静岡は青白く燃えていた
■団体:SMACK GIRL
■日時:2004年12月19日
■会場:ツインメッセ静岡
■書き手:フリジッドスター

午前11:00に、バスは新宿を出発。道中は15選手が出たと云うインディープロレスの
試合映像や、辻選手が出た関西ローカル番組の映像を見つつ、のんびりと旅気分で。
それにしても、このツアーの為に大阪からわざわざ東京に来た辻選手には、本当に頭が
下がる思いだな。長いバスでの移動を経て会場に到着。静岡ツインメッセは
イベントホールと云うよりは、街の普通の体育館と云った感じ。スタンドはなく、
広々としてはいるものの、その無意味な広さが逆説的に寂しい入りを強調していた。

いつものお馴染みのスタッフの面々に加え、GCMの伊東さんが手伝っていたりして、
狭いようでいて本当に狭いこの世界の人脈を、改めて目の当りにする。例によって会場設営も
リハの進捗もバタバタしていたようだが、それ以上に散漫な空気の流れる会場の
様子に不安を抱いてしまった。地理的な問題でかなりシビアなスケジュールで後ろに
帳尻を合わせなければならない都合もあってか、ほぼ時間通りに試合開始。
なんだ、今日は良い感じの進行じゃないか。


【WORLD Remix一回戦】
○マーロス・クーネン
(1R2:39 レフェリーストップ)
×高橋洋子

ローとパンチで果敢に先攻する高橋に対し、クーネンが組んでからの
ヒザでペースを握る。クーネンのパンチはシャープかつ重く、強烈なフックから
ラッシュをかけて一度目のスタンディングダウンを奪う。ダメージの大きい高橋に対し、
ティーカオの連打で畳み掛けたクーネンが二度目のスタンディングダウンを奪うと、
レフェリーが試合を止めた。

試合後の高橋は、鼻からかなり激しい出血をしていた。
体調を崩しブランクの長かったクーネンだが、そのブランクを感じさせない強さを
発揮した試合だった。


【WORLD Remix一回戦】
○エリン・トーヒル
(1R0:27 タオル投入)
×石原美和子

開始早々飛びヒザで距離を詰めたトーヒルが、石原を首相撲に捕獲して
怒涛のティーカオラッシュ。アームブロックで対処する石原だが、首相撲を切ることが
出来ず一方的に被弾してしまう。さらにトーヒルはコーナーに押し込んでパンチを連打し、
最後はハイキック一閃。レフェリーがスタンディングダウンを取ると同時に、
セコンドからタオルが投げ入れられた。

日本最強の石原ですらあっさり負けてしまう内容に、
このトーナメントのレベルの高さが窺い知れた。ただティーカオにアームブロックで
対処する危険性は、総合ではヴァンダレイ vs. ランペイジで証明されており、石原は
やや研究不足もあったか。


【WORLD Remix一回戦】
○藪下めぐみ
(1R0:29 手首固め)
×シャノン・フーバー

タックルから投げを放った藪下だが、これを潰したフーバーが上になり、
ボディへのパウンドで攻める。だが藪下は下からフーバーの腕を巻き込むように捕らえると、
脇固めからさらに手首を極め、フーバーはタップした。

ジョシュ、阿部兄、フジメグと最強のセコンドを帯同したジョシュ彼女・フーバーだったが、
総合のキャリア不足を露呈した感じで、代役とは云えこのトーナメントに出場するレベルには
到底至っていなかった。


【WORLD Remix一回戦】
○ロクサン・モダフェリ(63kg)
(2R5:00 判定3-0)
×アンナ・キャロリーナ(75kg)

1R。差し合いでのヒザの打ち合いから、アンナが首投げでテイクダウンを奪う。
ボディへパウンドを放つアンナに対し、ロクサンはクロスから足を利かし三角狙い。
早くもスタミナ切れ気味のアンナは打撃への対処が不十分で、フットワークを活かした
ロクサンがパンチで優勢に試合を進める。距離を殺し足を刈ってテイクダウンするアンナだが、
ルールにも阻まれハーフマウントから有効な攻め手を欠く。距離を取ってパンチを
当てるロクサン。アンナはテイクダウンし、横四方からのアーム狙い。

2R。アウトボクシングのロクサンに対し、組んだアンナは引き込みからの
スイープで上に。ハーフからプレッシャーをかけるアンナだが、30秒の間に効果的な攻めは無い。
距離を取ってパンチとローで攻めるロクサン。押し込むアンナに対し、
ロクサンはヒザを放っていく。再度引き込みからのスイープに成功したアンナだが、
決め手に欠いてスタンドに。動きの重いアンナに対し、軽快なフットワークで
パンチとローを効かすロクサンが、スタンドで圧倒する。

