大相撲平成十七年春場所 九日目〜千秋楽 観戦記
■団体:日本相撲協会
■日時:2005年3月27日
■会場:大阪府立体育会館
■書き手:高倉仮面(TV観戦記)

●初日〜中日までのあらすじ

場所前の見所として「返り大関の栃東が番付をキープできるか?」「白鵬の史上最年少大関昇進なるか?」
等が挙げられたが、蓋を開けてみると上位陣が序盤に次々に崩れていく波乱の展開。
特に白鵬は3勝5敗と黒星先行、折角勝ち取った関脇の座すら危うい状況でファンを大いに失望させた。

優勝戦線としては、無敵の横綱 朝青龍が相変わらずの全勝キープ、先場所からの連勝は23となった。
これを追うのは一敗の平幕の玉乃島、そして大関の魁皇。上位陣が総崩れの中、魁皇に掛かる期待は大きい。
果たして魁皇、朝青龍を止める事ができるのか?

…って、もうとっくに終わっている場所なんだけどね(嘆)。

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◎九日目
※今日の魁皇
○魁皇(184cm/175kg/友綱/大関/8勝1敗)
●栃乃洋(186cm/166kg/春日野/前頭四枚目/6勝3敗)
[上手投げ]

立合い直後に得意の右上手を取った魁皇、栃乃洋を豪快な上手投げ。今日も良い相撲だ。
これで魁皇は勝ち越しで角番も脱出、どころか、しっかり優勝戦線に絡んでいる。
今場所の魁皇は磐石の相撲が多くて良い。それ故、自分の相撲が出来なかった琴光喜戦の一敗が痛い。

追記:
この時、豪快な上手投げで自らも倒れた魁皇は痛めていた左の腕を再び負傷。
これが後の星取に響く事になる…のだが、この時は全く気付かなかった。我ながら節穴だ。

※目に留まった取組
○稀勢の里(188cm/159kg/鳴戸/前頭十五枚目/6勝3敗)
●玉春日(182cm/155kg/片男波/前頭十五枚目/4勝5敗)
[寄り切り]

いなしたり回り込んだりの「引き相撲」の玉春日に稀勢の里が良くついていき、
玉春日が疲れたところで両まわしを取って寄り切り。
最近は引き相撲も目立つが、やっぱり相撲はまわしを取ってナンボ。


○安馬(185cm/113kg/モンゴル/安治川/前頭十一枚目/6勝3敗)
●霜鳥(188cm/151kg/時津風/前頭八枚目/1勝8敗)
[下手投げ]

今日はまわしを取られた安馬だったが、霜鳥の上手投げを逆に下手投げ。
本当にこの人は小柄なのに相撲が巧い。そして何気に力も強い。いい力士だ。
小兵といえど身長もそんなに低くないし、何と言ってもまだ二十歳。この先が本当に楽しみだ。


※今日の朝青龍
○朝青龍(184cm/144kg/モンゴル/高砂/横綱/9勝0敗)
●黒海(188cm/158kg/グルジア/追手風/前頭四枚目/5勝4敗)
[引き落とし]

朝青龍、曲者・黒海を相手にしても磐石。
いつものように両手で押してくる黒海をあっさりと引き落とし。
相手に全く相撲をさせない朝青龍、いよいよ全勝優勝が現実味を帯びてきた。


※全体の流れ
本日、玉乃島がベテラン琴光喜に敗れたので一敗は魁皇のみに。
これで優勝戦線は「朝青龍 vs 魁皇」に。頑張ってくれ、魁皇。

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◎十日目
※今日の魁皇
○雅山(188cm/181kg/武蔵川/関脇/4勝6敗)
●魁皇(184cm/175kg/友綱/大関/8勝2敗)
[押し出し]

なんと昨日の一番で左肩の痛みが再発したらしい魁皇。
こっちとしては、昨日の相撲内容のどこで痛めたのかサッパリ記憶にないわけだが、
左腕にはしっかりとテーピングが施されていた。何となくヤバい気がする。

んで、今日の一番に挑むも…痛めた箇所が悪いのか、立会いに全く力がない。
突っ張ってくる雅山を捌ききれずに、引いたり叩き込んだりする弱気な取り口。
最後は雅山に脇を押されてあっさりと土俵を割った。

魁皇、優勝戦線に大きく響く二敗目。それ以上に覇気のない負け方が気になる。
今日の魁皇は土俵の上で既に気持ちが負けていた。
まるで大関らしくない一番、左の調子が相当に悪いのか?


