4/23 PANCRASE 後楽園ホール興行 観戦記
■団体:パンクラス
■日時:2004年4月23日
■会場:後楽園ホール
■書き手:高倉仮面

18:30
後楽園ホールに到着。
本日はPANCRASEの観戦。

今日のPANCRASEの興行のウリは「菊田 早苗、試練の一番」である。

2001年のアブダビ コンバットの87kg級で優勝して以来、「寝技世界一」の肩書きを持った菊田。
観客が彼に求めるものは、当然ながら関節技による一本勝ちである。

そして菊田は、そのニーズに二年半も答えられずにいる。

アブダビ コンバットで優勝した2001年、菊田は絶好調。
この年の戦績はシングル戦9戦8勝1無効試合(アブダビを含む)という素晴らしいモノだった。
総合の試合は全て一本勝ち、勝利した相手の名前の中には美濃輪 育久の名前も。
PANCRASEのライトヘビー級の王座も手にした菊田に、周囲の期待は高まりまくった。

だが。
2002〜2003年、菊田の戦績は6戦3勝2敗1分、一本勝ちはゼロ。
試合内容も良くない。PRIDE 20でのアレクサンダー 大塚戦ではアレクに股間を蹴られまくり、
LEGENDでのアントニオ ホドリコ ノゲイラ戦ではノゲイラのストレートを浴びて失神KO負け。
PANCRASEでの二度目の近藤戦ではスタンドでもグラウンドでも圧倒されて、最後はフックを浴びてKO負け。
PANCRASEのライトヘビー級の王座も奪われてしまった。外で内で、菊田の受難が続いた。

しかし、それ以上に深刻なのが、
PANCRASEでのエドワルド パンプロナ戦とエルヴィス シノシック戦の試合内容である。
この二人に対しては、菊田はグラウンドで終始相手を圧倒、マウントポジションも何度も奪った。
それなのに…一本勝ちが出来ない。関節技で相手を仕留められない。マウントパンチで相手をKOできない。
観客は、最初こそ菊田のグラウンドでの攻勢に歓声を贈っていたが、
いつまでも極める事が出来ない菊田を見ると、その歓声を罵声に変えて浴びせていった。

そんな「一本勝ちに見放された男」である菊田が、試練の一番に挑む。
彼は色々な専門雑誌のインタビューで、この試合での「一本勝ち」を宣言したのだ。
◎菊田早苗・単独インタビュー「寝技狂ラストスタンド」(Bout Review)
http://www.boutreview.com/data/news/040423pancrase-kikuta.html

◎菊田、進退かけて「最後の後楽園」に臨む(Sports Navi)
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/other/headlines/wrestling/20040422-00000302-spnavi-spo.html

「今回の試合で一本取れないようじゃ…『やっぱり厳しいのかな?』という思いもありますね。
 まあ、そういう相手っちゃあ、そういう相手なんですよ」
(菊田早苗・単独インタビュー「寝技狂ラストスタンド」)
「(ロッケルについて)これまで芽が出そうで出なかった選手かと思います。年も年ですし(ロッケルは38歳)。
 …この相手で僕がダメだったら、これで最後って訳じゃないですけど、かなり引退には近付くと思いますね。」
(菊田早苗・単独インタビュー「寝技狂ラストスタンド」)

「結果次第では引退も視野に入ってくる。1本を取って勝ちたい」
(菊田、進退かけて「最後の後楽園」に臨む)
とまあ、兎に角、吹きまくりである。
ここまで言ってしまった手前、今日の菊田の結果に一本勝ち以外はありえない。
「自分を追い込む」という意味で、彼はこのような発言を繰り返したのだろう。

ところが、別なインタビューを読んでみると…。
◎菊田早苗インタビュー(PANCRACE)
http://www.pancrase.co.jp/tourarchive/2004/0423/itv/kikuta.html
「いや、もちろん一本勝ちっていうのがあるんですけど、それよりも…
 あっち(キース・ロッケル)も寝技が得意らしいんですよね。
 何かこう、技の応酬じゃないですけど…  後楽園ホールで、菊田の試合ではこういうのが観れるんだっていうのを見せたいですね。

 一本勝ち云々というよりも…もちろん一本勝ちにこしたことはないんですけど、
 それが判定勝ちになろうが引き分けになろうが、十分に自分のポテンシャル、関節技、寝技に関して、
 それを出し切りたいですよね。だからすごい良い内容の試合にしたいですね。」
(菊田早苗インタビュー)

…言ってる事がちょっと変わっている。
本人の練習中のビデオでも見たのか? 本人に関する噂を聞いたのか?

