4/16 全日本キック 後楽園ホール興行 観戦記
■団体:全日本キック
■日時:2004年4月16日
■会場:後楽園ホール
■書き手:高倉仮面

18:00
神保町名物「まんてん」のカレーライスを腹に溜めつつ、後楽園ホールに到着。
本日は全日本キックボクシング連盟の興行の観戦である。

今日の興行の目玉はライト級トーナメントの二回戦。
今回は、一回戦から勝ち残った西山 誠人、吉本 光志、山本 真弘、サトル ヴァシコバに、
昨年トーナメントの優勝者である大月 晴明、準優勝者の白鳥 忍(花戸 忍 改め)、
エースである小林 聡、韓国からの招待選手である崔 永益を加えた八名が激突する。
トーナメント以外の試合には山本 優弥、金沢 久幸、山内 裕太郎といった面々が登場。
イヤイヤ、ホントにいい選手が揃った。

で、本日は会社の同僚にしてキックマニアのニゴウ氏と共に観戦だ。
この人、知り合いが某ジムに所属している為にキックの事情に非常に詳しいだが…、
普段はキックの観戦の為よりも競馬観戦の為に後楽園に来る事が多いらしい。
そんな彼が今日、全日本キックを観戦する理由は…、

「(4月7日の)K-1 MAXの判定、酷かったですねぇ。
 お陰で普通のキックが見たくなりましたよ。
 …どうしてくれるんですかっ!?」

い、いや、僕に言われても…。いいじゃん、今日は観に来てるんだから。
ライト級二回戦に熾烈な闘いを期待しつつチケット購入。
立見席で4000円。相変わらずまあまあの値段だ。イヤ、試合内容を考えれば安いくらいか。


18:10
パンフレット購入、1000円なのに相変わらず内容充実。
選手情報、試合の見所、団体トピックス、
「崔 永益のサングラス姿」と「山本 優弥の新チーム結成」を扱ったマンガ…等。

◎ネタにされた「崔 永益のサングラス姿」(bout reviewより)
http://www.boutreview.com/data/img/1081504862.jpg
なんとも微妙だねぇ…。

立見席に立つ。本日も二階の東側の一角を陣取っての観戦。
客入りは…最初は五割程度だったが、第三試合が始まる頃には満員になっていた。

…それにしても「まんてん」のカレーは腹に効く。
大盛りなんて頼むモンじゃねぇなぁ。

◎「まんてん」について(「おうさる.com」より)
http://www.ousaru.com/curry/

ニゴウ氏曰く、

「『まんてん』のカレーは学食みたいでしたねぇ。
 未だに腹が張って仕方がありませんよぉ。
 …どうしてくれるんですかっ!?」。

全く持ってその通り。バリバリのB級グルメ、味より量と値段。旨くはないけどマズくもない。
「どうしてくれるんですかっ」と言われても、僕は好きなのよ、こういうのも。
とは言え、さすがに「全部のせ」(コロッケ、トンカツ、ウィンナー…etc)は食べる気にはならないなぁ…、
と思いつつ観戦開始。

---


第一試合 バンタム級 3分3R
○リポビタンD(DRAGON GYM)
●水原 浩章(光ジム)
[不戦勝]
※水原の負傷欠場による

リポビタンDは今日がデビュー戦だったが、
対戦相手の水原 浩章が負傷欠場で不戦勝。
まあ一応、デビュー戦を白星で飾った訳だ。

それにしても…。
いかにも「目立ちたがり屋が自らつけたリングネーム」なリポビタンDだが、
リングに上がったその姿は小柄で気の弱そうな感じ、四方に礼をするのだが動きがカタイ。
明らかに緊張していている様子。

これを見たニゴウ氏、

「あれは絶対にジムの先輩に勝手に名付けられたんでしょうね(笑)」。

僕もその意見に一票。
しかし、ウケを狙うにしても…、
もう少しヒネったリングネームはないものか?


