「週刊タカーシ(仮題)」第十七回 <あの頃君は若かった>
■投稿日時:2002年8月6日
■書き手:タカハシ(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

つい先月の事なのにW杯が終わった途端、もうサッカーに対する興味が完全に消失した。Jリーグも始まっているそうだが、全くもって食指が動かない。サッカーという競技自体は面白いと思うが、どうにも好きになれない要素のひとつに選手寿命の短さがあるような気もする。
その点プロレスは25〜35才くらいを肉体的ピークとして、あとはスタイルとキャリアに応じてそこ最低5年は楽しませてくれる。これがいい事なのか悪い事なのかは突き詰めると難しい話で、例えば女子プロレスの衰退は25才定年制の撤廃が第一の原因であるのは間違いない。
正直に言えば「老醜をさらす」と表現される前にキレイに引退してもらいたいものだが、こればかりは生活もある事だしファンの立場からは何とも言えないな。ただ若く才能ある選手が、「生活があるから辞めたくても辞められない」というだけの選手に食い物にされるような事だけはないようにとは思う。勿論これはNOAHをイメージしながら書いているのだけれど。

さて、今回はその「若く才能のある選手」について色々考えてみたいと思う。アワード各賞の中でも新人賞は選ぶ人のセンスや観戦の振り幅が見えてくるものなので、結構興味深く他人の選んだものを見ているが、ここでいくつか「将来性のある新人」や「新人離れした選手」等について考えてみよう。
取りあえずはその突出した部分についていくつかカテゴライズしてみた。

1つは単純に身体能力が高い事。バネがある、とよく言われるけれどこれは持って生まれた天性のようなもの。ただデビュー間もないうちから飛ぶ事を求められてしまい、肉体的ダメージを負いやすく選手寿命を短くしてしまう危険性もある。最近では丸藤(NOAH)が突出していると思うが、案の定現在療養中で、本当に下手すると百田あたりの方が引退は遅いという事になるかも知れない。
ここ数年デビューした選手ではCIMA,Hi69,PSYCHOあたりも印象的だけど、3人ともプロレス学校出身で勿論身長もさほど大きくない。当然「ファン上がり」だろうけど、大谷は最近「今の新日本だと、自分や高岩は入る事ができないだろう」とアマレス等の実績を重視した新人獲得に路線変更している新日本では、このようなタイプはもう現れないという事なのかも知れないな。

次はアマレスや柔道などのベースとなる格闘技を巧く試合に取り入れて個性を発揮するタイプ。あまりアマでの実績が優れていると、「プロレスとは別物」という意識が強すぎて上手くいかないパターンもあるように思う。これは中西学や長州力、本田多聞がいい例で、3人ともオリンピック出場選手であるのは偶然ではないかもしれない。
10月のドームで対戦が決定している佐々木健介と鈴木みのるが新日本前座で戦っていた時は、お互いに培ったものと、藤原から習っていたプロレスとでメキメキと頭角を表していたらしい。この時期は新日本を全く見ていないので2人の対戦を見ていない分、特に思い入れがあるわけではないが、あの頃の続きというなら別にプロレスでいいじゃないか?と思うのだがどうなのだろう。
特にパンクラスの異常なまでの強気な発言はケンカを売ってるようにも思えてしまう。2人ができる「最高のプロレス」を見せてもらいたいと皮肉でなく思うが。

話を戻そう。このベースとなる格闘技の技術を巧く取り入れるタイプの最近デビューした中では、NOAHの杉浦貴が突出しているように思う。杉浦は全日本クラスの選手だし、別にプロレスラーになりたくてアマレス始めたというわけでもないと思うが、試合でアマレスの技術を多めに取り入れ、ポジション的にも恵まれているのはアマレス出身の三沢や秋山がイニシアティブを握っている団体だからかな。馳や長州といったアマレス出身者がブッカーを勤めていた数年前ならともかく、今の新日本でアマレス出身の新入団選手たちがどのような扱いを受けていくのかは、なかなかに興味があるところだ。
全日本もまた大学のアマレス部ではキャプテンを勤めた選手の入団が決まっているとの事。こちらとの出世争いもまた楽しみと言えるだろう。

