スマック・ガール2日連続3興行 観戦記<その1>
■団体:スマックガール
■日時:2005年4月29日
■会場:北沢タウンホール
■書き手:トロピカルhttp://www.geocities.co.jp/Athlete-Samos/7184/

スマック・ガールが開催した4月29〜30日の2日連続3興行。
これはその観戦記ですが、個々の観戦記に入る前に、現時点でのスマックを取り巻くジョシカク界の総括を。

まずは、修斗が「G-SHOOTO」という形で、女子のみのイヴェントを開始。
クラスC+という、これまでの修斗の厳格なクラス分けを多少ルーズにしてまでも設けられたクラスによって、女子総合の発展のためのステージが
作られた。
またパンクラスも、渡邊久江選手をエースに「パンクラス・アテナ」を開始。
DEEPでは引き続きしなしさとこ選手のカードが組まれ、今年2月にはしなしvs金子真理という待望のカードが実現、熱戦を繰り広げた。
そして、スマック2連戦の前日、「PRIDEチャレンジ」にSayaka選手が参戦することが発表され、ついにPRIDEが女子に進出?とスポーツ紙上にて騒
がれる。

Cross Sectionを擁するGCMや、アマチュアでは女子に門戸を解放しているZSTも含め、これで日本で興行を開催している総合格闘技の主な団体は、
K-1を除いてすべて、何らかの形で女子を取り入れていることになった。
(や、去年TBSで放送された『黄金筋肉』の「女子総合格闘技・最強女王決定トーナメント」のDREAMAXを広義の意味でK-1制作と捕らえたなら、
「すべて」と言い切ってしまってもいいだろうか。)

では、ジョシカクをめぐる状況は安泰なのかというと、決してそんなことはなく、現状は寧ろ逆である。
スマックと別れた形で始まった女子の団体・Love Impactは、去年8月以降、興行が開かれるという話は聞かれず、昨年末から2回、キーラ・グレ
イシーを来日させてはヴァラエティ番組で日本のコメンディアンと対戦させるためのマネージメント業務へと、その仕事を路線変更してしまった。
GCMコミュニケーションによるCross Sectionも、昨年3回の興行の後の予定は聞かれない。
そして、やる側を中心に最も期待の高かったG-SHOOTOについても、Zepp TOKYOで行われた2回の興行は動員の面で苦戦し、アマチュア育成の場であ
る「G-SHOOTO plus」は随時開催されるも、本戦にあたる「G-SHOOTO japan」については、当初から発表されていた8月のZepp NAGOYA以降、新しい
予定は未だ更新されていない。

パンクラス・アテナについても、女子の前座を拒否したヤノタクと交互にしかカードが組めないという事情のうえ、またエースの渡邊久江について
も最近、マネージメントを魔裟斗と同じ事務所に変えたという情報もあり、今後の展開は予断を許さない。

結局、いろんな所がジョシカクに手を出してきてはいるが、はっきり言ってどこも上手くいってないのである。
格闘技界をピラミッドに例えたとき、ジョシカクは、その裾野を横方向に確実に広げてはきたが、縦軸方向のピラミッドの頂点は未だ低いまま、と
いうか、幾つかの低い山がたくさんあるだけで、どこも「頂点」と呼ぶには物足りない、というのが現状なのだ。

この状況の中で、現在のスマック・ガールの活動は、「ジョシカクの頂点」の提示へと、明確にシフトしている。
まずは昨年12月に「無差別級トーナメント World ReMix」を開催して、最上位概念のベルトを設置。
そして今年、アンダー52kgの「ライト級」と、アンダー58kgの「ミドル級」でベルトを新設。
この4月29〜30日の2日連続3興行をはじめに、6月28日の後楽園・7月10日の大森・そして8月の代々木第2という中で、各階級の頂点
を明確にする流れである。

ピラミッドを形成するのに、最も手っ取り早い方法であるのはトーナメントであるが、今回の3興行で、スマック・ガールが開催しているのは、全
部で6つのトーナメント。


■<1>■ SGG1Dayトーナメント2005 -48kg級
■<2>■ SGG1Dayトーナメント2005 -58kg級
■<3>■ The Next Cinderella Tournament 2005 -48kg級
■<4>■ The Next Cinderella Tournament 2005 -59kg級
■<5>■ スマックガールライト級王座次期挑戦者決定トーナメント
■<6>■ スマックガール初代ミドル級王座決定トーナメント

ジョシカク初心者は、正直どれが何だかわからないでしょうし、トーナメントによって体重のリミットが違ったりとか、わかり難い部分も多々ある
ので、以下に続く観戦記を読んでいただく際には、どのトーナメントなのか(それともワンマッチなのか)を意識して区別しながら読んでもらうの
がよいかと思います。
とりあえず、ちょっとだけ各トーナメントについての解説を。


