4/18 全日本女子 後楽園ホール
■団体:全日本女子
■日時:2004年4月18日
■会場:後楽園ホール
■書き手:しま

今日を最後に納見クンが全女を去る。とうとうこの日がきてしまったんだなぁ。いいお天気。

ドームで野球、ウィンズで皐月賞、後楽園ホ−ルでは納見佳容の引退試合、というわけで、 人であふれかえる水道橋をいつものように歩いていく。

私は来月もこの橋を渡るだろうか?納見が引退したあと、今よりさらに見劣りすることがわ かりきっている全女を観に、果たして私は足を運ぶのだろうか?

今日の納見クンの引退にたいする感慨と、明日から苦しくなるだろう全女にたいする同情の ようなものが同時に胸に迫ってくる。いや、明日からどころか納見の引退以前に、すでに三 月で長年いた目黒の事務所からは追い出されていて、とうとう全女は“道場を持たない団体” になってしまった。いまや全女はれっきとした弱小団体。「いいかげんなところが全女の魅 力」なんて笑ってられる場合じゃなくなりつつあるのだ。

中に入ると満席、立ち見もぎっしり。私が全女を観始めてから初めてのことだ。やっぱり満 席っていいなぁ、会場に「期待感」「ワクワク感」のオーラが立ちのぼっているように感じ る。

今井リングアナも「何年ぶりだろ〜、こんなにお客さんがはいってるのは!」「今日は納見 クンの引退試合がありますが、そのあとも二試合あるんで帰らないでくださいよ!」「来月 も後楽園やりますんで、来て下さいね!」などとリング上で挨拶。

バルコニーからは納見クンのファンが今日のために作った「夢をありがとう」の横断幕。北 側客席にはマジックで(四国の興行のポスターの裏!)「のーみくん、おつかれ 思い出あ りがとう!選手スタッフ一同」と書かれた垂れ幕が天井から下がっている。


第一試合
×水嶋なつみ VS タニー・マウス○ 7分16秒 パロスペシャル

「納見の引退試合を見たくて来たらしい」(今井・談)タニーマウスと、タニーと頭突き合 戦したら勝ってしまいそうな水島の対決。水島のサポーターたちの「なつみ」コールの声が 小さいと「オラ、ど〜した?もっと声だせ!」と客席を挑発したり、お約束の「ふ〜っ!」 「ふ〜っ!」攻撃、「スリーだろ〜っ!?」などなどで和みのプロレスをするタニー。この 人が昔全女に在籍していたとは、、、。水島が懸命に押さえ込んだり頭突きをしたりして向 かっていったが、最後はパロスペシャルという技にギブアップ。楽しそうに試合が終る。

三月のガレージマッチ後姿を消してしまった同期の高橋の分も、水島がんばれ。


第二試合
×前村早紀、米山香織 VS ZAP・T、○サソリ 11分45秒 パンチ

前村は青いコスチュームがよく似合っている。バルコニーには“早紀ちゃん”の全身イラス ト入りの巨大な横断幕。

しかし、前村と米山が二人並んで立っていると、まる敵の前で動けなくなって餌食になるの をまっている小動物のよう、、、。しかも今日の米山は満席の会場の雰囲気にのまれたのか?
何だかおとなしい。

そうして試合はあっというまにセコンドのダンプ松本(今日は緑に染めたモヒカンが一段と 高く聳え立っている)も介入しての場外乱闘にもっていかれ、そのまま小動物のふたりは全 く何もできずに、ただただ流血するのみなのであった。どうにか反撃しても倍返し。特にフ ォークでガンガン額を割られた前村の流血はおびただしく、客の悲鳴も「キャー!」を通り 越して「ゲェ、、、」。 見かねた奈苗とHikaru が、前村組をかばうが、これも極悪勢に容赦なくやられてしまい、 Hikaru 泣き出す。なんだかシ〜ンと静まり返ってしまった。

地方大会などではけっこう人気者だったりするダンプも(3日の横浜の金沢大会なんか大盛 り上がりだったのに)今日は何をしても会場の反応は冷たい。そりゃ、みんな納見の引退を 見に来てるんだからしょうがないけど、、、「10分経過!」の時には南側席には沼のよう な不気味な静けさがひろがっていた。