判定は文句なくロクサン。アンナはパワーはありそうだったが、
オーバーウェイト気味で動きが鈍く、また(メッカで素手のVTをやっていたと云う
触れ込みに反し)打撃への適応も不十分だった。ロクサンは直近の試合で
ジェニファー・ハウに勝っているように、成長著しい現況を示すことに成功した。


【WORLD Remixリザーブマッチ】
○伊藤薫
(1R3:45 腕十字)
×たま☆ちゃん

横に動いて距離を作るたまだが、伊藤が果敢に前へ出て打ち合いに。
投げの打ち合いはたまが制するも、伊藤は即座に立ち上がっていく。
首投げで上を取った伊藤が、袈裟で固めてさらにバックマウントへ。
伊藤が鼻から出血。フックを当てるたまだが、圧力で優る伊藤が前進し組みにいく。
投げ勝ったたまがハーフを奪うが、有効な攻め手に欠いた。横へ動きつつローとワンツーで
攻めるたまだが、伊藤は豪快な払い腰で上になる。さらに横四方からの十字を極め、
耐えていたたまだが、グラウンド制限残り1秒の段階でレフェリーが見込み一本を取った。

伊藤は思ってたよりも強かった。打撃の対応はまだまだだけど、
今日は柔道のベースが活きた形。たま☆ちゃんは今日も本当に素晴らしい表情をしていたんだけど、
上に行くにはこのクラスでの結果が欲しいところ。


【WORLD Remix準決勝】
○エリン・トーヒル
(1R5:00 KO)
×マーロス・クーネン

事実上の決勝戦は、男子顔負けの迫力を感じさせる白熱した打撃戦に。
前蹴りで巧みに距離を作るクーネンが、パンチの打ち合いでも互角以上に試合を進める。
トーヒルも鋭いジャブで反撃。組んでからのヒザとパンチの攻防は互角。
良く伸びる右ストレートでペースを掴んだトーヒルに対し、クーネンは重いフックで前に出る。
トーヒルは側頭部から出血。再開後なおもフックで果敢に前進するクーネンだが、
トーヒルはカウンターで強烈なパンチで心を折り、なおもティーカオとパンチで
追撃しダウンを奪う。クーネンがカウント9で立ち上がったところでゴングが鳴ったが、
クーネンはダメージが大きくファイティングポーズを取れなかった。

文句無く、女子総合の頂上対決。同階級のそこらの男子よりもずっと迫力のある、
素晴らしい打撃戦は圧巻の一言だった。トーメントに出場した八人の内、この二人が
三枚くらい突出した実力を誇っていたと思う。一進一退の攻防を制したのはトーヒルだったが、
体重差(計量体重はクーネン65kg台、トーヒル80kg台とメモ8さんが証言)にも関わらず序盤は
優勢に試合を進めていたクーネンの健闘は、いくら強調してもし過ぎることはないだろう。


【WORLD Remix準決勝】
○藪下めぐみ
(2R5:00 判定3-0)
×ロクサン・モダフェリ


1R。足を払ってテイクダウンした藪下だが、ロクサンはスルリとバックに付き、
そのままチョークを狙っていく。飛び蹴りを放った藪下が、組んでからの腰投げで
再度テイクダウンし、イノキ-アリからキック連打。さらにロクサンの立ち上がり際に
パンチを合わせていく。打ち合いはほぼ互角。テイクダウンした藪下が横四方から十字に入り、
腕が伸びきるもロクサンは脱出。上になる藪下に対し、ロクサンはガードからの三角狙い。
ラウンド終盤に片足を手繰ってテイクダウンしたロクサンだが、インサイドから攻めあぐねた。

2R。組んでヒザを放つロクサンだが、藪下がテイクダウン。
ロクサンは下から巧みに足を利かせ、三角を仕掛ける。完全にキャッチ入るものの、
30秒ルールに阻まれ一本には至らず。上になるのは藪下だが、ポジショニングで優るロクサンは
バックに付く。藪下はフロントチョークで引き込むも、極まりは浅い。テイクダウンの攻防では
藪下有利だが、ロクサンは藪下の投げに巧く体を合わせて、バックマウントを奪うなど
ポジショニングで圧倒。終盤、返して上になる藪下だが、攻め切れず。

判定は三者とも藪下支持だが、個人的にはロクサンの勝ちだと思った。
ただスマック・オフィシャルHPによると「判定基準は、ダウン・ダメージ・反則によるマイナス、
次いで一本を取りに行く積極性を主軸として、各ジャッジの判断にゆだねられる」とあり、
ポジショニングを重視しない判定基準ならば、藪下の勝利と云う結果も有り得るかもしれない。
ただしかし、多少ぼかして書くと本部席周辺でもこの判定に首をかしげる向きが多かったらしく、
藪下が苦戦した印象は否めない試合であった。