ま、まあ、兎に角、この試合に菊田が進退を賭けている事には違いはない。
この試合での一本勝ちを公言し、後で微妙に撤回した菊田が久々の後楽園での試合に挑む。

で、いつものようにチケットを購入…しようとするが、
前回に引き続き、僕の指定席である立見席は既に完売。
で、やはりC席も完売。B席を購入、7000円を払って会場入り。
昔のPANCARSEはこの時間でも立見席があったのに…。
まあ、GRABAKAのエースの出陣もあるし、仕方がないのかねぇ。

18:50
会場入り。
南側席からの観戦。

客席はこの時点で四割程度の入り…だったが、休憩後くらいには八割の入りに。
今日、個人的に楽しみなのは第六試合の謙吾 vs 保坂 忠広、
PANCARSE ism vs PANCRASE MEGATONのスーパーヘビー対決である。
他にも百瀬 善規の復帰戦、竹内 出 vs 國奥 麒樹真のPANCRASEミドル級日本人頂上決戦も興味深い。
無料で配られるパンフレットに書かれた謙吾のインタビューを読みながら観戦開始。

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第一試合 ミドル級 5分2R
○井上 克也(185cm/80.8kg/RJW/CENTRAL)
●金井 一朗(174cm/81.0kg/PANCRASE ism)
[判定 2−0]

1R、金井はタックルで井上に何度も組み付くも、井上にコーナー際で粘られ体勢を崩せない。
何とかダメージを与えようと細かくヒザを放っていくが、当然ながら井上もヒザを返す。
こうしてコーナー際での押し相撲が続いていく。ちょっと退屈。

残り30秒、金井は井上の腕を捕りながらグラウンドへ引き込むが、
腕を捕る事に拘るあまり亀の体勢になってしまい、逆に井上にバックを捕られてしまった。
1R終了。金井の攻めは井上に見切られているか。

2R、開始早々に金井がタックルで組み付くが、
井上は逆に金井を崩してテイクダウンしハーフマウントからパスガードに成功、サイドを奪う。
ピンチに立たされた金井だが、何とか脱出して立ち上がる…が、グラウンドも井上の方が上だな。

両者スタンド、金井は自ら組み付いて再び井上の腕を捕ろうとするが…。
井上はこれをコーナー際で粘ると、突き放してアッパーをヒットさせ、
バックを奪ってジャーマン スープレックスで投げ飛ばし、
倒れた金井の上になり、肩固めを狙ったり上体を起こしてパンチを落としたり。
金井も下からの蹴り上げで抵抗するものの、井上の攻勢を前に厳しい展開が続く。

金井はグラウンドを脱出して立ち上がると、またまた井上に組み付いて腕を捕り、
派手に動いてアームロックを仕掛ける…、が、結局、極める事は出来ず。
またしてもグラウンドで上になった井上、金井にパンチを落としていく。
この後で金井は立ち上がるが、スタンドでも井上のパンチを喰らっていた。

試合終了、判定は3−0で井上。
金井はちょっと攻めが一本調子。バリエーションが欲しいところだ。


第二試合 ウェルター級 5分2R
○アライ ケンジ(176/73.6kg/PANCRASE ism)
●関 直喜(170cm/74.7kg/フリー)
[判定 3−0]

この試合は昨年3月に行われた試合の再戦、アライにとってはリベンジ戦。
対する関は前回の対戦でアライを秒殺。アマチュアでの戦績も輝かしく、
98年アマチュアリングス-80kg級優勝、99年コンバットレスリングオープン優勝、
02年JTC全国大会-75kg級優勝。アライは勝つ事が出来るか?
ちなみに関のセコンドには滑川 康仁と高坂 剛の姿が。

1R、両者は距離を置いてのパンチで勝負。
両者の打撃が交差する中で先手を取ったのはアライ、
ストレートがヒットすると関がスリップダウン。
観客の歓声の中、アライは上になってパンチをガンガン落としていく。
…が、関はこれを凌ぐと、上になるアライを崩し、顔面にミドルキックを喰らいつつも立ち上がる。

