超・週刊プロレス 第十三号「秋山の平成天龍革命(前編)」
■日時:2001年9月5日
■書き手:愚傾(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

 はい。どうも。愚傾です。

 いけませんなぁ。どうも更新が遅れてしまいます。本当に偉いよなぁ、ターザン山本って。

 とりあえず九月になったわけですけど、いまだに観戦意欲が湧かずに困ってます。せめてファンであるNOAHの興行くらいは見ておかなきゃと思うんですけど、なかなかねぇ。十月にはディファ有明で二回、後楽園で一回、横浜文体で一回と、手前の足の届く範囲で四回ほど興行があるので、最低でもこのなかから二興行くらいは観戦したいですね。

 で、そのNOAHなんですけど、エライことになってましたねぇ。なんせ秋山準が保持するGHC選手権の第一コンテンダーに選ばれたのが本田多聞っていうんだから、こりゃぁ驚きましたよ。
 だって、これまでの方法論から言えば、ここはベイダーか高山善廣、さもなくば大森隆男が挑戦者として浮上してくる(浮上させる)はずじゃないですか。それが蓋を開けてみれば「パッとしない中堅」「万年リストラ候補」の多聞だったんだから、驚くなっていうほうが無理です。

 実は、手前はかねてから「本田多聞がタイトル戦線に絡むようになればNOAH(言い始めた頃は全日本)は今より一歩も二歩も先に進む」と言いつづけてたんですよ。後出しジャンケンと言われるのもイヤなので証拠を残しておきますけど。

 あの、プロレスには「格」とか「序列」っていうのが存在するわけですよね。手前はそこがプロレスのもっとも面白い点であり、また不透明な部分だと思うんですよ。例えばプロ野球だったら年末の契約更改で「推定年俸」が公表されるじゃないですか。それによって、その選手の「成績」と「プラスα」の部分が、フロントにどう評価されてるのかがファンにも伝わりやすくなる。
 でもプロレスにはそういう便利なシステムが無いから、ファンが「選手(レスラー)」が「フロント(ブッカー/マッチメーカー)」にどう評価されてるかを「推測」するしかない。手前はその「推測」こそが、プロレスの楽しさ面白さを補強する最大の魅力だと考えてるんです。会場で騒ぐだけなら不思議なキノコでも食ってトランステクノのレイブパーティーにいったほうがよっぽど気持ちいいですから。

 で、まぁ「格」と「序列」についてなんですけど、手前は株価みたいなもんだと思うんですよ。というか、変動性であるべきだと思ってます。急激に値上がりしたり、急暴落したりしてもいいんです。そのほうが見る側にとってもやる側にとってもスリリングですから。

 これまでのNOAH(繰り返しますけど”当時の”全日本も含めて)っていうのは、レスラーの株価が動かない団体だったんですよ。トップどころは高値安定してるけど、中堅以下は「売り」なのか「買い」なのはハッキリしない状態。唯一の例外としてノーフィアーがあったくらいで(森嶋&力皇は急激に高騰したとは思わないです。タッグでは安定した戦跡を残してるけど、シングルではさしたる実績を出してないですから。森嶋は佐野に負けてるし)。

 GHCの初代王者に三沢光晴が輝き、それで初の挑戦者となったのは田上明でした。この流れは意外といえば意外だったけど、これまでの実績からいえば「アリ」なラインでもあったわけですよ。田上は旧・全日本において三冠ベルトも世界タッグも巻いてるし、チャンピオンカーニバルも制したことがある「四天王の一角」。NOAHに移ってからはさしたる実績を残してないものの、メインイベンターの一人ではあるし、ギリギリ「高値安定」組の一人として数えても違和感の無い存在。
 それに、王者・三沢にしてみれば、ベイダーは前年末にシングルで勝ってる相手、高山はPRIDE参戦直前、秋山は時期尚早、大森は我侭ばかり言うのでダメ。あの時点で、挑戦者となるのは田上しかいなかった、という考え方も成り立つ。

 ようは「挑戦者・田上」というのは、旧・全日本から続いた文脈を完全に逸脱するほどの流れではなかったんですよね。だから「けっきょくNOAHは、旧全日本の頃から何も変わってない」っていう、大半のプロレスファンの印象を覆せてない。試合の良し悪しは別として、NOAHファン以外にインパクトは残せてなかった(個人的には、あの試合は面白かったし、挑戦者が田上に決まるまでの流れも「何も変わってない」ってこたないじゃんと思ったんですけどね。まぁ劇的に変わってもいないですけど。新生・全日本と比べれば確かにぜんっぜん変わってないですし)。

 秋山は三沢から王座を奪取したときに「一話完結は今日で終わり」と言いました。ようするに、これからは「アングル」をバシバシ導入して、チャンピオンベルトを軸にストーリーを展開していくというプランを述べたわけです。そして最初の挑戦者となったのは、、チャンピオンカーニバルや最強タッグにおいては白星配給係で、シングルのメインイベントも経験したことが無く、ましてNOAHのリングでもさしたる実績を残してない本田多聞。つまり、いままでの旧・全日本からNOAHでの文脈には無い「急激な値上がり」が発生したわけです。

 まぁ凡百のプロレスコラムならここで「王者となった秋山は先の見えぬ戦いに踏み出した。王者でありながら挑戦者であることを選んだのだ。」なんて書き方で終わるんでしょうけど、手前のコラムはそんなことじゃ終わらせません。じゃぁそこから何が言いたいかというと、「秋山の発言権は、NOAHの中でも社長の三沢に肉薄するほど大きくなっているのじゃないか?」ってことなんですね。理由は簡単。「挑戦者が多聞だから」です。

 あの、秋山は「このベルトに挑戦したけりゃ自分から行動を起こせ。そうじゃなければ、会社が何と言おうが俺は挑戦を受けない」とも言ってたじゃないですか。これってようは「くすぶってる中堅や若手に奮起を促す」ための発言であるのはまぁ間違いないと思うんですけど、それに真っ先に呼応したのが森嶋と力皇であり、そして池田大輔だったわけですけど、けっきょく挑戦者の座を射止めたのは、先にアピールした彼らではなく、彼らより後から手を挙げた多聞だった。

 この流れは一見、矛盾してるように思えますけど、秋山の立場になって考えてみれば当然の流れです。だって森嶋も力皇も池田も、言ってみれば「秋山が王者になる前から行動を起こしてた」選手ですから。秋山にとっては「寝た子を起こす」作業のほうが先決なのであって、既に目を覚ましてる選手には(とりあえず現時点では)用が無いんです。つまり、大事な大事な初防衛戦の相手を「会社(=三沢)に選ばせる」んじゃなくて「自分の意向を通した」と。ここが、秋山の発言権が大きくなったことを裏付ける、第一のポイントです。

 続いて第二のポイント。これは手前のなかにある一つの疑問に対して、真相がいかなものであるかによって変わってきます。
 その疑問というのは「多聞は本当に自分から行動を起こしたのか?」ということ。

 字数が尽きてきたので続きは次回に。

 そいではまた来週。





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