「メモ8の総合格闘技・言いたい放題」〜第2回 リングスの巻
■投稿日時:2001年12月29日
■書き手:メモ8(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

 総合格闘技における、リングスの役割は既に終わっている。

 今回は、パンクラスで行くつもりだった。が、27日に、リングス前田CEOの仰天発表があった。ので、急遽予定を変えてリングスで行こう。

 おれはリングスファンだ。というより、前田ファンだ。信者と言われてもリンオタと言われても否定する気はない。初めて格闘技・プロレス系の文章をネットにUPしたのも(まだネット前史の頃だ、ニフティのFBATLね)、前田に関する文章だったし(前田は偉大なる中庸という内容だった)、アミューザ系の掲示板に出入りするようになったのも、リングスを巡るヤオガチ論争がキッカケだった。

 現在も熱狂的な前田ファン・リングスファンであるし、間違いなく将来もこのままだろう。つまり、この文章は、熱狂的な前田・リングスファンが書いているというのを前提として読んで頂きたい。

 今回の前田の発表、現時点では、今後のリングスがどうなるかは、よくわからない。プロモーションとしては存続していく可能性もあるみたいだし、「ダンディズムとは人にショックを与えること」と言う前田のことだ、発表だけ大袈裟にして、ファンにショックを与えておいて、実は大して変わらないのかもしれない。

 現実問題として、ひとつだけ、世間を知らないお子様達に教えておいてあげると、会社ってのは、そうそう潰れないんだな。倒産なんて、よっぽどのことがない限りしない。が、それはあくまでも、トップにやる気があればの話。

 恐らく、月イチ後楽園ホール程度なら、そこそこ埋められる余力が残っていて、WOWOWに比べれば10分の1レベルかもしれないけど、サムライからの放映料も当てに出来て、社員は10人程度。こんな会社、潰そうとしたって、なかなか潰れるもんじゃない。が、シツコイけど、それはトップにやる気があればの話ね。

 つまり、リングスは潰れるんじゃなく、前田自身がリングスを潰すってこと。「まだ何も決ってない」という、リングスが今後どうなるにせよ、ここポイントだよ。

 今回のこの連載、何を書いていくかは、大体最初から決めてある。レジメは作ってあるわけ。で、連載と言っても、1回毎にオチがないのも寂しいので、それを兼ねて、結びとして、強い提言をしていこうと思っている。

 リングスの巻のオチは、実は、こうするつもりだった。

 リングスよ、解散しろ。

 ところが現実が、提言を追い越してしまいました。あら、あらららら、おろおろ。

 ここのところ、ほとんど観戦記を書いてない。仕事が滅茶苦茶忙しかったというのもあるのだが、まあ、観戦記を書く位の時間は、どんなに忙しくても作ろうと思えば作れるし、実は、明確な理由があって。

 今年の8月、リングスの10周年興行の時、紙プロが「ワールドメガバトルオープン観戦記」と題して、観戦記を募集した。文字数制限がかなりキツかったので(2000文字)、おれはいつも通り書いた観戦記を、大幅に編集して投稿した。10万円という賞金が欲しかったんじゃない。審査委員を前田がやるからだ。前田に読んでもらいたかったからだ。

 だから、前田に向けて書いた。おれは、どんな文章を書く時でも、必ず読者を想定して書くんだけど(ちょっとした掲示板への1行レスであっても)、この観戦記に関しては、前田しか見てない見えてない。想定読者は最初から前田ただ1人だった。

 紙プロ編集部には、面が割れているので(田中正志の売り込みに当サイトの主宰と一緒に行ったことがキッカケです)、そのお陰というか、一次選考は無事、裏口合格し、前田に読んでもらうことが出来た(ガンツ様、感謝してます)。

 どうでもいい前半部は省略して、改行のみイジったものを、ここに載せておく。


『8/11リングス有明雑感〜幼年期の終わり 』

(前略)

 日本の総合格闘技における幼年期が終わった。そんな興行。

 総合はつまらない。残念ながらつまらない。多少の語弊を修正するならば、数万の観客を集めてエンターテイメントとして成立させるには、という注釈が必要だが。

 現行MMAの中では、最も見せることに徹底したKOKルールをもってしても、この日のような興行になってしまうことがあるわけで。恐らくKOK開始後、最も低調であった前回と今回、何もリングスがこういう状態である時に、たまたまこうならなくてもいいじゃないのかと思うのだが、これ、よく考えて見ると、たまたまだとは言い切れない。

 世界でもトップクラスの外人勢に対して、現在のリングスは「プライドへの切符」程度のモチベーションしか与えられず、ホフマンなんて、元々ない自分の商品価値を気にしてトーナメントを愚弄する始末。守るべき立場を与えらえれてしまった金原はコチンコチン(その点、あくまでマイペースのTKは大したもんだが)。

 主催が変わったUFCが、どの程度のギャラを出せるようになったかは知らないが、恐らくプライドを唯一の例外とすれば、リングスは未だ「世界中でトップレベルのギャラが出る数少ないプロモーション」の筈なのだ。ならば、やりよう次第では、いくらでも作りようはある筈であって。

 しかし、前田CEO本人が言うように、さらなる「競技化、スポーツ化」を推し進めようとするのならば、プロモーションとしてのリングスは、間違いなく、その使命を終えたと言っていい。

 ヒョードルがヘビーのチャンプになろうと、アローナがミドルのチャンプになろうと、残念ながらそんなことには誰も興味はないのだ。「各国ごとのランキングの制定」てなことを前田CEOはクチにしたようだが、ベルト自体がマトモに機能しそうもない現在(パンクラスを見れば一目瞭然)、何の国別ランキングの制定だと言うのだろう。