もう1つ例を挙げるとなると表現が少しおかしい気もするが、デビューした時から既にいい選手だったタイプ。簡単に言えば「天才」という事になるのだけれど、凡才の自分としてはブラック・バッファローあたりまで「天才」と安売りしてしまう風潮にはNOと言いたいものの、デビューして1月足らずでもう明らかに他の選手とはモノが違うとしか表現できない選手はやっぱりいるものなのだ。
例を挙げれば小橋と秋山、武藤で、CIMAやSUWAはメキシコでデビューした直後の試合までは見ていないが、多分こっちの部類なのではと思う。
ウルティモ・ドラゴンは「5年かかる事を一足飛びで教える事はできる」とのような事を言っていたと思うが、CIMAやSUWAが大量生産されるまでには至らないのだから、2人にはズバ抜けた才能があるのだろう。
例えば堀口元気などはこの2人がいなければ「5年に1人の天才」と言われてもおかしくないと思うが、今のところは名バイプレイヤーに収まってしまっている。ちょっと気の毒だな。

さて、武藤や橋本は早いうちからそれらしい試合をしていたが(デビュー間もない時期にTV放送された健吾&武藤&山田対星野&橋本&小杉の試合を参照してもらえば判ると思う)これもジャパンプロ勢の大量離脱を受けて、猪木や藤波たちが直接手ほどきした結果ではないかと思う。
結局これが闘魂三銃士としてその後の10年を支えたのだから、会社にクリエイティブなりで残っていこうと考えている選手は、後輩にはドンドン教え込む方が最終的には自分の得になるような気もするが、多分そこまで確立されていない事がそうさせない原因なんだろうな。

これらは勿論プロレスでの場合で、シュートの場合はどうかというのも書いてみたいが、自分はそれほどそっち方面には詳しいわけでもないので、ここは大親友のにわかち先生の意見を拝借した。

まず大前提としては単純に強い事。プロとして個性を発揮するのはまず勝ち上がって、それなりの舞台に上がれるようになってからというのが現状だけに、これは仕方のない事だろう。
それから自分なりの勝ちパターンを早くから持っている事。確かに見る方としても勝ちパターンを持っている事を知っていれば、試合を見る上でも焦点がハッキリしているため楽しみ易いという事はある。
そして一番大切な点としては練習環境を挙げてくれた。
例としては、何を教える事ができるのかハナハダ疑問なボブ・シャムロックのジムから、実績を積んでパット・ミレティッチのアカデミーにジャンプアップしたジェンス・パルヴァー。ローカルなジムから同じような経緯でシュートボクセにジャンプしたアスエリオ・シウバなどがその例らしい。
単純に自分より強い選手と練習できれば、より効率的に強くなれるのは当たり前の事で、例えばテニスでも松岡修三坊っちゃんが、「日本の女性選手は男子と練習する事ができるが、男性選手の場合は海外の一流選手に練習相手として認めてもらう事からスタートしなくてはいけない」と言っていたものだ。
そう考えるととても練習友達がたくさんいるようには思えない田村などは、ちょっとこれ以上の上がり目は難しいのかな、とも思えてしまう。

最後に自分なりの有望な新人の簡単な見分け方を書いてみよう。
まず体格的には肩幅が広い事がある。NOAHの志賀はこの点ひとつで将来性が薄いが、あの下がり眉毛もイメージが良くないな。肩幅の広さは見栄えと筋肉の付き方にかなり影響を与える。しかし健介や天山のように肩の周りや上腕の筋肉を太くする事で、その点を克服している選手もいる。スタイルの問題はあるが、ある程度は努力でカバーできるもののようだ。
もうひとつ挙げるならストンピングの巧さで、「痛そうに蹴る」、「躍動感あふれる動き」、「怒りの感情を上手く乗せられる」などといったポイントがチェックできるわけだ。最近の新人ではk−dojoの十島くにおがダントツで上手い。Hi69の華の部分に隠れ、また他団体から呼ばれる事もないためまだまだ知られてはいないようだが、一部のマニア連中の間ではk−dojoでの注目は十島なのだそうだ。来月18日には有明で興行を予定しているらしいので、機会があれば見に行ってもらいたい。
そう言えば小川直也はいつまで経ってもストンピングは上手くならないなぁ。

