「スペシャルフォトレポート(前編)タクミ、KOTCライト級王者に!」
■団体:KOTC43 REVENGE
■会場 : カリフォルニア州サンハシント ソボバカジノ
■日時:2004年11月14日
■書き手:ひねリン EX:hinerin's

8月に鮮烈なるKOTCデビューを飾った「うしシューター」タクミ選手、今回の PPV興行ではタイトル戦です。もともとライト級の王者は「悪ガキ」ジョー・ス ティーブンソンだったんだけど、諸事情で王座を返上したため、強豪チャー リー・コーラーとの王座決定戦となりました。で、今回もまた自分はタクミ選手 の闘いを間近で見せていただくことができたので、前回同様にフォトレポートを やらせていたきたいと思います。


試合2日前の金曜日に、最強トレーナーの三好さんといっしょにLA入りしたタク ミ選手。その日と翌日土曜は、(前回と同じく)ホリオン・グレイシーアカデ ミーに設置されているケージで最終調整をさせてもらったそうです。その際に同 行したKさん(タクミ選手をKOTCに紹介した人)によると、まずホリオン次男の ヘナー・グレイシーが快く「おお、練習していけ!」と歓迎してくれ、さらにそ こに三男ハレクも登場したようなんですが、彼の目はなぜか完全に別の世界をさ まよっていて、交わした会話もほとんど意味不明だったとか・・・あの、ホリオ ン師、グレイシーダイエットって草OKなのでつか?? 


それはともかく、そんなタクミ選手と三好さんに、パレストラ大阪の生徒さんの Hさんも加わり、土曜の夜には計量のために、ド田舎の試合会場、ソボバ・カジ ノ近くのホテルまで移動。特に問題なく計量を済ませた後、タクミさん達一行が 某ファミレスへ夕食に行くと、なんとそこには、翌日の対戦相手、コーラーの一 行も居合わせていたとのこと。両者は計量時にすでに顔を合わせ握手しているの で、軽く挨拶だけして当然別テーブルに。やがて食事を済ませた後、さあ帰ろう と思っているタクミ選手のもとに、なぜかウエイトレスが「今日はあなた、誕生 日なんでしょ?」とチョコレートサンデーを持って来る。「え、頼んでません よ?」とタクミ選手がびっくりしてると、そのウエイトレスはコーラーのテーブ ルを指差し「あの人が、これをあなたにって」 つまりこれ、翌日の対戦相手か らのおちゃめなご挨拶(宣戦布告?)だったというわけで。見事な先制の一撃を もらってしまったタクミ選手、「明日血まみれになるくせに・・・」とこぼしつ つ、お腹いっぱいになりながらも、ありがたく(?)サンデーをいただいたそう です。


さてここで、そのおちゃめなコーラーさんについて少々。この選手の試合は何度 か生で見ていますが、とにかく爆発力があって強い、という印象があります。外 見はズバリ、アメリカの桑原卓也!! 顔も四角いし・・・。背はないけど、レ スリングベースのでガンガンに鍛えた体をしていて、柔術茶帯でもあるサンディ エゴの道場主。特にテイクダウン力と上からの攻撃力が高く、心も強い。三年前 にシャオリンと対戦しカットでTKO負けてして以来、しばらく試合から遠ざかっ てたけど、8月の大会で復帰し、テイクダウン&パウンドで圧勝。正直、タクミ 選手にはかなりイヤなタイプの相手だと思います。こちらの英語掲示板での戦前 予想では、当然の如くコーラー有利の声が大きかったけど、単なる地元びいきと かではなく、二人のそれまでの戦い方をきちんと比べた上での説得力のある意見 も多かった。計量時に顔を合わせたタクミ選手も、自信満々な様子のコーラーを 見て「強い奴のオーラが出てますね」と。


