キックボクシングってすごいんです。
■団体:全日本キック
■日時:2005年4月17日
■会場:後楽園ホール
■書き手:PON

 毎回のように後楽園ホールをフルマークにできるのは、今や「笑点」と全日本キックくらいでは あるまいか。今回も8〜9割の入り、ざっと1600人超(公式発表は1810人らしいけどな)。
そのお客さんが今日は大爆発!

 なお、今回の観戦記は、観戦直後に注目度の高い試合のみをまとめたもので、全試合分ではありません。 もともと観戦記を書くつもりもなくメモ等も取っていなかったので、主な試合以外はダイジェスト的に まとめていることをご了承ください。


第1試合 69kg契約 3分3R
○伊藤崇文(パンクラスism)−ジョン・ジュンヒョク(韓国/正武ジム)●
1R 2'45" KO (3ダウン:パンチ連打)

 まずは、総合格闘技パンクラスから伊藤崇文が参戦。パンクラスからの参戦は郷野選手に次いで二人目 だが、自分のスタイルを変えずにキックに対応してきた郷野に比べ、伊藤はちゃんとキックの練習を してきた模様。だが、肝心のキックのレベルは、正直低く…蹴りなんかも形にはなってるんだけど、模造刀 では人は斬れないよ、と言ったら、あまりに伊藤に悪いか?でも、実際にそんなもんだったしなぁ。まぁ、 相手が弱くてよかったね、という初戦勝利。層の厚いウェルター〜ミドルのため、これから、には黄信号と いったところか。


第2試合 ミドル級 3分3R
●白川裕規(S.V.G.)−TATSUJI(アイアンアックス)○
2R 2'36" KO (3ダウン:左ストレート)

 これまではR.I.S.E.で経験を積んできたというTATSUJI。そのポテンシャルは場内の全日本キック ファンを驚愕させた。とにかく恐るべきパンチの威力。まるで「はじめの一歩」の幕ノ内一歩のように、 グイグイと前に出て、すさまじいパンチを放つ。特にボディー打ちの強さは、SBのアンディ・サワーの それと比べても遜色ないほどの打撃音だった。今年の全日本キックは、去年のライト級に続いてミドル級 トーナメントを開催するとのこと、この選手は、十分にその出場資格を備えていたと思う。ていうか、 とにかくこの人の試合をもっと見たい!!


第3試合 ライト級 サドンデスマッチ(3分3R・延長2R)
●凱斗亮羽(S.V.G./全日本ライト級5位)−○小宮由紀博(レグルス池袋/J-NETWORKライト級2位)
1R 3'00" TKO (ドクターストップ:肘による右頬のカット)

 テコンドー出身でトリッキーな動きが魅力の凱斗選手だが、今日はバックスピンもカカト落としも無し。 何故か「普通」のキック選手になっていた。ちなみに、そのレベルも「普通」といった感じで…どうして スタイル変えてきたんだろう?これに対し、小宮選手は遠間合いでは「普通」の凱斗選手にも押され気味… と思いきや、接触した瞬間にガツガツガツガツガツガツガツガツ……ッッ!!と、凱斗選手の顔面に縦ヒジの 連打!凱斗の右頬骨のあたりがパックリと割れているのが、2階バルコニーでもはっきりとわかる。

 一緒に観戦していた高倉仮面氏は「露骨に狙ってたなぁ〜。こういうの、好きじゃないんだよ」と不満げな 様子だったが、使っていいルールを最大限に活用した、小宮の作戦勝ちなのは間違いない。そう伝えると、 「それはもちろんそうなんだけどね…」と、まだ不満顔。この人は、いったんヘソを曲げるとボク並みに ガンコだからなぁ…(苦笑)。ま、曲げる頻度がボクより遥かに少ないのは、やはり年の功だろう。とか 言っとく。


第4試合 58kg契約 3分5R
○前田尚紀(藤原ジム/全日本フェザー級1位)−大高一郎(山木ジム/MA日本フェザー級王者)●
2R 1'57" KO (パンチ連打)

 「闘う修行僧」前田選手。ボクは初見で、「本当に坊さんみたいな顔だ!」と驚いた。丸坊主に濃い眉が そう思わせるのかな。前田選手は今までに三度、ランカーとして上位のチャンピオンを倒しているとの事。 対する大高選手、その事実を挙げられれば尚のこと、現役チャンピオンとして負けられないところが。

