光留より光った岡見の光
■団体:パンクラス
■日時:2004年10月12日
■会場:後楽園ホール
■書き手:フリジッドスター

僕の職場は水道橋から歩いて15分くらいの近場にあって、平日でも仕事を早めに
切り上げれば、充分第一試合に間に合うのです。もう最近はパンも修斗も平日興行が
定番になってきた感が強いが、雨にも負けず観戦してきました。


【第1試合 フェザー級戦/5分2ラウンド】
○志田 幹(63.4kg)
(2R0:43 フロントチョーク)
×出見世雅之(63.5kg)

1R。スタンドでの打撃戦。お互いにハイを打ち合うなどなかなか気迫のこもった攻防も、
徐々に志田が打ち勝つようになる。出見世がタックルを狙うも、志田はこれに合わせたヒザ蹴りで
迎撃。以後はパンチ、キック、ヒザ蹴りの雨あられで志田が一方的に攻める展開。
最後はダウン気味に出見世が倒れたところでラウンド終了。

2R。ダメージの大きい出見世のタックルは切れがなく、志田はこれをあっさりと切る。
そのまま引き込み気味にフロントチョークに移行すると、志田が一気に極めきった。
志田は強くなったと思う。打撃のリズム感が相当良かった。出見世もいつストップされても
おかしくない展開の中、良く粘ったとは思うが、粘り以上の何かを見せることは出来なかった。



【第2試合 ライト級戦/5分2ラウンド】
×NUKINPO!(68.3kg)
(2R2:51 ヒザ十字)
○井上和浩(68.8kg)

1R。井上のパンチ鋭い。NUKINPOタックルも、井上がこれをガブルと、
NUKINPOは引き込むようにガードに。インサイドからのパウンドで井上が攻めるが、
NUKINPOも下から手首を掴み凌いでいく。しかし次第に井上の上体を起こした
パウンドが当たるようになり、NUKINPOは(山宮・高橋直伝の?)ヘッドスリップで
かわそうとするも被弾する。

2R。井上の大振りフックを避けたNUKINPOがタックルに入るも、井上はこれを切って上に。
井上は今度はパスガードを狙い、ハーフからマウントを奪取するも、NUKINPOは即座にブリッジで
返す。井上は再度ハーフからパウンドを落とすが、ここでNUKINPOがイチかバチかのヒザ十字狙い。
これが見事に極まって。

同階級でも体のツクリからして差は一目瞭然で、実際終始井上が圧倒する展開だったが、
まあ「百回に一回しか極まらない」と酷評されるIsm〜P'sの足関狙いも、
百回に一回は極まることもあると云うことで。井上はマウントを即座に返されるような
詰めの甘さが、勝ち試合を落とした原因の一つでもあろう。
強い選手だし、もう一度見たいな。



【第3試合 キャッチレスリングルール ライト級戦/5分2ラウンド】
○矢野卓見(66.8kg)
(1R4:59 ニーロック)
×宮田卓郎(68.9kg)

例によって少々お遊びが過ぎるヤノタクなのだが、宮田もそれに付き合う遊び心を持っているため、
何とも言えない奇妙な間が支配する試合に。飛び付きフロントチョークを狙うヤノタクに、
宮田はサイドからニーオンと云ったポジショニングで対抗し、足関の取り合いなども見せる。
最後はラウンド終了間際、自らポジションを取らせたヤノタクが、下から足関を極めたらしく。



【第4試合 ミドル級戦/5分2ラウンド】
△佐藤光留(81.9kg)
(2R5:00 判定0-0<20-20 20-20 20-20>)
△佐々木恭介(78.9kg)


1R。蹴りの打ち合いからヒカル君が両足タックル。抱え上げてテイクダウンし、
肩パンチからパス狙い。ここでは足関は封印。再度スタンドで打ち合いも、どうにもヌルい
印象が拭えないのは、両者が着用するレガースだけのせいではないだろう。
再度テイクダウンしたヒカル君が、ハーフから今度はお約束どおりの足関を狙うも極まらず。

2R。再度弛緩した蹴りの打ち合い。ヒカル君がタックルでテイクダウンし、
カメになる佐々木に対しバックから十字狙い。極まらずポジションを失い、今度は佐々木が上に。
インサイドからパウンドで攻め、バックマウントに付くも、ヒカル君が落として上に。
ハーフからパウンドを狙うも有効打はなし。

勝田の引退エキシの方がよっぽど緊張感あっただろうと云う、弛緩した凡戦だったが、
これは序曲に過ぎなかった! ここからがヒカル君劇場の始まり。

まずは佐々木をリングに呼び戻し、「まだ戦いは終わってないぞ」と再戦を要求。
佐々木も「U-STYLEで勝負だ」と珍妙な応戦をするも、この一幕もまだまだ前奏。本番はここから。

「もう一人、戦いたい相手がいます! 鈴木みのる! 最近のお前は
本当の戦いをしているのか!? 磨いでない刀はただの鉄だ! なんで貴方は
パンクラスの若手と試合をしてくれないんだ! NKホール、第一試合!
(レガース付けて)僕と試合して下さい!」


