1/4 全日本キック 後楽園ホール興行 観戦記
■団体:全日本キック
■日時:2005年1月4日
■会場:後楽園ホール
■書き手:高倉仮面

18:45
仕事始という事もあり、早々に仕事を切り上げて水道橋に到着。
本日は後楽園ホールにて全日本キックボクシングの興行観戦だ。

昨年は毎月一回後楽園ホールで興行を打ち続けた全日本キック。
ライト級最強トーナメント、「日本 vs 世界」五対五マッチ、危険なラウェイへの挑戦、
他団体選手の参戦、積極的にタイトルマッチを行う…等、現状出せる最高のカードを惜しげもなく提供。
結果、他団体が後楽園ホールを埋めるのに苦戦する中でも常に八割〜満員の入りをキープ。
キック団体の動向を伝えるメディアが少ないせいもあり格闘技ファンからの注目度は薄いが、
実は今、この団体は密かに熱い、メチャクチャ熱い。

本日は、そんな全日本キックの2005年の第一弾興行。
メインイベントは小林 聡 vs 大月 晴明によるWPKC世界ムエタイライト級のタイトルマッチ。
セミファイルには白鳥 忍 vs サトル ヴァシコバ、こちらは全日本ライト級王座の決定戦。
いやはや、年始からライト級頂上決戦二連発とは…、全日本キックもぶっ飛ばしまくりだな。

「年始から大月 vs 小林ですからねぇ…。ちょっと飛ばしすぎな気もしますよねぇ。」

…という訳で、本日もキックに詳しいニゴウ氏を帯同して観戦。
チケットを購入、立見席4000円…なのだが、どういう訳か今日は立見席以外の全ての席が売り切れ。
ぬぅ、違う。何かがいつもと違う。ホールの中で何が起きているのだろうか…。


18:50
いつものようにパンフレットを購入、1000円。
今回は「てらかわよしこ」さんのマンガの中で「2004年をふりかえる」という特集をやっていた。
各賞を紹介、で、その賞にあわせて僕もコメント。

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◎MVP:白鳥 忍

試合数の多さもさる事ながら、その全ての試合に勝利しているだけあって、このMVPは順当。
だが個人的には、vs 高谷 裕之、vs 小林 聡、vs サムゴー ギャットモンテープ、
そしてvs 吉本 光志…と、印象に残る試合を連発したサトル ヴァシコバの存在感の方が大きいかな?
あと、ラウェイという全く未知のルールの中で、そのチャンピオンを倒した田村 彰敏も素晴らしい。

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◎インパクト賞:2/25 野良犬ワンマッチ 北沢タウンホール

小林 聡の復活を賭けたワンマッチ興行。
確かに興行自体のインパクトは大きかったが、個人的には7/24の五対五マッチであろうか。
ジャン スカボロスキーとパジョンスック SKVジムのバカみたいな強さが印象的。

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◎マイク賞:6/18 佐藤 嘉洋
「3R制とか、ヒジなしとか、お嬢さんルールが流行ってますが…。」

マイク内容自体は素晴らしい…と思うんだが、その後で、
「K−1の真似をしているキック界のことを言っただけ。
 K−1はK−1で素晴らしいし過酷な戦い。
 やっている選手達のことは尊敬している。」
とコメントしたのは蛇足、興ざめ、どっとしらけ。

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◎ベストバウトその1:1/4 大月 晴明 vs 藤牧 孝仁

大月が裏拳一発で藤牧を1RKOした試合。ドンピシャな一発に会場に戦慄が走った。
尚、大月はその後、4/16でも崔 永益を相手に裏拳一発でKO勝利。
大月は昨年は試合数は少なかったが、試合では絶大な存在感を発揮していた。

◎ベストバウトその2:3/13 山本 元気 vs ラビット 関

全日本のフェザー級王者とMA日本のスーパーバンタム級王者による対戦…だったが、
正直、実力差が歴然。山本のパンチのパワーが関を完全に圧倒、5Rに山本がKO勝利。
個人的にはもはや体調はボロボロであろう関の不調ぶりが印象に残った試合。

