超・週刊プロレス 第八号「天龍は何故トロフィーを投げつけたか?」
■日時:2001年7月18日
■書き手:愚傾(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

 はい。どうも。愚傾です。

 後悔先に立たずとは本当にまぁ良く言ったもので、やっぱりある興行に行くべきか、行かざるべきかを迷った場合、よっぽどチケット代やら交通費やらが負担にならない限りはなるべく足を運ぶべきだ、ということを痛感した週末でした。はい。14日の全日本武道館大会のことです。

 手前は今回の武道館は残念ながら観戦を見送ったんですよ。理由は、ちょっとまぁ色々ありまして。別に理由を書いてもいいんですけど、面白くも何とも無い話ですし。あ、お金が無かったとか、そういう話じゃないです。一応、手前は同年代の平均をちょっと上回るくらいの年収はありますから。

 そういうわけで、この日は会場のタカハシさんから速報と、恒例の「世界一速い観戦記」を受け取って(いつもご苦労さまです>タカハシさん)、それをアップロードするために自宅待機です。で、タカハシさんからの速報を読んで「日本マット界始まって以来(?)の事件」があったことを知って、会場に行かなかったことをめっちゃくちゃ後悔したんですよ。

 どうなんすかね。ネット周辺でもサラッと流されてるような気がするんですけど、大変な「事件」だと思いますよ。”世界”の冠がついたタイトルマッチを制した選手が勝利者トロフィーをブン投げたのって。前例ってありましたっけ? 手前は記憶に無いし、前代未聞の出来事だと思うんだけどなぁ。なんでネット界隈でこんなに波風が立ってないのか不思議でしょうがないです。

 あの、今回の天龍の奇行は、単に「アングル」っていう言葉で簡単に片付けていいものではないと思うんですよね。そりゃまぁ天龍は「プロ」ですから、例えば今後の展開に注目を集めるためのアクションだとか、そういうアレだってあるでしょう。でも、根本的な原因はもっと根深いところにあって、しかも事態は相当複雑なことになってるはずです。

 で、そのことについて書く前にあらかじめ行っておきますが、冒頭で書いた通り、手前はこの試合を観戦してません。ですんで、これから書くことはあくまで憶測でしかないです。そこのところを了承して貰ったという前提で、憶測を書きます。

 まず天龍がトロフィーをブン投げるっていうのは、「全日本プロレスの現状」をかなり的確に表現してると思うんですよ。
 ようするに、天龍と全日本(馬場元子社長)の仲というのはそれほどまでに冷え切ってるということです。まぁもともと両者の間に温かい感情など存在しなかったのかもしれませんけど。その確執は、もはや来るところまで来たんじゃないかな、と。

 あの行動っていうのは天龍が勝手にやったのは間違い無いと思うんですよね。少なくとも「上の人(=元子さん)の了解」を取った上で起こしたアクションでは断じてないです。普通に考えて、あの元子さんが「全日本という団体の看板でもあるトロフィーを一選手がブン投げる」なんてことを許すと思います? 許すはず無いですもん。
 じゃぁ、なんで天龍がそんな「掟破り」を犯したのかというと、これはもう「報復」が怖くないからじゃないでしょうか。つまり、「報復できるもんならやってみろ!」っていうくらいの腹が座ってるんじゃないかと。そのくらい、天龍は「全日本」という団体に対してフラストレーションが溜まってるわけですよ。

 で、それは節目節目での天龍の発言、特にここ半年のものを読めば明らかです。
 川田がドームでの三冠挑戦をゴネれば「なにイジけてんだあのバカ」と、かつての弟子をバカ呼ばわりしたり、その川田とチャンピオンカーニバルで「星」の調整をしなきゃならないとなると、大会前に「わざと負けてやろうか」と、もはやケーフェイ破りに近い爆弾発言(しかも本当に負けた)、五月シリーズの欠場が決まると「オレは知らない。勝手に決められた」と、これまたチクリと元子批判、挙句の果てには「全日本は腐ってるよ」とチクリどころかブスリと会社批判までする始末。 秋山のNOAHの中堅/若手に対する苦言や、猪木の新日本に対するイチャモンよりもよっぽどエゲツ無いですよ。勿論、それが悪いというつもりは毛頭無いし、むしろ天龍らしくてカッコイイとすら思いますけど。

