4.17.全日本女子後楽園大会
■団体:全日本女子プロレス
■日時:2005年4月17日
■会場:後楽園ホール
■書き手:しま

最近になって全女解散を知った“元”全女ファンの友人から、電話がきて「17日っ て、まだチケットあるのかなあ?」と聞かれるが「そんなこと知らねーよ!解散興行 だけ見ておきたいってのか?」とムカ〜。私の言葉少ない様子を「うわ、こりゃ ショック受けてるゎ」と受け取ったらしいその友人は結局今日は来ていなかった。そ れで結構。


今日は第ゼロ試合として、ミゼットの試合が11時45分からあるというので、早めに会 場に着く。南側客席に着こうとすると、水嶋と高橋裕美が二人で並んで座っているで はないかー。ふたり並んで何思う?


第0試合 ダイナマイト・キング、リトル・フランキー、プリティ・アトム、ミス ター・ポーンに捧ぐ
×ミスター・ブッタマン VS Zプリティ太田○ 6分17秒 スクールボーイ
リングアナ 今井良晴 レフェリー ハリセン太郎

今井リングアナが、亡くなった歴代のミゼットレスラーの名前をよみあげるとジワ〜 ンとなってしまう。。
試合の内容は、良くも悪くもいつもどおり(果たして良い部分があるのか?というと 微妙ですが)。このままミゼットプロレス消滅とならないことを願うのみ。


@ 渡辺智子、×伊藤薫 VS ○豊田真奈美、下田美馬 14分16秒 ジャパニーズオー シャン・クインビーボム
リングアナ 今井良晴 レフェリー 笹崎勝己

横の席の客が「うぉ〜、第一試合がこのカードかぁ〜豪華だぁ〜♪」とうっとりした 声でつぶやく。たしかに、、、。倒産後、「全女を守る!」と言った豊田と、その豊 田を追い出してチャンピオンになった伊藤、そろってその辞め方の後味の悪さがまだ 生々しい二人が混じって、今日はどんな試合をするのでしょうか?というのが私に とっての見所(?)。しかし、ここまできても伊藤はやっぱり豊田のことが嫌いなん だねー、全然豊田の技を受けません。豊田はまったく良いところを出せずにホント影 が薄い。でも、これは伊藤のせいばかりじゃないかも、、、ロープに駆け上がろうと して失敗して尻餅ついちゃうなんて、以前の豊田だったら考えられない失態まであっ た。やっとひょろひょろ飛んだドロップキックも威力ないし、フットスタンプをきめ た伊藤のほうへ声援が多かったのが悔しい。以前だったら技を受けない伊藤なんか女 王様の魅力で蹴散らしてたのにぃ!そんなことばかり考えていたので、こまかいとこ ろはよく覚えていない。試合後、同期で特別仲良しだった渡辺と伊藤が抱き合う横 で、豊田が客にお辞儀してリングを下りる。通路で振り返り、リングに向かって手を 挙げる豊田の表情、、、。


A ○吉田万里子 VS ザ・ブラディー× 5分52秒 蜘蛛絡み
リングアナ 今村貴則 レフェリー ボブ矢沢

全女最後の日にこのカードって、どうなのよー?と思っていたが、吉田が「久しぶり にいくぞー!」と、今は使っていない全女時代の自分の得意技を出したりして客を喜 ばせたあと、最後は現在の得意技、蜘蛛絡みでスカっとギブを奪うという小気味の良 い試合だった。

試合中ブラディーファンらしき客から「ザ!ブラディ〜!」と何度も声援が飛び、そ の「ザ!」がおかしくて声援のたびに会場が笑いに包まれる。いい雰囲気。二人の人 柄のよさが反映されたような、、、。試合後、感慨深そうな表情でリングにじっと立 つ吉田。


B ○三田英津子、椎名由香 VS ×田村欣子、タニー・マウス 13分39秒 デスバ レーボム
リングアナ 今村貴則 レフェリー ボブ矢沢

一応全員全女出身というだけで組まれたNEO提供カード。今日という日の意味などカ ンケーないとばかりに、いつものNEOワールドを繰り広げる4人(というかタニーの 一人舞台)。さっきの吉田とは対照的だ。それがNEOの意地なのか、何も考えていな いのか、どちらでしょう?客の反応も二つに分かれていたようで私の横の若い男のコ たちは「NEO、初めて見たけどおもしれぇ〜!」などと叫んだりしてはしゃいでいた が、後ろの方からは「お笑いやってんだったら早く終れ!」という声が...反感を覚 えるのは、試合をしている四人のうち三田を除く三人が「全女がどうなろうとどうで もいい」と思っているのがマル分かりだからかしら? 

