スマークの夢 WWE WRESTLEMANIA XX
■団体:WWE WRESTLEMANIA XX
■日時:2004年3月14日
■会場:ニューヨーク マジソン・スクエア・ガーデン
■書き手:ひねリン

WWEの毎週のテレビ中継(RAWとSMACKDOWN)ってのは、内容の大半が「次への予告」でできている。つまり、視聴者が3分後にもチャンネルを合わせているよーにすること、次週もチャンネルを合わせるよーにすること、来たるべきPPVに金を落とすよーにすること、を常に至上目的とした番組つくりがされている。だからレスリング自体よりも、人々の「次」への消費欲望を刺激するためのボー大な情報たちの比重がでかくなるし、レスリング自体が次回予告としての機能を担わされることも多い。


その点で、毎週番組を追っている我々ファンってのは、レスリングを見てるつもりで、実はいつまでも続く「次への予告」の洪水を延々と消費し続けてるよーなもんだ。我々がRAWやSMACKDOWNの試合を(いかにいい試合であっても)次々と忘却してゆき、数カ月後には出来事の前後関係もごっちゃになって歴史感覚を喪失してしまう理由の一つは、おそらくこーゆーことだ。RAWやSMACKDOWNだけでなく、毎月のPPVにもその傾向はある。


でもこの年に一度のレッスルマニアは違う。RAWやSMACKDOWNも、数カ月前からのPPVもみんなレッスルマニアに向けてストーリーが組み立てられる(そりゃもちろんマニアだって延々と続く大河の一部ではあるけど)。レッスルマニアは「予告するもの」というよりは圧倒的に「予告されるもの」であり、視聴者にとっては、ただ消費するだけでなく記憶に刻み付けるべきものであり、レスラー達にとっても究極の目標であるとされる。毎週のRAWとSMACKDOWNその他で日々人々の記憶と歴史感覚を押し流し続けるWWEは、年一度のレッスルマニアにおいては、逆に記憶と歴史を創出する・・・。


そんなわけなので、プロレス観戦記をサボりまくってる俺でも、このレッスルマニアだけはやっぱ書きたいわけですよ(笑)。当然PPV自腹で買いましたよ! 今年もレビュー行ってみましょー。


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・番組開始。ハーレムの少年合唱団がAmerica the Beautiful を合唱。静かなメロディに載って、米軍とWWE勢が交流する映像がつぎつぎと。つぶらな瞳と厚い唇を持つ子供達が、恍惚とアメリカアメリカと歌っているよマザファッカ。米国には歴史がないぶん、自分のクニを称える歌にも、「君が代」みたいな古臭いイメージがこびりついてないのが強みか?


・オープニングクリップ。闇に足音が響き、ビンスの姿が。ナレーション「20年前、一人の男はあるビジョンを持っていた。それはこの地ではじまった。そして、世界は変わった・・・」 その後、レッスルマニアの名場面を駆け足で振り返る映像集が続き、さらに選手達が、いかに自分達にとってレッスルマニアが重要なものかを語る姿が流される。で、このクリップの最後には、「そしてすべてが今夜、また始まるのだ」のナレーションとともに、ビンスとシェインが、赤ん坊を抱いている姿が。すさまじい運命の元に生まれた子供だ・・・今後も未来永劫とレッスルマニアは続くということか? イベント開始。


1)ビッグショウ(王者)vs シナ のUSタイトル戦

前にも書いた気がするけど、シナはゆっくりペースで体を大きく使って表現をしてゆくタイプなので、ビッグショウと噛み合う。この人がF-Uという技を自分のフィニッシュとして選んでるのはいいセンスだと思う。持ち上げたところで顔を作り見栄を切れるからね。で今日は、その必殺F-Uを返された後、チェーンを拾っておいて、それを捨ててレフェリーに拾わせている隙に、別の凶器を拾ってショウを殴り、再びF-Uで決着。思いきりエディのマネじゃんか(笑)。最近この手の騙しフィニッシュは「悪いことをする善玉」の定番になりつつあるのかも。観客の反応も上々の、あまり長くないナイス・オープナーでした。