そんなこんなで試合当日の日曜、自分もタクミ選手一行に加わらせて頂きまし た。タクミ選手、見るからに調子良さそうで、実際にお話を聞いても現在心身共 に充実しているとのことだったんですが、なんと、日本に特注のマウスピースを 置いてきてしまうというありえない(笑)ミステイクを! そこで地元のスポー ツマートにて、1ドル49セントのマウスピースを購入し、茹でて噛んでマウス ピースを作るタクミ選手でした(写真1)。1ドル49セントで世界戦・・・。 それでも絶好調のタクミ選手の心は揺るがず「なるべく倒されないようにして、 打撃勝負でいこうかな、と。カウンターの膝も狙います。もし倒されて下になっ ても、対策をいろいろ練習してきたので大丈夫と思います」とのこと。


その後会場入りしたタクミ選手は、バックステージにて前回の相手であるクレイ ジーホースと再会・・・なんとクレイジーホース、超かわいい赤ちゃん(クレイ ジーポニー?)を連れてきてて、もうメロメロにかわいがりまくり。スーパー優 しいパパの顔をしてるクレイジーホースは、自分の試合直前までずーっとこの子 をあやしてました。「お母さんはどこに?」という誰もが思う(が尋ねる勇気は ない)疑問はおいといて、タクミ選手ともご機嫌に記念撮影(写真2)


・・・さて、ここで場面は一気に飛んで、いつものうしシュータースパッツを身 につけたタクミ選手のタイトルマッチの描写に移ります(両者の入場シーン (写真3) (写真4))。今回もまた、タクミ選手の試合後解説コメント付きです。この 試合以外にも、この日のPPV興行には注目のカードがいくつかあったのですが (阿部裕幸選手が出場するなど)、それについては後編で。

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1R。いきなりコーラーがパンチで前進し、素早いタックルでタクミを金網に押し 付けテイクダウン!(写真5) そのまま顔面とボディにパウンドを放つコー ラー。タクミはガードを取りながらディフェンス・・・やがてブレイク。「相手 を蹴って、距離を作って立とうと思ったんだけど、上からの圧力が予想以上にす ごくて脱出てきなくて、ブレイクを待つことにしました。アタマをうまく使って こっちのアゴにつけて押し付けてきたし。僕は下からのパンチのディフェンスは 得意な方なんですけど、それでも何発か食らって・・・グラウンドであんなに強 いパンチを受けたのははじめてで、一瞬、ヤバい! と思うほどでした。」(写真6)


スタンドで再開(写真7)。コーラーが再びパンチの連打で前に出る。タクミも 応戦するも、やがてコーラーの一発がマトモに入りタクミの腰が落ちる! が、 そのままタクミはコーラーに組み付いてタックルし、上を奪取。コーラーは下か ら膝十字や、バタフライから跳ね上げてのスイープを狙うも、タクミは冷静に対 処して上をキープし、インサイドガードからパウンドを連打。いやがったコー ラーが足を使って対応しようとするも、脇を差して横に飛んでバスに成功(見 事! (写真8))。サイドで完全に抑え込み、コーラーの右腕を捕えてアームロッ ク狙い! 最初はストレートアームバー、さらにV1アームロックの形に入るも (写真9)、コーラーなんとか腕を戻す。「(V1)アームロックはかなり極 まっていて、ミシミシ腕が鳴るのが聞こえたんですけど・・・」


その後タクミはハーフマウントの体勢で抑えて、(事前にレフェリーに何度もOK であることを確認した)上腕での打撃を、なんとか脇を差して体勢を返そうとし てくるコーラー(写真10)の顔に連打。上半身を大きく振りかぶってのド派手 な一撃も含め、何発もモロに入って大攻勢状態になるも、コーラーはとにかく打 たれ強い・・・ 1R終了。「(大きく振りかぶっての打撃は)こうすればお客 さんが盛り上がるかな、と思って。僕、実はけっこう冷静だったんですよ(笑)」

2R。コーラーがまたもやパンチで果敢に前に出る。タクミもそれを迎え撃つ形 で激しいパンチの応酬! 前に出続けるコーラーがタックルの形でタクミを金網 に押し付け、組み合い(写真11)。ここで浅く両腕を差したタクミのヒザが数 発コーラーのボディーに強烈にヒット(写真12)。やがて二人は離れて、そし て・・・

