8/16 U-STYLE 後楽園ホール興行 観戦記
■団体:WWE
■日時:2004年8月16日
■会場:後楽園ホール
■書き手:奈落ハジメ

実を言うとチケット購入時に、PRIDE GPとの二者択一で、かなりPRIDE寄りで迷っていた。
それが何故U‐STYLEに落ち着いたかと言えば、話は簡単でPRIDEのチケットが早々に完売
してしまったせいである。
GP明けの水曜日に開催された今回の後楽園ホール興行。
果たして自分を含めた客達は何を求めて、この田村の「戴冠式」に足を運ぶのだろうか。
GPでいっそう剥き出しにされた感のある、PRIDE(VT)の余りに非情な勝負論の世界。
U‐STYLEにはそれはないものだ。
ならば我々は、田村という自分達と同じく「PRIDEに虐げられた者」の理想郷に癒しを
求めようとしているのか?

……ところでU‐STYLEに関する一般論的な評価としては、前田日明に代表されるように
「UWFとは運動体であり精神であるのだから、昔のスタイルを復活させる事に意味は無い」
という批判的なものが多い。
まったくその通りではあるのだが、ではUFCが既にセンセーションを巻き起こした後の
米国において、無名時代のジョシュ・バーネット青年の心を捉えて離さなかったものの
正体とは一体何なのだろうか?
バーネットは、シュートファイティングとエンターティンメントプロレスのグレーゾーン
としての「UWFスタイル」の存在を認め、それを自然なものとして受け入れていた。
そして田村がU‐STYLEを始動させたのは、リングス離脱後にPRIDE参戦を果たした後の事である。
「究極」を知った上で、あえて後退を選択するスタンスが両者には共通している。

田村がもしPRIDEを通過していなかったとしたら、私も単なる現実逃避や時代錯誤としか 思わなかったかもしれない。
無論、その思いはやはり感じる。感じるが、同時に心魅かれるものもまた存在するのは確かだ。

レガースを着けた蹴りが、大腿部に吸い込まれた時の重たい響き。
素手の掌底が顔面を叩く時の、「痛み」を感じるバチンという音。
そして、関節をガッチリ極められた者が漏らす、あの切実な呻き声……
それぞれそのものは、間違いなくリアルなものだからだ。

さっき私は、U‐STYLEには「非情な勝負論」は存在しないと言った。
しかし、「非情」と「勝負論」はそれぞれ別個に存在していると思う。
それは例えば田村vs富宅戦のような試合が突発的に起こったりすることや、
トーナメントに対する伊藤の「本気」であったりするのだろう。
田村が「U‐STYLEは難しい」と口にするのは、その解体された「非情」と「勝負論」を、
U‐STYLEのフォーマットに基づいて再構築するのには相応の才能が要る、という程の 意味なのではないだろうか。
だから、本音でガチプロを卑下している村浜にはその資格はなかったのだ。
前置きが長くなったが、これは10数年前にUインターを中心にU系の試合を観戦していた私が、
この21世紀のU‐STYLE観戦にどう臨むかのスタンス作り……
というか、ヘタレなイニシエーションであると看過していただきたい。

では、試合開始だ。客席はまあまあの入り。パンクラスの後楽園大会とどっこいだろうか。
ところで、私はU系のあのロストポイント制が大好きだった。
週プロの試合結果などに載る、あの「D1E2」とかの表示だ。
どちらが優勢だったのかを端的に表現するのに、あのロストポイント制は良いものだったと思う。
よって、本観戦記もそれに倣うものとします。


【第一試合】
△原学(D0E2Y1)
(15分時間切れ引き分け)
△ロッキー・ロメロ(D1E2)
バト流バチバチプロレスの後継者である原が、上井さん経由での参戦であろう新日LA道場のロメロと対戦。
ロメロがかなり小さく見える。Uインター末期に来日したJ・ストーンのよう。
序盤はじっくりとしたUWFスタイル。ローキックを打ちながら間合いを取り、レスリングの攻防へ。
ロメロが強引な卍固めを繰り出し始めた頃から試合がヒートしはじめる。二回目の卍でエスケープして
しまった原はエキサイトし、グランドの蹴りでイエローを喰らう。
さらにロメロの猪木オマージュは卍だけではない。なんとVTでもないのに自ら寝そべり、イノキガードだ。
原がWのサムダウンでこれを拒否。観客はブーイングでそれを後押しする。
ちなみにロメロのダウンは、原のジャーマン。結果奪ったダウン&エスケープでは原が上回るものの、
イエローの1ポイントが差っぴかれてドロー。
両者頬を張り合って退場。しかしドローの時に流れる曲が何とも物悲しいのは、どういう選曲なのだろう?


