The Fighter who saved Shooto
■団体:プロフェッショナル修斗
■日時:2004年12月14日
■会場:代々木第2体育館
■書き手:フリジッドスター

行って来ました、年末恒例の修斗大箱興行。平日の六時開始と云うことで苦戦が
予想されたものの、五時五十分頃に到着すると、なんと入口には長蛇の列が! これは凄い…と
思ったのも束の間、その長蛇の列は”関係者入口”へと繋がるものだったとか。
うーん、この身内率の高さは尋常ではないな。

客席は閑散としており、リングサイドこそ埋まってはいるものの、スタンド席は
壊滅に近い状態。トータルでは四割強か、もっと少ないくらいだっただろうか。後楽園でやれば
ちょうど満員くらいだったのかもしれないが…。


【第1試合 女子54Kg契約2回戦】
○藤井恵(51.9Kg)
(1R1:43 腕十字)
×ナディア・ヴァン・デル・ウェル(53.9Kg)

開始早々テイクダウンを奪ったフジメグが、素早くパスして横四方からのアームバー。
完全に金魚マッチだったし、全選手入場前に行われた試合で、文字通り”前座”以外の
何かではなかった。まあG-SHOOTOの宣伝も兼ねてと云ったとこなのかなー。


【第2試合 67Kg契約3回戦】
×阿部裕幸(67.0Kg)
(3R0:40 カットによるTKO)
○石川真(66.6Kg)

1R。ジャブの指し合いからアッパーを交えて攻勢に出た石川だが、
凌いだ阿部は逆にカウンターを合わせてダウンを奪う。立ち上がった石川は左右の
フックで前に出るが、阿部はまたもタイミング良く一発当てダウンを奪う。
ダメージの残る石川だが、フック連打で果敢にラッシュをかけると、
テイクダウンに成功しマウントからパンチ連打。

2R。回転の速いフック主体の攻めで何度もラッシュに出る石川だが、
郷野ばりのノーガード戦法で応戦する阿部はしきりにノーダメージをアピールする。
捌ききれてはいない阿部だが、決定打は許さず。飛びヒザで前に出た石川だが、
組んでからは展開がなくブレイクに。

3R。フックとミドルキックで攻める石川に対し、阿部はタックルに入りテイクダウン。
だが石川が下から蹴り離したところでドクターチェックが入る。阿部の口の裂傷が大きく、
ドクターストップ。

流れとしては阿部がポイントアウトしそうな感じだったが、
石川は果敢に攻め続けたのが功を奏したか。直前のオファーにも関わらず受けた阿部も、

67kg契約を許容した石川も立派だと思う。


【第3試合 環太平洋ライト級王座決定トーナメント準決勝3回戦】
×戸井田カツヤ(64.4Kg)
(2R1:21 右フックによるKO)
○佐藤ルミナ(64.9Kg)

1R。距離を詰めてテイクダウンに成功したルミナがハーフマウントから
パウンドを落とすが、トイカツは潜って足を取りに行く。いったんは立たれたものの、
ルミナは再度テイクダウン。だが下から足が利くトイカツはオープンガードから
巧みにスイープ狙い。対するルミナは密着して細かなパウンドで攻める。
隙を見て立ち上がったトイカツに対し、ルミナはヒザを放っていく。
投げの打ち合いから両者体勢が崩れるも、ルミナが再度投げに行くと、トイカツは
引き込み気味に下になり足関を狙うも、これを潰したルミナは上に。両者とも
動きを止めず、クルクルとめまぐるしく回転する展開に。

2R。引き込み気味に下になったトイカツが足を取りに行くも、ルミナが
レスリング力を活かしてグラウンドを支配する。オープンガードからスタンドに戻すトイカツ。
フィニッシュは唐突に。ルミナはミルコ vs. ランデルマンのランデルマンのように、
タックルに入るモーションをフェイントに使った右フックを炸裂させる。
腰から崩れ落ちたトイカツに対し、なおもパウンドで追撃するルミナだが、
レフェリーが割って入り試合を止めた。

下から仕掛けつづけたトイカツの積極性が光ったが、試合そのものは
ルミナの完勝だった。スタンド打撃も向上している。ただし、次戦の石川相手に
通用するか否か、試練は続く。いずれにせよ、こう云う舞台でこう云う勝ち方を
してみせるルミナには、やはり天性のスター性・カリスマ性があるのだろう。