両者スタンド。関はアライに組み付いてコーナー際へと押し込み、体勢を崩してテイクダウン。
下からのクロスガード & かんぬきでガチガチの防御のアライに対しては、
その腕を抜いてから上半身を起こしてのパンチを落とす。

アライはどうにかグラウンド脱出、試合は両者スタンドに戻る。
関はタックルを仕掛けてアライをテイクダウン、
フロントチョークを仕掛ける…が、1Rはここで終了。
ここまではやや関が押している気もするが、まだ差という程の差はないだろう。

2R、まず関がタックルで組み付き、粘るアライを崩して亀の体勢まで追い込むも、
アライは下から関の腕を捕って必死に抵抗。その後は展開なくブレイク。

関は再びタックルを仕掛けたが、
アライは逆に投げを放って関をテイクダウン。
観客の歓声の中、上になったアライは関に密着してパンチをコツコツと落とす。
だが関も下から鉄槌をコツコツと突き上げる。これ以上は展開なくブレイク。

関、今度は打撃を放つも、アライはカウンターのストレート。
モロに喰らった関がバランスを失うと、アライは自ら組に行く。
しかし関はアライの首を捕ってフロントチョークを仕掛けた。
アライは首を抜いたが、関は組み合った体勢のままタックルでアライの体勢を崩すと、
グラウンドでバックを奪ってスリーパーを仕掛ける。
アライはスリーパーは凌いだが、上になった関からパンチをもらう等で苦しい展開。
それでも関のパスガード狙いだけは阻止。で、試合はやや膠着しブレイク。

最後のスタンド、アライは関の顔面にストレートをヒットさせると、
怯む関に組み付いてテイクダウン。応援団の歓声の中でパンチを落としていった。
2R終了、このラウンドは中々に一進一退の攻防だな。

で、判定…なのだが。僕は正直、内容的にはドローでも、
ホームのひいきでアライの勝ちになるんだろうなぁ…と思っていた。
で、実際にそうなった。3−0のストレートで勝者はアライ。
…オイオイ、それでいいのかPANCRASE。素人に読まれちゃオシマイだろ。

…とは言え、アライのリベンジ成就自体は嬉しかったりする。
秒殺された試合の内容に比べれば、良くなったように思えるしね。


第三試合 ウェルター級 5分2R
○伊藤 崇文(176cm/74.1kg/PANCRASE ism/同級二位)
●小沢 稔(172cm/74.1kg/V-CROSS)
[判定 3−0]

遠い記憶の片隅に「小沢」の名前は残っているものの、ファイターとしての印象は何もない。
で、「何で覚えているんだろう」という事を考えていたわけだが、小沢が入場してきた時に思い出す。
そうだそうだ、この人は応援団がメチャメチャ多いんだった。

で、対する伊藤の入場だが…、
心境の変化があったのか、依然見た伊藤とは随分とイメージが変わっていた。
白で統一していたコスチュームを黒に変え、入場曲も爽やかな「I Fought The Law」から、
荒々しい「Ghost Riders In The Sky」のパンクバージョンに変更。
リングインしてからの「ガッツポーズでリングを一周」もやめてしまったようだ。
やはり、DEEPでの三島 ド☆根性ノ助戦が彼を変えてしまったのだろうか。

イヤ、入場曲はカッコ良かったが。

試合…なのだが、なんとも地味な展開。
興味のない人は読み飛ばしていただいて結構。

1R、両者は距離を取っての単発打撃の応酬に終始。
伊藤はジャブ、ストレート、フック等を入れていき、小沢はひたすらローキックを返していく、
…のだが、お互いに打撃が単発で破壊力があるわけでもなく、客に緊張感が伝わらない。

伊藤のストレートは何度か小沢の顔面にクリーンヒット、
ヒットする度にグラつく小沢、伊藤はその度に打撃のラッシュから組み付いていく…、
が、小沢にコーナー際で粘られ、押し相撲が続くのみ。
単発の打撃と押し相撲が延々と繰り返される試合、盛り上がるのは小沢の応援団のみ。

ラウンド終了間際、小沢は伊藤に投げを放つも伊藤に返されてテイクダウンを奪われる。
で、ここで1Rは終了。一応は伊藤が優勢だが…、正直、観る側にはちょっと退屈な試合内容。