第二試合 ミドル級 3分3R
○上林 剛(170cm/72.5kg/青春塾)
●今野 孝親(180cm/71.5kg/DRAGON GYM)
[判定 3−0]

第一試合のリポビタンDと同じくDRAGON GYMからのデビュー戦となる今野だが、
必要以上に緊張していたのか殴っても蹴っても手足がバラバラ。
上林の容赦のないミドルキック、ストレート、ボディブローを喰らいまり、
2R序盤にあっさりとスタミナ切れ。

上林は打撃で今野をコーナー際へ追い詰めて、フックやアッパーを連続でヒットさせるのだが、
破壊力がないのか今野からダウンを奪えない。3Rには上林も攻め疲れでスタミナ切れ。

32歳の上林、元々スタミナには難があるのだろう。

ボロボロになりながらもパンチで喰らいついて来る今野に対して上林は作戦変更、
リングを大きく回って今野と距離を取りローキックで蹴っていく。
あからさまな判定狙い、恐らく「KO勝ちは無理」と判断したのだろう。

結局そのまま試合終了、上林が判定3−0で勝利。
今野は苦いデビュー戦。まずはお客さんの前でで固くならない事から練習か?


第三試合 全日本ウェルター級ランキング戦 3分3R 最大延長2R
○山本 優弥(174cm/66.5kg/ブッチ ビート/全日本 ウェルター級 一位)
●金沢 久幸(174cm/66.6kg/TEAM-1/元WPKC世界ムエタイ スーパーライト級 王者)
[判定 2−0]

広島から良質の選手を全日本キックに送り出していた空修会館が突然の休会。
大変に残念なニュースだが、これを機に所属選手のうち3名が独立して新チームを結成。

バンタム級王者の平谷 法之、ウェルター級一位の山本 優弥、バンタム級のホープである寺戸 伸近。
パンフレットでもネタにされていたチーム名も「ブッチ ビート」に決定した。

そして今回は「ブッチ ビート」所属として試合に挑む山本 優弥。
紙のプロレスのライター ささきぃ女史をして「桜庭 和志以来の衝撃」と言わしめ、
サムゴー ギャットモンテープをも苦しめた強豪・加藤 督朗を秒殺した若き実力者。
今日の対戦相手は、裏拳を得意とするベテラン・金沢 久幸。強豪相手にどんな試合をするのか。

1R、両者が距離を置く中、
まずは金沢がワンツーからのローキックで牽制。
山本はローキックやミドルキックを中心に金沢を蹴っていくも、
中盤以降、相変わらず距離を縮めずにローキックやパンチを繰り出す金沢を前に自分の試合が出来ない。
終盤、山本は笑ってみせたり両手を広げたりして金沢を挑発、何とか前に出させようとするも、
金沢はペースを崩さずに得意の裏拳。山本がかわしたところで1Rが終了。

ニゴウ氏が口を開く。

「山本はねぇ…。相手の打撃の間合いの外から挑発をするんですよねぇ。
 挑発っていうのは相手の打撃の間合いの中でやるから効果が出るんですが…。
 あれでは逆に『自分はチキンだ』と言っているようなものですよ」。

成程ね。

2R、開始早々、前に出ようとする金沢に山本のストレートがモロにヒット。
これでようやく自分のペースを掴んだ山本がラッシュを仕掛ける。ハイキック・パンチの連打、連打。
だが金沢、一瞬は防戦一方になるもすぐに持ち直す。さすがはベテラン。

で、金沢はこれ以降は足を使って距離を保ちつつジャブやローキックで山本を蹴る。
対する山本、金沢を追いかけながらパンチとキックで攻めれば、時折、打撃がクリーンヒット。
更なるダメージを狙って、大振りなフック、ハイキック、得意のパンチのコンビネーションを放つ山本、
しかし金沢はこれらを悉くかわしてしまう。2R終了、ここまでは山本がやや押し気味か。