結論=私にとってもどうでもいい試合なので、おあいこだ!


C 前川久美子、×前村早紀 VS 堀田祐美子、○西尾美香 14分15秒 タイガー スープレックスホールド
リングアナ 松丸元気 

今日のベストバウト。堀田と前川がいきなり激突。きついローキックから激しいエル ボーの打ち合いが始まる。顔が壊れそうな殴り合いに会場が一気に沸騰。涼しい笑顔 で堀田を痛めつける前川の攻撃を、堀田が「これだ!これだよ!」と全身で確認しな がら受け止めているのが分かる。堀田の愛してやまない全女が「これ」なのだから。 堀田は全女最後の試合で本気で蹴られ、殴られ、心底嬉しそうだった。これは倒錯で しょうか?(否!) しかし、堀田の理想とする全女のプロレスはAtoZの旧アルシオ ン勢には狂気の沙汰としか思えないものだったんだろうなぁ、堀田が孤独だったのも 当り前だ。前村も臆せず堀田に張り手を張る。前川は前村をフォローするのも上手 い。さりげなくいい場面を譲ると、前村もそれに応えて会場を燃え上らせる。西尾に 丸め込み技をすばやくかけての2・9カウントなどは客席から大声援。最後は西尾の美 しいタイガー・スープレックスで前村がフォールされて終る。西尾が前村によしよ し、としてあげる。

前川がマイクを取り笑顔で「堀田さん、今日で全女、最後ですけど、出て下さってあ りがとうございました!」

堀田の方が泣きそうな顔で「今日で全女が終わりってことは、、、私もこんなキャラ でやってるけど、、、正直淋しい。残ってくれた選手たちは皆つらかったと思う。で も、今日このリングに立てたことは感謝する、みんなありがとう。そして!でも、こ れだけは忘れてほしくないことは!全女は会社としてはなくなるかもしれないけれ ど、全女魂っていうキモチはぁ!みんな誰もがぁ!この全女を卒業したヤツはぁ!み んなぁ!!(絶叫です)全女魂があるってことを忘れないで!ここまでやった前川、 ナベをはじめ皆、その気持ちを誇りに思って、これからどんな選択が待っているかわ からないけれども、ファンのみんなを裏切らないため、よく考えてほしいと思う。 ね?!わかった?!(選手に向かって)」

(今度は客に向かって)「みなさん!今日こんなに入るとは思わなかったけれども、 みなさんも全女が大好きだった。会社の意向とか、恥ずかしいけれども、私が言うこ とはないんですけれども、ついてきてくれた皆さんがいて、私は辞めちゃった人間で すけれども、ここでできて、本当にありがとう。」

堀田のマイクは、いつにもましてワケ分からん日本語になってしまってるが、気持ち は伝わってきて、客のほうも「うん、うん、」とじっと聞いてた。


D ジャガー横田、○立野記代、井上貴子 VS ×ダンプ松本、ZAP・T、サソリ 11 分24秒 スクールボーイ
リングアナ 相沢健一 レフェリー 阿部四郎→ジミー加山

極悪同盟の試合らしく、いきなりグシャグシャの展開となり、あっという間にジャ ガーがフォーク攻撃により流血、阿部四郎の高速カウントで決着がついてしまう。こ れは立野の猛抗議により、レフェリー交代して試合再開。猛抗議はするけど、動きは 鈍い立野(笑)でも、一生懸命です。貴子は何もしてない。レフェリーがジミー加山 (松永国松)に代わったとたん、ダンプの竹刀攻撃がレフェリーに集中していく。ジ ミー加山というより、松永兄弟の一人を打ち据えるダンプには容赦というものがな かった。全女がなくなってしまうことへのダンプの怒りが切ないほど伝わってくる。 ダンプが国松氏を打ち据えるたびに会場にはどよめきが。国松氏、怒りもせず身をよ じって逃げながら竹刀で打たれている。「こうされても仕方がない。」と言っている ような苦悶の表情に、ちょっとつらくなる。

試合後、ZAP・Tが、通路にいた神取を引きずり出してきて乱闘になった。神取、流 血。ふ〜ん極悪勢は今後LLPWに参戦なのかー、そういえば貴子もLLに入団したんだも のね。