【第4試合 ライト級3回戦】
×高谷裕之(64.9Kg)
(3R5:00 判定0-3<28-29 28-30 28-30>)
○ギルバート・メレンデス(64.7Kg)

1R。見せパンチから片足タックルに入ったメレンデスだが、執拗な
テイクダウン狙いにも関わらず、高谷は北岡 vs. 井上の井上のように、片手でバランスを
維持し下にならない。ブレイク後再度タックルに入ったメレンデスが
Cンサイドからパウンドを落とすが、高谷は下から巧みにホールドし、有効打を許さない。

2R。メレンデスのタックルを尽く切った高谷が、ローとパンチで攻める。
コーナーに押し込み片足を手繰ってテイクダウンを狙うメレンデスだが、
高谷はがぶり気味にコントロールしアウトサイドブレイク。打ち合いからローを散らし、
さらにハイも狙う高谷。メレンデスは執拗にタックルに入るが、高谷は
抜群のバランス感覚で決して下にならない。

3R。打ち合いからタックルに入るメレンデスだが、高谷は尽く切りまくり
ローを走らせる。高谷はさらにストレートを当てるが、メレンデスはタックルに入り
ダメージを誤魔化す。さらにローの連打で攻勢に出る高谷。だがメレンデスが
ストレートを当てると、高谷は一瞬マットにヒザを付きダウンを取られてしまう。
以後もタックルを切りローで攻める高谷だが、メレンデスは距離を殺し時間を稼ぐ。

高谷は全体的に試合を支配してはいたものの、一発のパンチに泣き惜しい星を落とし、
これでタイトル戦線から一歩後退。この日の高谷は「倒されない、下にならない」掣圏道スタイルの
理想形を体現しており、その意味で評価が下がるものではないと思うが、
最後まで決定打を放つことが出来なかったのが痛かった。対するメレンデスは
シールズと似たようなタイプだけど、打撃はよりこなせる感じ。


【第5試合 ライト級3回戦】
○アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラ(64.9Kg)
(1R3:34 フロントチョーク)
×門脇英基(64.6Kg)

パンチでプレッシャーをかける門脇だが、見せパンチからの高速タックルで
ペケーニョがテイクダウンを奪う。ハーフにパスするのとほぼ同時にギロチンを仕掛け、
そのまま勝村戦で所が極めたような上からのフロントチョークでキャッチを奪う。
ほぼ完全に極まっていたように見えたが、何とか門脇が脱出に成功すると、会場は一気に大爆発。

しかし門脇がインサイドから動こうとする隙を見逃さず、ペケーニョは今度は
下からのフロントチョークを極める。門脇、今度は脱出ならずタップ。

ペケーニョの圧倒的な極めの強さを再認識させられた試合だった。
修斗に残るとしたら、防衛戦の相手は誰だろうか。メレンデスが王者になるのだけは
避けたいところだが…。


【第6試合 世界ミドル級チャンピオンシップ 3回戦】
×ジェイク・シールズ(75.5Kg)
(3R5:00 判定0-3<27-30 29-30 28-30>)
○菊地昭(75.8Kg)

1R。打ち合いから引き込み気味に下になったシールズだが、
菊地がパスしバックに回る動きに合わせて体を入れ替え、執拗にテイクダウン狙い。
菊地は片手でバランスを維持し下にならず、ブレイク。シールズのタックルを潰した菊地が
バックマウントからチョークを狙い、さらにパウンドを連打する。しかし体を入れ替えた
シールズが上になり、インサイドから細かいパウンドを放つ。オープンガードから
蹴り離したい菊地だが、シールズはパスしてハーフに移行。しかし菊地も
即座にフルガードに戻し対応していく。

2R。打ち合いから飛び込んだ菊地に対し、シールズは引き込み気味に下に。
フロントチョークを狙うシールズだが、首を抜いた菊地は積極的にパスガードを狙う。
シールズの三角を潰した菊地がハーフマウントから果敢にパスガードを図るも、
なかなか片足が抜けず、また有効なパウンドも落とせず。ついにパスしてバックマウントを
奪った菊地だが、シールズはまたも上になる。インサイドから上体を起こして
パウンドを放つシールズだが、菊地のガードワークに阻まれ有効打にならず。