リングは血で汚れきってしまい、後ろの席の若者たちは「おいおい、こんなんで次の納見の 試合どうなるんだよ?」と心配し始める。

あぁ、そのとき!サソリが、最近打ち込んでいる(らしい)ボクシングのお手前を披露。変 なアクションをするなーっ、プロレスできるようになってからそういうことしろ、っての。

しかし哀れ、そのパンチに沈む前村。その後あまりの流血に朦朧としている前村をレフェリ ーが負ぶって退場。この間米山はいったいどうしてたんだ? ごめん、全く覚えがない。

「リングが血で汚れてしまったので、きれいにしますので、ちょっとお待ちください」と今 井のアナウンスが入り、奈苗、水島、泣きべそをかきながらの Hikaru がごしごしリングを 拭きまくる。それをじ〜っと見守る客。変な展開である。大丈夫なのか?


第三試合
▽納見佳容引退試合〜the last memory〜30分1本勝負
 ×納見佳容 VS 前川久美子○ 19分35秒 カカト落し

当初、十分間のエキシビジョンマッチの予定だったのを、納見の願いで三十分の通常ルール の試合に変更。もちろん客はそのほうを望んでいるはず。前川が引退試合の相手、という発 表がされたとき、雑誌やサムライなどでも「え?どうして前川?」という反応だったし、相 方も「奈苗にしとくのが普通なのにー!一般の客受けのことを考えたら絶対そうだろ?」と 言った。

でも、私は納見が「相手は前川さん」ときっぱり言ったことに感動した。前川が、この荷の 重い仕事を、まったくいつもどおりさりげなく、受けとめる姿にも。

派手なところも、大袈裟なところも、これ見よがしなところも何もなく、いっしょに働く日 々のなかで生まれたお互いの「信頼」を一番価値あるものとして堂々と提示した納見は、や っぱり素晴らしい人だったんだな、と思う。アイドルレスラーである納見がリングまわりや 体育館で、いつも黙々と働きながら見せてくれていたのは、確かにこういう感触の何かだっ た気がする。烈しいトップ志向や、派閥争い、ときにはアイドルには必要な愛嬌まで、全く 興味がないような飄々としたそんな“変人レスラー納見クン”を、いつの間にか好きになっ ていったような気がする。

納見といえば、横浜アリーナで、川崎市体育館で、、、なぜかビッグマッチでの試合のあと のロビーでは憂い顔で目に涙を溜めている事が多かったなぁ。地方の野外の大会でのツーシ ョット撮影のとき、肩に触れたりしようとする客からパッと飛びのいてムッとしたまま写真 撮られていたっけ。流血試合のあと血の滲んだタオルを頭に巻いたまま売店にポツンと立っ ていた日。ファンの子が連れてきた犬を抱き上げてはしゃいでいた日。帰りがけに体育館の 裏をカバンを十個くらい体中にぶらさげてヨロヨロ歩いている納見クンを見てびっくりした 日もあったっけ、、、。いろんな納見が甦る。

でも納見クンはどんなときも絶対に愚痴は言わなかったなぁ。会社や他人の悪口も言わなか った。そういうときは笑っていた。それって、実はすごいことだよなぁ、と改めてこの人の 芯の強さに思い至る。「アイドルなのに、なんか変で笑える」少女だった納見がいつのまに か尊敬できる女性に成長していた。

照明が落とされ暗くなったリングに前川が上がる。長いガウンをまといフードをおろした前 川の表情は見えないが、体全体からオーラが放射されているよう。

そうして納見がコールされて登場。ピンクのガウンに身を包みリングに上がった納見は白い ベルトを高く掲げてみせる。このベルトが似合う選手は本当に少ないのだ。それを知ってい る納見はこのベルトを二回防衛戦をしただけで、まるで封印したかのように引退ロードにお いてもタイトル戦を行わず最後まで保持した。しかし倒産以後の全女の6年間を文字通り体 を張って支え続けた彼女の腰に最後まで巻かれて白いベルトはそれで大満足だったのではな いか。こんなに美しく彼女の花道を飾ることができたのだから。

