終焉
■団体:全日本女子プロレス
■日時:2005年4月17日
■会場:後楽園ホール
■書き手:凸ユーレイ

 さすがにほぼ満員、こんなに会場に活気があるのは(個人的にも)最近めずらしいこと。最期にこんなに入るなら、普段から来てやれよと思うが、今の全女が多くの人にとって魅力の感じられないものであったとすれば、それも致し方ないことなのか。
 本部席に赤木マリ子、最前列に勝俣州和が。その他、ロッシー小川、ヤマモ山本雅俊ら有象無象の姿も。休憩時間には納見佳容が、超混雑しているロビーを、犬を抱えて通り過ぎていた。


0.ミゼットプロレス
○プリティ太田(6:17横入り式エビ固め)×ミスターブッダマン

 今井リングアナによるコール時のキャッチフレーズ、太田は「気がつけば全女最後の入団選手」ブッダマンは「全女37年の歴史の末席を汚し続けた肥満児」「全日本つまようじ作り選手権少年の部準優勝」。
 ネタは、太田の顔面ウォッシュを止める際に笹崎レフェリーが、「ダメだこんなことしちゃ」と自らもブッダマンの顔を蹴っていたぐらい。あとはきわめてマジメな試合だったが、ブッダマンの身体が不調なためか?動きが悪く、質の低い当て振りのようで笑うにも笑えない、哀しい試合。


1.○豊田真奈美(フリー)、下田美馬(AtoZ)(14:16ジャパニーズオーシャンクインビーボムから)×伊藤薫(フリー)、渡辺智子

 特筆すること無し。豊田は太った、渡辺は痩せた。下田は、引き締まっていた復帰直後からすると、腹が少したるんでいるかも。
 十年前、今日のメンバーがまだ皆揃っていた頃に第3か第4試合ぐらいで組まれたような、ざっと一通り各人の持ち技を出して終わらせたような試合。

 セコンドに欠場中の高橋奈苗。痩せている。顔がほっそり、膝負傷の影響だろうか足首も細い。エクステかもしれないが髪を伸ばしている。


2.○吉田万里子(M’s)(5:52蜘蛛絡み)×ザ・ブラディー(OK)

 この日の出場選手、現在の曲で入場してくる者と、全女在籍時の曲を使った者とがいたが、吉田は後者。試合でも、「ひさしぶりに」と口に出しながらのコーナー側転アタックを披露。
 序盤から吉田がブラディーの技をよく受ける。こだわりのブラディーEX、スタンディング本人ロープぶら下がりバージョンを含め、何度も。
 吉田はアルシオンにいた頃がいちばんカタかったように思う。さいきんは、フリーで使われる身ということもあってか、ずいぶんと対応が柔らかくなっているような。

 弱い立場といえば、ブラディーはさらにその悲哀を味わっていて、AtoZで西尾に敗れ、全女ではタッグながら前村に敗れている。まあこっちは引退間近という事情もあるのだが…
 短いながら、両者ともに持ち味の出た試合で良かったんじゃないかな。


3.○三田英津子(NEO)、椎名由香(NEO)(13:39デスラップボムから)×田村欣子(NEO)、タニーマウス(NEO)

 ともすればシンミリしがちな場内を、タニーがいつもながらのコミカルファイトで笑わせる。三田に虚勢を張って「かかって来い」。で、簡単にチョップ食って倒れる。とか、カンチョーとか、ベタだけど。「フゥ〜跳び」は2度付き合ってもらえずガックリ落ち込んでいたが、3度目の正直、元気・仲村・松尾セコンド陣総出で手伝ってもらい成功、パートナーの田村以下セコンドも皆跳んで「フゥ〜♪」。
 とはいえ、こうしたスタイルにはやはり賛否があるようで。私の隣の席の客は、昔の全女しか知らないようで、「早く終わらせろ」とおかんむり。
 怪我明けの田村が敗者。三田が勝つ、っていうのは、上記のような、久しぶりに来た人に対しては説得力があるんだろうなあ。


