3.29. 全日本女子横浜市金沢区産業振興センター体育館
■団体:全日本女子プロレス
■日時:2005年3月29日
■会場:横浜市金沢区産業振興センター体育館
■書き手:しま

数日前からキナ臭かったのである。
ダンプ松本がブログで毎日のように「全女は今日もじぶんとこの選手にギャラ出さなかったぜ!」等々暴露しまくっているのとは反対に、全女所属選手達の日記は気味が悪い程に“仕事”に触れない。そのことに気付いてから、全女が消滅してしまうまでは、あまりにも早くあっけなかった。


厳密に言えば、今日の時点でまだ全女は正式に「解散」はしていないのかもしれないけれど、「“全女主催興行”としての大会は、今日が最後」とはっきり言われた時点で、「やっぱり全女は本当になくなるんだ、、、。」と、現実を突きつけられた。

金沢区産業振興センターって、ちょっと特殊な会場。海に突き出した巨大な埋立地に工場だの会社だのが寄集められていて、そこへ横浜のはずれの金沢八景からモノレールで突っ込んで行くような所。埋立地に働く労働者の福利厚生のために作られたと思われる体育館には、だから地元の住人がフラリと来るような雰囲気は皆無。


暗い町を灯りの方へ行くと体育館の入り口が。実質、今日が全女の最後の興行になる、というニュースは昨日マスコミに出たばかりだし、この立地では客が押しかけることもないだろう、とは思っていたけれど、、、。

入り口受付で、松永国松社長、氏家リングアナが座っている。いつも売っている先の興行のチケットの束も今日はない。

会場に入ると、志生野コミッショナーが、大勢の記者たちに囲まれて何か答えている。松永会長も珍しく背広を着ている。まばらな客席の弛緩した空気とは対照的な、ものものしい雰囲気。こじんまりした体育館の四方の壁にはファンが垂らした横断幕がたった三枚だけ。平日だからか、いつも見かける常連ファンの姿もほとんどない。
椅子を少なめに並べても半分も席は埋まっていないかな、立ち見客はけっこういるけど。

リングサイドには、常連ファンの代わりに、関係者パスを付けた地元のチンピラどもの集団が変なテンションではしゃいでいるのであった。

全選手入場のあと、松永会長がリングに上がる。
「今日をもって引退します。」(公式には、4月の後楽園大会をもって勇退と発表)「37年間、ありがとうございました。」

数少ない全女所属選手と、他団体・フリーの選手たちに囲まれてポツポツとした喋り方で引退の挨拶をする会長。寂しい光景かもしれないけれど、自分達で興した事業を自分達で潰して(?)惜しまれながら引退宣言をするなんて誰にでもできる生き方じゃないし、全女がどん底の時に思いを残して死んじゃったりするより、この方が良かったのかも、、、なんてことがグルグル頭に渦巻く。会社としての全女を批判する選手や人は多かったけど、この松永会長を憎んだ人はいなかったんじゃないだろうか。


第一試合
○Mr.ブッタマン VS ×プリティ太田   7分49秒 サタンビーム→体固め

ミゼットプロレスも、プリティが入団してせっかく復活したのに、これで終っちゃうとしたら、なんて残念。女子選手と違って、ミゼットプロレスは身一つでどのリングでも上がれるわけじゃない。

ミゼットプロレスには、選手の動きプラス、レフェリーとのやり取りやリングアナの絶妙な語りも絶対に必要だから。ミゼット選手の絶対的な層が薄くなってしまったことで、試合自体のレベルは下がっているけれど、やる気満々のプリティが入団して、ブッタマンも変わりつつあったのになぁ。

女子プロレスというジャンルを育て上げた松永一族の功績に、ミゼットプロレスの愉しさを創造したことも加えていいと思う。昔の映像で観たミゼットの試合の素晴らしさ。たくさんいた彼等と共に愉しそうにリングを駆け回ってレフェリーをする松永会長の若い姿。

元ミゼットプロレスラーのなかには女子選手と結婚して、沖縄で幸せに暮らしている人もいれば、体を悪くして施設で暮らしている人もいるらしい。

二世レスラーのブッタマンがのんびり屋なのは別として、この世界に飛び込んでくるのは相当勇気が必要だったはず。プリティも入団まで何年も悩んだらしい。何年も悩んで入団したのに、入団したら一年で解散だなんて、、、悔しいだろう。

試合後、本部席に駆け寄ったプリティがマイクをつかみ、退場しようとするブッタマンに「ブッタマン!今日が最後なんだから!」「少なくともこの会場に来るのは多分最後なんだから!最後の挨拶くらいしようよ!」と身をよじって叫ぶ。

「正直、解散ときいてショックですっ!!」「デビューして一年ちょっとしかたってないのに解散だなんて、、、!」

「でもこれで終わりにはしないゾ」(ここは記憶が曖昧)
ブッタマンは傍に立ったものの、極端にマイクが苦手なのでたいしたこと言えず、もじもじ。


第二試合
○ファング鈴木 VS ×前村早紀   11分28秒 STO→体固め

うーん、ひどい試合だ、、、。ファングはいつも通り不器用。セコンドの極悪勢のドタバタした介入あり。そして、前村は全くいつもの魅力が出ていない。


第三試合 v ZAP.T VS セーラ・デル・レイ  7分38秒 両者リングアウト

ZAP・Tが、セーラを場外乱闘でボッコボコに。竹刀で叩きまくり、椅子を投げつけ、もう怒りにまかせて、、、やりたい放題という感じ。やられ放題のセーラはいい迷惑。場外乱闘で二度も椅子を倒されてバッグを投げられてしまった私の相方は憮然。飲んでたビールの缶も潰されてしもうた。私は「あぁ、最後の場外乱闘の記念♪」とその空き缶をいそいそとしまい込む。

