第五回「さよなら大好きだった人2・おやすみバトラーツ」
■投稿日時:2001年10月19日
■書き手:ささきぃ (ex:「気分次第で責めないで」

どもです、ささきぃです。
先日はじめて好きな団体の終わりを見ました。
なかなかアレでした。

そんなわけで、バトラーツと石川雄規が好きだった
インターネット野郎(女だけど)からの最後の言葉です。

本名を出して顔を見ながら本人達へ直接語る言葉が、
仮名を使ったPC画面越しの私の言葉よりも
熱く届くものでありますように。


プロレスラーというものの定義はたくさんあるけれど、
私は、ホントの「プロレスラー」は、生まれながらにして、
そうならざるを得ないような「生き物」だと思う。
そういう生き物の、生き物としての生態や、
生きるための闘いに、私はロマンや面白さを感じている。

そう考えると、私の大好きだった「石川雄規」という人は
厳密には「プロレスラー」ではない人なのだ。

彼は自分が「生まれながらにして存在自体特殊」ではないと
言うことを、多分知っている。
そのうえで、自分のあこがれたその生き物になろうとして、
自分が愛したその生き物のように「生きて」みている、ように見える。

かなりアタマのいい(が、思いこみの激しい)男が、人生をかけて
「プロレスラー」を「やってみて」いるのだ、と思う。

本人も全く隠さずに公表しているように、石川雄規は
アントニオ猪木というかなり特殊な生き物(ごめんなさい)に
心底憧れて、プロレスラーになろうとした男である。

人がなんと言おうと彼は「やりたいこと」を
大まじめに人生をかけて「やってみて」いるのだと思った。

プロレスラーでは無かったはずのものが
プロレスラーをやっているということに
「こいつら、こんなことやっちゃってる〜」
「どうなっちゃうんだろう、ワクワク」
という気持ちを感じさせてくれた。

その、ひとりの人間としての目的と行動の一致ぶりと、
世界征服というどう考えてもバカバカしいが
志高い目標を掲げている所が好きだった。

その目標を掲げた上で、地方で無駄に熱く闘って
お祭りでプロレスをやり、アレクがPRIDEに出つつリング設営を
しているところが美しいんだと思った。

その上でミックスドマッチをやったり混浴温泉ツアーをやったり
しているのだと思っていた。
たとえ人から見たらどう考えても不必要に見える行動も、
全て「世界征服」という目標につながるのだと思って見ていた。

その彼を疑いたくなって、もう自分の好きだった石川は
いなくなってしまったのだと思った、と書いたのは、つい先日だ。

アタマのいい男というのは得てして自分のアタマの迷宮に
はまりこんで、そこだけで自分の世界を作り上げてしまう。
具体的に言えば、周りの状況だけしか見えなくなって
近くの騒動だけに目を奪われるようになって
遠くに居る支援者が見えなくなって
目に届いたものだけがその全てだと信じるようになるんじゃないか、
ということ。

そこで、インターネット野郎は殺すしかないですよ、
などと言い出したのではないか、と思った。

あのころから石川雄規は、
自分の世界に居る相手にだけにむけた言葉で
話すようになったように見えた。

バトラーツの発する言葉が
どこか、おかしなものに聞こえだした。
私にとって、バトラーツの発した言葉は
イコール石川雄規の発した言葉だったから、
そのまま、石川自身を疑いだした。

「実際の世界はそうじゃない」と言っても
彼の目にはもう、それは写らなくなっているのだろうかと思った。

相手に向けてしゃべっているように見えて、
実際は心の中の自分自身に向けてしゃべっているのでしか
ないんじゃないかと思えた。

全て、石川が自分自身を納得させるためだけの言葉だと思った。
土方の全日本出場時のコメントも、
ゼロワンともめた時の言葉も、
三沢とノアに向けた時の言葉も、
自分たちこそが被害者なんだという言葉も、
カーロス・ニュートンが出られないという時の言葉も。

もし、石川の言葉でないと言うのなら、どうしてその言葉達の
どうしようもない言い訳臭さと貧乏くささを許すのか。
バトラーツの社長である限り、
それを許して表に出したら、石川雄規に責任がある。

石川は自分の信念を体現している人だと思って私は好きだった。

たとえリング外のことだと言われても、
あんたの理想のレスラーはそんなチンケな事はしねぇんじゃねぇか!