※目に留まった取組
○露鵬(195cm/147kg/ロシア/前頭六枚目/8勝2敗)
●琴光喜(183cm/158kg/佐渡ヶ嶽/前頭二枚目/7勝3敗)
[叩き込み]

両者共に勝ち越しを賭けた一番となったが、立会いから勢い良く前に出た琴光喜に対して、
露鵬は思い切り左に変化、アッサリと叩き込み。これで露鵬は勝ち越したものの…、
解説の音羽山親方(元大関・貴ノ浪)は思いっきりこの勝負にダメ出ししていた。
まあ確かに、このデカさがあるにも関わらず「引き相撲」っていうのは印象が悪いね。


※今日の朝青龍
○朝青龍(184cm/144kg/モンゴル/高砂/横綱/10勝0敗)
●栃乃洋(186cm/166kg/春日野/前頭四枚目/6勝4敗)
[上手投げ]

栃乃洋、立合いから得意の左下手を取って優位に立ち、すかさず下手投げ!
あの朝青龍がグラッと来たシーンに会場も大いに沸いたが、
右上手を取っていた朝青龍はこれを残すと、頭をつけて一度土俵際へ栃乃洋を追い込み、

ここから一気に引き込んで上手投げ。引き回された栃乃洋は土俵の上で一回転。
…何と言うか、冷静で豪快で磐石の強さを見せる朝青龍。いよいよ全勝優勝の色が濃厚になってきた。


※全体の流れ
「朝青龍 vs 魁皇」、早くも明暗。
追う魁皇は余りにも致命的な今日の黒星。いかにも連敗しそうな負け方が気になる。
反対に朝青龍は、一瞬は攻められても最後は倍返し、最強ぶりをアピール。
正直、他の力士はこの時点で全勝してないと、この横綱を脅かす事は出来ないだろうね。


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◎十一日目
※今日の魁皇
○黒海(188cm/158kg/グルジア/追手風/前頭四枚目/6勝5敗)
●魁皇(184cm/175kg/友綱/大関/8勝3敗)
[押し出し]

黒海、長い腕を使って魁皇にまわしを与えず、得意の前傾姿勢でレスリング勝負。
相手の相撲に付き合わされた魁皇だが、痛めた左腕が全く動いていない。
ここから一気に黒海がプッシュすると、魁皇はあっさりと土俵を割った。
完敗だ、完膚なきまでの完敗、一から十まで黒海の相撲。昨日の弱気な取組を引きずっての連敗か?
メンタル面の弱さを昔から指摘されている魁皇、今日は悪い意味で「らしさ」を発揮。


※目に留まった取組
○露鵬(195cm/147kg/ロシア/前頭六枚目/9勝2敗)
●海鵬(178cm/124kg/八角/前頭十枚目/8勝3敗)
[極め倒し]

小兵だが今場所は絶好調の海鵬、立会いから左まわしを取って双差しの体勢。
ところが露鵬、長身に任せて相手の両腕を閂(かんぬき)に極めると、足を払って右から極め倒し。
う〜ん、露鵬はこんなにいい相撲が取れるんだから、昨日のように大きな変化をしちゃイカンよ。


※今日の朝青龍
○朝青龍(184cm/144kg/モンゴル/高砂/横綱/11勝0敗)
●白鵬(192cm/146kg/モンゴル/宮城野/関脇/4勝7敗)
[寄り切り]