3R。打ち合いからボディブローを当てた菊地だが、鼻から出血しドクターチェック。
再開後、菊地はタックルに入る。一度は切られるも、スタンディングバックから投げた
菊地がテイクダウンに成功。素早くバックに回りチョークを狙うも、シールズは
またしても上になりパウンドを落とす。菊地はオープンガードからスイープを狙い、
さらに下から鉄槌を連打し反撃。ブレイク後、菊地はパンチを当て前に出る。
勢いを失ったシールズのタックルを潰すと、パウンドのラッシュからパスガードに成功し、
ついにマウントを奪取。パンチを連打し、亀になったシールズに対しチョークを狙う。

高度な寝技の攻防が素晴らしかった一戦。全体的にペースを掌握しつつも
攻め切れなかった菊地だが、3R終盤のラッシュでポイント的にも文句なく勝利した。
ポジションを返されるリスクを考えるとバックに回るよりもハーフから押さえ込んだ方が
無難だったと思うが、一本を狙って果敢にパスし続けた菊地の積極性と技量は
高く評価されるべきだろう。当面は外国人相手の防衛戦が続くだろうが、
1月に修斗に参戦する青木が台頭すれば、珠玉の日本人寝技師対決が期待出来るだろう。


【第7試合 世界ウェルター級チャンピオンシップ 3回戦】
×ヴィトー・シャオリン・ヒベイロ(70.0Kg)
(2R3:12 インサイドガードからのパウンドによるKO)
○川尻達也(70.0Kg)

1R。宇野戦で自らを苦しめたインローの連打で攻める川尻に対し、
シャオリンも綺麗なパンチを打ち返していく。前に出た川尻は、両差しからヒザを放っていく。
投げを放つシャオリンだが、川尻はスタンド維持。ブレイク後タックルに入ったシャオリンだが、
川尻は倒れず。スタンディングバックに付いたシャオリンが執拗に投げを放っていくが、
川尻は瞬時に立ち上がってグラウンドに持ち込ませず、正面を向いてヒザ蹴りを叩き込んでいく。

2R。ローとハイキックでペースを握った川尻が、飛び込んで来た
シャオリンにパンチを当てる。ダメージが大きく後退するシャオリンに対し、
一気加勢にラッシュをかける川尻。ついにシャオリンはダウン!
スタンドを嫌いタックルに入るシャオリンだが、これを完全に読み切った川尻が潰して上になる。
ハーフマウントから重いパウンドを落とす川尻に対し、シャオリンは下で防戦一方。
足を利かして脱出を図るシャオリンだが、川尻はインサイドから良く伸びるパウンドで
畳み掛ける。川尻がパウンドを一方的当て続け、反撃不可能と判断したレフェリーが試合を止めた。

ハーフが危険であることは幾度も証明されているのにも関わらず、
殴られながらハーフから仕掛けていたシャオリンには、自身の技術への過信も
あったのかもしれない。ただそれを措いても実力差は明確。二年前から差が詰まって、
今は互角くらいかと思っていたのだけど、思っていたよりも逆に差が広がっていたことを、
そして川尻達也が−70kgでは世界最強であることを証明する完勝劇だった。川尻の勝因は、
下にならずにスタンド維持し、打撃で勝負を賭けるスタイルを貫徹したことに尽きるだろう。

「雑草ですらなかった」男が頂点に辿りついた瞬間に、ただ純粋に「強くなりたい」と
云う意志の力が天性の才能を凌駕した瞬間に、感動のあまり涙を流してしまったのは、
果たして僕だけであろうか?

異論を挟む余地無く世界最高峰の技術戦が展開された興行。
特に高谷と川尻に顕著だったが、とにかく下にならないと云う意識と、それに付随して
テイクダウンの際の攻防における技量が、非常に重要になっていることを再認識させられた。

総合格闘技と云う競技の最前線は、間違いなくここにあると断言出来る。
その一方で、絶望的なまでに閑散とした客席。総合が好きだと云うのなら、
なぜこれを見に来ないんだ?

問題は二年前から何一つとして解決されていないし、
むしろ帝国主義の攻勢が強まっている分だけ、情況は悪化の一途を辿っているのだろう。

いったいどうすればいいんだ? 絶望的な情況における一筋の光明とも云える
川尻の存在であるが、袋小路の中でいずれ彼の光も消え失せてしまうのであろうか…。




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