次の十数秒間に展開された二人の打ち合いの凄さを、俺は正直、どう言葉で表現 していいか分かりません。たぶん、エンセンvsフランクなんかもあんな感じだっ たと思う。お互い面を突き合わせた二人。コーラーのパンチがもろにヒットし、 タクミも打ち返し、それでもコーラーが打ち返し、さらにタクミがやり返 し・・・場内大熱狂、セコンドの三好さんが「タッくん打ち合うなー!」と絶叫 する中、傷付いた顔のタクミと、傷付いた顔のコーラーが真っ向から殴り合い続 ける(写真13)。コーラーが首相撲からアッパーでタクミを連打すれば、今度 はタクミが逆に同じ技でコーラーを殴る・・・(これは高山vsフライばりか)。 「(三好さんの声は)聞こえていたんですけど、コーラーがもう、ものすごい男 気のある顔でパンチを打って来るんですよ。今までの試合のヴィデオでは、けっ こうすぐに組み付いていた奴が、僕との試合では正面から打ってきてくれた。も う、ここで自分も打ち合わなきゃ男じゃないな、と思って。お客さんも盛り上 がっているし、効かされてヤバくなるまでは行こう、と。」「なんというか、あ の時間はドラクエみたいでした。まずコーラーの攻撃があって、次に僕の攻撃の 時間。そして次にまたコーラーの攻撃が、という感じで。頭を抱えてアッパーを 打たれたら、僕も同じので打ち返して・・・」

試合描写から外れた個人的なことを書いて申し訳ないんだけど、自分にとって、 感情を思いきり入れながら間近で見たこの十数秒の時間は、普通の意味で感動す るというか、「この人がこんなにやってるんだから、俺も頑張らねば」的な感想 を持てるようなモノではなかったです。むしろ、自分の日常とはまったく次元の 違う世界の出来事の「強度」そのものを目の当たりにして、言葉を失ってしまっ たというか・・・「倒されてほしくない=打ち合いはやめてくれ」的なハラハラ 感と、そういう理屈を一切超えちゃうよーな「凄すぎるモノ」に触れてしまい絶 句する感覚が一体となった・・・まいいか。


とにかくそんな時間の後、先に折れてテイクダウン狙いに組み付いていったのは コーラーの方。そのまま金網際に押し込まれ((写真14) 我々の目の前に、ど どーんと二人の肉体が雪崩れ込んできた瞬間!)、テイクダウンされたタクミ は、うまくコーラーの体を蹴って距離を作り、足に組み付いてタックルにつなげ 逆に上に! ここから一気にタクミはパウンドのラッシュで勝負に。これがもう ぼこぼこ当たる。「僕はリーチがあるので、パンチが届くっていう点では有利 だったかもしれないですね。この状態での当て方もいろいろ練習してきたし」

しかし、恐るべきタフネス(&四角い顔)を誇るコーラーも下から必死に対処 し、足を効かせて十字や三角を狙う・・・も、タクミはそれを問題なくクリア し、ヒザ抜きパスを決めて、サイドから、そしてマウントからさらなるパウンド 連打(写真15)。数知れぬパンチがコーラーの顔面にモロにヒットし、三好さ んはレフェリーに「試合止めろー!」と大声でアピール。それでもまだ抵抗を続 けるコーラー。タクミはニーオンザベリーからさらに連打を浴びせ、とうとうレ フが試合をストップ! 試合終了と同時にリングにひれ伏すタクミ(写真16)。そして精根尽き果てて横たわるコーラー・・・(写真17)。2R2分 35秒、場内大熱狂の中、日本人初のKOTC王者がここに誕生((写真18) (写真19) )。「(パウンドを放っている時)もうコーラーの目が完全にイッていたん ですよ。それでも(彼の)手足だけは柔術的な動きで抵抗を続けてて・・・あん な凄い選手と戦えて本当に光栄です」