2R、やっぱり距離をとっての打撃戦。
小沢、このラウンドではローキックに加えてパンチやミドルキックも出していた。
対する伊藤は相変わらずパンチを中心としたスタイル、たまにキックを出したりするが、
お互いの打撃が単発で交差する…という展開そのものは変わらない。
ちなみに途中、伊藤が小沢にローブローを入れてしまい、口頭による注意が与えられた。

終盤、伊藤は前に出る小沢にカウンターのストレートをヒットさせた。
これで怯んだ小沢、伊藤はまたしてもパンチのラッシュから小沢に組み付く。
対する小沢は逆に首投げで伊藤を投げた、小沢応援団はここぞとばかりの大歓声。
だが伊藤はすぐに立ち上がると、素早く小沢と組み直す。
そして小沢の体勢を崩して亀の体勢に追い込み、上から顔面パンチの連打で攻める。

小沢は何とか凌いで立ち上がり、博打に出たのか伊藤にパンチのラッシュを仕掛ける。
これに対して伊藤もパンチを返していく中、試合は終了…なのだが。
伊藤、何故かマウスピースを小沢にぶつける。興奮している様子。
小沢はこの行為に激怒。何やら不穏な空気である。
結局、何があったか最後までわからず仕舞だったが、伊藤の行為はいただけない。

判定は3−0で伊藤の勝利…なのだが、この内容といい、最後のキレ方といい、
「この人はもう三島戦なんてどうでも良いんだろうな」というのが僕の感想。
最後は四方に向かって吼えながらガッツポーズをしてたが…その姿が妙に虚しい。

もっと頑張ってくれよ、伊藤。
僕は嫌いじゃないんだからさ。


第四試合 ライトヘビー級 5分3R
○渡辺 大介(180cm/88.3kg/PANCRASEism/同級 五位)
●百瀬 善規(172cm/88.0kg/禅道会)
[1R 4分53秒 TKO]
※グラウンドでのパンチによる

「徹底したアウトボクシング、相手にダメージがあっても一歩を踏み出す勇気がない」、
そんな印象の渡辺だが、昨年はGRABAKAの佐々木 有生をKOで倒したり、
韓国の「NEO FIGHT」トーナメントで2試合連続で一本勝ちを修めたりで好調をキープ。
だが、今日の対戦相手は知る人ぞ知る強豪だ。渡辺、勝てるか?

で、禅道会の百瀬と言えば…。
2年前、絶好調だった頃の美濃輪 育久をグラウンドで圧倒し、
近藤 有己からは別なリング(プレミアム チャレンジ)にて勝利をもぎ取っている選手。
最近はどこのリングにも上がっていなかったが、今日のリングで久々の復活。
得意のグラウンドやバックからの投げが錆び付いていない事に期待。

で、試合開始、なのだが…。

渡辺のアウトボクシングに対し、百瀬はちょっと逃げ腰になっている。
更には顔には怯えの表情が。…忘れてた。百瀬は打撃が苦手だったんだ。

そんな中、百瀬は時折タックルや突進で渡辺に組み付こうとするが…、
渡辺はこれらを悉く捌いては、距離を取ってアウトレンジからジャブやストレートを放つ。
で、これで完全にペースを握った渡辺、表情にも余裕が出て来た。
だが中盤、百瀬の左ストレートがモロに入る。渡辺はスリップダウン。
ここはすぐに立ち上がってリカバーしたが…、
渡辺ってこういうところがあるよなぁ。何かツメが甘いというか。

終盤、百瀬のローキックに対して渡辺はハイキックを返すと、これが百瀬のテンプルにヒット。
グラッと来た百瀬が倒れると、渡辺は上になって勢い良くパンチを百瀬に浴びせる。
試合時間の残りは10秒を切っていたが、次々にパンチを落とす渡辺を見たレフリーが試合をストップ。

…したが、百瀬はダメージはあまりなかったらしく、試合続行を主張。
個人的には、ラウンド終了10秒前という事で、百瀬はとりあえず凌げると思っていたんだろう。
実際、出血こそあったもののあまりダメージはないように見えた。
だがこの主張は通らず。う〜ん、何となく仕組まれたモノを感じるなぁ。
第二試合といい、この試合といい、ちょっとひいきがヒドいな。


第五試合 ウェルター級 5分3R
△大石 幸史(PANCRASE ism/同級 一位)
△星野 勇二(和術慧舟會GODS/同級 六位)
[判定 1−0]

これまで9勝1敗3分という戦績の全てが「判定決着」という大石だが、
元はといえばRJW/CENTRALの所属。そして星野も元RJW/CENTRAL。
この試合、元同門同士による対戦。