◎ベストバウトその3:4/16 小林 聡 vs サトル ヴァシコバ

おそらく昨年の本当のベストバウトはこの試合だろう。
体調はボロボロながらも、1R〜2Rは小林が強力な打撃でヴァシコバから主導権を握るも、
3R、ヴァシコバが乱打戦を仕掛け、これに小林も応戦、壮絶な殴り合いに。
そしてこの打ち合いを制したのはヴァシコバ、ラウンド中盤に小林からダウンを奪い判定勝利。
激しい打撃戦に会場は揺れに揺れまくった。

個人的には、これに9/23 山本 優弥 vs 高谷 裕之の試合も加えたいところ。
悪名高い高谷応援団がいかに観客席から山本を挑発しても、
山本はいつも通りに「アカンベー」やらヘラヘラ笑ったりで高谷を挑発。
試合でも持ち前のテクニックで高谷を圧倒、判定で勝利をもぎ取る。
広島出身の山本の気の強さが前面に押し出てきた試合だった。

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こうして思い出すと、結構色々な試合が思い浮かぶ。
それだけ、昨年の全日本キックは内容も充実していたという事なのだろう。

で、会場入り…なのだが、後楽園ホールは満員も満員、超満員!
いつもの2F東側の立見席も超満員、何列も立ち見の客が前にいて観戦できたものではない。
その列の中から、第五試合に出場する郷野 聡寛を観戦する為に来場したフリジットスター氏を発見。
で、彼も観戦に苦戦している様子。今時、後楽園ホールにこの入りは珍しい。

フリジット:「凄いですね、今日は。いつもこんな感じなんですか?」

高倉仮面 :「いや…、まあ確かにいつも8割〜9割は埋まるんだけど…、今日は本当に凄い入りだよ。
       正直、舐めていたかも。やっぱりセミとメイン、そして郷野で客を呼んじゃったのかなぁ?」
フリジット:「郷野で呼べる客って…、いるんですかねぇ?」
高倉仮面 :「う〜ん…、ゼロって事はないと思うよ。」
ニゴウ  :「単純に1月4日っていう日取りも良かったんじゃないですかねぇ?」

まあ、ここで何を議論しても席は見つからない。
会場の中を右往左往しつつ、どうにかこうにか3F南側の一角を陣取った。
試合は既に第二試合。観戦していない第一試合におけるデンジャー 高山の活躍を想像しつつ観戦開始。

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※未観戦
第一試合 60kg契約 3分3R
○安川 文健(AJジム)
●デンジャー 高山(AJKF)
[判定 3−0]

観戦していないんですが、順当な結果である。
何と言っても…18戦1勝15敗2分、負ける事が味となっているデンジャー 高山。
今日も負けて頂かないと困る、ってモンである。

…試合内容、どうだったんだろ?

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第二試合 ウェルター級 3分3R
○小塩 大輝(JMC横浜GYM)
●HIROAKI(峯心会)
[判定 3−0]

この試合の途中から観戦したのだが、小塩 大輝が圧力でも手数でも圧倒。
小塩は全てのラウンドで積極的にパンチで前に出て、ボディ打ちやヒザ蹴りを連打。
これを捌き切れないHIROAKI、1Rにダウンし、後半は露骨に失速。
最終盤はややスタミナ切れしたものの小塩がストレート勝ち。圧勝ですな。

第三試合 ウェルター級 サドンデスマッチ
○金 統光(175cm/66.5kg/藤原ジム/全日本ウェルター級 十位)
●三上 洋一郎(173cm/66.5kg/S.V.G./全日本ウェルター級 八位)
[判定 2−0]

藤原ジム期待の星である金 統光が、ベテラン三上 洋一郎をパワーで完全に圧倒。
試合全般において前に出た金、接近戦ではパンチやヒジ打ちを連打して試合をリードしていく。
これに対して三上もヒジ打ちで応戦するも、勢い良く打撃を連打する金を止められない。
そこで自ら下がっていきながらミドルキック、距離を置いて試合をしようとするが、
金はこれに怯む事なく接近してのパンチやヒジ打ちを連打、自分のペースをキープする。
交差するヒジ打ちを観たフリジット氏が「こういう攻防が見たかったんですよ」と漏らす。

3R、三上のヒジ打ちがヒットして金が流血。「すわ、逆転か?」と思わせたが、
金はこれに怯む事なくパンチやヒジ打ちを連打、傷口を狙ってくる三上を寄せ付けない。
最後もフックのラッシュとローキック、自分の打撃を出し続けた。
結局、試合は判定までもつれたものの金が勝利。
今後のウェルター級戦線を脅かす存在になる事を期待したいね、いい選手だし。


