注目の新団体?旗揚げ
■団体:我闘姑娘
■日時:2004年10月30日
■会場:新木場 1st RING
■書き手:凸ユーレイ

 女子にかぎらず、近年ますますフリー選手が増えているマット界だが、プロレスを「団体で」見せるそもそものメリットの一つは、固定された顔 合わせのなかで連戦を続けることにより、試合内容が練れて完成されていくこと、さらに言えば打ち合わせ等を含んだ事前練習がいつでもできるこ と、にあると思う。NOAH、ドラゴンゲート、JWP、実質的にはフリーを囲い込んで鎖国的な団体だったGAEA、見たことは少ないがWWE、などがそのメ リットを活かしている団体なのではないか。


 さくらえみは、上記のことと同様にかどうか定かでは無いが、むかしから「団体」にこだわり続けたレスラーである。IWA時代には後輩の西堀の 成長をうながして継続的に自分と争えるようにと言い続け、IWAを退社してもフリーにはならずFMWへ、そこでも、他団体からのゲストとの試合よ り、中山香里にこだわり続けた。

 そんなさくらの作った、小さいながらも“自称”団体の「我闘姑娘」旗揚げ戦。連戦などとてもおぼつかず、自前の道場もなく都内各所でジプ シー練習の日々、それも本業(OLだったり大学生だったり)を持つ選手たちは定期的に参加できなかったりする、そんな団体ではあるのだが、長 い間の念願であった自前の団体で、さくらがどんなポリシーを見せるのか、興味深い。

 もう一つ、楽しみだったのは、小学生軍団さくらえび☆きっずの試合。04・5・5NEO後楽園で、あれだけよく練られた完成度の高い試合を見せられては期待しないわけにいかない。


 旗揚げ戦の柱は、所属選手全員による、メイン出場権争奪トーナメント。  入場式でいきなりさくらが号泣。この日を迎えられた感激によるものかと思ったら、それだけではないようで、トーナメントでデビューする予定 だった戸村真実が前日に棄権、さらに女子大生レスラー蒲原唯が当日の練習中に両足首を負傷して出場不能という、2つのアクシデントで興行が不 完全なものになってしまったという、悔しさと申し訳なさからでもあったよう。  


 ともあれ 1st RING 超満員(発表 400人)。

1.トーナメント・Aブロック1回戦
○市井舞(12:43回転エビ固め)×なつみ知香

 OL兼業レスラーなつみはフットボールジャージに白の短パン。舞は黒のTシャツに革のベスト、迷彩風の短パン。

 序盤は新人同士らしい、技を限定した戦い。なつみが先に、得意技の各種ネックブリーカーを仕掛け始める。カウンターのフライング式、飛びつ き式、スイング式。スイング式でマットに叩きつけ、そのまま自らブリッジしてフォールを取りにいった動きは新鮮だった。技の形が綺麗。


□由藍郁美(棄権による不戦勝)■戸村真実
2.同・Bブロック1回戦
○さくらえみ(8:45シュークリーム)×高橋李佳(デビュー戦)

 入場前の舞台裏がビジョンに流れる。さくら「20歳過ぎた女が泣くのは見苦しいと高橋に言われました。。。ブッ殺します!」。

 高橋は中学1年生、12歳だがそこそこ大人の身体になっていて、胸もある。初代さくらえび☆きっずの一員で、 03年の全女35周年興行(横アリ)ではセコンドについていた はずだから、試合中に米山に追いかけられて泣いたり、試合後は曲に合わせて踊ったりしていたということか。

 ゴングが鳴ってすぐ、「ババア」と暴言を吐く高橋。ドロップキック連打。グラウンドで首を取られても相手の身体の上で側転して脱出。

 動きが素晴らしい。フォールを返すブリッジが見事、逆エビをかけられても身体が柔らかいのであまり効いていなさそう。中盤、エプロンで側転 して場外へムーンサルトアタックを放ったのには観客皆驚愕。