3R、山本、開始早々に前に出て得意のジャブ・ストレート・アッパーのコンビネーション。
しかし金沢はこれをかわして右ハイキック、これが山本にヒット。

金沢はこれを起点に攻勢を掛けたいところだったが、逆に山本に火がついた。
組み付いては首相撲から投げを放ち、前蹴り、ミドルキック、ワンツーで金沢を追い詰める。
そしてストレートがモロにヒット、グラつく金沢にパンチのラッシュ。
ダウン気味にスリップする金沢、山本応援団が歓声を揚げる。

山本はこの後、組み付いてのヒジやヒザで金沢にダメージを与えた。
金沢は起死回生のジャンピングキック、飛びヒザ蹴りを放つもいづれも不発。
山本がミドルキックを放ったところで試合終了。

判定は3−0で山本…ではあるが、3Rはペースを握ったものの、
全体的にはベテランを相手に自分の試合が出来なかった印象。
得意のパンチのコンビネーションがヒットしなかったのは大きいな。


ニゴウ氏曰く、

「山本は今日は勝てたから良かったですが…。この先が心配ですね。
 空修会館の中でも練習嫌いで有名な子でしたから。
 まだまだ若いから、遊びたくなるのはわかるんだけどなぁ。
 この先、彼がダメになったら…どうしてくれるんですかっ!?」

まあ、僕がどうするかは兎も角…、その点については僕も心配だ。
あの素早いコンビネーションが錆び付くところだけは見たくない。
新しい練習環境でも、常に自分に妥協する事なく練習し続けて欲しい。


第四試合 67kg契約 3分3R 最大延長2R
○山内 裕太郎(180cm/66.8kg/AJジム/全日本 ウェルター級 王者)
●ハイパー キック リー(173cm/66.5kg/WKF異種格闘技トーナメント 準優勝)
[2R 2分25秒 TKO]
※3ダウンによる

第三試合に出場した山本 優弥を倒した事でその存在がクローズアップされた山内 裕太郎。
ウェルター級としては卑怯なくらいの長身、アウトレンジからパンチは脅威である。
対するは日本で生まれながら韓国で名を上げたハイパー キック リー。…プロレス好きなんだろうな。
ちなみにリーは入場時のパフォーマンスが派手な事で有名なのだそうだが、この日は地味に入場。


1R、ベタ足のままヅカヅカと前に出て、大振りなパンチを連打するリー。
何と言うか、あんまりキックボクサーっぽくもなく、ボクシング経験者っぽくもない。
ニゴウ氏は「テコンドーじゃないですかねぇ」と言うが、僕にはそうも見えない。
まさに「我流」という単語が良く似合う戦法で山内を攻める。

対する山内、リーチ差を生かすべく後ろに下がりながらのローキック、ミドルキック、ワンツー。
特にローキックは全くガードをしないリーの腿にバシバシと入っていったが、
リーはそんな事など全くお構いなしに前に出て大振りなパンチの連打。

「う〜ん、リーは変わった選手だなぁ」なんて思っていたら、
終盤に山内の右ストレートがモロに入ってリーがダウン。
更にラウンド終了直前、挽回すべく前に出るリーにまた右ストレートがモロにヒット、二度目のダウン。

リーの大胆で変則的な動きを見たときからひょっとしてそうじゃないのかなぁ…とは思っていたが、
多分、リーは自分が攻める事しか頭にないのだろう。攻撃は最大の防御。
で、あんまりガードを考えない攻めを連発、しかし今日はそれらを山内にかわされて…。
で、逆にパンチもらってダウン。こりゃ、山内の勝ちは動かないな。

2R、相変わらず大股開いてズカズカと前に出て大振りなパンチを連打するリー。
本人なりに1Rに取られたダウンによる失点を挽回しようとしているのだろうが、
山内はこのパンチをスウェーやガードを巧みに使ってディフェンス、
逆にカウンターのストレート二発で逆襲、またまたモロに喰らったリーはフラフラの状態。

それでもリーは前に出る事をやめない。
こんな単調な攻めでは山内が勝利を手にするのも時間の問題だった。
一度目と二度目は大振りな左右パンチの連打に合わせた右ストレート、
三度目はフラフラの状態のリーに組み付いて、ヒジとヒザの連打。
リーがあっさり3ダウンでTKO、山内はホーム王者としての意地を見せた。