本来はグラウンドを得意とする大石だが、
この日は入場時も、選手コール時も、そしてレフリーのチェック時も、
ずっと打撃の構えのまま小刻みに動いてリズムをとっていた。
で、試合は…なんと一回もグラウンドにならないというスタンドでの真っ向勝負。
大石も星野も打撃で決着を望んだのであろうか、それとも単純にグラウンドに行く機会がなかったのか。

1Rも2Rも3Rも、距離を置いて単発のパンチを交差させる両者。
時折、星野は前に出てのパンチラッシュで大石にプレッシャーを掛けるが、
大石はこれを受けながらも、コーナー際で星野を差し返してはボディにヒザをコツコツ入れていく。
膠着してブレイク、再びお互いに単発のパンチを交差させ…という展開が繰り返された。

そんな中、若干、押していたのは星野か。
1Rにはパンチで大石を出血させたり、
2Rには大石のタックルを切ってヒザを入れたり。
3R中盤あたりからは、星野の方が勢いがあるように思えた。
だが終盤には大石もパンチで星野を流血させる等、体力的には負けていない。

試合終了。個人的には星野の勝ちだと思うし、
実際、レフリーの一人が星野を勝者にしたが…。
決定的な差がないのも事実であって、残り二人がドロー裁定。これはギリギリでアリかな。

試合終了後、勝者のような顔をして花道を後にする星野、星野応援団が祝福していた。
まあ、ismひいきのヒドいPANCRASEの判定にあって、このドローは勝利みたいなもんか。

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◎休憩10分
試合を観戦していた安生 洋二とバス ルッテンが談笑していた。

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第六試合 スーパーヘビー級 5分2R
△謙吾(192cm/102.7kg/PANCRASE ism/同級 八位)
△保坂 忠広(174cm/123.0kg/PANCRASE MEGATON)
[判定 1−1]

「ロボコンのテーマ」で入場してきた保坂、
必殺技は「相手をコーナー際へ押し込みヒザをコツコツ当てるだけ、試合は膠着」、
DEEPでの石井 淳との大膠着試合は記憶に新しいところ。

彼の素晴らしいところは、所属の「MAGATON」の名に相応しく、
DEEP参戦時より体重をUPしている事にある。
3ヶ月で13kgの増量に成功した今、お腹の肉はリーゼント状態。
もはや誰が見ても「和製マット ガファリ」という単語が思い浮かぶだろう保坂の肉体、
そして妙に愛くるしい顔、MEGATON支持派から大歓声が挙がる。

「男の中のお・と・こっ!」…ではない曲で入場してきた謙吾、
この試合はアメリカ修行からの凱旋試合になる。
保坂とは対象的にガッシリとした肉体を持つ男、謙吾ファンが大歓声を挙げる。
それにしても、保坂と比べると謙吾の肉体の美しさは際立つな。
こちらはさしずめ「和製ロン ウォーターマン」と言ったところか。

…だが。
いかに「和製マット ガファリ」とか「和製ロン ウォーターマン」とか言われようが、
保坂は保坂であり、謙吾は謙吾なのである。
彼らは試合でそれを証明してくれた。

1R、保坂はお腹の贅肉リーゼントをブヨブヨとなびかせながら謙吾に突進、
必殺「相手をコーナー際へ押し込みヒザをコツコツ当てるだけ、試合は膠着」で謙吾に何もさせない。
観客は「謙吾、腹、ワシ掴みっ!」と謙吾に声援を贈るが(観客は爆笑)、
保坂は謙吾がたとえコーナーから脱出しても、
すぐに必殺「相手をコーナー際へ押し込み(以下略)、試合は膠着」で捕まえる保坂。
しかも離れた距離からは保坂のパンチが何発もヒット。
謙吾は途中でハイキックは出したものの、アメリカでの練習の成果はないようだ。

基本的にはコーナー際での押し相撲しかない試合展開だが、観客はヒートアップ。
謙吾ファンのオネーチャン、保坂の必殺技である、
「相手をコーナー際(以下略)、試合は膠着」の連発を見て大激怒、「デブッ!! それしか出来ないのか?」。
だが、それを聞いたMEGATON支持派は「保坂、それでいいぞっ!」と、逆にオネーチャンを挑発。
これを聞いたオネーチャンは怒髪天、「謙吾、殺っちまえっ!」と謙吾に声援を贈る。
観客はこの試合を勝手に楽しんでいるようである。…何だか凄い事になっているな。