2)RVD & ブッカーT(王者組)vs その他たくさん の4wayタッグタイトル戦

小結関脇あたりで固まってるベテランと、前頭でイマイチぱっとしない若手達を寄せ集めたという感の試合。RVDがファイブスターで勝つ。短くてなにより。

ビショフに命令されてテイカーを探すコーチ、奇声が聞こえてくる部屋におそるおそる近付いていく。そこにいたのはテイカーではなく、ミーン・ジーンとボビー・ザ・ブレイン・ヒーナンのおやじ二人組が、ムーラ&メイの淫乱老婆達に犯されていたことが判明。


3)ジェリコ vs クリスチャン のトリッシュ争奪戦(?)

地味に上手くて、どことなくアメコミ顔のクリスチャン、腰が高く体も柔らかそうには見えないんだけど、平然とトップロープから場外に大車輪を描いて落下したり、派手にさかさまに冊に叩き付けられたりしている。やっぱダテにラダー系をいくつもこなしてないね。最後はトリッシュがジェリコを裏切り、クリスチャン勝利。二人のキスを見せつけ、話はまだまだ続く。トリッシュのジェリコへの張り手二発は見事でした。女同士じゃなく男と絡んでくれるのは嬉しいよ(いや別にエロい意味じゃなく、WWEの女同士の試合って、いくら技術が上達してもつまらないから)。ジェリコも当然動きは相変わらずイイんだけど、なんか最近不細工になって来てるのが気になるっちゃ気になる。


・ミック&ロックインタビュー。適度に会場を暖めておいて・・・

4)ロック&ソックコネクション vs エヴォリューション(オートン&フレアー&バティスタ) のハンディキャップ戦

レッスルマニアにふさわしい、「上がり」の二人を迎えた豪華特別マッチ。2vs3の非対照的な試合なので、当然がちゃがちゃした展開になるわけだけど、ブランクのある二人にはそのほうがやり易いんだろう。それにしてもミックの動きがやたらいい。早いし、どかばか受け身とってるし。
ロックの方もさすがに昔ほどの超越性はないけど、やっぱりプロレスの申し子なので魅せるとこは魅せる。最後、ミスターソッコでミックが勝つかと思いきや、いきなりオートンが高々と跳んでRKOでクリーンに大逆転勝ち。このタイミングはまったく予期できなかったんでびっくり。相変わらずすげえ跳躍力。負けたミックはリングでボー然・・・。ロックも不満そうだけど、やがて会場のフォーリーコールが起こり、ロックがミックを称える。このへんも、顔と仕種で魅せる二人はやっぱ千両役者だね。なんにしても、今後もしばらくRAWを引っ張りそうなオートンとミック、両方とも好調なよーで楽しみ。

・昨日行われたHall of Fame(殿堂)セレモニーのクリップに続いて、過去の英雄達がステージに。歴史を祝福しつつ再創造するセレモニー。ミーン・ジーンの司会に乗って出て来たのはヒーナン(なんか憎まれ口を叩いている)、サンタナ、スタッド(の息子)、レイス、ピート・ローズ(笑)、ムラコ(スヌーカにスーパーフライ食らったからか?)、バレンタイン(変わってない!)、ジャンクヤード(の娘)、グラハム(元気そう!)、スローター(USAコール)、ベンチュラ。


5)セイブル&トーリー組 vs ステイシー&ジャッキー のプレイボーイ・イブニングガウンマッチ

こんな、下着より先は絶対脱がないって分かってる試合のなにが楽しいんだよ。だいたいセイブルとトーリーのあんな加工されたヌードでヌける男の気がしれねえ・・・と心で罵倒しながら見てたんですが、試合直後ふと気付きました、自分の息子はしっかり反応してることに。