これを見たニゴウ氏が、僕の言いたい事も全て代弁。

「山内かぁ…成程、これじゃ山本は負けますよ。
 あのリーチも脅威ですが、何より相手のパンチを良く見てますね。カウンター当てるのも巧いし。
 山本は前回の試合で終始『アイツ、パンチ当たらねぇよっ!!』とか『リーチ長ぇよっ!!』と、
 グチりながら試合してたらしんですが…それも納得ですわ。いや〜、強いんじゃないかなぁ、この人」。


第五試合 ライト級トーナメント二回戦 3分3R 最大延長2R 肘なし+首相撲からのヒザなし
○吉本 光志(171cm/61.9kg/AJジム/全日本 ライト級 四位)
●西山 誠人(174cm/62kg/ソーチタラダ渋谷/J-NETWORK ライト級 王者)
[判定 3−0]

ここからはライト級トーナメントの二回戦。
第一試合は、共に一回戦を突破した者同士の対戦だ。

西山 誠人は一回戦で「ヒットマン」湟川 満正を54秒の秒殺劇で撃破。
東京大学卒にしてJ-NETWORK王者、ここ五試合は全てKO勝利。陰の優勝候補との呼び声も高い。
対するのは、一回戦でテコンドーの猛者 凱斗 亮羽から逆転劇で勝利を飾った吉本 光志。

実はこの二人は元同門。
これについて西山は「それ故、スタイルは把握している」と冷静さの裏に自信を見せ、
吉本は「今の僕はAJジムの一員。第一に考えたのは同じジムの湟川選手の敵討ち」と熱い心を燃やす。
どうやら元同門故にやり難そうな部分は全くないようだ。
それにしても、コメントに秘められた情念が正反対で面白い。

1R、両者は距離を置き、西山はジャブとローキック、吉本はミドルキックを出していく。
そんな中、西山の右ストレートがモロにヒット。グラつく吉本に西山がラッシュを仕掛ける。
左右の連打にヒザ蹴り一発。吉本はガードを固めて凌ぐ。

ブレイク後も西山がペースを握る。
吉本のガードの隙間を見つけて、至近距離からアッパーやストレートをバシバシと入れていく。
正直、一回戦では今一つ何が強いのかがわからなかった西山だったが、
この攻撃で強さがわかった。この人、メチャメチャ至近距離戦が巧い。
冷静に状況を分析して、その時に一番効果的な打撃を入れているのだ。
う〜ん、東大卒は伊達じゃない。この試合運びはメチャメチャ僕好みだな。

完全に劣勢に立たされた吉本だったが、終盤は距離を離してミドルキックを放っていく。

これに対して西山は、ムリに距離を詰めずにローキックを連発するに留まった。
それでも西山応援団はイケイケの大歓声で西山の攻勢を支持。


2R、序盤から両者が打撃を交差させる中、
西山の至近距離からのヒザ蹴りが吉本のアゴにヒット。
左右のストレートでラッシュを仕掛ける西山、
再び大ピンチに陥った吉本だが…。

吉本は何とかこれを凌ぐと、逆にストレートを繰り出すと…これがモロにヒット、 一瞬グラつく西山、ダメージが大きそうだ。

そしてこの一撃で試合の流れが一転、
西山の精密機械が破壊されたのだ。

今度は吉本がラッシュを仕掛ける。
ミドルキックの連打から、ストレート、フックのパンチの連打。
若さと情熱に任せて何度も何度もラッシュを仕掛けてくる吉本を前に西山は防戦一方。
何とか相手の打撃の隙を見つけてパンチを返して行くものの、
吉本はその倍以上のパンチを西山に浴びせていく。
1Rは元気のなかった吉本応援団も、このラウンドは大歓声で吉本を応援。