1R終了、インターバルの間にラウンドガールがリングイン。
今日のラウンドガールは胸元の開いたボディコン風の衣装でちょっとエロい。
…それにしても、謙吾の筋肉、保坂の贅肉、そしてラウンドガール達のボディラインを見ていると…、
「人間って色々な生き物になれるんだなぁ」としみじみと実感。

2R、ラウンド開始と同時に謙吾のローブローを食らう保坂、
痛がる姿が妙に愛くるしい。

で、謙吾はタックルを仕掛けたが、これをガブッた保坂はグラウンドでピクリとも動かず、
謙吾の頭に、保坂謹製の贅肉リーゼントが乗っかっている状態からパンチを入れる。
この打撃で謙吾は顔から出血、これを見たMEGATON支持派が大歓声を挙げる。

どうにかガブり状態から脱出した謙吾、反撃開始。
相変わらず保坂は必殺「相手を(以下略)、試合は膠着」で攻めてきたが、
謙吾はコーナー際で保坂の頭を下げて顔面に何発もヒザ蹴りを叩き込んだり、
離れた距離からストレートをヒットさせたりで保坂にダメージを与える。
これを見た謙吾ファンはここぞとばかりの大歓声。
だが保坂も最後まで「(以下略)、試合は膠着」を出し続ける。

試合終了、判定なのだが…。
何故か1−1、スプリット ディシジョンで引き分けである。
この試合展開の中で、「謙吾の勝ち」とか「保坂の勝ち」という判定をするのは凄いな。
殆んどの時間、両者はコーナーで組み合っているだけだったのに。

それにしても…この試合は何やら観客の歓声の「質」が違っていた。
皆、「前へ前へ」と、自分から声を出している。
興行全体を考えるなら、こういう要素は必要だね。
個人的にはかなり楽しませてもらった、試合のレベルは抜きにして。


第七試合 ミドル級 5分3R
○竹内 出(180cm/81.8kg/SKアブソリュート/同級 二位)
●國奥 麒樹真(169cm/81.5kg/PANCRASEism/同級 五位)
[判定 2−0]

PANCRASEではウェルター級の現王者にしてミドル級の前王者、
それでもあまり人気者とは言い難い存在の國奥。
やはり一本勝ちの少ない試合展開が地味だからだろうか。
で、対戦相手は…これまた試合展開があまり派手とは言えない竹内。
PANCRASEに参戦後、6戦4勝1敗1分の好戦績ながら一本勝ちはゼロ。
時期を間違えなければミドル級のベルトを賭けた試合になっていたであろうこの一戦、
両者は一本勝ちを奪うのか奪われるのか。それともやはり判定決着か。

1R、本日は派手なコスチュームのエスコートガールを携えて入場してきた竹内、
前に出てきた國奥の右ストレートをいきなり食らってしまい体勢を崩す…が、
その中でも國奥の足を捕まえてヒールホールドを極めようとする。
で、これが極まらないと見るや、國奥を転倒させて上になった。
竹内応援団から歓声が挙がる。上手いな竹内。

國奥も意地を見せる。上からパンチを落としてくる竹内に対して、
隙あらば下からの腕ひしぎ逆十字、三角絞めを仕掛けていく。
これらは全て逃げられたものの、竹内の上からパンチに対しては下からの鉄槌で対抗すると、
竹内の隙を突いてグラウンドを脱出。キビキビと動く両者のファイトに観客の歓声が起こる。

両者はコーナー際で組み合った状態。
竹内は國奥の懐に潜り込み、そのまま持ち上げるとパワーボムの要領で背中から落とす。
勢いはなかったがキレイに決まった落と技に観客が歓声を挙げる。
倒された國奥も、潜り込んで来た竹内の顔面に下からの蹴りをヒットさせる。
ここで1R終了。先手を取っている竹内がリードしているが、國奥も負けてはいない。

2R、まずは國奥がパンチでプレッシャーを掛けながら竹内に組み付き、
テイクダウンを狙うがコーナー際で粘られてしまう。
で、一度離れた後、今度は竹内が組み付き、粘る國奥に足を掛けてテイクダウンを奪う。