・・・いや、現実のあの人の事は良く知らないからするかもしれないけど、
あんたの中に生きている「プロレスラー」はそんなモンなんか!
そんなヤツを「やっていて」いいのか!!
それともそれは、もしかして素顔のアンタの言葉なのか!
石川雄規!!

バトの最後は、すっごく志低くて、
ダラダラしていて、言い訳じみていて、自己愛に満ちていて、
ひたすらカッコ悪かった。
そして最後の日の会場はガラガラだった。

見たもののパワーをすべて吸い取ってしまうかのような
マイナスの方向へ突き進んでいて、
「それを見せつけられたからといって
 私たちは明日からどう生きればいいの?」
と観客を悩ませるやっかいなものだった。

エッセ・リオスの来日中止が当日、アナウンスで放送される。
怒る気にもなれない。
怒ることが気の毒にさえなってくる。
「どうせそんなことだろうと思ってたよ」と捨てゼリフさえ言いたくなる。

もういいよ、わかってるよ、バトには期待してないよ。
エッセ・リオスってどんなんだろうと思っていた
私がバカだったよ。
でも日高が入ってくれた6人タッグは良かったよ。
入ってくれなかったらどうなってただろうと思ったよ。
小野武志vsタノムサク鳥羽は私の心のメインだったんだけど
なんか2人とも妙に遠慮しているように見えて残念だったよ。

臼田の相手は正体不明な上に妙に痛そうな技かけてくるし
そのくせ試合は長いしで困ったよ。
だから臼田はもっと体格の合う相手とやって欲しいんだよ!
臼田の試合は面白いんだから!!
今のままじゃケガするだけだって!マジで!

安田があっさりヨネを下して
村上がやっぱり村上で、どこに行っても村上は村上で
良かったなぁと思って少し気持ちが回復して
どうしようセミとメインと思ったら
アレクがどうしようもないほどやりきれない負け方で
今までの盛り上がりを全部ゼロにしてくれた。
負けてリセット、一から出直せとも言わせてくれないで、
ただただこちらを無言にさせて、先が見えない負け方だった。

2度の金的で、それぞれ3分のタイムが入り
最後には出血によるレフェリーストップ。

そんな負け方されても、こっちも困っちゃうよ。
メチャメチャ後味悪いよ。
試合見てて眠くなった自分に妙な罪悪感を感じるよ。
そういう負け方して一番つらいのは自分だなんて言うかもしれないけど
そんなことないよ。こっちがつらいよ。

その上で石川社長の誰も期待していない異種格闘技戦を
見るのかと思うと辛かった。
勝たれてもシャクだし負けられても困るし
せめて3分10Rフルタイムドローにならないことを祈るばかりで

面白い試合が見たいなんて
ましてや頑張ってくれなんて、どうやっても思えない。

どうして私はそんな風に思うようになってしまったんだろう?
この試合をどう見るべきなんだろう?

というか、どう見て欲しい、なんてものは無いんだろう。
観客はいればいいんだろう。
これはもう趣味の世界だろ。
自分がやりたいからやっちゃったんだろう。

他人がなんと言おうと
石川が自分で作った団体で、自分のやりたいことをやっているんだろう。
いきなり猪木vsアリ状態になることも、
直前のわざとらしいルール変更も、調印式の紋付きハカマも。

たった一度の人生だから。

そう言ったかは知らないが、周りの反対を押し切って
一流会社を辞め、家も売り、カレー屋になった人がうちの近所にいる。
奥さんと子供2人は気の毒なような気がするが、誰も彼を責められまい。

周りがなんと言おうと、石川がこれをやりたかったのなら。
それを今やれているのなら。
客は少ないし盛り上がってるとも言い難いけど、
これがやりたかったのなら、これをやるためにここまで来たのなら。

スゴイじゃん。
よかったじゃん。

そう思った。
でも、見てる側としてはつまらないよ。すんごいつまんないよ。
それでもいいんでしょう?
いつまでやんの?何ラウンドまでやるの?

「石川さん、アゴ引いて!!」
と言う声が何度もかかる。
いや、アゴをひくくらいならおそらくパンチを喰らうことを選ぶだろう。
むしろ引くなと言いたい。
ここまで来てアゴをひいて勝ってどうする!最後まで出していっそ負けろ!

そして、やりたいことをやりつくしたら、どうなるの?