今場所は主役になるハズだった白鵬と、やっぱり今場所も主役になった朝青龍の対戦。
低い立会いから左の前まわしを取った朝青龍、胸を合わせてあっさりと寄り切り。
今日も万全の相撲、横綱に死角なし。反対に白鵬、気持ちが切れているのか相撲に淡白な印象。
気がつけば新関脇の座を守るのも厳しい状況に追い込まれた。どうするよ白鵬。


※全体の流れ
あわよくば優勝も狙えた魁皇だったが、ここに来て連敗。
左腕の調子の悪さもさる事ながら、それ以上に弱気な取り口が気になるところ。
もはや多くは望まん、せめて二桁勝利まで行ってくれ…。

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◎十二日目
※今日の魁皇
○魁皇(184cm/175kg/友綱/大関/9勝3敗)
●露鵬(195cm/147kg/ロシア/前頭六枚目/9勝3敗)
[小手投げ]

左腕を痛めた魁皇、突き放してくる露鵬の左腕を右で極めると…、
土俵の真ん中にいた露鵬を一気に土俵外へ運び出す、豪快で強烈な小手投げ!
今場所二度目の「伝家の宝刀」、敗れた露鵬も呆気に取られる一撃。
今日は良い時の魁皇の相撲が飛び出した。この豪快さが昨日や一昨日の取組で少しでも出ていたら…。


※目に留まった取組
○海鵬(178cm/124kg/八角/前頭十枚目/9勝3敗)
●栃乃洋(186cm/166kg/春日野/前頭四枚目/6勝6敗)
[巻き落とし]

小兵の海鵬、頭からぶつかって相手の左を差して、一気に腰の力で左に回転、巻き落とし。
う〜ん、巧い。海鵬は序盤から好調だったのは知っていたが、ここまで勝つとは思わなかった。
このまま二桁勝てば三賞も取れるだろう。序盤から注目して見ていれば良かったなぁ…。


○若の里(185cm/159kg/鳴戸/前頭筆頭/6勝6敗)
●琴光喜(183cm/158kg/佐渡ヶ嶽/前頭二枚目/8勝4敗)
[上手投げ]

元三役の実力者同士の対戦。
立会いの良い琴光喜を若の里は叩き込むも、琴光喜は残して左上手。
若の里は右を取らせないよう懸命に粘ると、逆に左上手を取って上手投げ、琴光喜が堪える。
今度は琴光喜が上手投げ、若の里が堪えるが、この拍子に両者の上手が切れた。
力の入る相撲内容に観客から拍手が起こる。

琴光喜、一気に寄るが若の里はまたまた堪えた。
ならばと琴光喜は右下手を取るが、若の里は左上手を取り返すと上手投げ、ここで琴光喜が力尽きた。
1分59秒の長い相撲に観客も拍手。元三役の両者の実力が見える一番だった。


※今日の朝青龍
○朝青龍(184cm/144kg/モンゴル/高砂/横綱/12勝0敗)
●雅山(188cm/181kg/武蔵川/関脇/5勝7敗)
[上手投げ]

一度は大関に在籍した関脇・雅山、立合いから右喉輪を効かせるも、
朝青龍はこれに引き下がらずに右の上手を取り、左は相手の首根っこを掴んで上手投げ。
強烈な投げを喰らった雅山は土俵の上を一回転。今日も豪快な取り口で全勝をキープ。
横綱・朝青龍、全勝優勝まであと三番、優勝まであと一番!