グラウンドに至るまでのテクニックに両者の差が出た。

下になった國奥は逃げようともがくが、
竹内はそれを逃さずにパスガード、マウントポジションを奪う。
絶対的優位な体勢に竹内応援団の大歓声が起きる中、
マウントが崩れないようにバランスをとりながらコツコツとパンチを落とす竹内。

と、マウントパンチを喰らいながら國奥が何かを叫んでいる。下から竹内を挑発しているらしい。
ぬぅ、リング上で感情を一切出さないファイトをする國奥が吼えるとは珍しい。
國奥はこの後、ブリッヂ等で下から竹内の体勢を崩してグラウンドを脱出。
スタンド戦では竹内に殴られながらも「来いっ! もっと来いっ!」と手招きすると、
今度は自らのパンチを竹内の顔面に入れていくと、
観客からは國奥のこの姿勢を支持する歓声が起きる。今日の國奥は何かが違う。

挑発されてもポーカーフェースを崩さない竹内の反撃が始まる。
自ら國奥に組み付いていくとその体勢のままコーナー際へと押し込み、
ガブッてきた國奥をモロともせずに投げを放ってテイクダウンを奪う。
竹内応援団の歓声の中、竹内は上になってパンチを落としていく。
國奥の下から蹴り上げやパンチの抵抗にはあったが、
竹内は隙を見てパスガード、再びマウントポジションからパンチを落としていった。
2R終了。國奥は意地を見せたが竹内が二歩くらいリードしている。

3R、両者は距離を置くが、竹内はパンチから國奥に組み付いてコーナ際へと押し込む。

が、國奥は突き放すと離れ際にアッパーを入れた。
竹内はタックルで再び國奥に組み付くも、受け止めた國奥が場外に落ちるハプニング。

両者中央から試合再開、國奥はアッパーを突き上げながら竹内に組み付く。
だが竹内はコーナー際で國奥を差し返すと、投げを放って國奥を崩そうとする。
國奥は粘ったものの結局は根負け、テイクダウンを奪われた。
しかし、ハーフマウントからのパスガードを狙う竹内に対しては、
その狙いを利用してのリバースに成功、今日始めてインサイドガードで上になった。
観客の歓声の中で、國奥は下からのパンチで対抗してくる竹内に対して立ち上がってのローキック、
パスガードを狙って再びグラウンドへと潜り込む。

だが竹内、上になる國奥のバランスを崩して組み合ったまま立ち上がると、
足を引っ掛けて國奥からテイクダウンを奪う。國奥は下からの三角絞め+パンチで抵抗するが、
これを外した竹内は一度立ち上がってから潜り込んでパスガード、
バックマウントを奪ってそのままスリーパーホールドを狙っていく。
ピンチを迎えた國奥、何とか逃れて立ち上がったものの、
竹内は再び國奥をテイクダウンし、インサイドガードからパンチを落としていった。

試合終了。判定は2−0で文句なく竹内の勝利である。
…って、誰だよ、この試合内容でドロー裁定をした奴はっ!

しかしながら今日の國奥は非常に良かったように思う。
隙あらば竹内から一本取ろう…という姿勢が僕にも伝わってきた。
勿論、竹内も良い。グラウンドのテクニックは完全に國奥を圧倒していた。
判定決着ながらも中々の名勝負、また一年後くらいにでも再戦して欲しいものだ。

だが、試合後の國奥のマイクアピール、
「みんな大好きです。ありがとう。」はちょっと意味不明。



第八試合 ライトヘビー級 5分3R
○菊田 早苗(176cm/89.7kg/PANCRASE GARABAKA/同級 一位)
●キース ロッケル(178cm/89.8kg/米国/チーム エリート)
[判定 2−0]

本日のメインイベントは、菊田 早苗の進退を問う一戦。
自ら「一本を取れないとマズい相手」とロッケルを評した手前、一本勝ち以外の結果は残せない。
己を自身の発言で追い込んでの一戦、約二年五ヶ月ぶりのギブアップを狙う。

だが、その結果は菊田にとって深刻なものだった。

1R、まずはロッケルを引き込んでグラウンドで下になった菊田、
ボディパンチを落としてくるロッケルを相手に、下から足を使って体勢をコントロール。
ロッケルは何も出来なくなり、そのまま試合はブレイク。
まずは菊田、グラウンドの巧さを披露。