 「りーちゃん」「りーちゃん」と、北側舞台上の客席に陣取った現役きっず達の応援がやたらうるさかったのが唯一マイナス(笑)だったぐら い。特に、フォールされてカウント2までグッタリしているのを3でパッと返すとか、試合後のマイクで再び「おいババア」と言ったかと思うと 「えみさんこれからもよろしくお願いします」コロッと手の平を返してみたりとか、演技が自然。出世頭の舞でさえ未だに肩に力が入りっ放しのよ うな、段取りっぽい試合しか出来ない大人の先輩達の中で、もっともプロに近いとさえ言える。子どもらしく、緊張せずのびのび、人に見られるこ とが好き、天然で何も考えていないのか、自然に「プロレスの動き」が出来るというのは天性のものだろう。


□零(蒲原負傷の為不戦勝)■蒲原唯

 由藍に背負われて欠場の挨拶を行なった唯、号泣。


3.▽5対1ハンディキャップマッチ
○元気美佐恵(NEO)(12:19ラリアットから)×松尾永遠(NEO)、さくらえび☆きっず(あいか・ひなた・まき・ゆうき)

 全員で騎馬を組んで元気と手四つ。
 両側から4人が押さえつけ、背中に乗ったきっずの1人がバク宙。
 松尾のピンチに1人ずつ出てきてカット、怒った元気に5人まとめて吹っ飛ばされる。
 コーナーに追い詰められてチョップされるが、少しずつズリ下がって避ける。
 レフェリーは、きっずの1人のお母さん。元気の攻撃が大人げないと何度も止めようとする。従わない元気の背中にとうとうドロップキック。

 5・5後楽園と同じネタもあって、衝撃はなかったものの、動きは変わらずに良かったきっず達。コルバタ、クリスト、ウラカンラナ、カサドー ラ、逆さ押さえ込みからもう1人飛び込んできてジャックナイフの複合技。

 松尾と元気も地味にいい仕事をした。特に元気。開始後すぐ「お前ら相手じゃ2カウントでももったいない。1カウント取れたら勝ちにしてやる」
で、すぐにドロップキックから全員に押さえこまれて、土下座して謝り2カウントマッチでに訂正してもらったり、子どもを2人いっぺんに両脇に抱 えてジャイアントスイングしたり、硬派なバチバチからお笑いまで、万能選手の面目役如。


 休憩。
 この日、リングアナウンサーもデビュー戦だったようだが、入場時や勝利者の名前をコールし間違えるという、リング上を見てさえいれば犯しよ うのない、考えられない間違いを連発していた。何かを棒読みでもしていたのか? ほかに音声のミスなどもあり、出場予定者の突然の怪我で段取 りが変わったのか、打ち合わせが充分に出来なかったにしてもひどすぎた。リングアナが素人過ぎる。せめてもう少し、プロレス自体を知っている 人じゃないと。


4.トーナメントAブロック決勝戦
○市井(11:39回転エビ固め)×由藍

 何度も仕掛けられた回転エビを、付き合わずヒップドロップで潰す。なつみが仕留められた、コーナーへの突進を切り返しての回転エビも踏ん張 り、背中に舞をぶら下げたままノッシノッシと歩く郁美。腹が出てるのは気になるが、大型である。サソリ固めから、相手の両腕をもホールドして 吊り上げての変形カンパーナ、ネックハンギングをそのままベアハッグに移行、ダイビングセントーンなど、パワーと体格を生かして押しに押す。
が、由藍にデビュー戦白星を献上してしまっている市井が、雪辱の逆転勝ち、メイン出場権獲得。


5.同・Bブロック決勝戦
○さくら(12:29シュークリーム落としから)×零

 入場時、エプロンでしばし俯き、精神統一を図っているように見せかけて、先に入場していたさくらに向けいきなりスワンダイブ式ドロップキッ クで奇襲した零。続けざまにキャンドル(トップロープ上で側転して放つドロップキック)からプランチャを決めてみせた。
 零は終盤にも再び綺麗なキャンドルを成功させる。ともするとこれまでは、間合いを見過ぎて戸惑ったり、技に思い切りが足りずミスしたり、が 目についてしまう選手だったが、この日は攻防とも途切れることなくスムーズに動いていた。ただ、それは、常に一緒に練習しているさくらが相手 だったからでもあるので、他団体の、ふだん顔が合わないような選手相手でもコレが出来るかどうか。今後の課題か。