第四試合 フェザー級 サドンデスマッチ
○石川 直生(176cm/57.0kg/青春塾/全日本フェザー級 三位)
●森山 直樹(173cm/56.8kg/はまっこムエタイジム)
[1R 1分40秒 KO]
※左ストレート

石川 直生、けれんみたっぷりな入場、リングの上では天井に向かってオレンジの霧を吹く。
相変わらず自分大好き感タップリで、髪の毛もいつの間にかオレンジに染めていた。

「う〜ん、石川って何が強いのかわからないんだけど妙に強いですよねぇ。
 何だかんだでフェザー級の三位ですしねぇ…。」

ニゴウ氏の言う通りで、この選手は特に特徴的な強さはないんだけど何故だか負けない。
強いて言うなら、多分、根性がいいんだろうねぇ。負けん気が強い、と言うか。
対する森山 直樹、入場時にトップロープを飛び越すのに失敗。観客が爆笑する中で本人も苦笑い。

で、この試合は蓋を開ければ「石川の為の試合」だった。
試合開始直後にロープに飛んでのキック一閃、その後もミドルキックとストレートで森山を押し込み、
コーナー際でヒザ蹴りを連打、あっという間に森山をダウンさせる。何だか随分と強いな。
立ち上がってきた森山に対してはヒジ打ちとヒザ蹴り、最後はストレート一閃。
再びダウンした森山が立ち上がれない。意外な力強さを見せた石川が秒殺勝利を収めた。

石川が狙うのはフェザー級のベルト。
上につっかえているのは同級王者の山本 元気、同級一位の山本 真弘、「W山本」だ。
圧倒的な打撃の破壊力で相手を倒していく元気、打撃をするするとかわしてカウンターを入れる真弘。
対照的な戦法を持つ二人、石川のベルト戴冠への道は困難を極める。
だが…「待っていろ、『W山本』!」、石川は放送席にいた元気を見つめていた。
って言うか、相変わらず「自分が大好き!」って感じだなぁ、石川は。


第五試合 全日本ヘビー級王座 挑戦者決定戦 サドンデスマッチ
○郷野 聡寛(176cm/86.0kg/PANCRASE GRABAKA/PANCRASEライトヘビー級 二位)
●コンボイ 山下(181cm/83.0kg/超越塾)
[判定 3−0]

総合格闘技の第一人者、PANCRASEの郷野 聡寛が全日本キックに参戦。
注目度の高い試合であったが…、対戦相手がコンボイ 山下である事で僕の興味は半減、どっとしらけ。

何故なら山下は…、昨年に前座戦線デビューしたばかりの選手で、本戦の経験はゼロ。
生で試合を何度か見ているが、打ち合いの中で1R中盤にスタミナ切れを起こす事が多いのである。
まあつまり、試合をする事でメシを食っている郷野との実力差は…、もはや試合前から歴然。
となると、注目すべきは「郷野はキックルールで山下をKOで下す事が出来るか?」、その一点のみ。

さて試合…なのだが。
郷野は全ラウンドを通して、山下のパンチをヒョイヒョイとスウェーで避け続けると、
アウェーにも関わらず意外に多かったファンの声援を受けてながら、単発のパンチを繰り出していく。
この中ではボディブローが有効打となっており、ハードヒットする度に観客から歓声が沸いていた。
そして1R終盤にノーモーションからの左ハイキック、3R終盤にはフックの連打でダウンを奪う。
総合格闘技出身選手の華麗な打撃には、ファンばかりでなくキック関係者からも賛辞の声が。

対する山下、前に出てパンチを出し続けるも…、このパンチが当たらない、当たらない、全く当たらない。
繰り出したパンチは全て郷野のスウェーやダッキングにかわされてしまったのだ。何気にスゲェな郷野。
ならば、と山下はローキックも繰り出す。こちらはヒットはするのだが…カットされた数も結構多かった。
後半に郷野のボディ打ちを貰い続けた山下は完全に失速。なんとか挽回すべくパンチを出すがのだが…、
これもかわされる、かわされる、全部かわされる。結局、山下は有効打らしい打撃を一つも出せなかった。
試合全般においてローキックを有効に繰り出し続けていれば、もう少し喰い下がる事が出来たのだろうが…。

