ピラニアとグレイシーとクレイジー・ホースと
■団体:PRIDE武士道
■日時:2004年10月14日
■会場:大阪城ホール
■書き手:フリジッドスター

本当は見る予定なかったんだけど、当日いきなり龍頭さんから電話かかってきて、
観戦のお誘いを受けた次第。それならと仕事も早々に切り上げてみんなで見てました。


○マウリシオ・ショーグン(92.3kg)
(1R6:02 KO)
×滑川康仁(87.7kg)

ファーストコンタクト、ショーグンのヒザ蹴りの蹴り足を掴んでテイクダウンを
狙う滑川だが、腰が重いショーグンは倒れず。差し合いからヒザ蹴りをボディへ叩き込む
ショーグンがペースをつかみ、コーナー際で押し倒して顔面へヒザ。
滑川は何とか立ち上がるも、ショーグンの左ストレートでダウン。さらにショーグンは
ロープ際で強烈な顔面踏みつけ(コンドウ?)で攻撃し、そのままマウント奪取に成功。

マウント、バックマウントからパウンドで攻め、チョークで一気にフィニッシュを狙う
ショーグンだが、滑川はリバースし上に。

だが滑川はインサイドから攻め手を欠き、逆にショーグンは下から十字狙い。
滑川は得意のフロントチョークで勝負に出るが、ショーグンはあっさりと首を抜いて再び上に。
パウンドを交えつつ、ハーフ、サイドと流れるようにパスすると、カメになる滑川に
顔面へのサッカーボールキックや踏みつけと云った危険な攻撃を連発する。
滑川も足関を取りに行くが、外したショーグンはマウントからチョーク、十字と
果敢に攻めていく。極めきれないと判断したのか、打撃で一気にラッシュをかけるショーグン。
最後はコーナー際で強烈なサッカーボールキックとパウンドがクリーンヒットするのを見て、
レフェリーが遅すぎるストップをかけた。

試合前「死闘と呼ばれる試合をしたい」と語った滑川だったが、
違う意味で「死闘」になってしまった(苦笑)。実力差は明らかで、幾度となく危険な攻撃が
為されていたことを鑑みると、レフェリーのストップはあまりにも遅すぎたと思う。
フロントチョークと足関の一発逆転以外に武器のない滑川に勝ち目はなかったが、
それでも気持ちの強い好選手であるだけに、遅すぎるストップで選手生命に悪影響が
出ないことを祈りたい。ショーグンはまだ成長途上にあるのだろうが、
際の打撃の当て勘やラッシュを続けるスタミナはヴァンダレイに優るとも劣らないものを
持っているし、グラウンドでのコントロールも実に巧みだった。

ヴァンダレイやニンジャが−93kgでやっている現状、−83kgまで落としてライト級王者を
目指して欲しい。それが無理なら、88kg契約でヘンダーソン戦を希望。スタンド打撃では
6:4くらいで有利に立つと見た。



○戦闘竜(128kg)
(1R0:21 KO)
×マル・”ザ・ツイン・タイガー”・フォキ(102kg)

戦闘竜の「角界の裏番長」と云う異名には、果たしてどのような意味が
内在しているのだろうか? 常識的に考えれば、プロレス団体における「ポリスマン」的な役割、
すなわち星の売り買いでわがままを言う力士に痛い目を会わせる役割を意味しているのだろうが。
などといったことを考えている内に、戦闘竜のフックが炸裂して。

Smells like Megaton Spiritな試合だったが、戦闘竜は結構強いと思います。
ちゃんと見てパンチ打ってたし。



○ルイス・”ブスカペ”・ジュニオール(71kg)
(2R5:00 判定3-0)
×今成正和(67kg)

1R。テイクダウンに成功したブスカペだが、今成は下から十字狙い。
そのまま足を刈ってのスイープを狙う今成だが、ブスカペはポジションキープしサイドから
ボディへパンチを連打。今成は得意とする潜ってからの足関を狙うが、
ブスカペはこれを嫌って逃れる。テレルのような上四方からのチョークを狙うブスカペだが、
今成はこれを外してガードからの十字。ブスカペ、インサイドからパウンドを放つも、
今成は巧みなガードワークで有効打を許さず、逆に下からの十字でプレッシャーをかける、
自分から立ち上がってパンチで距離を詰めるブスカペだが、今成は引き込んでガードに。
ブスカペ、インサイドから攻め手を欠き膠着。再度スタンドを選択したブスカペが
飛びヒザを繰り出すが、今成はスライディングでかわし、もぐって足関を狙っていく。
これを潰したブスカペは、ニーオン、サイドからマウントを奪取し、阿部兄を葬った
あの肩固めを仕掛けるが、ロープが邪魔をし足をまたげず、極めきれずにラウンド終了。