 たぶん、天龍と元子さんの今の関係は「仮面夫婦」みたいなもんなんじゃないですかね。まぁ片割れが未亡人なのに仮面夫婦呼ばわりも無いもんですが。というか、夫婦で喩えれば、既に別居状態には入ってるような感じだと思いますよ。ヘタすりゃもう慰謝料とか養育費の協議なんかをしてるかもしれない。そのうち堺マチャアキと岡田美里みたいに殺伐とした離脱会見を個別に開いたりとか。いや、ジョークじゃなくて、これは早ければ一、二ヵ月後くらいには起こり得る話ですって。マジで。

 あの試合で天龍が、客にマイクを掴ませたり椅子を投げ込ませたりするほどブチ切れたファイトをした理由はわかりません。ただ、この大会を観戦した人に電話で話を聞いてみたところ「少なくとも試合中にはトロフィーをブン投げるような伏線は無かったよなぁ。あのグーパンチ云々にしても、メインのウイリアムスのときはまったくお咎め無しでしたからね(タカハシ)」「天龍も大人げが無さ過ぎるよね。あれだけスミスをボコっておいて、オマエまだ収まらんのか?みたいな(maya)」とのことでしたから、観客の目に届かない、もしくは届きにくいところで「何か」があった可能性が高いと思います。でも、試合を観てない手前には何があったかわかりません。

 しかし、何故天龍が「全日本」に対してブチ切れてるのかは想像がつきます。簡単に言えば「思い通りにいかない」からでしょう。たぶん、世界タッグのベルトだって天龍的には「お荷物」なんじゃないですかね。だって、それを持ってるばかりに「武藤に二度も自分の腰のベルトを渡さなければならない」という可能性が高くなるわけですから。橋本真也を挑戦者に指名したのだって、「武藤にばっか”貸して”られるか!」という意地の現われかもしれません。というか、おそらくそれでしょう。じゃなけりゃ武藤との三冠戦だってあれほどゴネないですよ。

 確かにこれは「団体に所属するレスラー」の感覚としては我侭極まりないです。エゴ丸出しもいいとこですよ。しかし、天龍だって「一度は自分の団体を持った男」です。全日本に対して「沈みかかった船を助けてやったのはオレだ」くらいのことは思ってるでしょうし、そこまでしてやってるのに我侭が通らない現状にイライラするのも、まぁ無理もないことですよ。というか、イライラしてない天龍なんてクリープの無いコーヒーとか泡の立たないビールとか観戦記を書かない観戦記書きよりも存在価値が無いですから。

 というわけで、天龍がブン投げたトロフィーに、幼い頃に自分の父親が母親につきつけた離婚届をダブらせてしまう今日この頃です。もっともウチの両親は結局その時に離婚しないでいまも相変わらず一つ屋根の下に暮らしてるわけなんですけど。

 最後に別の話題を少しだけ。
 なんだか今回のコラムを読み返すと、すっかり全日本プロレスへの愛を失ったかのような印象を受けられかねない手前ですが、やっぱり自分のプロレスファンとしての故郷は全日ですし、いまはNOAHを第一に置いていたとしても、やっぱり新日本との対抗戦とかになれば全日本を応援しますし、団体としては有名無実化してもそれでも「全日本」という名前だけは残って欲しいと思っています。
 で、思い出すのが92年だったかな? アメリカで、時の新日本ナンバーワンタッグチーム、スタイナー・ブラザーズと、時の全日本ナンバーワンタッグチーム、殺人魚雷コンビが対決したことがあったんです。そのときの週プロをコンビニで見つけたとき、レジに運ぶ前にまっさきにその試合の結果を探しました。そして、スタイナーブラザーズに勝利してベルトを高々と掲げる殺人魚雷コンビの姿に、当時高校生だった手前は狂喜乱舞しました。

 そういえば、天龍がパワーボムを使うようになったのも、この人が天龍相手に初公開したのがきっかけだったんですよね。

 テリー・ゴディ選手のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。

 そいではまた来週。





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