…とまあ、結果だけで見るなら、もう文句のないくらいの郷野の完勝劇である。勝った郷野のマイクで、
「2月〜3月にベルトを賭けて試合をすると思いますが、その時は相手をキッチリと倒します」
とアピール、但し淡々と。ベルト奪取に向けて大した自信だ。

しかし、これだけの実力差にも関わらずKO勝利を奪えなかったのはちょっと引っかかる。
特に2R〜3R、郷野の手数は少なかったように思える。相手の様子や出方を見ていたのだろうか…。

という訳で、この先に控えているタイトルマッチについて僭越ながら一言。
全日本キックのヘビー級王者である西田 和嗣は、恐らく体格差(182cm/96kg)を活かして前に出てくるだろう。
西田はそんなに巧いタイプではないものの、相手をKOする一発を持っている選手だ。
郷野はパンチを全てよけるつもりなのだろうが、それなら西田は中距離からミドルキックを出すだろう。
そういう選手の事も想定するのであれば、郷野はもっと手数を出していく必要があったのではないか。
中距離〜遠距離においての武器が今一つ見当たらなかったのも気になるところ。

…ま、郷野が西田の打撃を本当に全部かわしてしまう可能性も充分にあるけどね。
あと、西田のミドルキックに合わせてカウンターのストレートを出したりするのかな?
先程のマイナス材料を考慮したとしても、郷野がベルトを腰に巻く姿の方が想像しやすい、というか…。


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◎十分の休憩

今日のリングサイドには、何故かヴァンダレイ シウバがいた。
で、そこには人だかりが出来ていた。皆、携帯のカメラで記念撮影。人気者は大変だね。

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第六試合 全日本ライト級 王座決定戦 3分5R
○白鳥 忍(171cm/61.5kg/高橋道場/一位)
●サトル ヴァシコバ(170cm/62.0kg/勇心館/二位)
[判定 3−0]
※白鳥が全日本ライト級の新王者に

この試合は、大月 晴明が返上したライト級の王座を決定すべく緊急開催された、
「全日本ライト級 王座決定トーナメント」の決勝戦。
試合前には国歌が流され、両者には朝赤龍関から花束が贈られる。

昨年一年間、こなした試合は六戦。その全てを負けなしで駆け抜けたのは白鳥 忍。
ライト級最強決定トーナメントでは、ウェルター級から上がってきた山本 真弘、
打たれ強さを身上とする吉本 光志、そして帝王・サムゴー ギャットモンテープを下し、文句なしの優勝。
特に、ヒジなしルールだったとはいえ、あのサムゴーに何もさせなかったのだから、その強さは折り紙つき。
このトーナメントの一回戦も、テコンドー殺法の凱斗 亮羽を相手に3RにKO。
得意のボディフックのラッシュと左ミドルキックが今日も炸裂するのか?

対するは、昨年一年間、試合内容のインパクトが一番大きかったサトル ヴァシコバ。
ライト級最強決定トーナメントでは、修斗新人王の高谷 裕之、野良犬・小林 聡の二人を激闘の末に下した。
準決勝ではサムゴー ギャットモンテープに敗れたものの、引かずに前に出る姿は観客の感動を呼んだ。
このトーナメントの一回戦では、吉本 光志を相手に、2RでKO勝利を飾った。
打ち合いの中から勝機を見出すヴァシコバは、今日も後ろには決して下がらない。

で、試合…なのだが、この試合で白鳥は意外な戦法に出た。

相手の出方を伺った白鳥、前に出てくるヴァシコバのパンチに合わせてカウンターのパンチを入れていくと、
自ら下がりつつ得意の左ミドルキックをバシバシと入れていく。そしてボディへのフックをコツコツ。
いつもは力強い攻めを観せる白鳥だが、今日はどこか慎重なイメージすらある。
そんな白鳥に対して、ヴァシコバもストレートを放っていくも…。
1R終盤、白鳥は足の揃ってしまったヴァシコバにストレートを一閃、ダウンを奪う。

この流れを受けての2R。1Rにダウンを奪ってイニシアチブを握った白鳥だったが…、
「いつもの白鳥」なら大振りなパンチのラッシュを仕掛けていくのであろうが、
「今日の白鳥」は慎重そのもの、決して自ら無理にラッシュを仕掛ける事はない。