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試合後のタクミ選手、あれだけの打ち合いをしたんだから顔は当然傷だらけ(写真20)だけど、試合後のドクターチェックでも特に問題はないとのこと。会場 内を歩くたびにファンから祝福の声をかけられ、売店ではサイン攻めに遭ってま した。試合後の控え室では、傷だらけの顔で呆然と一人座っているコーラーにも 挨拶。タクミ選手が「あなたは本当に強く、尊敬しています。あなたも自分の道 場をお持ちと聞きましたが、私も日本で道場をやっています。今後もお互いがん ばってやっていけたらいいなと思っています。」と言うと、失意のコーラーは力 なくうなずくのみ。そして一言「できるならいつか再戦したい。修斗のリングで も・・・」と。そして二人は握手しました。

そしてホテルに戻った後の、ささやかな祝勝会の席にて、タクミ選手は師の中井 裕樹先生に国際電話で勝利の報告。「松根選手に続く、パレストラからの二人目 の世界王者」誕生を喜んでくれる中井先生の声を聞くと、タクミ選手の目からみ るみる涙が・・・中井先生とは、タクミ選手にとってそれほどの存在なんですね。

ってことで、相手の持ち味を封じ込めての圧勝だった前回に続き、今回は観衆を 魅了する大激闘をKOTCのリングで繰り広げた末、タクミ選手はついに王者になっ てしまいました。この日のタクミ選手、お世辞抜きで、その体に修斗の神が宿っ ていたかの如き強さでした。コーラーと凄絶なる殴り合いを繰り広げた打撃力& 魂もさることながら、下になったときのディフェンス力、上をキープする際のボ ディバランス、的確かつキレのあるパス能力など、(一応自分も柔術をやってい る者として)本当に惚れ惚れします。そして(俺にはよく分からん)当たりまく るパウンドの技術・・・。タクミ選手自身「最近、自分がどんどん強くなってい るのを感じます。(打撃も寝技も)すべてにおいて」と話してくれましたが、素 人目にもそうなんだろーなと思います。この日のタクミ選手はおそらくタクミ史 上(笑)一番強く、最高に充実していたはず。そしてこの試合を経て、ますます 光を増してくれることでしょう。ちなみにこの興行、日本語版DVD製作スタッフ の方々が来ていたので、そのうち日本でも見れると思いますよ! 


次、タクミ選手の勇姿がどこで見られるのか、本当に楽しみです。 再びこの KOTCの舞台に戻って来るのか、ホームリングに凱旋するのか? それともさらに 上の舞台に進出するのか? ならばそれは米国なのか日本なのか? ひとつ言え ることは、タクミ選手は非常にアメリカ向きの選手のようです。そのことは本人 も認めています。「修斗のリングでは、お客さんが静かだからつい自分も堅実に 戦ってしまうんですよ。でもアメリカだとファンの騒ぎ方が凄いから、僕も燃え てどんどん行ってしまうんです」と。


ともあれ、KOTC世界ライト級新王者(正式名称に「ワールド」がついてるタイト ルなんです)、うシュの今後の活躍に期待しましょう!

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おまけエピソード:試合翌日の朝、どっかで食事をしたいなと思ってタクミ選手 と三好さんが外をうろついてると、子連れの女性が近付いて来て「あなた! 昨 日ケージで戦った人でしょう! 素晴らしかったわ! え、食べる場所を探して いるの? じゃあ私のクルマに乗って!」ということで、スシバーのあるモール にわざわざ連れて行ってくれたそうです。それだけタクミ選手の試合は、こっち のファンの心をがっちり掴んだってことでしょう。


おまけ写真:(写真21)試合後ホテルに戻る前に、顔の傷を消毒するための薬 品を求めてドラッグストアで買い物するタクミ。こーやってみると普通の兄ちゃ んぽい。あれ? でもお腹には・・・。

(この日のその他の試合については後編で)




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