「きっと石川社長の心の中にはやりたい事リストがあって
 その中に猪木アリ状態とか延髄切りとか書いてあって
 コレできた、コレも終わったって今やってるんですよ」

とヒドイ事を言っていたら唐突に白いタオルが舞った。
試合が終わった。

負けてしまった。
終わってしまった。

負けたことよりも「やりたいことをやって」しまって
石川社長は、そしてバトラーツはこれからどうするんだろう?
これから何をするんだろう?

社長のマイク。

「どうもありがとう! 今日は負けちゃったけどさ、
 オレの人生のなかでタオル投入なんて無いからな!
 何回でも立ち上がってやる! また見てくれ!」

そうですか。
「人生の中でタオル投入はない」

いまひとつ。
感動できない。
何が言いたいのかわかるようでわからない。
うそくさい。

死ぬまでやれ!

とはさすがに言わないが

しゃべれんならやれば良いのでは?
とは思う。
試合で負けたなら口で勝て!勝たぬまでも面白い事を言え!
とも思う。

それでも、とにかく。
石川社長にとってこのリングに上がることが
かなり大きな目標だったことは想像出来る。

そして、出来ることなら結果までマネをしたかったのではないか。
それでも途中でボロボロになって、
途中でタオルを投げたのは、ホンモノの「猪木vsアリ」には
居なかった(よね?)自分の仲間の選手なのだ。

仲間の選手が見るに見かねて止めたのだ。
あそこで死ぬことももしかしたら
石川にとってはアリだっただろう。
それでも死んで欲しくないと思う仲間がいたのだ。
それこそが予想できないことだったのかもしれない。

そして試合後「冬眠」と表される無期限の自主興行停止が宣言された。

結局の所、有明が99人だとか言って笑ってられたのも
なんだかんだ言ってまだダラダラと続いていくのだろう
というもくろみがあったからなのだなぁと思った。

そうではない。
笑い事ではなかった。
団体は本当につぶれる。

という後味の悪さ。
もう、すべてを笑い飛ばすという度量の大きささえ期待できない。

選手は全員、この事実を知っていたんだろう。当たり前だ。
知っていてやっていたのなら、もう何も言えなくなる(言ってるけど)。

その上で、石川の公式コメント。

「たとえば、まだ目の開いてない子猫たちが親を失い、
 彷徨いながらひとつ屋根の下に暮らし始めたようなものです。
 バトラーツの独立は、実は同じ思想の元に
 選手たちが集ったわけではないのです。
 無名な若手レスラーたちが生き残るにはどうしたらいいのか、
 答えなどあるわけありません。
 我々は不器用ながらもただただ激しく闘うことによってのみ、
 レスラーである自分の存在意義を実感しようとしました。
 つまり“バトラーツ流バチバチファイト”は
 後付された思想であると言えるでしょう。」

誉めて欲しいのか?

捨てられちゃった子猫ちゃんたちが
よくがんばって生き延びまちたね〜とでも言えばいいのか?
そんなもんプロレスラーじゃなくても
人として勝手にすべきことじゃないのか?
表に出るまでに途中で消えていったプロレスラーはいっぱい居ると思うけど
彼らを別にバトより下だとは思わないよ。

甘えてんじゃぁねぇよ!!
自分たちを子猫と言い出すプロレスラーがどこの世界にいる!
(ブラックキャットは別)
第一子猫ちゃんが2代目タイガーマスクに何を言ったんだよ。
子ネコがタイガーにテメエのケツをふけと言ってどうする。

もう、いちいち発言が悪くスキだらけすぎる。
何もしゃべらないでくれ。
悪いが根がツッコミなんだ、放っておけないんだ。

それでも大好きだったよ。
格好悪いところが好きになったなんてありきたりな事言わない。
バトラーツは、石川雄規は明らかに格好悪くなったんだよ。
いつから理想のレスラーをやってみることも、
己の理想を追い続けることも辞めてしまっただろうか?

格好いいことをしてみるくせに、
決してスナオに格好いいと言わせてくれない
バトラーツと石川雄規が好きだったよ。
あなたがやっていたプロレスラーが大好きだったよ。

本当のあなたは格好悪かったよ。

おやすみなさい、バトラーツ。


と、いうわけで。
私がバトと石川雄規のことを書くのもこれがもう最後です。
来週からは他の事を書くよ。
そろそろ仕事に戻ります。
ささきぃでした。

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