禅道会における武道教育の特性(禅道会特集その2)
■投稿日時:2001年2月1日
■書き手:品川(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

先日の秋山選手のインタビューに引き続き禅道会の武道教育について公開する。
以下の文章は前回のインタビューとは別枠で、秋山選手が直筆でFAXにて送ってくれたものである。

【武道教育の特性】

 知識的学校教育の限界が叫ばれ、画一化され個牲を失いつつある少年たちにスポーツ等を通じての情操教育や体験教育が必要とされる現代社会において、武道空手道の教育の意義が見直されています。又、それにより飛躍的に競技人口の拡大につながっている昨今ですか、そういう状況を踏まえまして武道教育の特性について、私なりに書かせて頂きます。
 主な特性としては
   1)礼儀
   2)必要最低限の痛みや緊張を通じての情操教育
   3)ゲーム性が少ない
   4)文化性
   5)道徳性
 になると思います。

 1)の礼儀については球技スポーツの世界にもあるところはありますが、空手道は「押忍」と言う日常的でない返事を行うこと、先に入っているものや級ののうえの者を敬うことによって日常の子供としての甘えを切り離し、武道を志す一人の人間としての自分の位置(立場)を自覚し向上心を持ち稽古に励めるようになります。そのことは社会生活を営む人としての自分のあり方を子供ながらに把握することとなり、将来的に社会性を身につけるうえでの基礎になります。また、社会的に最低限のルールを守る感性を育てる上で必要不可欠だと思います。

 2)の痛みと緊張ですが、武道空手道の試合では実際に突き蹴りを相手に当てるため多少の痛みや恐怖心を感じます。その痛みや恐怖心に負けずに闘い抜く事によってよって困難があってもへこたれない精神力や忍耐力、困難を克服した時の達成感、また同時に人の痛みの分かるやさしさなども身につけることができると思います。
(現在社会的問題になっている残虐な暴力事件などは人間が持っている闘争本能を押さえ込みすぎた心理的反動が人の痛みを知らない情操によって引き起こされるのだと思います。)

 3)のゲーム性についてですが、武道空手道の場合は球技等にくらべて極端にゲーム性が少なく、単純な動作の繰り返しなどか多く、遊びの分野が少ないと思います。しかしながら、遊びを否定するわけではないのですが様々なテレビゲームや遊びが蔓延している現代においては単純な動作を行っていく中に長い意味での上達や、上達して成果を出して行く事の充実感といった昨今の青少年に足りないと言われ、不登校などの原因ともなっているとも言われる、忍耐力のなさ克服するのに最適だと感じます。

 4)の文化性については、武道日本文化独自のものであり、歴史の流れの中では変化しても世代を超え継承されてくものです。じつはこの文化の継承が失われてから家庭内暴力や流行の「おやじ狩り」などといった年上の者や両親、学校の先生さえも敬わない若者が増えたのではないでしょうか。肉体的に見れば、中年期以降の方々は若者より劣るところもあるかと思いますが、年長者は社会生活の経験と技術と言うものを若者に教え伝えて行く立場にあるはずです。しかし日文文化の継承性が失われてから、「教えてもらう人に敬意を払う」と言った当たり前の事さえも見失われがちになってしまったのではないでしょうか。その意味でも日本の偉大なる財産である武道文化を少年達に教え年長者に当たり前に尊重感を持たせて行く事は大切な事と感じています。

 最後に武道性について書かさせて頂きます。武道空手道で言う道徳性は言葉で教えることもしますが、それだけではありません。
 1)〜4)で取り上げましたように、礼儀、痛みを通じての情操、ゲーム性のない稽古を通じて継続する事から来る忍耐力と達成感、文化の継承性を通じて年長者や両親への尊重感、全ての要素を継続していき、武道空手道を志すものと言った自覚が生まれてくるに伴って武道人としての「美意識」が芽生えてきます。
 その稽古への努力から来る「美意識」がもともと犯罪を犯す可能性のある少年や、道を踏み外してしまう要素を持っている少年達をギリギリの所で思いとどまらせてくれる事となっていると思います。そして実際に不登校の少年が登校するようになったという事例や、手のつけられなかった非行少年が更正した事例が数多くあります。様々な情報が飛び交い、体感的に物事を感じにくくなっている現代こそ、私ども空手道の指導者は、武道空手道を通じた教育が大切ではないかと感じると共に、なお一層の努力を重ねていかなくてはならないと思っております。

 ご父兄の皆様におかれましては武道空手道教育の主旨をご理解頂ければ幸いと思います。


禅道会・秋山賢治インタビュー(禅道会特集その1)へ





本稿の著作権はすべてKANSENKI.NET及び「書き手」に帰属します。

戻る
TOPへ