3Rも吉本の勢いは止まらない。
最初こそ西山はパンチのラッシュで勝負に出たが、
それが止むと…あとはワンサイドゲーム。

吉本はストレートからのミドルキックでガンガン前にでる。
これらの打撃が西山に次々にヒット、2Rに喰らったストレートのダメージが抜けていないのだ。
終盤、西山は完全にスタミナ切れ、尚も吉本のミドルキックがバシバシとヒット。
この様子を見た西山応援団、1Rの元気もどこへやら、すっかり意気消沈。

試合終了、判定は3−0で吉本。一回戦に続いて逆転勝ちと言える内容だろう。
ニゴウ氏曰く「『情熱』が『冷静さ』を破壊しましたな」。
まあ、個人的には好みの試合運びをする西山の敗退は残念…どうしてくれるんですかっ!?


第六試合 ライト級トーナメント二回戦 3分3R 最大延長2R 肘なし+首相撲からのヒザなし
○白鳥 忍(171cm/61.6kg/高橋道場/全日本 ライト級 一位)
●山本 真弘(165cm/60.5kg/藤原ジム/全日本 フェザー級 二位)
[判定 2−0]

ライト級トーナメントの二回戦は「日蒙・極真空手対決」。
「モンゴルからの猛者」花戸 忍が、この度、白鳥 忍に改名。…って、何で白鳥?
そんな事はさておき、怪我の為に半年間休養していた全日本キックの強豪が本日復活である。
これまで19戦17勝2敗7KOという素晴らしい戦績を残している白鳥、
K-1 MAXでは同胞・ジャダンバ ナラントンガラグが大活躍、負けてはいられない。
まずはこの試合に勝利し、前回トーナメントの決勝で敗れた大月へのリベンジ戦を実現させたいところだ。

一回戦でフェザー級の猛者中の猛者、増田 博正を判定で下した山本 真弘。
極真空手の全国高校大会で二階級制覇という実績は伊達じゃない。
キック転向後も11戦9勝2敗2KOの好戦績、20歳の若武者が前大会ファイナリストへ挑む。

1R、髪を金に染めた白鳥がいきなり圧力を掛ける。
メチャクチャ重そうな音を立てるローキックとミドルキック。
バシーン、バシーン…という重そうな音に観客は大きくどよめく。
山本もミドルキックや回し蹴りを返していくが、圧力も手数も白鳥が上。
距離を取りながらキックを連打する白鳥を前に、山本は自分の試合をする事が出来ない。


2R、やはり距離を取りながら、
重いローキックと重いミドルキックで山本を蹴る白鳥。
その威力は1Rから全く落ちていない。

これに対して山本は戦法を変更。
真正面から蹴り合う事を捨て、ヒット & アウェーで白鳥を翻弄する。
上段回し蹴りから相手の懐に潜ってのアッパーとストレートが白鳥の顔面にヒット。
距離が離れてもミドルキック、後ろ回し蹴り、前蹴り、踵落とし等を放って手数で圧倒する。

自分の試合が出来ずに苛立つ白鳥、
山本に組み付いて投げを放つ場面も。

3R、今度は白鳥が作戦変更。
ローキックで山本をスリップダウンさせると、
ミドルキックとローキックに加えて、
中盤からはボディブローやボディへのヒザ蹴りを多用する。

山本は序盤こそヒット & アウェー戦法を多用していたが、
重いミドルキックに加えてこれらの攻撃を喰らった為か、
徐々に足まわりが悪くなってきた。中盤からクリンチも多用する。

しかし山本もミドルキックを白鳥に叩き込むと、
効いていない素振りをしながらも、白鳥もクリンチを多用。
まあ「相手が効いていない素振りを見せる時は、効いている証拠」と言うしね。
明らさまに疲労回復を目的としたクリンチを連発する両者にイエローカードが出された。


最後は両者はパンチで勝負、一進一退の攻防の中、
白鳥は得意の踵落としも見せた。

判定は2−0、僅差で白鳥の勝利。
ミドルキックやローキックの重さは本物だが、今日はちょっと苦戦した印象。
まあ今日は半年のブランクからの復帰戦という事もあるのかなぁ。