※全体の流れ
唯一二敗だった露鵬が負けたので、ここまで全勝の朝青龍は明日勝てば優勝。
明日の対戦相手はこれまでの対戦戦績が五分五分の大関・栃東。
栃東は序盤はつまづいたものの、ここに来て調子を上げている。楽しみな一番だ。

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◎十三日目
※今日の魁皇
○魁皇(184cm/175kg/友綱/大関/10勝3敗)
●千代大海(182cm/156kg/九重/大関/6勝7敗)
[寄り切り]

大関同士の一番だが、内容は今一つ。
立会いから突っ張ってきた千代大海、一方的に押される魁皇だが土俵際で左下手を取って押し返すと、
千代大海は一気に引いて叩き込もうとするが、引きすぎるあまりに土俵を割ってしまった。
魁皇は使えない左腕に救われた一番となったが、相撲内容は良いとは言えない。
何となく千代大海が勝手に負けた一番のように感じた。


※目に留まった取組
○海鵬(178cm/124kg/八角/前頭十枚目/10勝3敗)
●隆乃若(191cm/151kg/鳴戸/前頭十二枚目/7勝6敗)
[押し出し]

突っ張り合う両者、押し気味になった海鵬が軽くいなすと、返そうとする隆乃若がバランスを崩す。
海鵬は横から一気に押し出し、隆乃若はもろくも土俵を割った。巧いなぁ、海鵬。
そう言えば師匠の八角親方(元横綱・北勝海)も体の小さい力士だったね。


※今日の朝青龍
△朝青龍(184cm/144kg/モンゴル/高砂/横綱/12勝0敗)
△栃東(180cm/148kg/玉ノ井/大関/7勝5敗)

[取り直し]

朝青龍はこれに勝てば優勝という一番、対戦相手はこれまで五分の戦績の栃東。
立会いでぶつかる両者、栃東は右上手、朝青龍は左下手を取っての四つ相撲。
左の脇も刺していた朝青龍は一気に押すも栃東が粘る。栃東の健闘に大いに沸く観客。
がっぷり四つの両者、ここで朝青龍が寄っていくと栃東は土俵際で逆転のすくい投げを放つ。
投げられた朝青龍、寄られた栃東は同時に倒れていく。観客は朝青龍の敗北を確信して大歓声。
だが行事軍配は朝青龍、落胆する観客。朝青龍はこれで11回目優勝が決定!

…しない。物言いがついたのだ。
会場からは栃東コールが起きる中、審議の結果は「取り直し」。
大一番の再試合に観客がまたまた沸く。


○栃東(180cm/148kg/玉ノ井/大関/8勝5敗)
●朝青龍(184cm/144kg/モンゴル/高砂/横綱/12勝1敗)
[寄り倒し]

取り直しでも朝青龍の気持ちは全く切れていない。立会いから気合充分でガンガン突いてくる。
これに押される栃東だが土俵際でよく残し、逆に前に出て頭をつけ良い体勢をキープ。
腕を手繰ってきた朝青龍の左下手を取った栃東が一気に押し込むと、観客はお祭り騒ぎ。
土俵際で粘る朝青龍だったが最後は栃東が寄り倒し。土俵外へと倒れる朝青龍。絶対横綱、陥落!

栃東の殊勲の星に観客はドーーーーーッと沸き上がり、わけのわからない状態に。
会場に大量の座布団が乱れ飛ぶ中、栃東は手取り100万円以上の懸賞金を受け取った。
この光景を観ながら「今時、格闘技やプロレスでここまで大きく盛り上がる事ってあるかなぁ?」と考えた。


※全体の流れ
朝青龍の黄金のまわしにここで土、連勝記録も27でストップ。
これにより、三敗の力士に優勝の可能性が残された。この時点で三敗の力士は玉乃島、海鵬、そして魁皇。
それにしても結びの一番(栃東 vs 朝青龍)は物凄い一番だった。単純に相撲内容も良かった。
明日は一敗してもまだまだ優勝は目の前にある朝青龍と、優勝へ望みを繋いだ魁皇が激突!
この両者もこれまでの戦績は五分。魁皇、奇跡の逆転優勝なるかっ!?