場外乱闘とビールで興奮したリングサイドのチンピラどもがますます下品なノリになっていくのが目障り。


休憩時間

足の怪我で長期休場中の高橋奈苗が急遽来場して挨拶。やっぱり「解散」というニュースが発表されたから来たのだろうが(Hikaruは来なかった)内容は「とにかく怪我を治してはやく復帰したいと思っています!みなさん、応援して下さい。」という核心に触れる部分は全くない、良くも悪くもいつもの奈苗らしい普通の挨拶だった。


第四試合
○前川久美子 VS ×サソリ  14分9秒 浴びせ蹴り→体固め

結局ずーっと「この人は何を考え何を感じているのだろーか?」と不可解なままだったのが、サソリさん。やる気があるのか、ないのか?とても“ある”とは思えないけれど、“ない”人がずっとやっていける程甘い世界でもあるまいに、、、ってことは、“何も感じない”人としか思えないのであった。ただプロレスを「やってるだけ」にしか見えない人なのであった。

そして今日もやっただけだった。赤いベルトを巻いた前川が本気で相手にはできないよなー、そんなサソリであった。試合において「ねばる」ということを全くしないサソリが最後まで全女にねばっていたという事がとても不思議だ。


第五試合
○前村早紀、松尾永遠 VS 渡辺智子、×ザ・ブラディ 17分28秒 サキ・花マル

松尾と前村が試合前、顔を寄せ合って何やら相談している姿が可愛い。リングサイドのチンピラどもはさっそく松尾に目をつけて喜んでいる。

それにしても、、、全女の選手が二試合ずつやっても、なおメインには他団体やフリーの選手に出てもらわなくてはならない、それでもこのショボーいカード、、、。そりゃ、こんなことを続けてたら地方のお客さんなんかもう二度と来るまい、やっぱり無理なんだよね、続けるなんて、としみじみ思い知らされるような。

可愛い選手と上手い選手の試合で、今日初めて客が少しだけ沸いた。やっぱり渡辺はちょっとした動きや技で客を沸かせることができるし、ブラディもちょっと怖くて、元気でよかった。渡辺は客が喜ぶことに一番反応する。客がチンピラでも。チンピラどもにも手を振り返し「よし!」と返事をするのでチンピラどもますます増長、、、「あ、お客さん!」「あ、ダメダメ」と調子に乗ってリングにまで乱入しかけるチンピラを、笑顔で抑えるのに必死なのがファング。

松尾が大股開きになると大喜びで盛り上がるチンピラ。やられて痛そうに顔を歪める松尾にきゃあきゃあ言って大騒ぎチンピラ。

もうプロレス見てるんだか、チンピラ見てるんだか分からないです。あ〜ぁ。

最後は花サキ・マルで前村が勝利。

う〜ん。最近は一大会中、一試合だけは素晴らしい試合がある、というカンジできていたのが(数年前までは五試合あって五試合素晴らしい、という奇跡のような大会がバンバンあった)今日という今日は、正真正銘一試合も素晴らしいと言えるような試合がなかったダメ大会だった。

ギャラが貰えずアルバイトで生活していることまでスポーツ新聞に書き立てられた選手たちに、この寂しい会場で、酔っ払いのチンピラたちの前で、これ以上「すごいものを見せてくれ」なんて言えるはずもない。
v 経営に完全に行き詰まった。客も選手も極限まで減ってしまった。解散せざるをえない、という現実がありのままに表れた大会だった。そういう意味でも今日が全女の最後の日、というのが真実だと思う。
4月17日の後楽園は全女のお葬式にすぎない。
全女が力尽きたのは今日、常連ファンの姿もない、紙テープも飛ばない、Hikaruもいない、ファンの黄色い声援も全くない、そんな大会だった。

リングの後片付けが始まる。ブッタマンが「手伝ってくれる人〜こっち来て〜!」と叫んでいる。地方の大会では、大会終了後、客で「手伝いたい」と申し出た人に椅子やリングの片付けを手伝わせるのが、いつの頃からか全女流。片付けあとには「全女グッズさしあげまーす」ということらしい。常々「やってみたい!」と思っていたリング片付け。今日やらなかったらもう一生できない!と、ブッタマンに「手伝いたいです!」と申し出る。すると一見して「初めて」と見破られ「あ、じゃゴミ拾って!」。でも、ゴミ拾いでも嬉しかった。ゴミ拾ったあとはシート畳みもしたし、なんと赤コーナーポストも運んでしまいました。

まわりで手伝っていた人たちもやはり気になるのは今後のことらしく、みんなプリティやブッタマンに「これからどうなるの?」「明日からどうするの?」「もう大会ないの?」などとさりげなく聞いている様子。「なんにもわからないんですよ、まだ会社も決めてないみたい」「とりあえず明日からヒマ」という答えが聞こえてくる。そうか、やっぱりこれからのことは何にも決まってないのか、、、。もう黙黙と皆でリングを片付けるしかありません。さっきボコボコにやられて気の毒だったセーラが、さわやかな表情で鉄柱を運んでおります。

v だいたい終ったところで、35周年横アリ大会(思えばあの大会から全てが悪い方へ転がりだしたような)のパンフをもらい、巨大すぎてバッグに入らない異様に目立つパンフを抱えて、モノレールで帰途につく。




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