【第二試合】
○上山龍紀(D0E0)
(12分9秒TKO)
●中嶋勝彦(D2E3)
この試合に関しては、「Uインター最後の新弟子」上山の暗黒面を期待。
毎日、今日も命があった事を感謝するような過酷な日々を経てきた上山が、新弟子を経験していない中嶋を
どう可愛がるのか……普段スマートなイメージがある上山だけに、その秘められたエグさを期待してしまう。
中嶋君はやはり得意の空手スタイルの蹴りを出していくのだが、単発の上に大技狙い、
しかも良いのを当てても前に行かない。大人しさが出ているのか、やはり勝手が違うのか。
しかし観客は全員保護者ムードでそれを見守ってゆく。
で、上山。正しい試合を見せてくれました。
珍しく執拗なマウント掌底の連発、ひたすら中嶋に見せ場をやらない一方的で理詰めな攻め。
ヒザ十字、スリーパー、掌底ラッシュからのハイ、さらに十字クラッチ切り態勢からのアームロックで、
瞬く間に中嶋のロストポイントは残り1。
ここで中嶋、泣いて強くなったいじめられっ子のように意地のジャーマン炸裂。が、上山すっくと立って、
鬼のような掌底、ヒザ、ハイのラッシュをぶちこみ、中嶋をぶっ倒す。
最後のジャーマンでの1点もあげなかったのが、実に素晴らしい。
下にこういう試合ができる選手は、田村以外は上山しかいないのだろうか。


【第三試合】
○石川雄規(D0E4)
(11分7秒リバースバイパーホールド)
●クラフターM(D0E0)
「円の動きが素晴らしい」と、新日の上井さんが熱視線を送るクラフターM。
津軽三味線の入場曲で入ってきた石川から、スイスイと柔術技でエスケープの山を築いてゆく……
と言うより、石川の不甲斐無さばかりが目立つ。せっかくクラフターがネタを振ったキーロック持ち上げも
全然持ち上がらず、見せ場と狙ったSTFも足のフックが先にすっぽ抜ける始末。
どうにも雑な動きという印象ながら、最後にバックドロップからガッチリとフェースロックを決め、
さらに力づくのリバースバイパーで固めると、クラフターはタップ。
狙っていた展開なのかもしれないが、間あいだで客の失笑を買うのは……この日唯一、観客がダレた
緊張感のない試合だった。こういう試合をやってしまうと、U‐STYLEの試合を成立させているスピリットの
ようなものがたちまち砂上の楼閣になってしまう。バトや石川屋興行なら有りなのかもしれないが……
このリングには合わない気がする。


【第四試合】
−垣原賢人
(51秒 ノーコンテスト)
ーアレクサンダー大塚
間違いなく、このトーナメントに対する最大の目玉は田村vs垣原の、かつてUインターの未来形と
形容された対決の実現にあっただろう。
しかし、その期待は垣原の放った二発目の左ミドルキックで無残にも崩壊する。
これは「PRIDE GP」が「逃避者の隠れ里」に向けて放った呪いなのだろうか?
私はそうではなく、これもU‐STYLEが潜在的に持つ「非情」が具現化しただけだと思う。
だからこそ、侮ってはならないのだ。
アレクの肘受けで膝を痛めた垣原に対し、5分間の治療インターバルがアナウンスされる。
場内休憩ムードになるが、急遽次試合の田村vs伊藤を前倒しでやる事に。慌てて席に戻る観客。