・世界からこれを見にからわざわざやってきたファン達に一言しゃべらせる。いろんなアクセントの英語。世界のレッスルマニア。


・会場入りした世界王者エディ(ベルト付き)、緊張しているベノワの控え室に行き、迷惑そーな顔をするベノワの前でゴキゲンにダベる。


エディ「オラレベノワー!今日はレッスルマニア20、お前の人生最大のイベントだな! お前も、今まで家族から遠く離れて、ひたすら努力してきて・・」


ベノワ、エディを制止して「知ってるよ。だから黙っててくれ。」

エディ「いやちょっと聞けよクリス。エセバトー、お前は俺の家族みたいなもんだ。勝とーが負けよーが、お前が今日この場でメインを張ることを誇りに思うぜー。」

ベノワ「こら待て!俺は勝つんだよ。」

エディ「安心しろバトー、この大舞台で、誰もお前が勝つなんて期待してないから! 誰もお前のことを信じてなんて・・・」

ベノワ怒って「俺が自分を信じる!俺が!俺が!俺がああ! こないだお前がタイトルを取ったのは誇りに思う。だか今夜は俺の夜だあ!」

エディ(改心の笑みを見せて)「オラレバトー! それが聞きたかったのよホームズ! これぞ俺が知る、日本で毎晩俺と戦ってたウォルバリン

(クズリ:ベノワのニックネーム)だ! 今夜HHHとHBKを引き裂いて王者となるベノワだー!」

ベノワ「そうだ。今夜お前はWWE王者として、俺は世界王者としてリングを降りるんだ!」

エディ「オラレー!俺は信じてるぞクリス!」


ダメだ、涙出て来た。やっぱり俺は典型的な北米スマーク(てかオブザやトーチやネットの購読者)・メンタリティを持っているな。いつも体を張って最高の試合を魅せてくれつつも、華や体格やカリスマが無い故にトップに立てないでいた男達には思いきり感情移入してしまう。このスキット考えたやつエラい。これでもし二人とも今夜負けたら、もー俺はギリシア悲劇の観衆のよーにさめざめ泣いてカタルシスを得るだろう。


6)SMACKDOWN組の、勝ち抜きクルーザーウエイトオープン

チャボがオヤジの助けを得て防衛。先発に出て来た入場時にドラゴン、緊張の余り(?)ステージでこける。ああ校長・・・。


7)レズナー vs ゴーバー(レフはストンコ)

もともとゴーバーはWWEを去る予定だったから、誰もがレズナーが勝つと知っていたこの試合、なんと一週間前にレズナーまで退団を言い出したので、もうレフのストンコが一人で勝つ以外に落とし所がなくなっちまっただよ。レズナー退団は、別にまだ公式に発表されてたわけではないと思うんだが、なぜか会場の大部分が知っているよーで、入場からシラけムードが漂う。対するゴーバーの方がまだ歓迎されている。それほど大きく報道されてはいないと思うんだが、会場での口コミか?

試合開始。観客いきなり「You sold out!」のシュートな大合唱。カメラは「BROCK SOLD OUT」と書いたプラカードをアップに。さらに観客が容赦なく「ナナナー、ヘイヘイ、グッバイ」の大合唱。実況のJR「どうやら明らかに最近のレズナーの行いが、ファンを失望させたようだ」。そしてレズナーがWWEを去ってNFLに転出するという「噂」があると説明(笑)。観客の残酷なリアクションを、しばらく黙って耐えて聞いてたレズナー、ついに客に「What the fuck do you want!」と絶叫。演技でやってるとゆーより、本当に動揺してるっぽいぞ。


さらに観客オースティンコール。最前列にいるグループはそろってレズナーに中指を突き立ててる。こんなとこでとんでもない「シュートマッチ」が見れるとは・・・試合がなかなかはじまらない。うーん、俺は去年ほとんど死にかけながら凄い試合をやってくれたレズナーに、この仕打ちはあんまりだと思うんだが。群集の心が一つになるのがプロレスのいいところなんだが、それがこーゆーふーに働くこともあるんだな。ま、会場の大半は特になにも考えないでやってんだろう。