第七試合 ライト級トーナメント二回戦 3分3R 最大延長2R 肘なし+首相撲からのヒザなし
○サトル ヴァシコバ(170cm/61.9kg/勇心館/全日本 フェザー級 四位)
●小林 聡(170cm/61.9kg/藤原ジム/WKA&WPKC世界ムエタイ ライト級 王者)
[判定 3−0]

ライト級トーナメントの三回戦は、本名が一字違いの者同士の対戦。

本名は『小林 悟』、小林 聡の存在がリングネームを名乗る切欠となったサトル ヴァシコバ。
「小林さんが有名すぎて自分が目立たなくなると思った」んだそうだ。
そんなヴァシコバは一回戦で修斗 ライト級 新人王トーナメントの王者である高谷 裕之を撃破。

この試合に向けては「ヴァシコバは大穴と言う皆さんの下馬評を覆してみせます」と意気込む。

昨年のトーナメントでは優勝候補の筆頭と言われながら、
一回戦では任 治彬(イム チビン)に敗れ、繰り上がりで参戦した二回戦では花戸 忍(現 白鳥 忍)に敗れ。
少々厳しい立場に立たされている小林 聡 、この試合の前に北沢タウンホールでのワンマッチ興行に挑んだ。
本調子とは言えない体調ながらも対戦相手を下した小林は「元気じゃないけどトーナメント出ます」と宣言、
今日への一番へと挑むわけだが…小林の姿を見るなりニゴウ氏は「体調、悪そうですねぇ」、確かに。


1R、開始早々にヴァシコバは飛びヒザ蹴りで奇襲、
続けざまに繰り出した右ストレートが小林の顔面にヒット。
ヴァシコバ応援団から歓声が挙がる。

だが小林は冷静にこれを捌くと、
距離を取って全力でミドルキックを放つ。
「バッシーン」という音と共にヴァシコバの身体に叩き込まれ、観客から驚きの声が揚がる。
これを機に、ヴァシコバと距離を置きながらローキックとミドルキック、ストレートで攻める小林。
ヴァシコバはジリジリと距離を詰めていくが、重い打撃の前に手数が出ない状態。


2R、やはり下がりながらの重いミドルキックや重いストレートでヴァシコバを攻める小林。
ヴァシコバのミドルキックは逆にキャッチ、コーナーに追い詰めて殴りかかる。
中盤以降は重いボディブローも効果的に使用。一発一発が強力な小林の打撃にヴァシコバは苦戦。

それでもヴァシコバは距離を詰めながらのストレートで小林を殴っていく。
終盤、小林のストレートをかわしてのヴァシコバのストレートがヒット、
全体的には小林に押されているヴァシコバだが、決してやられっぱなしではない。


2R終了時、ニゴウ氏が呟く。


ニゴウ:「仮面さん、ヴァシコバが動きますよ。」


仮面 :「へっ!? なんだい唐突にっ!?
     まあ確かにヴァシコバはここで仕掛けないと負けちゃうだろうけど。」

ニゴウ:「セコンドの声を聴いてましたか? ベテランの人が、若い奴を制してたんですよ。
     『前に出て、前に出て』って言うのを『出させるな、バカッ』って感じで。」

仮面 :「う〜ん、今一つ、話の全容が見えないんだけど…。」

ニゴウ:「このラウンドはヴァシコバは様子を見たんですよ。
     小林との打撃の距離を測っていたんでしょうね。

     それが証拠に…、
     最後の方のミドルキックは全部ガードしてましたし、
     ストレートにはカウンターを合わせてますし。
     あと、一つ一つの打撃を全力で放つ小林は、
     後半は息切れする傾向もありますしね。」

仮面 :「成程ね。でも、小林の打撃の破壊力はヴァシコバにとって脅威だと思うけど。」

ニゴウ:「そうですね。ギャンブル性の高い作戦だとは思いますけどね。」

注目の3R…ヴァシコバが仕掛けた。
試合開始と同時に小林に突進、パンチの猛連打で襲いかかったのだ。
これに対して小林も猛然とパンチで対抗、試合は一気に大乱打戦である。
ノーガードでパンチを打ち合う両者に観客は興奮状態、
会場の空気が震える中で冷静に試合を見る僕とニゴウ氏。
…ニゴウ氏、凄いな。ホントに言うとおりになったよ。