 が、蓋を開けてみれば、試合は一方的な展開。第二試合のTATSUJI選手のパンチと同じかそれ以上の打撃が 、チャンピオン大高に次々とヒットする!これを見た高倉氏が、メモを取りながら「TATSUJI選手はミドル級 でしょ。この人(前田)はフェザーだからね!」と一言。なるほど!すげー!!と興奮するボクに、「だから 言ったでしょ。キックは面白いんだって。特に全日本キックはね」。返す言葉もありません。


第5試合 70kg契約 サドンデスマッチ(3分3R・延長2R)
○山本優弥(大誠塾/全日本ウェルター級1位)−
●ミルコ・カーン(スイスファイトクラブチューリヒ/WKNスイス・ムエタイ・ウェルター級王者)
3R 1'25" KO (3ダウン:右ハイキック)

 劇的な名勝負が連続して場内がヒートしっぱなしの中、本日のお目当てその1である山本優弥選手の登場。  優弥(全日本キックには有名どころだけで3人も山本選手がいるためファーストネームで)選手といえば、 前戦は王者・佐藤の容赦ないヒジ、ヒザを浴び続け計6度のダウンを喫して完敗。しかしその根性は 超満員の観衆の心をワシ掴みにしていた。なお、対戦相手の佐藤嘉洋選手は、つい先日K−1参戦を表明。 自らが「お嬢さんルール」と評したKのリングでどのような試合を見せるのか、多少意地の悪い目で見守りたい。

 さて、衝撃の敗戦から2ヶ月。優弥選手の復帰戦は意外な難敵を迎えてしまった。本来の対戦予定であった スイス出身のミケール・コーライ選手が欠場になり、同じスイスのミルコ・カーン選手に急遽変更。優弥は 「元から相手のことはよく知らなかったから関係ない」とコメントしたが、このカーンがヤバかった!  体は大きいが構えが固く、危なっかしい印象だったのだが、とにかくラッシュが凄い!一気に距離を詰めて パンチ、キック、ヒザを、4発5発と叩き込む。打ち終わりのスキも少ないのはボディバランスが絶妙なのか? この意外な「未知の強豪」に場内は騒然とするが、1R終了後にカーン選手のプロフィールが紹介されると その驚きは最高潮に達する。

 なんとカーン、まだ19歳だ!リング上青コーナーで息を入れているカーンは、どう見ても30歳以下 には見えない。あれでティーンエイジャーかよ!おかしいよ!

 この色々な意味での「怪物」に観衆は喝采を送り、優弥はハードな打撃を浴びて苦戦する。が、激闘の中、 優弥のローキックがカーンの足を壊した!露骨に足を気にし始めたカーンに、優弥はローの連打。  優弥のローが明らかに効いているはずのカーンだが、返すパンチの力はまだまだ強い。が、優弥の根性は 折れない!ロー、ロー、パンチを重ねてロー、でついにカーンからダウンを奪う!  何とか立ち上がったカーンだがすでに足はボロボロ、立っているのがやっと。優弥はさらにローで ダウンを奪うと、それでも立ってきたカーンに、川田利明バリのジャンピング・ハイキック一閃!激勝!!

 ちなみに試合後、チームメイトの石川選手と一緒に、ボクらが観戦している2階バルコニーに現れた 優弥選手は、右足首をアイシングしてました。よっぽど蹴ったんだな…とりあえず声をかけて、お祝いを 述べつつ記念撮影。選手写真も増えてきたなぁ。


第6試合 66kg契約 サドンデスマッチ(3分3R・延長2R)
○白鳥 忍(高橋道場/全日本ライト級王者)−湟川満正(AJジム/全日本ウェルター級3位)●
5R 判定3-0 (和田10-8/大成10-8/豊永10-8)
4R 判定0-1 (和田10-10/大成10-10/豊永9-10)
3R 判定0-0 (和田28-29/大成29-29/豊永30-30)
※5Rに湟川がパンチで1ダウン

 セミファイナルは、ライト級チャンピオンの白鳥忍が、ウェルター級3位の湟川満正(ほりかわ・みつまさ) 選手と対戦。湟川選手、前に見ているはずなんだが印象が薄い。が、とにかく一か八かでぶちかましていく 選手らしい。対する白鳥、こちらは何やらライト級絶対王者的な風格が。ボクの記憶では、白鳥選手は 手堅い印象。プレッシャーをかけて相手を圧倒し、きれいに打撃を入れて判定をモノにするという…あまり 好きではないタイプ。と、思っていたのだが…いやいや、なんのなんの。この試合もとんでもないことに!