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◎十四日目
※目に留まった取組
○安馬(185cm/113kg/モンゴル/安治川/前頭十一枚目/9勝5敗)
●皇司(175cm/154kg/入間川/前頭十六枚目/4勝10敗)
[上手出し投げ]

小兵の安馬、今日も巧さを発揮。
右上手を取った皇司に対して、安馬は左下手と右前まわしをとる四つ相撲。
皇司が右手を巻き返してくる中、右手で相手の右膝を押さえた安馬は左から上手投げ。
膝の踏ん張りが効かない皇司はあっさりと倒れてしまった。巧いなぁ、本当に巧いなぁこの人。


○露鵬(195cm/147kg/ロシア/前頭六枚目/10勝4敗)
●雅山(188cm/181kg/武蔵川/関脇/5勝9敗)
[叩き込み]

頭からぶつかって来た雅山を右肩のタックルで受け止めた露鵬、やや頭の上がった雅山を叩き込み。
…露鵬は大器を持ちながらも引き相撲が多いな。気に食わんのお。


○白鵬(192cm/146kg/モンゴル/宮城野/関脇/7勝7敗)
●琴光喜(183cm/158kg/佐渡ヶ嶽/前頭二枚目/9勝5敗)
[下手投げ]

速攻で両まわしを取った琴光喜、一気に寄っていくも土俵際で白鵬が良く粘って右下手を奪う。
左上手が取れず不十分の白鵬は力づくで強引に寄っていくが、まわし充分の琴光喜に寄り返される。
土俵際まで寄られた白鵬、しかしここで逆転の右から下手投げを放つと、琴光喜が土俵を割った。

今日は粘りの相撲で勝った白鵬、7敗まで追い込まれた星取りも粘りに粘って五分まで戻した。
惜しむらくは序盤で今日の粘りがあればねぇ…。今場所は主役だったのに。


※今日の朝青龍 & 今日の魁皇
○朝青龍(184cm/144kg/モンゴル/高砂/横綱/13勝1敗)
●魁皇(184cm/175kg/友綱/大関/10勝4敗)
[下手投げ]
※朝青龍の優勝が決定

昨日まさかの一敗を喫した朝青龍、今日は金のまわしから黒のまわしに戻して一番に挑んだ。
両者は立会いから頭でぶつかり、腕の取り合いを展開。
堂々と相撲を取る魁皇、観客は大いに沸き返るが、魁皇は得意の右上手が取れない。
反対に左下手を取った朝青龍は一気に下手投げ。ならば、と魁皇はその腕を極めて必殺の小手投げ。
投げの打ち合い、どちらの投げが強いか!

強烈だったのは朝青龍の下手投げ。倒れる魁皇、その上を朝青龍も一回転。
この結果、今場所も朝青龍の優勝が決定。会場には座布団が乱れ飛ぶ。
中々に力の入る一番だったが、右を完封された時点で魁皇は負けていた。
ま、ひどく悪い内容ではなかったけどね。

ちなみに朝青龍、三日目からは右手で懸賞金を受け取り続けていたが、
連勝がストップした途端に左手で懸賞金を受け取っていた。
ガハハハハ、また内館 牧子に怒られるぞ。


※全体の流れ
ついに朝青龍が優勝。まあ今の充実ぶりを見るにつけ、当然の結果のようには思える。
寧ろ全勝記録がストップしたのが不思議なくらいだよなぁ…、ホントに。
反対に魁皇は場所中に左腕を負傷したのが痛い。今場所よりも来場所が心配だ。

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◎千秋楽
※三賞力士の一番
○海鵬(178cm/124kg/八角/前頭十枚目/11勝4敗)
●高見盛(188cm/140kg/東関/前頭八枚目/9勝6敗)
[寄り切り]
※海鵬は技能賞を獲得

今場所は好調をキープした力士同士の対戦。
千秋楽という事もあり、いつも以上に気合を入れまくる高見盛だったが、
海鵬は一度は奪われた右上手を回転して切ると、そのまま前に出て寄り切った。

さて海鵬、前頭十枚目にして11勝4敗は立派な戦績、三賞受賞も当然の結果である。
しかも貰った賞は技能賞、勝ち星の数から考えると敢闘賞の方が良い、というイメージもあるが、
とりあえず一番一番の技術が評価されたんだろう。う〜ん、もっと注目していれば良かったなぁ。

