マッスル4 5.5北沢タウンホール大会
■団体:マッスル
■日時:2005年5月5日
■会場:北沢タウンホール
■書き手:犬足

「ハッスル」と「マッスル」は共通項を上げればキリが無いが
「ハッスル」とはDSEが来る総合格闘技ブーム衰退を見越して立ち上げたプロジェクトであり
「マッスル」とは坂井良宏がやりたくてやってることである。

今回のマッスルでは世界各国から選りすぐりの選手を招聘、世界最強の座を賭けたワンデイトーナメント
K-Iグランプリ(けーあいぐらんぷり)が開催された。
客数はざっと210人、若い男女が多くを占める。インディーマニアは全体の3割ほど。
箱がインディーの聖地北沢タウンホールであることを考えると、これは決して高い数値ではない。


一回戦第一試合:○アントーニオ本多 (5:12 急所打ち→スクールボーイ) ペドロ高石×

4.25日本予選でクラブに週三で通う726(なつる)に選考課題「パラパラ」で敗北し、日本代表の座を追われたマッスル坂井、
イタリア代表にしてマカロニレスリングの継承者、ツルティモドラゴンジム留学生アントーニオ本多、
ブラジル代表、足のみで闘うカポエイラの達人にしてT.A.M.A.参戦中のペドロ高石の三人は、

ツルティモドラゴンの甥で演出家の鶴見亜門にヒールターンを強制され、
客を殴りながら入場するヒールユニット「new Muscle order」略してnMoを立ち上げさせられるものの、
第一試合がnMo同士の対戦であることを知った鶴見亜門によりペドロ高石はnMoから外されてしまう。

演出家の要請どおり、本多がヒールファイト。客のサンダルを奪って殴る。
セコンドのマッスル坂井も時折思い出したように「マザーファッカー」と合いの手を入れる。
で、勝ちを収めるが、その顔には迷いの表情。


一回戦第二試合:○726 (5:37 体固め) 小仲ペールワン×

現代日本の若者を完璧に表現しうるプロレスラーとして演出家鶴見亜門の期待を一身に受ける726(なつる)、
OLの間で今ブームとなりつつあるヨガの隠れた火付け役、パキスタン代表の小仲ペールワン、
ペールワンの主要兵器は唾。相手に向かい口角泡を飛ばす、相手を踏みつけ雫を滴らせる。
見かねたレフェリーの制止を振り切り、七色の唾攻撃で726に一気呵成に攻め込んだ。
が、しょせんはよだれ、726にダメージを与えるには至らず敗戦の憂き目に遭う。


一回戦第三試合:○ゴージャス松野 (5:04 首固め) エルイホデルドクトルティグレJr.×

リングドクターを営む傍らレスラーも嗜む第二種兼業レスラー、エルイホデルドクトルティグレJr.、中身は虎龍鬼か?
対するは鶴見亜門をして「天才」と言わしめた「日本で最も有名なプロレスラー」ゴージャス松野。
グダグダな攻防。


一回戦第四試合:○佐野直 (8:04 反則) Mr.マジック×

鶴見亜門推薦枠のアメリカ代表2名はMr.マジックと佐野直。
「イリュージョンとプロレスの融合」らしいMr.マジックは分からないでもないが、
鶴見区青果市場デビューの佐野はどこら辺がアメリカなのだろうか?

試合中盤まではMr.マジックの華麗な四次元殺法と佐野の受けが上手く噛み合っていたが
終盤、突如オリーブの首飾りが流れ、リングに箱が持ち込まれる。
佐野を箱に入れたMr.マジックがそこに取り出したるサーベルにて箱を突き刺したところ・・・?


なんと、箱から全身血だるまの佐野が転がり出る。どうやらイリュージョン失敗らしい。場内爆笑。
これによりMr.マジックは反則負け、あげく客の中にいた警察関係者に業務上過失致死容疑で連行される。
一瞬の気の緩みがその後の人生を大きく左右してしまう、プロレスの楽しいばかりでなく厳しい側面も浮き彫りにした試合であった。

試合後、佐野の治療のため10分間の休憩が入る。


DJニラ主催S-Iグランプリ エルイホデルドクトルティグレJr. が優勝
一回戦の総括としてDJニラが登場。「マッスルには決定的に闘いが足りない」ため、DJニラ主催の相撲トーナメントが実施された。

一回戦:○ペドロ高石−趙雲子龍× ○エルイホデルドクトルティグレJr.−映像班の藤岡メガネ×

決勝戦:○エルイホデルドクトルティグレJr.−ペドロ高石×

ニラ「戦いを取り戻した」「プライスレス」と抽象的なコメントでお茶を濁し、冷え切った会場から逃げる。


準決勝第一試合: ○ゴージャス松野 (2:21 体固め) アントーニオ本多×

初めこそ一回戦同様ヒールファイトに徹していた本多であったがペドロ高石に諭され、
「FuckダマレFuckダマレ!」「本物のプロレスラーになるにはヒールもやらなきゃいけないジョルノ」

と逆ギレ。しかしイタリアから空前の大型連休を利用して来日した母に
「そんな子に育てた覚えはないジョルノ」とリング上で折檻され改心、
本多ボンバイエのテーマに乗って再入場、再試合を行うが演出家の介入により敗北を喫する。


リザーブマッチ: ○ランジェリー武藤 (2:46 ブラ剥奪) マッスル坂井×

出血多量で準決勝出場不能となった佐野直の代理に立候補したマッスルと、
レフェリーとして一回戦を裁いた澤(=ランジェリー武藤)によるブラ&パンティーマッチ。
ランジェリーの膝の状況が悪化したためマッスルが繰り上がり、準決勝進出を決めた。