スタンドで試合再開、菊田は自らロッケルに組み付くと足を掛けてテイクダウン。
で、ハーフマウントの体勢からパスガード、観客の歓声の中でマウントポジションになる。
ロッケルは一度は菊田のマウントを逃れたが、菊田は再びパスガードしてマウントをキープ、
ロッケルに密着して機会を伺いながら、ゆっくりと腕ひしぎ逆十字の体勢へと移行。
観客から一本勝ちを期待する歓声が沸くが、ロッケルは腕を抜いてこれを逃れた。
1Rはここで終了。しかし、菊田が一本を取れそうな気配を感じた観客は声援を贈る。
そしてこの腕ひしぎ逆十字は、
「この試合で菊田が唯一、一本を取れそうな場面」となる。

2R、菊田は2度ほど自らロッケルに組み付くと引き込んでグラウンドへ。
しかしロッケルは上から菊田に密着してボディパンチを入れる等、菊田に隙を与えない抵抗を見せる。
結局、菊田は2度ともロッケルに何も仕掛ける事が出来ずに試合は膠着、ブレイク。
この頃から、菊田への声援に野次が混じり始める。何やら勝負の雲行きが怪しい。


その後、菊田はロッケルの周りをグルグルと一分以上も回って、そのまま2R終了。
恐らく一分少々のグラウンドではロッケルをしとめる時間としては短かく感じたのだろう。
しかしグラウンドで膠着続きの試合を見せられている観客は、
早くも菊田の一本勝ちを見限っている様子。野次もだんだんキツくなってきた。

3R、菊田は開始早々にロッケルを崩してテイクダウンを奪う。
観客の歓声の中、菊田はインサイドガードから上体を起こしてパンチを落とし、
パスガードしてサイドポジションを奪い、グラウンドで逃げるロッケルを逃がさず、
ハーフマウントに戻されつつも肩固めを狙い、マウントを狙い、再びパンチを落としていく。
だがロッケルのガードが固い。下から組み付いたり、小刻みに動いたり。
菊田のグラウンドからは逃れられない、だが一本も取らせない。

極めきれず、試合の時間が過ぎていく。
極めきれず、観客の野次が厳しくなる。
極めきれず、菊田の表情に焦りが出る。

残り30秒、菊田はヤケッパチのパンチをロッケルに落としていくが、
ロッケルは下からガッチリと組み付いて菊田のダメージを最小限に抑えた。
これでは奇跡も期待できない状態だ。

そしてそのまま、試合は終了。

…と同時に、溜め息と共に会場を足早に去っていく観客達。
その反応を見ながら、周囲の失望を肌で感じながら、リング中央で遠い目をして正座する菊田。
自軍コーナーへ戻る菊田の背中からは「落胆」の二文字が読み取れる。

判定は2−0で菊田が勝利だが、当然、菊田に喜びの表情などなく、
足早にセコンドの元に戻ると、長い時間、郷野 聡寛や佐々木 有生と厳しい表情で話していた。
何を話しているんだろう、ひょっとして「引退」とか言い出すのだろうか…、
と思っている時、菊田がマイクを持つ。

「皆さん、今日は綺麗に勝てなくて申し訳ございませんでした。
また次の試合で頑張ります。皆さん、応援よろしくお願いします。」

どうやら現役は続行するらしい。本人の心中は複雑なのだろうが。
花道を後にする菊田に、後から追ってきたボビー オロゴンとアドゴニー ロロが花束を渡していた。
リング上で険しい顔をしていた菊田の顔が少しほころんだのはこの時だけである。
彷徨える「寝業師」よ、どこへ行く。

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雑感:

ぶっちゃけて言えば、今日の興行は「ハズレ」ですね。
まあ、謙吾 vs 保坂とか、竹内 vs 國奥とか、
面白い試合はあるにはありましたけど…他がなぁ。

それにしても、色々な事が前回のPANCRASEとは随分と対照的。

「当たり」の前回の興行。
ismのエース近藤は一本勝ちで興行をキッチリ締めくくる。
MEGATONの高森、仕事が速い。

「ハズレ」の今回の興行、
GRABAKAのエース菊田は判定決着で観客に見放される。
MEGATONの保坂、残業大好き。

まあ、前回も今回も7000円払って観戦している訳ですが、
同じ額を払ってこうも感想が違うもんですかねぇ。
「興行は水モノ」っていう単語を思い出しますなぁ。

長いこと観戦してればこんな日もあるさ、って事で。

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以上、長文失礼。




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