氏家リングアナのコールで、納見のうえにオレンジと水色のテープが降り注ぐ。セコンドに は奈苗、中西、Hikaru 、水島。ガウンを脱ぐと純白にピンクの縁取りとフリルがたくさんつ いたミニのコスチューム。納見のルックスが映える甘やかでキュートなコスチュームに、あ ぁ、やっぱりこの姿を今日限り見られなくなるなんて!と惜しむ気持ちが湧き上がってくる。

試合は、前川のカカト落しでの急襲でスピーディーに始まった。場外に落とした前川にコー ナートップからのダイブ!

客席からの盛大な拍手と声援と一体になって気持ち良さそうに飛び込んでいく納見。ついこ の前までコーナーから飛ぶのもおっかなびっくり、という感じだった納見が堂々と楽しそう にリング上を駆け回っている。そのうちやられている納見を見ていた奈苗と中西がリングに 駆け上がり加勢に加わる。前川をロープにはりつけ、三人でポーズをとって客にヤンヤの 喝采をうけたあと、納見がおもむろに東側客席にむかって「脇沢美穂〜っ!!」と叫ぶ。

何度か叫ぶと、どこからか、すっかり細身になったけど顔はあの太陽みたいな丸顔のままの、 ワッキーがリングに駆け寄ってきたではないか!リングの上に何年かぶりでナナモモ&ミホ カヨが揃い、客も大喜び、大歓声。“キッスの世界”の四人そろってのポーズはやっぱり絵 になっていた。

ナナ、モモ、ワッキーがリングを下りてからは試合はシリアスモードに突入し、前川も蹴りを 容赦なく繰り出し始める。納見は持てる限りの技を出していく。ワッキーから受け継いだフ ィッシャーマン。多彩な丸め込み技。ひとつひとつがプロレスラー納見の軌跡を示している。不 器用な納見クンのオリジナルとは思えないような“のんのんハンター”。この技で殆んど勝て なかった前川を丸め込んで、客を狂喜させたこともあったっけ。

でも今日の前川はエキシビジョンマッチを拒否した納見のことを一番わかっている人なのだ。

痛い蹴りをこれでもかと打ち込んでくる。15分を過ぎて納見がフラフラになってくると「こ のまま終らないで!」「もっともっと見ていたい!」「いつまでも見ていたい!」という思 いと、時間が過ぎていくということの切なさが胸に迫る。

終っちゃうんだ、何もかもこうして終っていくんだ、、、という感傷にどっぷりつかまった 時、前川のカカト落しに、納見が沈んだ。

リング上にしばらく寝たまま顔を覆っていた納見を前川が起こし、自分はリング下に。 今井リングアナが「これから引退セレモニーをはじめます」とアナウンスし、志生野コミッシ ョナーがプロレスラー納見佳容のこれまでの道のりを読み上げる。

一度退団していた納見クンが倒産後の全女に舞い戻ってからの六年半。そもそも倒産してる 会社で働くのだから、何一つ経済的に恵まれることはなかっただろう。反対に納見くんの極 限状態までいくような働きに、全女ははかりしれないほど助けられたはず。倒産前の会社か らは何度も脱走を繰り返していた納見が、再入団後は生まれ変わったように過酷な仕事を笑 顔でやり遂げた。新生全女を支えたのは新生納見だった。

頼りないようでいて、でもいつも何かに立ち向かっているような毅然とした納見クンの姿に ファンは励まされていたと思う。納見クンが「大変だった」と言うとき本当にそれは大変だ ったんだろうなぁ、と心から思わせられた。それくらい納見クンはがんばったよ。

リング上にはマスコミ関係者らが続々と記念のパネルなどを持って上がり、納見に手渡して は下りて行く。納見ファンである元週プロ編集長の浜部氏と向かい合ったときには親しみの こもったハイ・タッチも見られた。志生野氏。そして納見の大ファンだという氣志團のメンバ ーが観戦していたままの私服姿で。