4.堀田祐美子(AtoZ)、○西尾美香(AtoZ)(14:15タイガーSPX)前川久美子、×前村早紀

 試合後のやりとりを含めて、この日のベスト。
 一時期はAtoZで“暴走姉妹”を組んでいた堀田と前川が、序盤からローの蹴り合い、しだいに間が滅茶苦茶になり軍鶏の喧嘩のようになる。オモロイ。やられっ放しだった前村も、中盤以降、堀田をジャーマンで投げるなど反撃。
 終盤、西尾と前村のやりとり。長い脚がズバッと入るローリングソバットと、渾身の丸め込みさき花マルとの打ち合い、それぞれ2往復して、カバーをギリギリで跳ね返しあう。単なるカウント2.9プロレスと言ってしまえばそれまでだが、大御所に混じって若い2人が沸かせたのは良かった。決着後、前村を抱き締める西尾。。

 そして、この日ここまでで初めてのマイクアピール。まず西尾が前川に、5・3AtoZ後楽園での対戦を要求、前川受諾。
 ついで堀田。声がつまりがち。「前川、今日は出場させてくれてありがとう」「しょうじき寂しい」「こういう事態になって、恥ずかしいこと」「前川やナベをはじめ、残って、全女を守ってきた選手たち、全女魂をこれからも持って」言葉はつながって出てきているのだが、脈絡や「てにをは」がおかしい。堀田らしく、直情的ながら畏まった言い方をしようとするので、なんだか可笑しいのだが、その分、彼女の真情が伝わってくるかのようなマイク。キャラクターを守って、ずっとニヤニヤしながら試合を進めた前川も、本来は敵である堀田の、ほとばしるような言葉の礫に、感情が決壊しそうに、表情が泣き崩れそうになり、必死に自分を保とうとする。

 しかし、辞職してライバル会社に移籍、其処で責任者にまでなった堀田が、全女の経営のことを「恥かしい」と評するのはどうなんだ(笑)。思うに、未だに自分も“全女”の一員であるという意識もあって、ゴッチャになっているんだろう。
 じっさい、全女を飛び出す時に堀田は、選手一同に声をかけ、全員別会社に移ってやり直そう、其処で“全女”の存在を守ろうと考えていたらしい。周囲の、そんな彼女を利用しようとする輩たちの思惑はともかく、堀田自身の真情としてそれは間違い無かったことのようだ。そして現在は、行き場の無くなった選手をAtoZで受け入れる、とも表明している。
 この日のアピールの様子、内容を見ると、最期まで残った選手たち、とくに葛藤が大きかっただろう若手たちと比べても、けっきょく、ファイトスタイルを含めた“全女”を最も愛していたのは堀田だったのではないかという気すらしてくる。逆に言えば、それもあって旧アルシオンの選手は皆、AtoZを辞めてしまったのかもしれないがだが…。

 さらにマイクを握る堀田。自団体の5・3後楽園に、そんな全女魂を持った選手を呼びたいと。「エーコング!出て来い!」「パートナー、タッグ」「全女ソウル!ユー、全女ソウル!!(A・コングの胸をバチンと叩く)」。全女ソウルて…。爆笑なのだがなにやら熱いものがこみあげてくる。堀田はまぎれもなくバカであり、今まで私は半笑いで彼女の言動を見ていたのだが、バカなればこそ伝わるものがあり、この日は、自分とこの宣伝をつたなく行ったことも含めて、愛すべきバカとして強い好印象が残った(5・3のカードは堀田・アメコンvs下田・豊田に)。