いやー、ガチだなあ。「”本当の戦い”(=”Real Fight”)をしているのか!?」とは、
つまりヒカル君は北尾ばりに、みのるを「この八百長野郎!」と糾弾した訳だ(←意訳し過ぎ)。
そりゃあ激怒したみのるがヒカル君と大乱闘になったのも無理はない(←乱闘と云うほどの
大げさなものじゃなく、単に殴っただけだそうだが)。それにしても、
「磨いでない刀はただの鉄だ!」って、元ネタは『紅の豚』であるに相違あるまい。
やはりジョシュがブレイクしてしまった今、秋葉系ファイターの希望の星はヒカル君だけだな。

しかしなあ、佐々木といい勝負してるようじゃ、今のみのるにも
返り討ちにされるんじゃないのかなあ(笑)。

みのるもみのるで、もっと狂気を前面に押し出せば面白かったのに。
コメントブースに乱入して、イスで滅多打ちにするくらいしても良かったんじゃないのか?



【第5試合 ミドル級戦/5分2ラウンド】
○渋谷修身(81.2kg)
(1R0:31 レフェリーストップ)
×キム・スン・ヒー(78.4kg)

いきなり渋谷のローがローブローとなり中断。再開後一発のパンチで崩れ落ちるキムを、
追撃のパウンドで滅多打ちにして。

金魚マッチにしてもここまで弱い相手をあてがわれるのは、
やっぱナメられてるってことなんじゃないのかなあ。竹内戦の内容を見る限り、
渋谷は−82kgでは相当な実力者であると思うのだが。



休憩後、近藤の挨拶。NKはサイボーグとメインだそうで、シュートボクセへのリベンジ、

第一弾開戦だ!


【第6試合 ウェルター級戦/5分3ラウンド】
×伊藤崇文(74.2kg)
(1R1:34 三角締め)
○門馬秀貴(74.8kg)

伊藤のタックルで抱え上げられるも、門馬はフロントチョークで引き込みに成功。
下から十字を狙い、さらに三角に移行し完璧にキャッチ。一度は外されかけるも、
再度締めなおしてキッチリと極めきる。

グローブ外してマイクを持った伊藤、「引退するなー」と云うファン(と云うかGさん:笑)の
声援(?)に、「するかボケェ!」と熱い(?)返答。以後は「道場長としてismを強くしたい」
とか、「強くなるために立ち技ルールに挑みたい」とか云々。
Gさんの横で「負けた者は去れ〜」と菊田調に叫んだ僕の声援(?)は、
見事なまでに無視されたのでした(笑)。



【セミファイナル ウェルター級戦/5分3ラウンド】
×大石幸史(74.4kg)
(2R5:00 レフェリーストップ)
○長谷川秀彦(74.9kg)

1R。長谷川タックルも、大石はこれを切って立たせる。長谷川が距離を詰めるも、
差し合いとなりコーナー際で膠着。グラウンドに移行し、長谷川は足関を狙うも、
大石はこれを潰して重いパウンドを落とす。ドントムーブ後スタンドを選択した大石に対し、
長谷川は再度タックル。切られて下になるも、ラバーガードで密着しパウンドを防ぐ。
そこから三角に移行するまでには至らなかったが、大石は攻めあぐね自ら離れてイノキ-アリに。
長谷川が下からの関節蹴りで応戦するが、大石は飛び込んでパウンド。
さらに足を払ってパウンドを放つも、長谷川は再度ラバーガードで防御する。

2R。長谷川、下手な打撃で突っ込みタックルも、大石ががぶって上に。
大石がインサイドからパウンド。イノキ状態から足関を狙う長谷川だが、
大石はこれを潰して攻める。だが長谷川は再度イノキ状態から足関を狙うと、
ついにアキレスに捕獲成功。アンクルに移行し回転しながら極めに掛かるが、
大石も懸命に凌ぎラウンド終了。だが大石は立ち上がれず続行不可能で、長谷川が逆転勝利。

同じ足関による逆転勝利でも、NUKINPOのそれとは違い、長谷川の勝利は
緻密な作戦に基づくものだった。とにかく距離を殺してパウンドを防ぎ、イノキ-アリから
潜り込んで足を取る作戦に全てを賭けていた。オールドスクールな作戦と、
最新の技術が連関した見事な勝利だったと思う。大石は少々相手を甘く見ていたかな。
イノキ-アリから中途半端に踏み込み過ぎた。シューズ着用も裏目に出た印象は否めず。
大怪我でなければ良いのだが。



【メインイベント ミドル級戦/5分3ラウンド】
×石川英司(81.9kg)
(3R5:00 判定3-0<28-30 28-30 29-30>)
○岡見勇信(81.7kg)