そんな中、ヴァシコバのストレートがモロにヒットし小林はフラフラに。
ヴァシコバは更にパンチの連打で猛攻、これを全て喰らってしまった小林。
これを見たレフリーがスタンディング ダウンを要請。
会場はもはや訳のわからない状態、後楽園が歓声と声援と絶叫で揺れる。

しかし試合再開後に小林が逆襲、大振りなフックがヴァシコバの顔面を捉えた。
フラフラになるヴァシコバ、そんな状態でもストレートの連打をヒットさせて小林を流血させる。
まだまだ続く大乱打戦、今度は小林のパンチの連打がヴァシコバにヒット。
棒立ちになるヴァシコバ、会場内は上へ下への大騒ぎ。凄いなぁ。

だが終盤、再びヴァシコバのストレートがクリーンヒット。
足元がグラついた小林に対して猛然とパンチのラッシュで殴っていく。

ここで試合終了…だが、試合が終わっても観客のどよめきが治まる事はなかった。
いや〜、何だか一気に爆発したな。

判定は最終ラウンドにダウンを奪ったヴァシコバが3−0で勝利。
小林は去年に続いてトーナメントの初陣にて敗退である。
…それにしても会場の空気が凄かった。


仮面 :「凄いね、ニゴウ氏。君の言う通りになったよ。」

ニゴウ:「まぁ、ヴァシコバが凄いんですよ。
     中々、あんな状況で前には出られないですよ。
     あとねぇ、小林の体調が悪いっていうのもあると思いますよ。」

仮面 :「確かに小林は『現在の悪い体調の中ではベストのコンディション』って感じだったもんねぇ。」

ニゴウ:「う〜ん、ひょっとしたら小林はもう期待できないかもしれませんねぇ。
     …どうしてくれるんですかっ!?」


そんな事、僕に言われても…。


第八試合 ライト級トーナメント二回戦 3分3R 最大延長2R 肘なし+首相撲からのヒザなし
○大月 晴明(165cm/61.9kg/AJジム/全日本 ライト級 王者)
●崔 永益[チェ ヨンイク](176cm/62.0kg/韓国/韓国 スーパーライト級 王者)
[2R 2分8秒 KO]
※左の裏拳による

ライト級トーナメントの四回戦は、日韓ライト級王者対決(崔はスーパーライト級王者だが)。

崔は9年前に小林 聡と対戦して1勝1分している強豪。
年齢は34歳、全盛期は過ぎている印象もあるが、
通算戦績は39戦32勝5敗2分23KO、KO率は58.9%と文句なしの戦績。
と、ここだけなら「今回のトーナメントの優勝候補」のように聞こえるかもしれないが…。
今日は対戦相手が悪すぎる。

入場曲は筋肉少女帯の「ボヨヨン ロック」の大月。
「『オオツキ』繋がりかヨっ!!」と突っ込みたくもなるが、
彼は昨年のライト級トーナメントの覇者である。

その戦績に戦慄を覚えろ。
彼はここまで全日本キックで15戦15勝無敗14KO、KO率は何と93.3%である。
この2月にはアメリカ・ラスベガスでボクシングのトレーニングを行ったが、
その時も「ハングリーさを失わない為に治安の悪いダウンタウンに宿を取って過ごした」という。

実績も精神もパーフェクト、「格闘科学の探求者」が二連覇を狙う。

1R、まずはお互いに距離をおくが、崔が打撃を出す事が出来ない。
多分、迂闊に打撃を出し、大月にカウンターで踏み込まれる事を警戒して…の事と思われる。
確かに93.3%のKO率は、崔の消極的な攻めも「やむなし」と思わせるだけの数字である。