E デビル雅美、○A・コング VS 井上京子、×元気美佐恵 15分04秒 アメージ ングプレス
リングアナ 今井良晴 レフェリー 笹崎勝己

安直に大きな選手を四人集めてみました(笑)。
そのうち一人はむかーし全女を嫌って出て行った大御所で、もう一人は全女時代全く ぱっとしなくて、大御所のうしろにくっついて出て行ったあと体だけはデカクなった 選手で、もう一人はGAEAが消滅するまでは全女なんか無いようにふるまっていたこれ また大御所だー。
そして唯一人、今日この四人のなかで全女愛に燃えている(?)のが、何の因果か 「全女最後の選手」の一人となってしまったキャリア三年にも満たないアメリカ娘、 A・コングであるという不思議。

京子が、後輩としてデビルを立てる、というコミカルな内容。「もう過去の事は水に 流してるのよ♪」とばかりにほのぼの路線。ゴツゴツしたぶつかり合いは元気とA・ コングに託され、A・コングがダイビング・ボディープレスで、机もろとも元気を ぶっ潰したあと、さらにアメージングプレスで勝利。


F ○前川久美子、渡辺智子 VS A・コング、×前村早紀 12分48秒 カカト落し
リングアナ 氏家清春 レフェリー ボブ矢沢

A・コングは前の試合が終ってすぐにまた登板、前村も前川もさっきの試合で力を出 し惜しんでなかったので疲れているはず、渡辺にいたっては本日三試合目、、、。選 手が少なくなってからは、「一大会に二試合以上」を常にこなしてきた彼女たちに とって、この疲労、この重圧も今日が最後になるのか。

37年の全女の歴史にピリオドを打つことになる試合が始まる。
全女にスター選手がゾロゾロいた華やかな時代を知っている人から見たら、ナベクミ ・タッグとガイジンと若手の前村、というカードはあまりにもみすぼらしく見えるか もしれない。けれど、ここ数年じわじわと全女が落ち目になっていくなか、さっさと 辞めていく賢い選手たちをじっと見送り、その穴を自分たちで埋めるためにさらに必 死になっていった不器用な彼女たちが、辞めていったどんなスター選手よりも私には いとおしい。

肉体的にも精神的にも経済的にも、きついばかりの最近の状況だっただろう彼女たち が、自分のほうからは辞めなかったのは、強いプライドと意地と、どこかにはまだ愉 しさだってあったからだと思う。それを見せてくれた彼女たちには「よく、ここまで きたね。」「辞めないでいてくれてありがとう。」という気持ちでいっぱい。

試合は、四選手ともに疲れというより、やはり「これが最後」という思いがよぎるの か、涙を我慢しながらぶつかり合っているような試合になり、観客も息をつめて見て いるものだから、いつしかシーンとした雰囲気に、、、。終ってほしくない!という 気持ちと、これが終ったら何かから解放されるのかもしれない!という気持ちが交錯 している試合。それは会場中の人間みんなが時間の過ぎることに怯えながらも熱く なっている不思議な時間だった。

全女最後の赤いベルトのチャンピオンとなった前川の、妹弟子前村におとしたカカト 落しで、試合が終る。

前川が前村をフォールした時、渡辺に押さえ込まれた体勢のままA・コングが、涙を 滂沱と流していた。その横に倒れこんだ姿勢の渡辺が、顔を伏せたままA・コングの 涙をそっと指で拭ってあげていた。それを見た時、私もやっぱり我慢できずに泣い た。


メイン終了後、「セレモニーを行います。」ということで、他団体からの参戦選手、 フリー選手全員がリングを取り囲み、全女選手、今井リングアナ、松永健司副会長、 松永国松社長がリング上へ。松永高司会長は体調不良で来場できず、コミッショナー の志生野さんもいない。

松永健司副会長が震える声で「今日まで応援ありがとうございます。私と会長は昭和 29年から今までやってまいりました、、、」これ以上言葉にならない健司氏からマイ クを受け取った国松社長が「苦節37年、みなさんに応援して頂いてまことにありがと うございます。ただ、残念なことにこういう終り方をして、本当に、ファンの方に申 し訳ないと思い、、、」と言いながら突然、土下座。健司氏も続けて土下座。

奈苗がワッと泣き顔になり、Hikaru、渡辺、今井氏があわてて二人を抱き起こす。 ファンも選手も突然のこの光景に茫然としているか、泣いているかのどちらか、とい う感じ。

二人が立ったところで、志生野さんの「私も松永会長の勇退とともにコミッショナー の職を退きたいと考えます。」という手紙が読み上げられる。志生野コミッショナー といえば、去年の年末に奈苗やHikaruが、川崎大会直前に川崎駅前で寒風のなかビラ 配りをした時に、ほとんど誰も振り向かない駅前の通路に立って、大きな声で「全日 本女子プロレスをよろしくお願いしまーす!」と道行く人に頭を下げていた姿を見た ときは衝撃だった。本当に全女を心から愛してくれていた人、絶対忘れられない。