自ら下がって距離を稼いで左ミドルキック、引かないヴァシコバが前に出れば、掴まえてヒザ蹴りを連打。
得意の打ち合いを望むヴァシコバのパンチにはカウンターを合わせていき、更にボディブローを放っていく。
これらの打撃を前に、ヴァシコバは徐々に手数が少なくなっていく。
唯一の有効打となっていたローキックも…、白鳥を倒すまでには至らない。

試合はこのペースで淡々と進んでいった。
「慎重な白鳥」を崩せないヴァシコバは5R中盤に失速、動きが悪くなる。
そんなヴァシコバを前にしても、白鳥は慎重な姿勢を崩さない。
会場にはヴァシコバ応援団の力一杯の声援が虚しく響くばかり。

試合終了。結局、全くヴァシコバに付け入る隙を与えなかった白鳥が判定で勝利。
確実に勝ちに行った白鳥の巧さが光る一戦…と言えば聞こえはいいが…。

高倉仮面:「勝つには勝ったけど…、今日の白鳥、なんかいつもと違ったね。」
ニゴウ :「相手が打ち合いに強いヴァシコバだから、あえて慎重に行ったんじゃないですかねぇ?」
高倉仮面:「でも試合は…、『この二人がやる!』という事を考えると、正直、今一つだったかなぁ。」
ニゴウ :「まあ、白鳥の巧さが試合全般に出ていたから、僕は満足してますけどね。」

全日本ライト級の王者となった白鳥は、マイクで大月 晴明との再戦をアピール。
白鳥のこれまでの戦績は、本日を含めて25戦23勝2敗9KO、2敗のうちの1敗が大月に付けられたものだ。
本来なら、昨年のライト級最強決定トーナメントで激突するはずだった二人。
今年こそは是非実現して欲しいカードである。


第七試合 WPKC世界ムエタイ ライト級タイトルマッチ 3分5R
○大月 晴明(165cm/61.8kg/AJジム/挑戦者)
●小林 聡(170cm/61.8kg/藤原ジム/王者)
[3R 2分31秒 KO]
※パンチ連打、大月がWPKC世界ムエタイ ライト級の新王者に

今日のメインイベントは、小林 聡の持つWPKC世界ムエタイ ライト級のタイトルマッチ。

昨年は4戦2勝2敗2KOと、不本意な結果を残してしまった小林 聡。
僕個人が生観戦したのはサトル ヴァシコバとの一戦のみだったが…、
この時の小林はボロボロの体調を無理矢理調整して試合をしている印象があった。
結果、3Rにヴァシコバにダウンを奪われて判定負け。11月には海外の試合でKO負け。
やはりネームバリューがあるせいで敗戦劇が目立ってしまうが、
その裏で勝ち取った2勝はいずれもKO劇、打撃の破壊力が錆び付いていない事を証明した。
今日の相手は完全無欠のウルトラ・ハードヒッター。「野良犬」は魂を見せる事が出来るか?

これまでの戦績が17戦17勝15KO、デビュー以来の無敗記録を更新し続ける大月 晴明。
昨年は藤牧 孝仁、そして崔 永益を裏拳一発で沈める…という、物凄い強烈なインパクトを残した大月。
だがその後は怪我により暫く戦線離脱。復帰戦では伏兵 ムスタファ ズィアーニを相手に勝利を収めるも…、
「ヘタをすれば敗けていた」と思わせる試合内容。樹立していた連続KOの数字も14で止まってしまった。
その内容を考えれば…、今日が大月の「本当の復帰戦」という見方も出来るだろう。
試合はタイトルマッチ、相手はエースの小林、観客は超満員。実力を披露するには最高のお膳立てが揃った。
あとはいつもの実力を発揮すれば、再び「全日本キックに大月あり」を満天下に示す事が出来るだろう。

1R、まずは小林が大月の牽制のパンチに合わせてミドルキックを放つ。
と、いきなりだが、ニゴウ氏が驚いた。

「おおっ! 今日の小林はここ最近の中では抜群に体調が良さそうですよ!
 肌の艶も良いし、動きにもキレがありますよっ!」

そんな小林を警戒しつつも、いつも通りにノーガードに近い構えからパンチを放つ大月。
小林は自分の間合いである中距離を保ちつつ、大月のパンチに重いローキックを確実に合わせていく。
1R終盤、ジャブからローキック、大月のフックをかわしてのローキック。
キレのある動きで会場を沸かせる小林、今日は本当に絶好調のようだ。
1R終了、このラウンドは達人同士の主導権争い…という感じである。

2R、1Rと同じく中距離での主導権争いが続いたが、大月が打撃の手数を増やした。
小林の顔面を狙って、単発ながらもどんどんパンチを繰り出していく…のだが、
その一発一発にいつもの破壊力がない。ミスを恐れるあまり加減でもしているのだろうか?