2R。ミドルを放つブスカペだが、今成はもぐって足関。
セコンドに付いた”世界の”所さんの声が響き渡る。ヤノタクばりに半身に構える今成に対し、
ブスカペは思うように攻められず。もぐってヒールを狙う今成だが、
ブスカペは強引に足を抜いて逃れる。テイクダウンしたブスカペだが、
インサイドで休んでる印象。ブスカペが有効な攻め手を欠いたまま、結局時間切れ。
1Rと比べるとやや弛緩した内容のラウンドであった。

1R終盤の攻勢と、全体的に上を取った時間の長さを鑑みれば、妥当な判定だろう。
果敢に足関を狙った今成の積極性も評価すべきだが、2Rのそれは掛け逃げ的な印象もあった。
ただブスカペはインサイドからのパウンドもパスガードも思うように出来ず、
現状では五味の相手は務まらないことを露呈した感じ。逆に今成は、
大場戦と比べると、VTルールでも通用する成長ぶりを見せた。ウェイト的に−70kgでやるのは
厳しいと思うし、ファビオ・メロと65kg契約でやれば、
噛み合った好勝負が期待出来るのではないだろうか。



○美濃輪育久(85.8kg)
(2R5:00 判定2-1)
×上山龍紀(76.6kg)

1R。上山がコーナーに詰めてヒザの打ち合い。差し合いからテイクダウンした美濃輪が、
ハーフからの重いパウンドをボディと顔面に打ち分ける。フルに戻した上山に対し、美濃輪は
ミレニアムコーナーを狙うが、これはルールで禁止になったらしく、
あっさりとドントムーブで中央に戻される。イノキ-アリから足を割ってハーフに
パスした美濃輪、パウンドで攻める。嫌がってカメになった上山のバックに付いた美濃輪だが、
上山はヒール狙いからポジションを返すことに成功。ヒールは極まらず、
美濃輪はインサイドに。立とうとする上山に対し、美濃輪はバックに回り、
更にがぶりからヒザを叩き込む。逃れる上山だが、美濃輪は再度テイクダウン。
ここでリバースに成功した上山だが、パウンドには迫力もなく、パスガードのスピードも遅い。
それでもハーフマウント奪取に成功したが、美濃輪がリバースし上に。

2R。引き込み気味に下になった美濃輪が三角、ヒザ十字を狙うも、
これを潰した上山はバックに。攻めあぐね、逆に美濃輪が上になるも、膠着。
上を制す上山だが、そこからの攻め手を殆ど欠いていた。一方の美濃輪もガス欠気味で
散漫な内容に。上山がサイドからヒザを打ち込み、がぶりからスピニングチョークを
狙うも失敗し、試合終了。恐ろしくつまらない試合だった。

マストじゃなければドローもあり得た内容だったが、
それでも美濃輪は田村を指差し対戦をアピール。無視して引き上げる田村だったが、
内心は受ける意思充分だろう。だってこの試合を見た後じゃあ、負ける気がしないだろうからね。
今から大晦日決戦→新規ジム設立の皮算用(笑)をしていると見るのは、穿ちすぎなのであろうか。
美濃輪の動きは進歩を見せているのだが、なんつーか、二世代前の技術から一世代前の技術への
「進歩」と云う感じなんだよね。上山も体重差を鑑みれば善戦したのだが、
決定的にオールドスクールな印象は否めず。美濃輪は82kg契約で岡見と、
上山は76kg契約で井上とやれば良い。両者ともに化けの皮が剥がれるだろうと、
意地悪な僕は思ってしまうのですよ。



○イゴール・ボブチャンチン(98kg)
(1R4:02 KO)
×藤井軍鶏侍(98.5kg)

スタンドで睨み合いが続いた後、フックをかわした藤井がタックルに入る。
腰の重いボブががぶって、4ポジからヒザを連打。逆にボブは両足タックルでテイクダウンし、
インサイドからフック軌道の強烈なパウンドで攻撃。連打で藤井の動きが止まると、
ここで不可解なブレイクが。消極的と云う理由で藤井にイエローが提示されて、スタンド再開。
ボブが左フックからハイキックを当て、藤井はよろめきながら後退。
更に追撃のフックと顔面蹴りで、レフェリーが試合を止めた。