 零のデビュー戦以降、何戦しても分が悪かった相手に、大事な旗揚げ戦で星を返したさくら。この日のテーマはリベンジか? とするとメインは …

 フィニッシュは、高橋をしとめたのと同じ、Wアームから担ぎ上げてカナディアン背骨折りさらに敵の両足もホールド、という技から、自ら尻も ちをついて相手の背骨に衝撃を与える。


6.井上京子(NEO)、○市井(24:40二段式ハイキックから)×さくら、桜花由美(JD)

 青コーナー、期せずして?Wさくら。華のあるコンビ。
 桜花ひさしぶりに見たけどデカイなあ。大向と同じぐらいデカイ(笑)。まだ受け身で身体が流れたりしてたけど、ドロップキックが良くなって たし、何より、試合数をこなしているせいかリングでの佇まいに余裕というか周囲がよく見えているようで、脇に回っていい仕事ぶりだった。

 試合序盤から中盤にかけての、桜花〜さくらの連続ジャイアントスイングに京子がスピニングバックブリーカーでお返ししたり、吊り天井の応酬 (さくらが京子を吊り上げたのは見事だった)、京子のダンシングツリーをめぐる攻防など、コミカル風味を混じえたやりとりが、次第に終盤、大 技の打ち合い、凌ぎ合い、パートナーのカット合戦、典型的な女子プロレスの熱戦になって、手に汗握りました。

 はじめのうち、とりあえず一撃だけクロスボディを打ってチェンジ、とか、捕まり続けて最後に1発だけ張り手を返してチェンジ、などしていた 舞も、終盤、桜花と京子がカットし合ってさくらとの一騎打ち状態に。
 デビューして半年の間、この日のトーナメントでも、ドロップキック、ボディスラム、スリーパー、逆エビ、クロスボディ、ほとんど基本技だけ で戦ってきた市井。わずかに得意技といえるのは回転エビと、正面からの二段蹴りぐらい。それがこの試合の後半、同じ二段蹴りのフォームから回 し蹴りを出しはじめ、相手の側頭部を捉えだす。
 ともに3試合目の2人、舞はエプロンから飛び込み式のボディプレスを、さくらはポスト最上段でのシュークリームを、ともに身体が崩れてミス。
消耗戦。
 最後の最後は回し蹴り。

 市井「この勝利は、全部京子さんのおかげです」京子「そうじゃない、舞が自分の力で掴んだ勝利だよ、なあ皆な(客席に)」「こんな素晴らし い旗揚げ戦に呼んでくれてありがとう。私達も負けません」市井「さくらさん!これからもっと練習して、もっと強くなりたいです。皆さん(客席 に)よろしくお願いします」。ちょっと京子はクサイな。笑

 さくら、全選手をリングに上げる。泣く。唯も泣く。


 これまで、他団体出場時には負けが込み、後輩にも敗れていた舞が、念願の旗揚げ戦でトーナメントを勝ち抜き、メインでも勝利。なんとなく途 中から流れが読めるような、また進行の不手際もあったりしたがそれでも、典型的なハッピーエンドは良いものである。天才中学生レスラーも見ら れて、パッケージとしての興行には満足できた。


 我闘姑娘第2回興行は2・13板橋グリーンホール。進歩のない、ただ同じ事だけでは不満が残りそうだが、インターネット投票によるカード決定、 さらなる新人のデビュー、メインはイリミネーションと趣向が凝らされている。プロレスの内容面でカギを握っているのは、身体能力の高い零だと 思っているのだが、それについてはこの間の何試合かを見る限りなかなか厳しいかも。




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