【SGS公式ルール 5分2R】
○木村由佳
(2R5:00 判定3-0)
×せり

1R。序盤の打ち合いはせりが押し気味に進めるも、木村のローが
徐々に効き出してせりの足が止まる。木村がテイクダウンに成功するが、
せりはクロスでガッチリ固めて30秒を凌ぐ。ティーカオでペースを握った木村が
コーナーに押し込んでテイクダウン。サイドから十字を狙いつつパスガードし、マウントから
十字に入るも時間切れ。ラウンド終盤は打撃・テイクダウンの攻防で木村が圧倒。

2R。コーナーに詰めてテイクダウンした木村がサイドに付くも、
せりは不利な体勢から強引にフロントチョークに。極まりは浅くキャッチ奪えず、
スタンドに。再度フロントチョーク狙いで引き込むせりだが、またも極まりは浅い。
打撃で圧倒する木村が、テイクダウンしdサイドからの十字を狙う。せりは引き込んでの
フロントチョークに勝負を賭けるも、決まる気配はなかった。木村は
スタンド打撃で圧倒したが、決定打はなく判定に。

記憶が正しければ木村選手の試合を見るのは初めてのはずだが、
ベースがしっかりとしたなかなかの好選手でした。


【エキシビジョンマッチ】
近藤有希
(エキシビジョンのため勝敗なし)
青木真也

リアル破壊王の呼び声も高い青木真也であるが、本家破壊王のような遊び心はないのか
(本家の方は「火遊び」が過ぎたようだが:笑)、エキシビジョンにしてもあまりにも
盛り上がりの無い展開に終始した。遊び心のなさは、近藤も同じ。近藤は功労者だし、
彼女の実績・現況を鑑みればあまりネガティブなことは言いたくないのだが、やはりある種の
エンターテイナー的資質に恵まれていない感は否めず、彼女が星野や辻のようなスターに
なれなかったのは、同階級でライバルとなるような選手の不在が大前提としても、彼女自身の
華の無さもあったのかもしれない…。エキシビジョンは、エキシビジョンだからこそ、
その選手のプロとしてのセンスやスケールが表出する。大森で行われた
三島と藪下のエキシは素晴らしかったよなあ。


【WORLD Remix決勝戦】
○藪下めぐみ
(1R2:39 反則による失格)
×エリン・トーヒル

スタンドでプレッシャーをかけるトーヒル。藪下が低空タックルに入るも、
トーヒルはこれを潰してバックマウントに。藪下は亀になって凌ぎ、トーヒルは攻め手なし。
スタンドに戻ると、トーヒルが強烈な飛びヒザを繰り出し、藪下はたまらず下に。
藪下は一回戦で極めた、下からの腕関節を狙うも不発。パンチを当てて前進するトーヒルに対し、
藪下は組んで投げを放つも下に。バックマウントに付いたトーヒルが、
藪下の背中にヒジを落とす。藪下は悶絶し、レフェリーはトーヒルにイエローカードを提示する。
ドクターチェックが入り、しばらく藪下の様子を待つ時間が続いたが、
ダメージが大きく試合続行不可能と判断され、トーヒルの反則負けに。

猛烈な剣幕で和田レフェリーに抗議するトーヒル陣営だが、当然裁定は覆らず。
「カッとなってやってしまった」などと云うのは、少年犯罪の三面記事なみの弁解であり、
部位が脊髄であろうとなかろうと、現実に反則が存在し、その反則が藪下の試合続行を不可能に
したのだから、反則負けは当然である。スマックは、ロープ掴んでの顔面ストンピングが
許容されるどっかのリングとは違うのだ。伝え聞く所によるとトーヒルはルールミーティングでも
ろくに説明を聞いておらず、元々スマックルールを理解・遵守しようと云う
意志自体が希薄だったのかもしれない。


今回の興行は試合内容が素晴らしく、また進行もかなりスムーズに流れており、
静岡まで足を運んだ価値のある満足度の高いものであった。ただそれだけに、決勝戦が
あのような形で壊れてしまったことが残念でならず、また後味の悪さは否めなかった。
夏の後楽園は、ボロボロの興行を最後に選手が救った。今回は、クオリティの高い興行を
最後に選手が壊した。興行は水物…と云う常套句以上の、
興行と云うものが孕む危うさ、難しさを実感した。


ただ繰り返すが、興行全体の満足度はかなり高いものであった。
このクオリティの興行を都市圏で繰り返す行えるようになって欲しい。そう、静岡への旅は
楽しかったけど、スマックにはだだっ広くもお寒い会場よりも、

狭くとも熱気に満ちた都市の匂いが似合っている。




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