■<1>■ SGG1Dayトーナメント2005 -48kg級
■<2>■ SGG1Dayトーナメント2005 -58kg級

・・・この2つは、29日第1部の「GRAPPLER'S holiday 2005」において決定される、4人参加の1Dayトーナメント。
SGGとは、Smack girl Grapplingということで、打撃無し・寝技制限時間無しのルールで行われる。

■<3>■ The Next Cinderella Tournament 2005 -48kg級
■<4>■ The Next Cinderella Tournament 2005 -59kg級

・・・「The Next Cinderella Tournament」は、去年に引き続き2度目の開催で、名前の通り「次の世代のヒロイン」を産むためのトーナメント。
スマック・総合へのチャレンジを始めて未だキャリアを積んでいない、フレッシュな選手を中心に行われる。

■<5>■ スマックガールライト級王座次期挑戦者決定トーナメント
■<6>■ スマックガール初代ミドル級王座決定トーナメント

・・・ライト級・ミドル級・各王座のベルトを決めるためのトーナメントだが、両者で決定の仕方は若干異なる。
ミドル級は、普通にトーナメントの勝者が王者となるが、ライト級の王者は6月の後楽園で行われる辻結花vsXにて決定され、今回のライト級トー
ナメントは、6月に決まった王者への挑戦権を賭けた形となっている。

以上を認識していただいたうえで、まずは29日・北沢タウンホールの第1部「GRAPPLER'S holiday 2005」の観戦記から。

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<29日・第1部 GRAPPLER'S holiday 2005@北沢タウンホール>

●上のトーナメントのうち
■<1>■ SGG1Dayトーナメント2005 -48kg級
■<2>■ SGG1Dayトーナメント2005 -58kg級

の2つが4人参加の1dayトーナメントで行われるのと、ワンマッチが2つ。
トーナメントの組み合わせは、当日抽選で決定とのこと。
定員300の北沢で、客入りは半分強。
全選手、赤いスマック新作Tシャツで入場の入場式。
ワンマッチ参加の服部恵子(ALIVE)があいさつ。
白Tに黒帽子&サングラスの、新しいリングアナ・松本ヤスオさん、とてもよかったです。
判断も適格ですし、これまでの高乃希里さんと違って男性ですけど、ちゃんとおシャレでダサさが無いのがいいですね。


●<第1試合 SGG1Dayトーナメント2005 -48kg級 1回戦>
○玉田育子(ガールファイトAACC)<2R判定3−0>川村静代(ALIVE)× ・・・

川村選手の入場で、いきなり入場曲のかけ間違いが発生。
組み合わせ&試合順が当日決定だったということも、原因としてあったんでしょうかね。
逆に、予想されたトラブルではあったので、避けられたとも思いますけど。
玉田選手、基本的にタックルで上を取り、めくられても直ぐめくり返して、終始ポジションで圧倒。

去年のこの大会では準優勝だった玉田選手、優勝へ向けて好発進。


●<第2試合 SGG1Dayトーナメント2005 -48kg級 1回戦>
×新井寛子(フリー)<2R判定1−2>尚美(TEAM TOPS)○

・・・
かつてスマックにチーム品川での参戦歴もある、レスリング出身の川又尚美選手、しばらく体調不良とのことでブランクがあったが、今回「尚美」
と改めてグラップリング・ルールから再出発。
一方、かつては東京イエローマンズ所属でも参戦歴のある新井選手、43.9kgとアナウンス。
アンダー48kgのトーナメントでその体重はキツイか、1Rは気持ちで負けてたような。
かといって尚美選手も、最初にタックル2回切られた後は特に攻め手なく、お見合いが続いてレフェリー高橋の「アクション!」の声ばかりが響 く。

2R、新井選手が攻めようとするも、頭1つ分ちがう体格差と尚美選手のレスリング力(といっても相変わらず突き放すだけなんだが)とで、なか
なかつかまえられず。
しかしラウンド後半、新井選手がバックをとってから尚美選手の左足を取って、結構エグイ感じに曲がり「どうなるか?」と思ったところでブレイ ク。

最後は新井選手が三角ねらったところでゴング。
よく見えなかったんだけど、ラスト1分のブレイクはなんでなんだろ。
膠着、ってほどでもなかったと思うし、まだ新井選手が攻めてたように見えたけど。
これがなかったら結果もわからなかったような気がするが、ジャッジは1Rに押してた尚美がスプリットで決勝進出。


●<第3試合 SGG1Dayトーナメント2005 -58kg級 1回戦>
○関口菜穂子(トライフォース)<2R3分44秒 腕ひしぎ十字固め>田村真弓(バトラーツジムB-CLUB)×