石川のセコンドは郷野、岡見のセコンドはトイカツと、両者とも最強の参謀を付けて試合に臨む。

1R。石川がローとミドルで攻める立ち上がり。脇を差してテイクダウンを狙う石川だが、
岡見は驚異的な腰の重さで倒れず。パンチで前進した石川がタックル狙うも、これを切った
岡見が上に。ハーフからパウンド落とすも、有効打にはならず。立ち上がった岡見、イノキ-アリ
からのパウンドを狙うが、石川も足を巧みに使い有効打を打たせない。石川の立ち上がり際を
ヒザで迎え撃った岡見、差し合いからモモカンの打ち合いに。岡見大外刈閧ナテイクダウン狙うも、
両者体勢が崩れる。石川、フロントチョークで引き込むも抜けて岡見が上に。

2R。ローで距離を作る石川だが、岡見はカウンターでパンチを合わせ、石川は
フラッシュダウン気味に倒れる。岡見上から、今日はインサイドではなくイノキ-アリからの
パウンドに固執する。石川は足を使い、ここでも有効打は打たせず。
イノキ-アリから足を払ってパスガードを狙った岡見、バックに付く。
石川立って、スタンディングバックに。差し合いから岡見が強烈なヒザ蹴りをボディに放ち、
石川の体が宙に浮く。石川も負けじとヒザを打ち返すが、このラウンドは岡見が完全に支配。

3R。ローとパンチで前に出る石川だが、岡見は距離を完全に見切り、
的確なパンチのコンビネーションで応戦。カウンター狙いに撤する岡見に対し、
石川はフックで前に出るが、懐の深い岡見に対し中に入ることが出来ず。逆に長いリーチから
繰り出される岡見の鋭いジャブの的になってしまい、ダメージを蓄積していってしまう。
ラウンド終盤はテイクダウンの攻防も完全に制した岡見、ハーフから押さえ込みつつ鉄槌を落とし、
最後はイノキ-アリから豪快なダイビング・フットスタンプを披露したところで試合終了。

緊張感溢れる好勝負だったが、実力差は歴然としていた。正直もう少し拮抗していると
思っていたのだが、今の岡見の強さは我々の予想の域を遥かに超越していた。強烈無比な
パウンドと云う主武器は今日はナリを潜めていたが、その分圧倒的な懐の深さと云う新たな
武器を我々は目撃することが出来たのだ。

長いリーチを有効に利用したヤリのような鋭いジャブの連打で、
制空圏を完全に支配するそのスタンディング・スキルは、引き合いに出すには少し強引だが
個人的にはどこかセーム・シュルトを彷彿とさせるものであった(もちろんスタイルは違うん
だけどね)。しかし岡見はシュルトと違い、腰高でもスタンドレスリングが強く、相手は間合いに
踏み込めないし、仮に踏み込めても逆に差されてテイクダウンされてしまう。そこからは、
強烈なパウンドを懸命に防ぐこと以外は何も出来ない。岡見のファイトスタイルは穴が少なく、
また今後さらにこのスタイルの完成度が高まっていくことが予想されるのだから、全く末恐ろしい存在だ。
今の−82kgの日本人で、岡見に勝てる選手はいないだろうなあ。

だからこそ苦言を呈しておくが、僕としてはやはりもう少し一本・KOを果敢に狙う意思を
強く見せて欲しかった。一回も下にならず、終始上を制し続けた試合運びは絶賛に値するが、
惜しむらくはそこから一歩踏み込んだ攻撃が見られなかったことだろう。3R終盤、
上を制しても勝負に出ることなく、逆にトップキープに専念して休んでいたことが残念でならない。

大会終了後、GCMのマッチメイカー・I氏と会話する機会に恵まれたのだが、
氏も似たような感想を今後の課題として抱かれたようだった。

だがしかし、この勝利の意味するものは大きい。これで岡見はランキング4位。
上にいるのはもう三人だけ。さあ、頂上がようやく見えてきた。外様チャンプ誕生までもう少しだ。
新進気鋭の若手同士の潰し合いと云う、リスクの大きいシビアな一戦を乗り越えた岡見勇信。
彼の前途には洋々たる未来が開かれている。



客の入りは最終的には七割くらいで、このカードで七割ならまあ成功
なんじゃないでしょうか。全体的に一本決着が多かったが、試合として面白かったのは
休憩後三試合くらいで、個人的にはまあそこそこ。でもまあ、あの三月の修斗も
メイン・セミの素晴らしさだけで、上半期ベスト興行候補だったし、
興行の形としてはこれで良いのかもしれません。

今日はやっぱり、岡見に尽きますね。新しい才能が、それを満点下に示す瞬間を
「目撃」することは、本当にファン冥利につきます。こういう時間を共有したいからこそ、
我々は平日だろうと雨天だろうと、後楽園ホールと云う「聖地」に足を運ぶのだと言っても
過言ではないと思います。

そしてそういった「新しい才能」が、パンクラスismではなく、WKだったり
SKだったり稲垣組(笑)だったりMEGATON(爆笑)だったりするところが、
今のパンクラスの風景なのです。




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