 様子を見ている感じの白鳥を湟川が攻め込もうとするが、間合いに入った瞬間に白鳥のコンビネーションが 炸裂!湟川が露骨に嫌がる。
 引き気味の湟川に対して決して強攻策を取らない白鳥、危なげなく優位を保ち続ける…が、3Rに入ると 湟川のローが効き始めてしまった!しかし、チャンスとみて追撃する湟川に例のコンビネーションが 襲いかかった。先ほどのカーン選手のそれよりも回転のいい打撃が、湟川をメッタ打ちにする!  延長4R、再延長5Rを通じてこれを浴びまくりながら必死で返す湟川のローが白鳥の足下を脅かすが、 ついに湟川はダウン!しかし立ち上がる!!会場の声援、歓声が飽和状態に達する、まさに全日本キックらしい 大激戦!

 とうとう5R終了のゴングが鳴らされる。結果は判定3-0で白鳥。白鳥の左足は限界にきていたように 見えたんだが…それ以上に、湟川のダメージが大きかった。いやー、白鳥は強い!強いのはわかってたんだが、 今日はその強さが光りまくった一戦。

 序盤〜中盤は、リスクを冒さず完全に支配して、終盤の疲れた相手を一気に攻める。こうやれば勝てる、 っていうパターンを確実にこなせる安定感、冷静さ、クレバーなところが白鳥の最大の強みか。しかし、 次戦に決定した西川選手は、東大卒ファイターという肩書きに恥じない計算された試合運びが売りの選手。 白鳥の次戦は、ピリピリするような読み合いが展開されるだろう。

 ちなみに、ジャッジとして名前が挙がっている豊永とは、高田道場の豊永元選手のこと。高倉氏、「『 モンゴリアン・チョップ』(高田道場経営のジンギスカン店。豊永さんは店長なんだっけ?)はどうした んだ?」とツッこむ。たぶん、日曜の田町は人が少ないんですよ…と思っていたら、『モンゴリアン・ チョップ』は日曜休業(祝日は営業)との事。足を運ぼうと思っている方はご注意を。


第7試合 62.5kg契約 サドンデスマッチ(3分3R・延長2R)
○小林 聡(藤原ジム/WKA世界ムエタイ・ライト級王者)
●ジョナータ・ザルボ(イタリア/プロファイティング・イモラ/WPKC世界ムエタイ・ライト級3位・ WPKCイタリア同級王者)
1R 2'32" KO (3ダウン:左ボディブロー)

 そして、待ってました!本日のメイン!!「南千住の野良犬」こと小林聡の登場!今日は小林を見に来たのだ。 あの、綾瀬にあるキック居酒屋オーエンジャイの夜…ボクの目の前にいたのは、ただの酔っぱらいだった。だが、 それが小林聡。1月のvs大月戦での敗北からの復帰戦…「あれから、私生活でも一層の摂生に努めてきた」 という小林。ん?アレで「摂生」?!

 ま…まぁそれはとにかく、今日の相手はWPKCイタリア王者のザルボ。どんな選手なのかはよくわからんが、 先ほど山本優弥と激闘を繰り広げたミルコ・カーンのセコンドがついている。ひょっとして、「未知なる強豪・ その2」か?


 試合開始、まずは軽く打撃が交錯し…あれ?あれあれ?いきなり小林のパンチがヒットしてるよ!うわ〜、 小林が遊んでる(笑)余裕すぎる!あっと言う間の3ダウン!!  なんだかなぁ。ま、メデタシメデタシ、ではあるけどなぁ(笑)。

 若干、拍子抜けのメインだったが、終わってみれば全7戦中6KO。唯一の判定となった白鳥‐湟川の 試合も、この日一番の盛り上がりになった大激戦。  これだけの興行を後楽園の2階から堪能して、チケット4000円、興行終了時間は20時50分。 この充実感、お得感!あーもう、大満足でした。  


   おしまい。




本稿の著作権はすべてKANSENKI.NET及び「書き手」に帰属します。

戻る
TOPへ