準決勝第二試合: ○マッスル坂井 (6:32 マッスルロック) 726×

序盤は静かな立ち上がり。両者互角の攻防の後、開始後5分ほど経った頃にマッスルが726をコーナーに振る。

と突然音楽がかかり、天井から紙吹雪が舞い、リング上の全員がスローモーションに。
マッスルゆっくりとセコンドの高石、本多に指示を出す。セコンドゆっくりと試合介入。
コーナーにもたれる726に坂井、本多、高石が攻撃。坂井カバー、カウントが2まで進む。

と突然場内暗転し、スクリーンに726の回想が表示される。
「俺は中途半端だった。高校を中退して比較的入りやすいDDTに入ったけど、レフェリーをやらされた。

それも上手くいかなくて、今じゃ試合後の選手達の合コンセッティング要員。
俺、何がやりたかったんだろう? そうだ、プロレスがやりたかったんだ。」
場内点灯、スローのまま726フォールを返す。反撃、726カバー、カウントが2まで進む。

と突然場内暗転し、スクリーンに坂井の回想が表示される。
「俺は中途半端だった。大学を中退して比較的入りやすいDDTに入ったけど、映像班をやらされた。
いつまで経っても正式にデビューさせてもらえず練習生扱い、
試合が終わっても他の選手達は合コンに行くけど、俺には編集の仕事が待っている。
俺、何がやりたかったんだろう? そうだ、プロレスがやりたかったんだ。」

場内点灯、スローのまま坂井フォールを返す。反撃。

マッスル、ゆっくりとパイプ椅子を振りかざす。いつしか現れたDJニラが椅子をつかむと
振り返り、726に一撃。着ていたシャツを脱ぐとその下にはnMoTシャツが。
坂井、なおも食い下がる726をマッスルロックに捕らえる。726タップ。

試合後、お気に入りの726を破った坂井に「決勝ではゴージャスに負け」るよう、
ツルティモドラゴンの名前を出して強請る演出家・亜門、そこへツルティモドラゴン登場、亜門を殴る。
しばしやり取りがあって「好きにしたまえ」と坂井の気持ちを認めて去る亜門、
「これで卒業だ」とマッスルシリーズの存続を揺るがすような発言をしてしまうツルティモ。

これにはレスラー、観客共に困惑。

DJニラ、客席を振り返り苦笑しつつ、こめかみの辺りを指差してジェスチャー。気持ちは分かる。

坂井は、「決勝は全力で戦います」「負けてしまった皆の力を分けてくれ」と、
往年のジャンプ漫画のような台詞で決勝戦に向けて雰囲気を盛り上げていく。

しかし相手がゴージャスでは名勝負は難しいのではないか?
しかもゴージャスも坂井もこの日すでに2試合もこなしている。体力は持つのか?


決勝戦:
すると突然場内暗転し、スクリーンに回転する地球の絵が表示される。
ナレーション「決勝戦、マッスル坂井はゴージャス松野にまさかのボロ負け。」
な、なんだってー?!
どうやら肝心の試合をやらずに説明だけで済ませるつもりらしい。

笑いながらも一応不満の声を上げる客席を尻目になおもナレーションは続く。
スクリーンには優勝と書かれた皿、トロフィー。どうやら病院のベッドの枕元に置いてあるようだ。
「待ってるから、そのリハビリが終わったら、大好きなプロレスが、待ってるから。」
客席から上がる「えーー?(笑)」を尻目に、スクリーンにはエンドロールが流れ始めた・・・。


面白かった。


総評:マッスルに見る「インディペンデント」

大仁田厚も一応引退し、全日本プロレスの武道館大会も無く、新日本プロレスが観客動員に苦戦する今もなお、
インディー<メジャーの概念は残っている。

K-DOJOやDDTや大阪、みちのく、その他小規模プロレス団体が新日本や全日本やノアの選手にお願いして上がってもらうことはあっても
新日本や全日本やノアの選手が自分より小さい団体のリングに自ら望んで上がることは、あまり無い。

実にくだらないことだが、
自分の所属する団体よりも規模が大きい、歴史がある団体のリングに上がらせていただく=認めてもらうことが
選手のステータスになることはあっても、
自分の所属する団体よりも規模が小さい、歴史がない団体のリングに上がることが
選手のステータスになることはないと思われているようだ。

株式を店頭公開していようが有限会社だろうが、しょせんは中小企業であり、世間一般で言う大企業から見れば
どの団体も大差ないはずだ。にも関わらず、メジャーと呼ばれる団体はたまに東京ドームなんかで興行を打って優良企業づらしている。
客にオーロラビジョンでプロレスを見せることが正しいことだとでも思っているのだろうか。


そんな客のニーズを履き違えた団体に上げてもらっていい気になってるレスラーもまたどうかと思う。
マッスル坂井は「俺は一生インディーだ」と公言する。
それは大仁田厚のメジャーを意識したインディーとは一線を画した、本来のインディー、インディペンデントな独立した1選手としての
発言だと思っている。マッスルも新日本も同じプロレスなのだ、と。
「そこに闘いが」無くてもプロレスはプロレスだ。
闘わない奴がレスラーでないのなら猪木の言いなりになって言い返すことも出来ない奴こそレスラーではない。

プロレスはどんどん変化していくだろう。
もはや皆が同じ方向を向く時代ではない。そしてプロレスはそれぞれの方向全てをカバーできるようになれると思っている。
プロレスにはレスリングしかあってはならないというのなら俺はそんな時代遅れなプロレスなど見ない。




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