続いて松永会長の手紙。「本日はご来場ありがとうございました。私は体調不良によ り、本日は会場に行く事ができないことを何とぞご了承ください。37年間の思い出は 一言で語れるものではありませんが、ひとえに応援していただいたファンの皆様のお かげだと思っております。本日で私は勇退いたしますが、選手は全女の魂を持って、 これからも試合をしてくれると思います。今後とも何とぞ応援よろしくお願いいたし ます。」

そして全員リングから下り、リングへのテンカウントが鳴らされた。

そのあと、参戦選手全員がリングに上がり、一人ずつコメント。

集まった全員が全女の解散を悲しんでいるわけはない、という場らしい、キレイ事も しくは他人事のコメントが続く。その代表はやっぱりデビル嬢の「こうして全女はな くなってしまうかもしれないけれど、上がるリングというものは増えてますので、選 手たちがやる気がある限り女子プロレスは潰れることはないし、お客様にどんどん楽 しみを持たせてくれる、いつまでも夢のある仕事だと思ってます。」というコメント かなー。

殆どの選手が「これからも応援してください。」ですませる中、心に残る挨拶をした のがダンプ。「喋れない?」と今井氏に気遣われるくらい涙涙でマイクをつかんだダ ンプ、「淋しいですっ!」と叫んで唇を噛みしめ、「悔しいです!」と涙。本当に全 女を支えた自覚のある選手ならばこの一言しかないだろう。「きっと、今日来てない 千種も、飛鳥も、、、きっと、淋しいと思っています!」「でも、最後まで残ってい た全女の選手にもう一度、大きい拍手をあげて下さい!」「全女にいた選手たちもみ んな違う場所でリングに上がりますけど、絶対に負けないでがんばってくれると思い ます。みんなの心の中に、全女を残しておいて下さい!、、、ありがとうございまし た。」

ダンプは判っているんだ、全女がなくなったら、女子プロレスの何かが永遠に消えて しまうことを。それはもう「みんなの心の中」に残るしかないんだということを。

最後に全女の選手のみリング上に残り、ひとりずつ挨拶。「全女以外ではやらない」 と発言していた前村の去就はみな気にしていたようで、「続けます」という挨拶に大 歓声。ここまできてもプロレス撤退を明言しない会社に対して、今日で全女を出て行 くことだけは決心している選手たちの挨拶はどことなく中途半端で、カラ元気にしか 聞こえない。そのなかで、A・コングの素直な挨拶がいちばん心に響いた。「エッ ト、、、初め、試合、全女・ファイティング・スタイル、すごぃ、オッカナイ!ワッ カリマセン! でも、いま、ほんとに、ワカッタ!!ありがとうございます、、、。 GIVE UPデキナイ!GIVE UPデキナイッ!!」

本当は「悔しい!」「GIVE UPできない!」という言葉こそ全女の選手からききた かった。でも、ダンプとA・コングが代わりに言ってくれたんだと思うことにする。
挨拶のあと、プリティとブッタマンも交えた全女選手全員の写真撮影。みんな涙で腫 れた顔で、懸命に笑顔をみせていた。


全てが終わり、選手達は最後のファンサービスのため、ロビー売店へ。会場内に残 り、リングの片付けが進むのを見守るファンも多い。昔の選手らしき人がリングに上 がって、受け身をとったあと懐かしそうにリングを撫でていた。あれは誰だったんだ ろう?ワッキーや納見クンが歩きまわっている。ジャンボ堀、小関もいる。クレーン ・ユウも家族連れで。松永一族の三代目にあたる男の子たちが、遊びながらリングの 片付けを手伝っている風景も今日が最後なんだろうな。片付けも終わりかけ、人が少 なくなっても立ち去り難く、最後にもう一度見に行くと、階段のところで水嶋と高橋 裕美が無言でじっと立ち尽くしたままリングのあった跡を見つめていた。


全女を生で見続けた5年間は、自分にとって、それまで味わったことのない特別な時 間だった。全女の何もかもが不思議で不可解でキッチュな魅力に溢れていて、、、で も、少し近寄って見ると、そこはハッとするほど生々しく荒々しく、本物の涙や汗や 感情が飛び散っているまさに実存的な世界。そしてそんな世界にいる少女達全てが、 のんきだったり、お人好しだったり、頑固だったり、我慢強かったりする度合いが人 並みはずれているのが、人並みな世界で生きる私には胸がワクワクするほど面白かっ た。

たくさん、いいものを見せてもらったなぁ、、、今はそのことに対して感謝だけがあ ります。全女のみなさん、ありがとうございました。




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