【第五試合】
○田村潔司(D2E2)
(11分12秒 逆片エビ固め)
●伊藤博之(D1E2)
トーナメントのMVPは、この伊藤だろう。
その「真剣さ」「本気さ」は遍く観客に伝わり、自然に後押しする熱気のような共同幻想を生み出してゆく。
これこそがプロレスであり、Uであると久しぶりに感じたムードだった。
かつて前田の壁に挑んでいった高田や山崎に対するような期待感と言えば分かりやすいだろうか。
伊藤が身に帯びた、古式ゆかしい黒ショートタイツに黒レガースが、それを更に助長してやまない。
いつものように「FLAME OF MIND」の入場で自分の世界を丹念に作り上げる田村。その間、リングに待つ
伊藤はコーナーに顔を埋め、田村がリングに上がっても背を向け、定番のガンつけを拒否。
試合は伊藤の「本気」があらゆるものを支配していた。伊藤が打撃や関節に行く時に発する不恰好な
気合の声ですら、それを嘲笑う者はいない。ケサ固めでファーストエスケープを奪い、そしてハンばりの
スタンディングアームロック狙いから執拗な十字狙いで田村を根負けさせ、連続のエスケープ奪取。
田村もこまめにポイントは返してゆくものの、スタンドの掌底合戦で伊藤に圧倒される。二度のダウン後、
しきりに右耳を気にしだす田村。鼓膜が破れたのだろうか?
最後はフラフラになりながら、伊藤のミドルをキャッチし立ちアキレスからのハーフボストンクラブ。
ニールセン戦の前田を田村は意識したかしなかったか。ともあれ、前田の切り札的なこの技を継承している
のはもはや田村だけだ。
敗れた伊藤だが、その会場人気の高さからブレイク寸前といった感じだろうか。


【第六試合】
○佐々木健介(D0E1)
(8分 ストラングルホールドγ)
●佐々木恭介(D4E0)
U‐STYLEにおける健介は、かつてのUインターでのベイダーなのだろう。
ひたすらその怪物性とパワーで、U系プロレスを破壊するモンスター。恭介は女性人気高し。
ちなみに、試合中のロストポイントコールは「佐々木、マイナス1」ではなく「恭介、マイナス1」だった。
そりゃそうだ。
序盤、圧力でコ−ナーに押し込んだ恭介に、健介が逆水平チョップ。それを拒否して会場を沸かす恭介。
ここから試合、ヒートアップ。健介の怪物性オンパレードが始まった。
ブレーンバスター気味のスープレックス、バスター、背中パンチから強引に決めるチョップでダウンの山。
マウントを取っただけで場内に悲鳴が起こる。圧巻だったのは、飛びつき三角がすっぽ抜けてイノキガード
になった恭介を引っこ抜いてのパワーボムだった。
そして終盤、ジャーマン狙いの健介に……恭介の前転ヒザ十字。垣原参戦ともリンクした、実に美しい一撃だ。
この日はポカしなかった健介、エスケープすると、締めに入る。満を持したラリアットでフラフラになった
恭介にストラングル。
健介、U‐STYLEでも実に良い仕事。試合後の恭介の土下座もまた、UWFイズムを感じさせた。
ベイダー同様いずれ飽きられるだろうが、中嶋とセットで継続参戦しても良いのではないだろうか。
伊藤との対戦が見たい。


【第七試合】
○田村潔司(D0E1)
(6分55秒 TKO)
●アレクサンダー大塚(D5E0)
垣原の負傷は結局回復せず、アレクが繰り上げ進出。肘の包帯は、少しギミック臭くも感じられたが……
そうでない事は試合で実証された。
田村の選択は正しい。「非情」と「勝負論」をそれぞれ盛り込んだ、肘狙いの徹底的な左ミドル。
圧巻は二度目のダウンを奪ったタイ人ばりの5連打。数少ないグラウンドの攻防は手が合いそうな二人
だっただけに、惜しい気もしたが。
アレクの切なさだけがリングに刻まれた。しかもフィニッシュはうずくまった所へ顔面に入り、
右目を腫らして……物言わぬ闘犬の切なさ。そんなものをこの日のアレクには感じてしまった。

ともあれ次回興行は早くとも数ヶ月先となる。「田村潔司独演会」であった場が、
ベルト導入でどう変わってゆくのか。
また、ヴォルク・ハンが絡んでゆくというとてつもない夢は実現するのだろうか。
会場の客層だが、思った程にオールドファンはいなかった気がする。
PRIDEとかパンクラスとか新日本でも見かけるような、若いファンが殆どだ。女性客もまあまあ多かった。
「懐メロ」批判がどうしても先に立つU‐STYLEだが、こうしてみるとそうした批判も的外れに思えてくる。
それが懐メロだろうが何だろうが、快感指数の高いものだからこそ人が観に来るのだろうから。
リバイバルブームのような安直なまとめ方はしたくないが、かつてのジョシュ・バーネット青年の感性は、
やはり正しかったと言えるのだろう。




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