ちなみに敗れた高見盛も、今場所は全体を通して好調だった印象がある。相撲内容も良かったし。
しかし番付は八枚目、小結・関脇・大関・横綱とは対戦していないので、
来場所もこの好調をキープできるかはやや疑問。


○玉乃島(186cm/158kg/片男波/前頭七枚目/12勝3敗)
●隆乃若(191cm/151kg/鳴戸/前頭十二枚目/7勝8敗)
[突き出し]
※玉乃島は敢闘賞を受賞

初日から七日目まで全勝だった玉乃島。
僕としては「後半戦からは星取りが崩れるだろう」と思っていたが、
どうしてどうして、そのまま好調をキープして二桁勝ち星を挙げる好戦績だ。

この日も玉乃島は、終始隆乃若を張り続ける攻め相撲で完全に圧倒、そのまま突き出し。
平幕として12勝は立派な戦績、敢闘賞は文句のないところだろう。
…っていうか、正直、この人もあんまり注目してなかったんだよなぁ。ダメだなぁ、僕の視点は。


○露鵬(195cm/147kg/ロシア/前頭六枚目/11勝4敗)
●安馬(185cm/113kg/モンゴル/安治川/前頭十一枚目/9勝6敗)
[寄り切り]
※安馬は技能賞を獲得

ウム、海鵬や玉乃島の事はあまり語れないが、安馬の事なら語れるな。
まあこの観戦記では散々書いてきた事なのだが、この人は幕内最小兵でありながらも相撲が巧い。
勝ち星に焦点を当てれば、その巧さは一目瞭然である。

  初日 ○ 寄り切り   隆乃若
 三日目 ○ 押し出し   琴ノ若
 四日目 ○ とったり   豊桜
 五日目 ○ 上手出し投げ 豊ノ島
 七日目 ○ 寄り切り   十文字
 九日目 ○ 下手投げ   霜鳥
 十日目 ○ 送り倒し   時津海
十三日目 ○ 寄り倒し   玉春日
十四日目 ○ 上手出し投げ 皇司

こう見ると、決まり手のバリエーションが多いねぇ。
戦績は9勝でありながらも技能賞を獲得できたのは、
つまりそれだけ一番一番の中の「技」が光った、という事だね。

そんな安馬の千秋楽の相撲なのだが、この日は巨漢 露鵬を相手に真正面から向かっていった。
しかし、あっさりと露鵬に上手を取られて寄り切られた。ぬぅ、二桁勝ち星にはならなかったか、残念だ。

さて露鵬、戦績自体は11勝4敗と三賞受賞には充分な戦績ではあったが、結局三賞は取れなかった。
これは何故かというと…、決まり手が叩き込みになるような「引き相撲」が多かったからだろう。
う〜ん、「攻め相
撲」ではスケールの大きい相撲を取れる人なだけに勿体無いね。

ちなみに露鵬は土佐ノ海と一緒になった時、
「オレが10勝で、お前は11勝なのになんで二人とも三賞が獲れないのかな」
といわれたそうな。土佐ノ海はもう三役の器だと思うので、10勝程度では三賞は難しいんだろう。


※三役揃い踏みの一番
○白鵬(192cm/146kg/モンゴル/宮城野/関脇/8勝7敗)
●雅山(188cm/181kg/武蔵川/関脇/5勝10敗)
[寄り切り]

史上最年少大関昇進の掛かった今場所だったが序盤に大きく崩れ、ファンの期待を裏切ってしまった白鵬。
だが7敗と後がなくなった12日目からは上位陣を相手に3連勝、この千秋楽に勝ち越しを掛ける。
対するのは、4場所続いた関脇の座から陥落する事が決定した雅山だ。
立会いで雅山に突っ張られて土俵際まで押された白鵬だったが、得意の左上手を取ってからは逆転。
強引な左の上手投げで雅山の体勢を崩すと、そのまま一気に寄り切った。これにて白鵬、勝ち越しである。