次に他団体の選手からの花束贈呈。NEOからは、さっき試合をしていたタニーマウスと松尾だ け。そういえば、納見ってNEOとはほとんど関わらなかったからなぁ。NEOに限らず、納見は本 当に全女一筋だった。だから今日も花束を持ってきたのは納見と関わった数少ない選手たちだ けだった。でもこの地味さが納見らしくてよいのだ。女子プロ全選手が集合したかのような派 手なラスカチョ主催興行のことなどを思い出し、、、うん、今日の方が素敵だ!と勝手に結論 を出す(笑)。

倉垣、春山、「次に試合があるので急いでおります」(今井)という伊藤、吉田万里子、そし て、納見の憧れだった三田。納見は三田の追っかけが嵩じて全女に入団したのだっけ。三田は 北海道の遠征先から駆けつけて来たらしい。三田に抱きしめてもらう納見が嬉しそう。憧れが こんなふうに見事に結実することがあるんだなぁ。続いて貴子、下田、玉田、中西、そのあと 一瞬まわりをヒヤッとした空気に変えてサングラス姿の堀田が大きな花束を持って現れた。堀 田がリングに上がるのを阻止しようとしたフロント(サイテー!)を振り切ってリングに上が り、納見を抱きしめた時は客席からも大きな拍手が起きた。嬉しかった。

それから全女の選手。照れたような表情の水島。顔をくちゃくちゃにしてまた泣いてるHikaru 。 前村はさっきの試合の傷跡も生々しく血だらけのうえに頭にタオルを巻いて。奈苗はリングに 上がると花で納見を軽く打つ。彼女が一番納見がいなくなったあとの責任を感じているはずで、 感傷の涙を流してばかりいられない気持ちだろう。「実は涙もろいです!」(今井)アメー ジングコングも。皆からのプレゼントを代表して手渡す前川。そして選手会長の渡辺が、つい さっき前村を血だるまにしたことなどウソのような笑顔で登場し今井氏に「まるで何事もなか ったかのような顔してますねー!」と言われながら納見を抱擁。ダンプからも大きな花束。去 年はさんざん流血させられて、このままでは納見クンの顔が傷だらけになっちゃうよぉ、もっ と面白い試合が見たいよぉ、と思ったこともしばしば。割りに合わない仕事を引き受けたダン プのほうにもいろいろ思うことはあるだろう。しかし、今日は静かに別れの花束。

そして、「やはり最後はこの人でしょう!」と呼ばれたのが、ワッキー。すでに泣いてる。

二年半の空白が一気にけしとんだかのように、ミホカヨがそこにいた。懐かしいミホカヨポー ズを四方の客席に見せて笑う二人。納見が引退する時が本当のミホカヨの解散、といつか言っ てたとおり、ワッキーは今日の日までワッキーでいてくれたんだね。中西と奈苗もリングに上 がり、ナナモモ&ミホカヨが揃ったとき、懐かしい「バクバクKISS」♪が流れてきて、その瞬 間涙が出てきて止まらなくなってしまった。横浜文体で見た“キッスの世界”のデビュー。当 時放映されていた「格闘女神ATHENA」で四人が歌うたびに、後楽園に若い女の子のファンが増 えていくのを目の当たりにした。あの時、選手もフロントもファンも、みんなで同じ夢をみた と思う。楽しかった。本当に楽しかった。

前村だって“キッスの世界”のプロモビデオをテレビでたまたま見たのがきっかけで入団して きたんだもの。やっぱりナナモモ&ミホカヨは全女の夢だったよ。

恥ずかしがる四人に、歌え!歌え!とリング下で渡辺が強烈プッシュしているのが笑える。客 の手拍子に促されて振りを思い出しながらワンコーラス歌ったあと、四人で額を集めて何かさ さやき合ったあと、最後に手を合わせて本当のお別れとなった。

照明が落されてひとりリングに立った納見が最後の挨拶。

「みなさんのおかげでステキな夢がみれました。たくさんの夢と、、、たくさんの元気、、、 どうもありがとうございました!」「今日で、プロレスラー納見佳容、みなさんのおかげで、 プロレス生活、これにて終了、、、です。」「みんなのこと一生忘れません!」 そしてテンカウント。会場中から乱れ飛ぶテープ、テープ。それを両手を広げて全身で受けと める納見。


