン伝説」のひとつ。
植野師匠が現地で黒帯の人にこの「ヒクソン伝説」の真偽を尋ねたところ、「お前知らないのか!」と逆に驚かれたほど有名な話らしい。

ある柔術大会(当然10数年前)に出場したヒクソンがその日の試合の何試合目かで、開始直前に周囲の人に「よし、次の試合は15秒で決める」と宣言してからマットに上がった(30秒説もあるそうな)事がある。
会場には瞬く間にヒクソンの秒殺宣言が広がり、試合時には会場全体でカウントダウンが始まった。そして試合は本当にキッカリ15秒で十字により決着し、ヒクソンはますますその名声を高めたのだそうだ。
また現在の柔術界のそれぞれの階級でのトップ中のトップと認められている人に、グレイシー姓の人はいないのだそうだが、そのトップの中にいるニーノ”エルビス”シェンブリが2年ほど前にヒクソンの道場へ出稽古に行った事があったらしい。
当然ヒクソンともスパーを行ったのだが、結果は開始後40分頃にヒクソンがタップを奪ったとの事(決まり手は不明)。実年齢は45とも伝えられるヒクソンが少なくとも神話的強さの持ち主であった事だけは、やはり疑いようのない事実のようだ。日本の柔道でもこと寝技に関しては経験の積み重ねがモノをいう事から、山下泰裕が今でも一番強いと言う人もいるそうだし。

さてヒクソンたちをピラミッドの頂上とすると、ようやくエジプトの空港で入国審査を受けているくらいの自分であるが、柔術の面白さにはドップリはまりっ放し。最近は仕事も忙しく練習に参加するのも結構大変だが、「今日は間に合いそうだ」となると車のアクセルもついつい深く踏み込んでしまう。この日は危うく違う意味での女子高生キラーになるところであった。

今日の技術講座はサクラバ・ロックのやり方とその対処法。一応説明しておくとスタンドでバックを取られた時にグリップを切って、アームロックに切り返す、どちらかというと極まったカタチよりも入り方についた名前なんだと思う。1昨年の西武ドームで桜庭がヘンゾのヒジ関節をアクシデント半分でハズしてしまったところからその名のついた技だ。
植野師匠によると「実戦では有効と思われていなかったので、それほど真剣には研究されていなかった」そうだが、ヘンゾを倒したところからこの名前がブラジルはおろか世界でも流通する事になり、2年もしないうちに当時はまさか柔術をやるとは思いもせずに「ヘンゾがナイスガイ過ぎて、グレイシーのヒールアングルが今回は巧く作用しなかったなー」などと言っていた自分がフツーに日本で学べるほどになっていたというのもおかしな話だ。

いつもの通り3分ずつ交互に植野師匠にポイントをチェックしてもらいながら、サクラバ・ロックとその対処法をそれぞれ2種類ずつ反復練習していく。やられてみるとなんとも合気道チックな動きである。
その後はこれまたいつも通りクローズガードからの勝ち抜きパスガード(上はガードから抜け出すまで。下はスイープか極めるまで)と寝技限定スパーリングで終了。しばらく練習を休んでいた事もあり、今回は全くダメダメであった。
自分が最近よく使うのがサイドポジションを取って、足を相手の首にかけながらのキムラ・ロックなのだがサイドまで取れてもそこからが全く続かなかった。
このキムラ・ロックも木村政彦がブラジルでエリオからタオル投入のTKO勝ちを収めた事によりつけられた、本来は柔道の「腕絡み」(チキンウィング・アームロックやダブルリスト・アームロックも同じ技だ)だ。2つともグレイシー撃破の勲章のように別称が付けられるようになったのは偶然なのか、それともそれだけグレイシ−姓の人を倒す事が偉業であるという事なのか。
でもホイスを落としたイズマイウの車締めは別にイズマイウ・ロックとか言われてないな。

さていよいよ28日にはホイスと吉田が国立で戦う。柔術愛好家の予想としては吉田がプライド捨てて徹底的に寝技を避け、投げでのダメージを与え続ける作戦でも取らない限りは、柔道に関わった殆ど全ての人がガッカリするほどアッサリ下からの三角等でホイスが勝つと思う。
何故ならホイスが自分に有利なルールをゴリ押しするだろうし、吉田サイドはそれを受け入れてしまうだろうから。
試合前からプロの戦いは始まっているという事を吉田サイドが理解しているのか不明だが(当然DSEは吉田勝利を後押ししたいだろうし)、そしてそれを全て飲んだ上で吉田が鮮烈な勝利を飾ったとしたら、その時のフィニッシュがヨシダ・スローやヨシダ・ロックとして語り継がれるようになるのかも知れない。

<今週見た興行>
今週は6日にロフトプラスワンのトークイベント「ターザン山本と吉田豪の2人祭り」(もう違う名前かも)、8日のUFOは予定通りTV観戦して11日のG1決勝戦といったところ。
「2人祭り」は今回も新間寿が主役のはずの2人を差し置いてしゃべりまくっていたが、ネタの6割が前回、前々回とカブるので毎回参加している自分にはちょっとキツイのが正直なところ。
もう一人のゲストの谷川さんが今回はいつになくテンションが高く、UFOのドーム興行が何故こうなってしまったのかを時系列に沿って話してくれ、自分の中でもキチンと整理できたのが良かった。メモ8さんが常々言っている「谷川さんはみんなダマされてるけど、かなりスマートな人だよ」というのの片鱗が見えた気がした。
また吉田豪提供の猪木対アリ戦直前の秘蔵映像での、アリのプロ意識の高さとカリスマ性にシビレる。「The Most Electrifying Man in Sports Entertainment of All Time!」という感じだ。
G1決勝は「腐ってもG1」という感じで文句ナシの札止め。ちょっと驚いた。
試合後蝶野は真鍋命名「NWF軍団(おいおい)」に対し「130試合やるならこのリングに上げてやる」とブチ上げファンも沸いていた。プロレスファンとしては「もっともだ」とは思うものの、これに藤田が「ガチやった事ないからそんな事言えるんだ!」「永田!ミルコに負けた事はもうなかった事にするのか?」とか反論したら面白いのにと妄想の海に浸ってしまいましたよ。あと返す刀で猪木にも噛み付いて欲しいな。
新日本とNWF軍団がリングで向かいあったのは自分は87年の新旧世代闘争を思い出したが、「01の旗揚げのパロディーっぽいな」と近くにいたマスコミの人はポツリと漏らしていた。
オレの方が引っ張り出す記憶が古いなあ。





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