今場所は試練の場所となった白鵬だが、特に中盤あたりの気のない相撲が目についた。
正直、気持ちを切らさなければもっと白星を取れていたように思える。
大関がどうのこうのという前に、まずは気持ちの面を鍛えなおして欲しいところだ。


○栃東(180cm/148kg/玉ノ井/大関/10勝5敗)
●魁皇(184cm/175kg/友綱/大関/10勝5敗)
[寄り切り]

この一番は大関同士による対戦なのだが、この両者の星勘定は全くの正反対である。
前半は大きく崩れながらも段々と調子を取り戻し、ついには絶対横綱 朝青龍にさえ土をつけた栃東。
反対に前半は得意の右上手を武器に好調、だが中盤以降は再発した左腕の怪我に泣かされた魁皇。
「この勢いであれば、星は栃東が取りそうだなぁ」なんて思っていたら…、本当にそうなった。


立会い、栃東は頭からぶつかっていき、そのまま魁皇を押し込んでいく。
魁皇は押されながらも土俵際で叩き込み、栃東はそのまま土俵外へと出そうになるが…よく残す。
反対に「これで勝負あった」と思っていた魁皇、慌てて栃東に向かっていったが、
栃東は体勢を低くしておっつけ、左右に動いて粘る魁皇を寄り切った。

う〜ん、ちょっとバタバタした相撲内容。大関同士の一番としては頼りない感じだなぁ。
ま、ともあれ栃東はこれで二桁の勝利、大関としての体裁は保てただろう。
魁皇も怪我に泣かされながらの二桁、角番脱出には成功したのだから、まずはヨシ、といったところか。
…っていうか、正直、こんな事で満足して欲しくないね。大関が頑張らないで誰が朝青龍の優勝を止めるの?
二人とも、来場所は更なる大活躍を求めたいところだな。


○朝青龍(184cm/144kg/モンゴル/高砂/横綱/14勝1敗)
●千代大海(182cm/156kg/九重/大関/6勝9敗)
[寄り切り]

この観戦記の中で全く触れられていなかった千代大海の不調。
とにかく相撲内容にあんまり見るべきところがなく、星勘定もあれよあれよの負け越し。
立会いも悪かったし…、正直、今場所は相撲を取れる体じゃなかったのではないだろうか?

で、そんな千代大海が、身体が充実している朝青龍を相手に勝てる訳がない。
立会いこそ左のど輪で朝青龍を押し込む場面もあったが、朝青龍に左のど輪を返されてからは一方的。
朝青龍は千代大海の右脇を差して上体を起こしてそのまま寄り切り、全く危な気のない相撲だった。

これで千代大海は6勝9敗。
夏場所は7度目の角番で迎える事になるのだが、これは大相撲の中でもタイ記録なんだそうな。
これには師匠の九重親方(元横綱 千代の富士)もご立腹。
「新聞を読んでもアホなことばかり言ってる。頭の中も相撲も駄目。
 来場所でおしまいだろ。負け越して落ちたらいいんだ!」
と随分と捨て鉢なコメントを残している。おおっと、怖ぇなぁ。

反対に朝青龍はご機嫌に38本の懸賞金(=約114万円)を鷲掴み。
優勝のコメントでは「大阪の皆さま、おおきにっ!」と語り、館内をドーッと沸かせた。

そこに浮かべた満面の笑みは、土俵の上での鬼の形相とは全くの別人だった。
さて今場所の朝青龍は序盤は立会いが鋭く、相手にまわしを取らせない完璧な相撲を取っていた。
後半は立会いにキレがなくなり、今日も千代大海に先手を取られたものの…、
持っている身体のキレは各界随一である事を全取組で証明する形となった。
いや〜っ、強いなぁ、本当に強いなぁ。栃東は良くこんな人に勝ったなぁ…。

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●雑感
ただただこの一言です。

朝青龍、ホントに強い!

個人的には、安馬の活躍にも期待したいところです。

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以上、長文失礼、どすこ〜いっ!




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