対して、威圧感のみで前に出て、ローキックやフックを繰り出していく大月。
この打撃がメチャクチャ重い。白鳥や小林の打撃も充分に重かったが、大月のそれは輪をかけて重い。
大袈裟ではなく「ズドーンッ!!」という音がする打撃、観客は騒然となる。

こうして大月は威圧感でプレッシャーを掛けながら、
バックブロー、右ボディブローからのラッシュで攻める。
崔は時折、ミドルキックやストレートを放つが、
大砲のような大月の打撃に押され気味。
2R、序盤から大月は威圧を掛けながらの大砲フック連打で崔を攻めまくる。
対する崔は後ろに下がりつつ、長身を生かして大月の間合いの外からミドルキック。
だが大月、崔のローキックに合わせて前に出てストレートをヒットさせると、
再び大砲フックの連打、ボディブロー、ミドルキックの猛攻で崔からダウンを奪う。

何とか立ち上がった崔は、失点を挽回しようと前にでるが…。
大月はローキックを放ちながら、最後は崔のストレートをダッキングしてからのバックブロー一閃っ!!
これが打撃を放った後で何かをかわそうとする崔の顔面にカウンターでヒット。

物凄い轟音と共に崔が前のめりにダウンすれば…。
観客は大騒ぎ、ヴァシコバ vs 小林の3Rでも叫ばなかった我々二人も思わず叫んでしまう。


「スゲェーーーーーーっ!!
 立てないだろ、コレっ!?
 どうしてくれるんですかーーーっ!?」。

それでも崔は立ち上がってきたが…やはり足元がおぼつかない。
あれだけのクリーンヒットの後、立ち上がってきただけでも拍手ものである。
ファイティング ポーズをとれない崔を見たレフリーが試合をストップ、試合終了。

それにしても凄いバックブローだった…。
隣でニゴウ氏も、

「確かにあんな打撃を食らってたら、
 自分の打撃ですらオッカナビックリになりますよねぇ」。
崔自身もKO率が60%近い選手なのにねぇ…。
大月はこの一戦で16戦16勝15KO、KO率は93.8%に上昇。
…化け物だな。こりゃ今年も優勝かなぁ。

---

雑感:

ホントに凄い団体だなぁ…全日本キックは。
一回戦の時点でもライト級やフェザー級の層の厚さを感じていましたが、
今日はそれ以上のものを見せられました。全く、トンでもない団体です。
日本人同士の闘いだけでこんなに物凄いものを見せられるんですから…。

ライト級トーナメントは内容の濃い試合の連続。
特に第七試合の激闘と第八試合の戦慄のKO劇が凄まじい。
素直にこれらの試合を生で観れた事が嬉しいです。

え〜、今からでもまだ間に合います。
6月18日の決勝戦には是非生で観てみて下さい。

---

21:30
帰りのメシはニゴウ氏の紹介で。
ここは彼が競馬に勝った時には必ず寄る店だそうだ。

◎味太助(本店の公式HP)
http://www.aji-tasuke.co.jp/index.html

「仙台牛タン」の店、という事で食ってみたんだが…おお、これは本物の仙台牛タンじゃねぇか。
「牛タンは硬いモノ」と決め込んでいた僕の考えを改めさせた、あの食感だよ。
こんな近場で、こんなに旨い牛タンを食えるとは…。

ちなみに料金は麦飯、牛タン、テールスープで1350円、まあまあの値段。
しかしながら、本場の仙台牛タンを楽しめると思えば、安いもんかもしれんよ、マジで。

ただ、牛タンの一人前毎の量がイマイチかもしれんなぁ。
実際、ここでは牛タンは二人前〜三人前を注文するのが常識らしいしね。
それを考えると、腹一杯食べるとなると、ちょっと経費はかさむかも。

まあ、僕は旨けりゃなんでも良いんだけどね。
それにしても旨かったな。また来るかな、ココ。

---

以上、長文失礼。




本稿の著作権はすべてKANSENKI.NET及び「書き手」に帰属します。

戻る
TOPへ