最終回「ドキドキして損した」
■投稿日時:2001年11月9日
■書き手:ささきぃ (ex:「気分次第で責めないで」

先日、26年生きてきて初めて自分に異母兄弟が居ると知り、
わりと動揺したささきぃです。
やるじゃん、オヤジ!
そんなわけで、最終回です。

私は、試合前「桜庭和志がシウバに勝ちますように」と、
心から祈ることが出来なかった。

「勝っても負けても、どっちでも、
 桜庭と今後の格闘技界にとって良き結果になりますように」

としか、祈れなかった。
もちろんシウバなんかに負けて欲しくはないのだけど、
かといって、桜庭が勝つことで
他のちょっと出てきてほいほい負けたり負けなかったりするだけの
だらしない日本人選手の存在を許すことになるのなら、

いっそ全て壊れてくれないかと思っていた。

そして、私が桜庭が負けたらメルマガも観戦記もやめますと言ったのは
桜庭が勝つ気が全くしなかったからだった。
どうやって桜庭はシウバに勝つというのだろう。

私の予想はいつも当たらないし
私の期待はよく裏切られるので、
うすうす辞めたいと思っているコラムとメルマガを賭ければ
桜庭は勝てるかなと思った。

どうして辞めたいと思っていたかといえば
ホントに時間的な限界なのと、そういう中で
自分だけがしんどい事をしているような気がしていたからだった。

なんで自分だけがこんなに頑張ってるんだろう?
と思った。

知らない人からいきなり怒られたり
中傷されたりもした。

ただ単に書きたいと思っていたのに、
いつのまにか、誰かをぎゃふんと言わせてやるとか
つまんないって言ってきたヤツを見返してやるとか
そんなことを思っていた。

そういう事を思う自分はイヤだった。だから辞めたくなった。
辞める理由が欲しかった。

桜庭が負けることで、
日本の格闘技界は沈んでしまうだろうし
自分の大好きだったサクラバカズシという存在が
無くなってしまう。

それにたえられないと思ったから、
サクが負けることによって、
ひとつくらい良いことが起きてほしいと思った。

桜庭が勝つにしても負けるにしても、
どちらが出ても、自分はその結末を受け入れよう。

桜庭だって、負けてもいいと思っているはずだ。
負けることでラクになりたいとも思っているはずだ。
自分が負けることで、世界がどうなっていくのか、
そんな世界に興味があるはずだ。
だから、どちらでもいい。
桜庭にとって良い結果になりますように。

そういうふうにしか祈らなかったことを、今はとても悔いている。
どうして、桜庭の事「だけ」を考えなかったんだろう、と。

誰が勝とうと負けようと、桜庭は桜庭なのに、
そうはさせていなかったのは私自身の気持ちだった。
桜庭の勝ち負けに余計な意味をもたせていたのは、
アンチ桜庭の人たちでもなく、
無責任な日本人選手でもなく、何より私だった。

だから、あの試合は自分が素直に勝利を祈れなかった思いが
そのまま結果として形になって起きてしまったように思えた。

桜庭ファンのつもりでいたくせに、余計な事を考えて
勝ちますようにと素直に祈れなかった事を、何より桜庭に謝りたいと思った。

桜庭は、そんなイヤミなファンの期待さえ、
無視せずに答えようとしてくれていたというのに。
たとえ、それが負けず嫌いから来るものだったとしても。

PRIDEの中で、誰が見てもどう考えても
しんどい位置にいる桜庭が好きだった。
いつでもメインを張り続けて、その中で面白い試合をしようとして、
ダメというより粒よりの最低ぞろいの日本人の中で

「でも桜庭がいる」と

試合結果で言わせていた桜庭を、本気で尊敬できた。
そこでヘラヘラ笑ってみせるサクラバカズシの意地の張り方が好きだった。

誰よりも負けず嫌いで、勝ちにこだわっていたサクラバカズシが好きだった。

桜庭が声をつまらせて「もっと練習してきます」と言ったのを聞いて、
絶対に泣いているところなんて人に見せたくないはずのサクラバが
嗚咽を人に聞かせてしまったところを見て、
ありえないはずの、シウバへの2度目の敗戦を見て、

サクラバカズシは壊れてしまったと思った。
壊したのは私だと思った。

どれほどこの人はただ勝ちたかっただろうと思った。
そういう人の為に、勝ちを信じることも素直に祈ることもしなかった
自分がイヤで、そしてくやしくて涙が出た。

ただ単に勝つということに、どれだけこの人はこだわっていただろう。

大好きな選手が負けて、負かした相手が許せなくなった。
くやしくてくやしくて、絶対にシウバを生きて日本から出すもんかと思った。
生かして出したら日本がなめられると思った。

少なくとも日本のファンの前でサクラバの左肩を脱臼させたからには、
シウバの左肩鎖関節は、どんな方法を使ってでも絶対外してやる。
そんなことをしたってどうなるもんでも無いし
第一人としての道にずいぶん外れているのだけど、
そのくらいサクラバカズシは特別だったんだってアイツに思い知らせてやる。

東京ドームの帰り道、冷たい雨の中で泣きながら
勝手にリベンジを誓った。

それでもその翌々日には、会社で笑っている自分がいた。
「桜庭負けたんだろ?」と先輩に聞かれて
「負けたんだろじゃねぇよこの野郎!」と思ってはいても言わずに
「そうなんですよ〜マジで〜」なーんて言っている自分がいた。

笑ってしまえばいい。

真剣に泣いた自分も、一観客のくせにリベンジさえ考えた自分も、
負けた桜庭も。
自分がやってきたことも。

こんなのは、大した痛みじゃない。笑って流してしまえばいい。
一度負けたくらいでどうってこともない。選手としての桜庭はこれからだ。
また別の相手と戦って素晴らしい試合を見せてくれるはずだ。