・・・
またしても入場曲間違いのトラブルがあり、会場から「ちゃんとやれ!」のヤジが。
田村選手は白とピンク、関口選手は黒のセパレートのコス。
僕は両選手とも初見なのですが、関口選手は下系の柔術選手なんでしょうか、抱き着いて引き込んでダイナミックに下から攻める展開が続く。
1R最後は腕十字がキッチリ取れるも、ギリギリのところで4分終了のゴングが先に。
2Rも同様の展開で、会場中からは盛んに「菜穂子!」の声援とアドヴァイスが起こるのに対し、バトラーツジムの田村選手はセコンドからもだん
だん声が出なくなる。
最後は関口選手がバックから回転し腕十字で1本で、決勝進出。


●<第4試合 SGG1Dayトーナメント2005 -58kg級 1回戦>
○二宮亜基子(ALIVE)<2R判定3−0>SAYAKA(ガールファイトAACC)×

・・・
事実上の決勝戦。
02年12月の「SMACKGIRL SGGミドル級1DAYトーナメント」決勝では二宮、03年9月「Gi-Feminino」ではSayaka・・・他にも対戦はあるのか
もしれませんが、要はこの階級のグラップリングで実力の拮抗した2人の対戦。
基本的に、上をとって攻めてたのはSayaka。
一方、下からキッチリとコントロールしてたのは二宮。
sayaka、テイクダウンとって手を取って持ち上げてのパスガードなど、とにかく上からアグレッシヴに攻めようとするが、二宮の足が利いて思うよ
うに攻められず。
どっちをとるか?判定はめちゃめちゃ難しいですが、2Rラスト30秒で、二宮選手が上を取ってからバックにまわってチョークねらい・・・の流
れがよかったのか、3-0で二宮。
スマックのグラップリングは、ポイント制でないので、引き込みもマイナスにならないし、他のグラップリング大会に比べて下系の選手が有利だっ
たりするってこともあるんでしょうかね、わかんないですけど。
sayaka選手、判定聞いてすごい悔しそうな顔をしたが、ちゃんと四方に手を挙げて応えてリングを降りました。


●<第5試合 SGG公式ルール -53kg契約 4分2R>
○高林恭子(ALIVE)<1R2分18秒 腕ひしぎ十字固め>石川千恵(U-FILE CAMP赤羽)×

・・・
ワンマッチ。
石川選手、入場してスペシウム光線のポーズ。
田村潔司みたいにシューズ着用ですが、なんか普通の女の子っぽい感じです。
高林選手、胸にkoubudo.co.jpのURL。
東海地区の格闘技ショップ「公武堂」の看板娘だそうです。
試合は高林選手が、1度目は外すも2度目の腕十字ねらいで1本。
高林選手の柔道?の素地の違いでしょうか。


●<第6試合 SGG公式ルール -64kg契約 4分2R>
×たま☆ちゃん(SOD女子格闘技道場)<2R3分48秒 腕ひしぎ十字固め>服部恵子(ALIVE)○

・・・
ワンマッチ2試合目。
金に赤い炎という、相変わらず派手なコスのたま☆ちゃん、パワーで押そうとするも寝技での攻め手なし。
上を取って体を起こそうとしても、柔術家・服部選手が抱き着いて離れず、下から三角や十字ねらいでジワジワと。
1R終わり、服部の三角がばっちり入るも、たま☆ちゃんパワーで耐える。
2R、たま☆ちゃん足が絡んでの上で、セコンドの藪下めぐみから「たま☆ちゃん、逆エビ!」の声がかかるも、出来ず。
ラスト30秒切ったところで服部、上三角から腕十字で1本。
SODでの寝技の練習って、どんな感じでやってるんでしょうかね。
柔術相手だと、スマックお馴染み・たま☆ちゃんも厳しかったです。

●<第7試合 SGG1Dayトーナメント2005 -48kg級 決勝戦>
×尚美(TEAM TOPS)<1R3分8秒 フロントスリーパーホールド>玉田育子(ガールファイトAACC)○

・・・
アンダー48kg級トーナメントの決勝。
尚美の手足が長く、玉田入れないまま2分過ぎるが、バックを取った玉田選手が最後はスピニンぐ・チョーク気味に(?)とってから、足クラッチし
て1本。
尚美選手、復帰戦ということもあったのかもしれないですが、2試合とも、あまりに攻め無さ過ぎでは。
組手は払い除けるが、自分から取りに行くわけでもなく、タックルに入るわけでもなく。。。
次からはレスリングで攻める尚美選手が見たいです。