対する小林は大月のパンチをキッチリとガード、パンチとローキックで逆に主導権を握る。
中盤にはローキックを連打、大月のぶん回しフックは綺麗にかわす。
ラウンド終了直前にはローキックで大月がスリップする場面もあった。
2R終了、このラウンドは小林がペースを握っていた、と言えるだろう。

だが、大月にはコレがある。

3R、小林は序盤、大月のローキックに合わせてストレートを放ち、更にはハイキックを繰り出す。
調子の良さを強調するかのような動きに、「このまま行けば小林の勝ちになるかも…」と思った3R中盤。

ついに出た、大月の「会心の一撃」。これまでの展開を無視した、全く予告のない、凄まじい一発。
大月、中距離から踏み込んでの右の超ロングフックが、小林の顔面に炸裂っ!!
喰らった小林が、顔面を歪めて、吹っ飛んで、もんどり打ってダウン!

この一発で、後楽園ホールは上や下やの大騒ぎ状態。
フリジット氏は「何でこんな階級が軽いのに、あんな破壊力のある一発が出るんだっ!?」と動転、
ニゴウ氏と僕は、ただただ「ダメだぁっ、その一撃はダメだぁっ!!」と脱帽。
周りの観客も「ああああぁぁぁっ!」とか「うわ〜っ!」等、驚きを隠せない状態だ。
そして、この一撃は両者の勝敗をも決定した。
何とか立ち上がった小林、勝利を諦めない「野良犬」の姿に観客が大歓声を揚げるが…。
もはや足元がフラフラなのが客席からもわかる状態、これではもはや時間の問題だ。
それでも小林はワンツーの連打からハイキック、「まだまだやれるぞ!」と主張する。
だが大月は非情のフックを連打、ハイキックと繋いで締めはストレート。
まともに浴びた小林が再びダウンを喫すれば、再び観客は「うわ〜っ!」と大騒ぎ。

尚も立ち上がる小林、またまた観客は大歓声に包まれたが…。
大月は仕上げのラッシュラッシュ、左右フックの猛連打。
途中でハイキックを挟みつつ、再び左右のフック。

この打撃をガードも出来ずに浴びる小林、レフリーが試合を止めるのは必然だった。

観客の熱狂的な喝采と拍手の中、大月をリングサイドで観戦していたヴァンダレイ シウバが祝福する。

マイクを握った大月は、
「今日は正直、勝てると思っていませんでした。なので、先の事は考えていませんでした。」
と、あれだけの一撃を出しておきながらも、かなり控え目なコメントを発していた。

高倉仮面 :「いや〜、本当にスゲェなぁ、大月…。」
ニゴウ  :「何か、観るたびにこんな一撃を出していますからねぇ…。」
フリジット:「今日は『大月 晴明」の名前だけは、しっかりと覚えましたよ…。」
高倉仮面 :「ああ、そうかぁ、良かった。
       実は今日の興行、名勝負らしい試合がなかったから、
       いつもの全日本キックに比べて今一つだったんだよなぁ。」
ニゴウ  :「まぁ、最後の試合で全部、取り返しちゃいましたね(笑)。」
高倉仮面 :「それにしても…、凄い一撃だったなぁ…。」

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雑感:
第七試合のコメントにも書きましたが、第六試合までは「実力拮抗の名勝負」というのも少なく、
かと言って「豪快な一撃KO」というのもなく、何となく印象に薄い興行でした。
…ニゴウ氏の言う通り、最後の試合でその全てを取り返してしまった、と言うか(苦笑)。

だが、悲しいニュースも。噂によると大月、この日を最後に暫くの間休業するとか、しないとか。
…って事は、今年のライト級最強トーナメントには出場しないのかな? う〜ん、それは本気で残念だなぁ。
せめて夏には復活して欲しいところですね。この選手の存在はもっと多くの人に知られていいと思うので。

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以上、長文失礼。




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