ボブチャンチン完全復活!…と言いたいところだが、このレベルの相手に勝っても
特に何か言えるわけでもなし。93kgまで絞ればミドル級戦線の台風の目になるだろうが、
本人にその意思があるかは微妙なんだよなー。リデル戦とか見たいんだが。



○長南亮(82.5kg)
(2R5:00 判定3-0)
×カーロス・ニュートン(82.8kg)

1R。テイクダウンに成功したニュートン、長南の足関狙いを潰し、
流れるようなパスガードで一気にマウントへ。長南が返して上になるが、
ニュートンは下からオモプラッタでコントロールする。長南はインサイドに入ると、
パウンドを連打。ニュートンも下からホールドし防御すると、隙を見て立ち上がる。
投げの打ち合いを制した長南、上四方からヒザを狙うが、ニュートンは
ポジションを返しマウントへ。ブリッジで脱出を試みる長南に対し、ニュートンは
カウンターの腕十字でキャッチ。完全に極まっているかに見えたが、長南は驚異的な粘りを見せ、
ニュートンが手首の角度を変える隙を付いて引き付け、奇跡の脱出に成功。
逆にマウントを奪った長南は、掟破りの腕十字で逆襲する気迫のこもったを攻撃を見せる。

2R。ローでぐらついたニュートンにハイキックを打ち込んだ長南。
後退するニュートンに対し、パンチとティーカオのラッシュで圧倒する。
凌いだニュートンはバックマウントからチョークを狙うが、ダメージが大きく動きに
精彩を欠き極めきれず。ブレイク後、長南が飛び込みながらのフックを当て、
再度長南が攻勢に出る。崩れるニュートンに対し、横四方・上四方からのヒザを連打し、
さらにマウントから強烈なパンチを落としまくる。ニュートンの動きが止まり、
あとは時間の問題と思われたが、ここでラウンド終了のゴングが鳴った。

1Rのキャッチと相殺すれば、マストでなければドローと云う線もあったが、
マストなら判定は明らかに長南。正直ここまで強い選手だとは思わなかった。
腕十字を凌いだシーンを見ても分かるようにとても気持ちの強い選手だが、長南が凡百の
「根性系」ファイターと異なるのは、気持ちの強さで最後には上を取れるところだろう。
そして実は寝技の技術も相当高く(U-Fileを辞めてから向上著しい)、パウンドも強力。

言うまでもなくスタンド打撃は卓越しており、当て勘とラッシュ力は一級品。
ニュートンがオールドスクールであることを鑑みても、その実力は文句なく
評価に値するだろう。いきなり前言を翻すようで申し訳ないが、−82kgで岡見に勝てそうな選手、
一人だけいたんだね。もっともっと強豪相手との試合が見てみたい。
キャラ的にバローニかマレイとの試合なんか見てみたいな。



○クラウスレイ・グレイシー(82.5kg)
(2R1:02 腕十字)
×桜井”マッハ”速人(82.8kg)

1R。長いリーチからのジャブとローで距離を作るクラウスレイに対し、
マッハは近距離からのヒザで攻撃。マッハがテイクダウンに成功するが、
クラウスレイはクロスガードからの十字狙いでプレッシャーをかける。攻めあぐねたマッハが
イノキ−アリから飛び込むが、受け止めたクラウスレイは逆に上になる。
ハーフマウントから攻め手を欠き、一度はマッハが立ち上がるが、クラウスレイは
テイクダウンし再度上に。クロスでガッチリと固めるマッハに業を煮やしたのか、
クラウスレイは自ら立ち上がると、イノキ−アリからの顔面蹴りをヒットさせる。
ブレイク後、差し合いからマッハのボディへ強烈なヒザ蹴りが炸裂する。かなり効いていたが
マッハは攻めきれず、逆にクラウスレイは下がりながらもパンチをヒットさせていく。
タックルでテイクダウンしたクラウスレイがパスガードを狙うが、マッハはハーフガードを
キープする。クラウスレイは何とかサイドを奪取するが、マッハも即座に対応しフルに戻す。

2R。テイクダウンからサイド、マウントと瞬時にパスしてみせたクラウスレイ。
マッハはTKシザースで返そうと試みるが失敗。クラウスレイ、安定感の有るマウントから
パンチラッシュ。カメになったマッハの動きに合わせ、バックマウントから十字を狙う。
ひっくり返し、マッハのクラッチを切ると、腕が伸びきってマッハは即座にタップアウト。
クラウスレイの速攻が光った見事な一本勝ちだったと言えよう。