玉田選手、マイクで
「去年、茂木選手に敗れて準優勝。今回は絶対に負けられない・・・」
などのコメントに続いて、「AACCでは、1日体験も出来ます」など、AACCの営業。
玉田選手、プレッシャーの中で、よくキッチリ勝ってよかったと思います。
<SGG1Dayトーナメント2005 -48kg級 優勝 玉田育子選手>


●<第8試合 SGG1Dayトーナメント2005 -58kg級 決勝戦>
○二宮亜基子(ALIVE)<2R判定3−0>
×関口菜穂子(トライフォース)

・・・
関口選手、最初は腰が引け気味のようにも見えたが、1回タックル切って引き込んでからは、二宮選手相手に決して負けていない展開。
お互い引き込み合いながらも積極的に仕掛け、2R中盤になると、スタミナを使い切ってきたのか、2人ともハァハァと息づかいが。
ラスト2分、二宮が上とってハーフからマウント、バックからチョークをねらったところでゴング。
最後の攻勢が効いたのか、ジャッジは3-0で二宮ですが、関口選手の頑張りで、いい試合になりました。
二宮選手、勝っても納得いかない表情。
<SGG1Dayトーナメント2005 -58kg級 優勝 二宮亜基子選手>


●最後に、全選手入場。
柔術のビビアーノ・フェルナンデスから、優勝の玉田と二宮に表彰。


●<総評>
個々のカードについてはそれぞれ技術的にも楽しむことが出来、特にメインが好勝負になって最後は締まりましたが、興行全体を見て思ったのは、
僕のような「見る側」において、グラップリングの大会が他の総合などに比べてイマイチ盛り上がらないのは、競技として「地味」や「わかりづら
い」というだけではないのではないか、と。
簡単に言うなら、グラップリングにおける頂点が見えない、というか。
格闘技をピラミッドに例えるとすると、グラップリングというのは、これまでは主に、競技人口の裾野を広げるという横軸方向へと伸びてゆくこと
を目指して、それは成果を出していると思うんですが、一方で、縦軸の上へと向いて進んでゆく運動が、まだ確立していないわけで。
グラップリングといっても、柔術やらコンバットレスリングやらグラ修やら、いろんな大会があって、ギが有りだったり無しだったり、ポイントや
ルールが大会ごとに違ったり、小さな山が幾つもあって、どれが頂上なのかがわからないのが、現在のグラップリングのシーンで。
だから、見る側として、個々のカードで個別の技術的攻防などを楽しむことは出来ても、興行全体としてのアングルというかダイナミズムがまだま
だ生まれないのが現状なんだと思います。
ジョシカクにおいてグラップリングというのは、(やる側においても見る側においても)打撃への抵抗へのエクスキューズというか「方便」とし
て、無くなることは無いと思うんです。

例えば「女の子が殴り合うのは、ちょっと・・・」という人達が、仮にスポンサー候補の中にいたとして、「や、ウチはグラップリングもあります
よ」という「方便」というか。
じゃ今後、ジョシカクの中でのグラップリングを、どういう風に位置付けてゆくのか。
一つの形として、横軸・裾野を広げるという目的に徹する、という手もアリだと思います。

決してネガティヴな意味でなく、やる側のニーズに徹して、見るのは仲間や興味ある人に限って、大会は休日の昼に北沢や大森の会場がとれた時に
やる、というか。
そしてそこから、茂木選手や赤野選手のように、総合への進んでゆくための選手の入り口としての役割が出来ればOK、というのも、1つの選択肢と
しては充分にアリかと。

ただ、もしもそうじゃない「グラップリングの最強もスマックが決める」という方向なのであれば、次からは、縦軸方向を明確にする何らかの興行
としての装置・システムが必要になってくるのではないか。
それがトーナメントだけでいいのか、ベルトなのかランキングなのか対抗戦なのか、それともフジメグやエリカ・モントーヤ等の総合でも活躍する
人やキーラ・グレイシー、レカ・ヴィエイラなど柔術のビッグネームをグラップリングマッチで招聘するのか、いろいろあり得ると思いますが。
例えば今回も、思い付きですが、藤井惠と藪下めぐみというアブダビ女子代表が2人、セコンドで来場してたんなら、休憩明けにでもアブダビへの
意気込みなんかを挨拶してもらって、グラップリングの現時点での世界的頂点と、何らかの繋がりを興行の表面的にも持たせるとかの演出も可能
だったのでは・・・。

ま、これは本当なら、スマックだけじゃなくて、世界のグラップリング・シーン全体で考えなけりゃいけない問題なんですけど、女子はまだ男子ほ
ど広がって利害構造が生まれていないぶん、理念を実現するのには近いんじゃないかとも思うんです。



<29日・第2部の観戦記に続く・・・>



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