全女全選手がリングに上がり納見を胴上げする。(三回目で落されて実は痛そう)
リングから下りた納見に、今井氏が「乗り物です!」と言うと、奈苗と中西とワッキーが納見 を担ぎ、リングを一周。彼女達の友情のこもった背や腕に支えらて、納見は客席やカメラに向 かって思いっきりの笑顔を残して去っていった。


ホントにあたたかくて素敵な引退セレモニーだった。

会場全体が感動さめやらずといった雰囲気。なんだか茫然としてしまったところで、休憩時間。

リングを渡辺と前川とボブ矢沢が拭いている、、、。う〜ん、リング回りで雑巾を持ってウロ ウロするのは納見クンと相場が決まっていたが、これからは選手会長やボブまでが雑巾を持つ ことになるのかぁ、早くも納見の不在がこんなところに表出したかぁ、トホホ。

今井氏がリングに上がりインフォメーション。「伊藤にくれぐれもと頼まれたんで」とダリア ンガールズの千葉大会の宣伝やら、5・2 の全女後楽園大会では第ゼロ試合として「堀田祐美 子対Hikaru 」が決定したことなど。(昨日のお台場大会でそういう展開になったらしい) そして、本当だったら今日のセミで、アメージングコングの赤いベルトに挑戦するはずだった 日向が松葉杖をついて登場。「あ!大丈夫ですか? 誰か手を貸してあげて、、、」と今井氏が 言う間に松葉杖をサッとリング上に差し入れて、自分も片足でヒョイ!と上がってしまう日向。

ビックリしている今井氏を尻目に「左足を怪我してしまい、今日の試合ができなくなりました。

早く直して絶対に挑戦します。今日はスミマセンでした!」と悔しそうな硬い表情&態度で挨 拶。そして、また「あ、大丈夫ですか!」とあわてる今井を完全無視して、怪我してないほう の脚でリングからヒョイと飛び降りてサッサと帰ってしまった。今日の試合がなくなったのは 残念だったけど、あの様子を見ただけでもアメージングコングとの一騎打ちは期待できるなぁ。

ロビー&売店を見に行っていた相方が戻ってきて「通路に西尾がいるよ!」と報告。おぉ、西 尾、納見にお別れを言いに来たか。やっぱり堀田のようにリングまでは来られなかったんだ。


第四試合
○A・コング VS 伊藤薫× 17分40秒 フライングボディプレス

伊藤は今日は日向の代わりだし、納見クン主役の日でもあるし、まぁこんなもんでしょ、とい う試合。ただ、伊藤のフットスタンプを思いっきり喰らったアメージングコング(目をむいて 悶絶してた)は、伊藤をどう思ったんだろう?訊いてみたい。


第五試合
高橋奈苗、×Hikaru VS 井上貴子、○中西百重 24分20秒 モモ☆OK

“ミホカヨ”というタッグが永久になくなったことで、今日この試合から“ナナモモ”は今ま でとは違うステージに否応なく立たされることになったわけで。仲良しタッグだったナナモモ が、奈苗、中西という一人のレスラーとしてこれからどのくらい大きくなれるのか?明日から さらに過酷になるだろうこの道を果たしてどこまでいけるのか?そういうことを計られてしま う重大な試合。貴子とHikaru というタッグパートナーを従えてはいたけれど、この試合は奈苗 と中西の本領を満天下に見せつけるための試合でなくてはならない。