  5.ジャガー横田(フリー)、○立野記代(LLPW)、井上貴子(LLPW)(11:24横入り式エビ固め)×ダンプ松本(フリー)、ZAP・T、サソリ

 極悪のセコンドにはコンドル斎藤らかつての同志が。ジャガー組にもジャンボ堀、永堀一恵のOG、さらにLLから素顔のアイガー(!)がセコンドに。

 ステレオタイプな極悪同盟の試合。鋭角の凶器で額をえぐられたジャガーが大流血だが、最前列席で見守るダンナさんはいつものようにニコニコ。てことはあの流れ出る液体は血ではないのかなと思ったりもするが、それにしても、身体を張って受け身をとり続けるジャガーさんは偉い。後輩の立野と貴子は省エネファイト。

 高速カウントで試合を終らせようとした阿部四郎レフェリーがベビー軍のクレームによって交代させられ、登場したのはジミー加山。この人は松永国松として全女の現社長でもあり、ここぞとばかりダンプが国松社長をガチで何事か叫びながら竹刀でしばきまくる! 
 自らのブログでマスコミ報道より早く全女のギャラ未払い、団体崩壊過程を暴露し、一部の不行き届きなフロントを糾弾し続けてきたダンプさんは、リング上の役割とは逆に、知る者にとっては正義の味方。この場面は面白かったなあ。

 試合後に神取が登場、極悪軍と大乱闘。神取としては全女の最終興行を盛り上げようという意図だろうが、結果的においしい役割、LLPWでの新しい展開を予感させてみせた。


6.デビル雅美(フリー)、○アメージングコング(15:04アメージングプレス)井上京子(NEO)、×元気美佐恵(NEO)

 アメコンのチョップを、胸を突き出し受ける京子。「もっと来い」「もう1発来い」3発目でいきなりトーンダウン、胸を両手で押さえ俯いて元気にチェンジ。
 デビルも相変わらず顔の表情と台詞で戦う。元気に「ちょっと背が高いと思って威張りやがってー」。
 ポストに上った京子をリング中央から睨みつけ、ツカツカ歩み寄る。脅えて動けない京子がそのまま雪崩式ブレーンバスターで投げ飛ばされる。っていうのは笑えたんだけど…

 隣の席の、昔の全女しか見ていないカップル客が、元気を指して「この中で1人だけ明らかに弱い」「デビルさん、ボコボコにしちゃえばいいのに」などと話している。くそー何もわかってないくせに。元気が普通に試合したらデビル壊れちゃうじゃないですか。というわけで、デビル相手にはおっかなびっくり、技をまともに仕掛けない元気。客席から「遠慮するな」の声も飛んだが、それが原因で逆に不甲斐なく見えるとしたらどうにも納得しがたいことである。アメコン相手には元気も、Gドライバーでドスドス投げ、スピアでぶっ倒したりしていたのだが…

 さらに1年先輩のジャガーがあれだけ身体を張っていることを考えると、デビルの動かなさはもう少しなんとかならんものかと思うが、巨体で膝が悪いとなれば仕方の無いことなのか…

 この日、これから売っていかなければいけない2枚看板の田村と元気が負けたNEO。ヘタな商売しているなとも思うが、身内同士で普段の空気だった第3試合も、この試合でも、団体としての存在をアピールすることにはそこそこ成功したか。この日、格闘美に出た宮崎以外の全選手が来て、売店のスペースも広かったしな。


7.○前川、渡辺(12:48踵落としから)A・コング、×前村

 オープニングと、休憩前のZAPに続いて、3試合目の渡辺。そういう事情でどの試合も出番は少なめのような気がしたが、ラクラクこなして体調は良さそう。若い前村の方が疲れ気味だったかな。

 WWWA王者の前川。地味だが、私的には現時点でいちばん“強い”女子プロレスラーではないかと思っている。第4試合もこのメインも、自由自在に脚でプロレスする。最近のタッグパートナーであった前村を蹴りでしばきまくる。