 恐らく、リングスがプロモーションとして生き残ろうとするならば、年の1度のKOKトーナメントで多額の賞金を用意しながら、契約等で微妙なしばりをかけ、あくまで「魅せるイベント」として生き残っていくしかないように思える。つまりK−1方式だ。いや、その方向しかないと言っていい。

 前田CEOが繰り返す「競技化、スポーツ化」という言葉。自分のように前田CEOを見続けた人間にとっては、この言葉より「ドールマンと約束したんだよ、いつかアメリカで天下取ろうってね」にこそ、1人の人間が格闘技に向かい合う上での、確かな動機を感じる。

 前田CEOが進めた「競技化、スポーツ化」が進めば進むほど、リングスに育てられた総合ファンは「リングスでなくてもいい」ことに気がついてしまう。その時、ファンが見たいのは、前田CEO個人の野望の王国ではなく、総合というスポーツ興行であり、リングの上で躍動する選手なのだ(勿論、自分のようなモノ好きな前田フリークは、必ず残るだろうが)。前田CEO最大の自己矛盾。

 地味なところで繰り広げられている、慧舟會と修斗の覇権争いの挙句、気がつけば、前田道場がGCMのオフィシャルジムになっているなんていう未来が、もうすぐそこにまで来ているのかもしれない。

 だけど、これだけは間違いない。前田がいなければ、総合格闘技なんて見なかった。



 この観戦記は「偉そう」なので、前田に選ばれなかった。そして、おれは、その結果を聞いて少し落ち込んだ。長年、敬愛し続けた前田に、おれの想いは伝わらなかったのか…。

 ところが、後日、前田の発言として、紙プロ誌上に載った「偉そうに」の連発の多くが、おれの観戦記に向けられたものだということを、人伝に知らされたのだ。

 届いていたのだ。伝わったのだ。だからこそ反発されたのだ。そうだ、そうに違いない。届いたからこそ、伝わったからこそ、おれの敬愛する前田だから、おれの知っている前田だから、ああ反応したのだ。おれはそう確信した。

 ああん、もう好きにして。女子便所でボコボコにして頂戴。前田さん、貴方に殴られながら、私は至福の時を感じて死んでいくでしょう。

 満足した。深く満足した。そして、それ以上、観戦記を書く気がなくなった(実際、以降は速報以外には、ギャグ満載のキングダムの観戦記を1本書いただけ)。


 KOKは滅びの美しさ。

 KOK以降のリングスに対して、おれは、何回もこういう表現を使った。今年の大量離脱の後、何人もの人に「メモ8は、離脱の前からそれを知っていたから、ああ書いたんでしょ」と言われた。知るわけないじゃん、そんなの。ヤマノリなんて勢いで辞めちゃったのが明らか。事前に知るもクソもないって。

 逆にこっちが聞きたい。何でリングスファンは、キミたちは、KOK以降のリングスに漂う「切なさ」「寂しさ」「やりきれなさ」に気がつかないんだろう。感じ取れないんだろう。

 小さな技術革新を繰返し、常に最新のファイティングモードであり続けようとするTK。が、その最新モードは、圧倒的な若さと体力差に、ことごとく跳ね返されていく。

 あれほど望んでいた「全試合真剣勝負」が実現した時には、自分はそれが出来ない身体になっていた成瀬。

 柳澤とショボいファイトをした後、マイクを握り、容赦ない観客のブーイングに思わず口篭もる坂田。

 そして、田村。アブダビで見つけたモノがリングスファンにはまるで伝わらず、リングスを去るという結論しか出せなかった田村。

 何でわかってやれないんだ。いったい何を見てるんだ。リングスは、前田日明は、選手達は、シュート興行におけるあらゆる「切なさ」「寂しさ」「やりきれなさ」を、わずか2年で全部見せてくれたというのに。

 真剣勝負ってこういうことなんだよ。シュートってこういうことなんだよ。キミ達が望んでいたモノはこんなにも、切なく、寂しく、やりきれないものなんだよ。

 「自分の仕事に誇りを持ちたい、誇りを持てるような仕事をしたい」という前田の平凡な願い。

 そんな小さなキッカケから、UWFは、プロレスとしてスタートした。「UWFは、今世紀初頭シュートからワークへと移行してきたプロレスの流れを逆に進んだ特異な運動」というのは、tad氏の名言。おれ的には、古代ローマの時代から、最初から、プロレスはプロレスだったと確信してるけど、そして、この問題こそが、この連載の最重要課題なんだけど、そんなことは、この際、どうでもいい。

 急進的に結論を急いだパンクラス。

 海の向こうでUFCという戦争が始まる。

 前田の理想は、現実に追い越されていく。だけど、前田は偉大なる中庸だから、理想と現実の狭間で、落し所を探し続ける。

 そして生まれたKOK。

 前田日明、最後の進化。

 そうやって、総合の歴史を、わずか10年ですべて駆け抜けて、リングスは今幕を閉じる。リングスの現在は、総合格闘技の未来。

 だから、リングスの幕引きをするのは、総合格闘技という概念を作リ出した、他の誰でもない前田自身。

 この前田の英断を、限りなく美しい男の引き際を、支持出来ない奴など、おれは前田ファンとは認めない。前田日明は何をやっても許されるのだ。

 最後に確認しよう。

 リングス最強!!! 前田CEO最強!!!




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