そして、ふたりは、その通りの、それ以上の意地を見せた。どんな時も「楽しむこと」がモッ トーである中西が、初めてコワイ中西を見せた。奈苗にきついエルボーを何発も打ち、張り手 を見舞い、頭を蹴り上げる。あまりのキツさに奈苗が倒れて鼻血を出すシーンまであったが、 相手が本気だと解った時の、一瞬にして顔色が変わってからの奈苗は素晴らしくイイ!奈苗は 相手がガンガンきて、はじめてエンジンがかかるという歯痒さがあるのだけれど、一旦エンジ ンががかかると目がすわり、髪が逆立ち、キッとなった顔が輝きだす。中西が目にも止まらぬ 速さに加えて、一発一発強烈な攻撃を仕掛けてくるのに対して、奈苗も勝手知ったるモモの技 を見事に切り返していく。客の反応や手拍子などかまっていられない、必死にならなくてはや られてしまう!そういう気持ちがにじんだ攻防。腰を痛めているらしく歩くのもつらそうな貴 子が、それでもディスティニーハンマーで飛び掛かってくる。ただガムシャラに突進するHika ru は、己を知れ!とばかりに裏拳を叩き込まれる。奈苗が貴子につかまっている時に、リング 下のHikaru に向かって中西がコーナーからドロップキックを打ち込みざま無表情でそのままフ ットスタンプしたのには戦慄。メチャクチャやってるのに、バラバラじゃない。密度が濃い。
片時も休まずにエグイ攻撃を乱射し続ける彼女たちの気迫とタフさに客席も大熱狂。もう誰を 応援してるのか何がなんだかわからなくなってきた。四人ともに、よくぞここまでやってくれ た、という気持ち。凄い!

最後は中西がHikaru をフォールして終った。フリーになってから「価値が下がった」(浜田) だの「こんなもんか?」(奈苗)だの、言われ通しで、自身も考えるところがあったんだろう 中西が、今日納見を送ったあとで見せた、これは答えだろうと思う。

試合後マイクを持った奈苗が「納見クンの引退ということでこんなにいっぱい来てもらったの に、最後の最後に全女の自分が負けてしまって悔しい」「でも明日からも変わらず頑張るので、 これからの全女に期待して下さい!」と挨拶。そして「モモ!この前の試合では“こんなもん か”って言ったけど、、、やっぱりモモはモモだったよ!憎たらしいくらいに!」と今日の中 西の攻撃にイエスを投げ返した。

  納見引退の余韻に浸っている客から、これほどの熱狂をさらに引き出せる力を、この子たちは 持っているんだ。「納見がいなくなったあとも、私たちは、ここにこうしているんだ!」とい う叫びがほとばしっていた。

全女を観にくるのも最後かなぁ、なんて考えた自分が浅はかでした。彼女たちが頑張るかぎり、 やっぱり応援せずにいられない。


ロビーに出ると、最後の売店を勤める納見クンのまわりは黒山の人だかり。夜の興行の搬入な ども始まるので、ツーショット撮影はビル入り口ロビーに移動して続けられる。ビルの外にま で客が並び、それを見守る客も減らない。並んで奈苗のツーショット撮影が始まり、終っても、 納見の撮影は終らず、ロビーの混雑を気にしてビルの外にぞろぞろと移動。それでもファンが 減らないのを見て後楽園ホールのオジサンが怒りに来た。すごい怒っております。納見クンや スタッフがビクビク撮影を続けるのを、立ちはだかって睨みつけています。でもいくら怖くし たって、最後の納見クンを目に焼きつけたいファンは今日は帰らないぞ〜、さぁどうする?と 遠巻きに見ていたら、とうとうオジサンに追われた納見軍団は青いビルを離れて外堀通りの方 へ民族大移動のように移動を開始。ど、どこへ行くのだ?とさらに追跡すると、謎の集団と化 した一同はドームホテルの駐車場入り口付近で列をつくって撮影続行!(笑)皐月賞帰りの人 々の好奇の視線を浴びながら最後まで健気に働いた納見クンであった。


この時、外堀通りでスッと納見に近付いたガタイのいいジーンズ姿の者あり。誰かと思えば、 去年の横浜アリーナを最後に姿を消した小関だった、、、。挨拶したくてわざわざこんな場所 まで来たんだね。納見が本当にみんなに慕われていたことがわかる。

全女にいたときよりたくましくなってるように見える小関が横断歩道を渡って帰って行く。納 見のように花開いた数少ない選手にとってはもちろん、大勢いた雑用だけで終ってしまった小 関のような選手にとっても、全女の選手であったことは人生のなかでも突出して鮮明な思い出 になっていくんだろうね。その思い出が輝いていますように。いつまでも。




本稿の著作権はすべてKANSENKI.NET及び「書き手」に帰属します。

戻る
TOPへ