クラウスレイはやっぱり素晴らしい。クロストレーニング本格導入以降の
「新世代グレイシー」と云う触れ込みらしく、確かにスタンド打撃もなかなかの技術を
持っているのだが、それ以上にテイクダウン、パスガード、極めなど基礎的な
グラップリング・スキルが高い印象を受けた。ホドリゴといいシーザー・グレイシー勢といい、
ここ最近のグレイシーの巻き返しは著しいが、UFCはテレル、K-1はホドリゴが席巻するのなら、
PRIDEではクラウスレイの更なる躍進に期待大だ。一方敗れたマッハ。
「グレイシーの戦い方はツマラン」云々言ってたが、キミのやってるガードポジションは
いったい誰が世に広めたものなのか考えなさい。それはさておき、適正体重なら…と言いたい
ところだが、もうトリッグ戦のイメージを彼に求めるのは酷なのだろうか。



○五味隆典(72.9kg)
(1R5:52 チキンウィングアームロック)
×チャールズ・”クレイジー・ホース”・ベネット

いきなりコーナーポストに座り込むクレイジー・ホース。
コメントや入場なんかを見る限り、違う意味で”クレイジー”な匂いがプンプンと漂ってきて、
こりゃあ放送禁止なんじゃないのか(笑)。それはともかく、試合はクレイジー・ホースが
クレイジーな身体能力(タカハシさん曰く「PRIDEマネーでよいクスリを入手した効果」)で
クレイジーな粘りを見せ、意外にも面白い内容に。

テイクダウンしサイドからのヒザで攻勢に出る五味だが、押さえ込み切れずに
クレイジー・ホースがクレイジーな脱出に成功。更にクレイジーなバックドロップで反撃!
打ち合いで的確な打撃をヒットさせたのは五味だが、クレイジー・ホースもクリンチからの
クレイジーなフックで五味をぐらつかせる。それでも立ちレスでは圧倒的な差があり、
五味はクレイジー・ホースをテイクダウン。素早いパスガードでマウントを奪取すると、
強烈なマウントパンチでクレイジーホースの息の根を止めに掛かる。
パンチで意識が薄れた(と云うより、クスリが効きすぎて眠くなった?)
クレイジーホースの腕を捕らえ、一気にアームロックで締め上げる。
反撃不可能と見たレフェリーが試合を止めた。

極まっていたかは微妙だし、ストップが早かった感はあったが、
桜庭 vs. ホイラーと比較すれば、五味のアームは残り時間を鑑みても、
相対的に説得力はあったと思う。クレイジー・ホースは入場を見た瞬間はどう考えても
高田モンスター軍入り確実だと思われたが、どうしてなかなかクレイジーな選手で、
一介の金魚ではない潜在能力を秘めているかもしれない。ただ桜庭戦のランペイジのように
無理な減量を強いられていた訳でもなさそうだから(後で告白したりして:笑)、
現状ではトップどころとの実力差は明白だが。一方の五味は序盤はキャリー気味に流していた感も
あるが、この相手なら短時間での完勝が求められたので、個人的にはイマイチ。
ブスカペ戦が実現すれば勝てると思うのだが、例えば修斗に残った/戻った川尻や宇野と戦えば、
彼らの後塵を拝することになると云う評価は過小なのであろうか?



平日興行と云うこともあって、客席は惨憺たる入りだったようだ。
かつてターザン山本は「地方で手抜きをしている」と新日本プロレスを批判したが、
今PRIDEに同様の批判を行う者がいないのは、取材拒否を恐れてのことなのだろうか?
ピラニア、クレイジー…じゃなくて(笑)グレイシー、そしてクレイジー・ホース(笑)と、
なかなかの優良コンテンツが揃って、試合そのものはなかなか見応えがあったし、挑戦試合を
廃した効果で興行もコンパクトにまとまったが、やはり何かが物足りない。端的に言えば、
武士道の良い点は各選手の身の丈にあったカードを組むところであり、悪い点は各選手の
身の丈に合わない大箱で興行を打つところである。

入りが悪く、また客席に試合が伝わらないから、会場に地熱が沸かないのだ。
日本 vs. 世界と云う手垢にまみれたコンセプトの無意味さは散々指摘されているが、
一方で日本人対決を組んでも美濃輪 vs. 上山のような凡戦になってしまう。
かといって、例えば宇野 vs. 川尻や岡見 vs. 石川を武士道で組んだとしても、
正直あれだけの興奮を会場に齎せたかと言うと、やっぱ後楽園ホールとは違うと思うんだよなー。

武士道は可能性に満ちたシリーズだと思うのだが、現状、抜本的な改革を
しない限り迷走を続けていると斬られてしまっても仕方がないのかもしれない。




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