何より こんなことで 本気で傷つくことも なくていい。

ただ 桜庭和志 という選手が 
試合中の アクシデントで 負けただけなんだから。

次がある。今はとにかく肩を治すことだけ考えて欲しい。いつまでも待ってる。

全部ウソだ。

心から笑うことなんかもう一生出来ないかと思うくらい、私は悔しかった。

会社で笑っていたのは、傷ついてるなんて事、
ただの先輩なんかに見せたくないからだ。
あんまりマヌケで無防備な自分の一部を、
どうでもいい朝の会話なんかでさらしたくない。

どんな痛み止めの言葉も効かない。サクラバカズシは2度負けたんだ。
もうサクラバカズシは壊れたんだ。
桜庭の時代は終わったんだ。

PRIDEを、格闘技人気の責任を、日本人選手代表を勝手に背負わされて
きっとやりたくないだろうCMやら宣伝やらにかつぎ出されて
それでも勝ち続けていた、信じられないくらい希有な存在だった
大好きだった「サクラバカズシ」が 壊されてしまった。
すごくすごく それが 悲しい。

たとえ、それが作られたイメージだとしても、
その「サクラバカズシ」が私は大好きだった。

シウバに2度負けたという事実は
「ここから最高潮に物語が盛り上がるため」の
伏線にしては、あまりにも重すぎて、明るい未来が信じられない。

日本人選手はみんな負けてしまった。
日本人はやっぱしガイジンには勝てないよ。
小さい選手が大きな選手を倒すのは、やっぱりただの夢だったんだよ。
グレイシーだって別に強かったわけじゃない。
現に、ヘンゾもハイアンもPRIDEで負けている。
そのグレイシーを破っていたところで、別にスゴイわけじゃない。

体重差がどうだ体調がどうだ年齢がどうだと言っても仕方ない。
それでも勝たなくちゃ、意味がなかった。
桜庭自身が、それを痛いほど感じているはずだ。
そんでそれを素直に応援できなかった自分がいる。

サクラバカズシは負けたんだ。サクラバの時代は終わったんだ。
もう誰もあなたに期待なんかしちゃいないんだ。
だってあなたは負けたんだから。
しかも同じ相手に2度負けたんだから。
私が好きだったサクラバカズシという存在はもう壊れてしまった。

11月3日、桜庭の試合を見る前は緊張して吐きそうだった。
試合は正直で残酷で、選手そのものを浮き彫りにして、見せつける。
何が起こっても、観客にはどうすることも出来ない。
ブーイングをしても、つまんない試合を終わらせることさえ出来ない。

ただ、リングの上で大好きな選手の左肩が外されるのを見ただけだ。

負けることは格好悪いことだ。あらためて思った。
桜庭が格好悪くなりませんようにとだけ、願っていればよかった。
自分の問題と、日本人格闘家に対する情けなさと
こんな状況、全部壊れちゃえばいい、という気持ちと全て
ゴチャゴチャにしてあの試合を見ていた。

余計なことを考えすぎずに、ただ桜庭が無事に勝つようにと
祈っていればよかった。
格好いいサクラバカズシが好きだったんだから。
余計な事を考えすぎていたから、あの試合は、今でも
必要以上に私に痛い。

桜庭はまだ自分は終わっていないとコメントを出した。
ヘビの様にしつこいですから、このままでは終わりません。
まだまだ人生これからです。
頑張りますので、また、応援して下さい。と。

そういうペラペラの意地をはる桜庭がやっぱり好きだと思った。

それでも、ここからの桜庭は格好悪いと思う。
すでに、もう一度シウバと戦うなどと言っている。
往生際が悪くて大変格好悪い。
きっと、魔法のように格闘技界を切り開いていったサクラバカズシは、
もう見られない。

週プロはそこでまた「しかし、当然のことながら桜庭和志は人間である」
などと言い出す。
何をわけのわからんことを。

「負ければ負けるほど、桜庭は強くなる。きっと今回の敗戦で
 ガックリと肩を落としたファンも多いだろう。だが、桜庭和志は人間。
 観る側も、桜庭と同じように強くなっていかなくてはならない。」

バカバカしい。

誰が強くなんかなるか!
大好きな選手が負けるたび強くなるバカがどこにいる!!

負けたけど格好良かったよ、いい試合だったよ、なんて言葉は
もっとレベルの低いレスラーに言うべき言葉だ。

桜庭が次も負けたら、もう一度今回以上に落ち込んでやる!
ごはんも食べられないくらい泣いてすごしてやる!
その次に負けたら、外れるくらいガックリ肩を落としてやる!!
その次にも負けたら、

絶対ヴァンダレイ・シウバの肩を外しにいってやる。

だから。
サクラバカズシはもう十分格好悪いから。
もう格好いいサクラバカズシじゃないから。
あなたの時代はもう終わったんだから。

もう何もゴチャマゼにしないであなたの試合を見るから。

もう何も気にしなくていいから。
だから次は、

ドキドキして損したって言って笑いたくなるくらい、
バカバカしいやり方で勝ってくれ。

私もこれからは、
誰かに心配して損したって言われるくらいに、

もっともっとバカバカしいことをやっていくから。


そんなわけで、今までありがとうございました。

そろそろ仕事にもどります。
ご縁があれば、またお会いしましょう。
ささきぃでした。

ささきぃメルマガはこちら!




本稿の著作権はすべてKANSENKI.NET及び「書き手」に帰属します。

戻る
TOPへ