 そして呆気ない幕切れ。。。


   そのままセレモニーへ。メインの4選手をそのままに、欠場した高橋、Hikaru、ミゼットの2人と所属全選手、この日出場の他団体・フリー選手もリング上へ。
 松永健司副会長、国松社長の挨拶。言葉も途切れ途切れ、ファンへの謝罪で土下座しようとして選手たちに止められる。。本部席にいた松永正嗣渉外担当(会長・社長ら兄弟の末弟、故・俊国氏の息子で、ダンプのブログでは諸悪の根源とされている)はその瞬間、たぶん他のことに気が向いていたのだろうがなんと笑顔を見せていた。

 入院中の松永高司会長のメッセージが読み上げられる。
 他団体・フリー選手が一言ずつ。ジャガーとデビル肩を組み、笑顔で「全女は終わっても私たちはまだいます(観客笑)」。いちばん声援を集めたのはダンプの挨拶「…さみしいです… きょう来れなかった千種も飛鳥も、寂しがっていると思います…」。名前を挙げた3選手に加え、他の選手も皆同様に、「女子プロレスをこれからも応援してください、よろしくお願いします」と前向きに言葉を結んでいた。
 平成元年デビューの伊藤までが一巡し、今井リングアナが「他に誰か、いいですか」と締めくくろうとすると元気が挙手。「女子プロレスは私が終わらせない、ここにいる皆が終わらせない。ついて来いや!」。準備してきたままって感じの台詞だったけど、若干スベリ気味だったけど、あの空気の中で出ていけただけ、元気は自ら背負うものを知っている。デビルもこの発言には笑顔。
 でも今井さん、「他に若手たち、いいですか」って、30越えてるのもいるんだぞ(苦笑)。

 皆が場外へ下がり、リングに向けて10カウントゴング(この儀式が行われたことですべての選手、スタッフは、全女の終焉を受け止め、顕わにした、と思われるのだがただ1人、正嗣だけは諦めていないらしい)。

 所属選手のみリングに残り、挨拶。みな涙。


 おもに新日本のファンだった私は、ついでで女子プロレスを観ていた。ビューティペア、池下ユミぐらいからかな。中学・高校時代、新日・全日・国際と生観戦していたが、全女に行こうとは思わなかったなあ。クラッシュギャルズの登場が、大学に入学した頃。
 その後30過ぎるまで、雑誌とテレビを見るだけのさほど熱心でもない期間が長く、35歳でJWPのファンになった私には、全女に対して強い思い入れは無い。
 あるとすれば。上記の空白期間中、ちょうど10年前の95年に2度、地方巡業の全女を、八王子と相模原で観たことがある。当時の私は仕事を辞め大学に戻っていたのだがそちらの首尾もうまくいかず研究室にほとんど顔を出さないような生活で。そんな時に観た全女、いま思えば当時はオールスターズがまだ揃っていたのだが、こんな俺よりぜんぜん若い女の子達が、少ない観客の前でも精いっぱい、活き活き頑張ってる、それに比べて俺は… って陳腐なエピソードですが(恥)、そこで感じたバイタリティ、エナジーが、今も女子プロレスを見続けている自分の起点だったのかな、と思うことがある。
 あと、中西百重かな。彼女を生み育ててくれたことには感謝したい。

 全女が潰れたこと自体に関しては、8年前に倒産して以来法人組織でもなくなり、興行を続けて来れたのは債権者の温情によるものであったのだから、いつそうなってもおかしくなく、比較的冷静に受けとめている。JWPはここ5年間で少なくとも3度、潰れそうになっているが、所帯の大きさも違うし負債のケタも違う。儲かった時に残しておけばよかったのにと思っても、松永兄弟の感覚は小市民にはまったく理解できないということでしょう。長与の引退を知って半数以上の所属選手がフリーになることを望んだという、GAEAの例とも事情は異なるわけで。

 ともあれ、今後ますますの縮小とイバラの道が予想される女子プロレスを、愛着のある限り見続けていきたいと思っています。




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