<先週見た興行>
当日3時半までスッカリ忘れていた01後楽園大会だが、仕事を無理矢理切り上げ第1試合途中でなんとか入場。今回ばかりはメインは大谷対田中だろうと思っていたが、新OH砲結成がメインとなってしまったのはちょっと残念、と言うか疑問。大谷も苦労が絶えないなぁ。聞くところによると01のスタッフにもメインとセミを入れかえるべきだった、と公言していた人がいるそうなのでその辺は橋本のワンマン体制なのだろう。これで橋本が「セミに負けない試合をする!」という気概を大人げなく見せてくれればいいのだけれど、そもそもそう言うタイプじゃないからなぁ。これは自慢だが01旗揚げ興行の観戦記で「所属が中途ハンパな選手たちの集まる団体になりそう」と書いていたのだが、これが益々現実味を帯びて来たというかそのまんまだ。まー本当のところ偶然ですけどね。田中と大谷は昨年はディファ、今年は後楽園と2人のワークレイトからすると余りにも小さ過ぎる会場での対戦となっているが、この2人の対戦が来年更に大きい会場で見られる事を期待したい。
他の試合ではコリノと黒田が想像以上にハマったのが嬉しい誤算。黒田の扱いは不当に低いと思うが、これに懲りずにこれからも01に参戦し続けて欲しいところだ。
そして4日は久々のスマック観戦。15回突破記念という事か、実原君のパンクラ秒殺デビューが嬉しかったのか品川さんがチケットくれたので行ってきましたよ。
ナナチャンチンの今回のネタはスターウォーズ。スマックガールの暗黒面に引き抜かれた騎士たちを憂えているヨーダに似ていなくもないナナチャンチンだが、その暗黒面ってAXの事か?確かにAXは会場の雰囲気は暗い(AXの未来はもっと暗いが)。
そのナナチャンチンは今回も打撃なしルール。組技系で実績がある人の本戦前のステップや、視力にちょっと問題がある人などの場合ならこのルールも是だと思うが、ナナチャンチン辺りだと、単にパンチが怖いからというレベルでしかやってないように思える。一応プロ興行である以上、もしそうならすぐにでも辞めて欲しいところだ。
そこのところは非常に不満だが今回はマッチメークと進行の良さもあり、非常に楽しめるものであった。
彩丘と渡邊は本来キックの選手であるが、実際問題として試合が定期的に組まれるのが唯一スマックのリングである事からも、キチンとルールに対応した戦法を研究して来ているのがハッキリ判って益々楽しみになってきた。
セミの金子と渡邊の試合は、金子が距離を詰めて胴タックルからのテイクダウン狙いが作戦だったため、「スマックにも立ち膠着の嵐が吹き荒れるのか?」と心配してしまったが、結局は渡邊はイイトコなく金子の圧勝となる。
逆に張替相手に組み付かれても腰の重さからテイクダウンを許さなかった彩丘は、見よう見真似の十字で勝利と明暗を分けた。
期待の美人格闘家、チーム品川の川又さんは品川さんからのプレッシャーからか、これまたイイトコなく敗れてしまい、勝てばあるはずだったメモ8さん主催の祝勝会が消滅してしまったため、帰りの食事代は自分もちゃんと払うハメになってしまった。川又さん、今度はお願いしますね。
メインもしなしが「ここはワタシの庭よ!」とアンダーテイカーばりに縄張り意識を見せつけ、対戦相手の吉住も悪くなかったのに、徹底的に相手の光を消すような勝ちっぷりでメインを締めた。この試合は他とは2段くらいレベルが違う感じで、いつもこのクラスの試合が3つくらい入っているならナナチャンチンが34才だろうと、何をしようと笑って許せるなぁと思ったもんだ。
・・・というわけで今回で密かに展開していたスマックガール・ネガティブキャンペーンは終了。選手層が厚くなってきた女子総合を盛り上げていくカードを組んでくれるなら、これからは積極的に応援していきたい。
取りあえず篠原とナナチャンチンの扱いには細心の注意(使わないでもらえるなら、それに越した事はないが)を払って欲しいところだ。





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