やっと組み合う二人。力をこめたロックアップをじっくり。通常なら場内熱狂する場面なのに、飛ぶのはブーイング。さらに観客「This match sucks!」コール。二人は観客を無視して、相手に集中したフリをして睨み合う。こりゃ手の施しよーがない。その後もアクションがあるごとにブーイングや、「Boring!」の合唱が。攻防自体は非常に迫力があるんだが・・・その後も無惨な雰囲気の中で試合が続き、最後はゴーバーがジャックハマーで勝利。試合後、再び「ナナナー、ヘイヘイ、グッバイ」の大合唱を浴びたレズナー、観客に中指を突き立て、さらにストンコにも。で、当然ストンコはスタナーで返礼。ついでに勝者のゴーバーも呼び出してスタナーで、予想通りストンコ一人勝ち。まーレズナーは、若いのによくこの試合ちゃんとやり遂げたと思うよ。いつか戻って来て、ここまで自分をプッシュしてくれた団体&チームメイトに恩返しするように。


・疲れたんで、8)と9)は略。ラキシ組が防衛したのと、モリーが丸坊主になったのと、今回は出番のないビンスが無難に観客に礼を述べたのと、来年のレッスルマニアがロスでやるってこと(いえーい!)と、エッジ復帰が予告されたのと、ベンチュラがドナルドトランプとなんかしゃべってたのと。


10)エディ(王者)vs カート のWWEタイトル戦

エディ大好きの俺にとっては、この試合こそ、とてつもないメインイベント。正直、ここに至るまでの最近の展開は、エディファンにとってはちょっと信じられないくらい最高のもの。エディがWWE王者になる日が来ること自体想像できなかったし、その後のファンの異常な歓迎のリアクションも、このMSGでのマニア20という舞台で、最高にイかしたベビーとして、カートという史上最高のプロレスラーとタイトルマッチが与えられることも、恐ろしいくらい話が出来過ぎている。いや、こんな夢のよーな時間が長く続くわけはない。覚悟はもーできている。だからこそ、今回のこのマニアだけは、二人で素晴らしい試合をして、できれば勝ってほしい。そしたら、その後はもー何も望まないから・・・。

果たしてこの試合でも、そんな、話のウマすぎる夢はまだ持続してくれた。ゆっくり、確実に技術を魅せる丁寧なグラウンドの攻防から、序々にスピードアップして、二人ならではのツイストのある動きをいくつも魅せつつ、お互いが必殺技を交換するクライマックスへ。切り札のフロッグスプラッシュを返されて打つ手が尽きたエディ、アンクルロックで窮地に陥るもなんとか脱出。ここでエディはシューズのヒモを緩めておいて、もう一度来たアンクルロックを、足を抜いて脱出。シューズを持ってボー然としているアングルに、エディが飛びかかってスモールパッケージ、絶妙のポジショニングで足をロープに巻き付けるという必殺の騙しテクでまんまと勝利。きれいな試合の末に、クレバーなフィニッシュ。エディ・スマークには理想的すぎるくらい理想的な展開。カウント2.9がこれでもかと連発されて、場内を震撼させまくるような名勝負ではなかったが。

なんでWWEが、エディみたいな名傍役のファンの夢をここまで叶えてくれるのか。もちろん嬉しいんだけど同時に、「WWEはこれでいい!」とは言い切れない自分もいるのでした。それについては最後にまた。


11)テイカー vs ケイン

レッスルマニアにしては比較的地味なカードが並んでるこの日の中で、いかにも! というエンターテインメント・スペクタクルを担当するのがこの試合。素顔になって以来、ケインは本当にいいパフォーマンス(仕種にも表情にも声にも、サイコな怪物性と幼さが見事に同居しているよね)を魅せてくれて、今回のテイカーの冥界からの復活も盛り上げてくれたんだが、まあそれでもこの日は当然のごとくテイカー一色なんだよな。

照明の落ちた場内、無気味なコーラスが流れる中、壷を持ったポール・べアラー(まだ生きてたのか!)に先導されて、たいまつを持った黒子達が通路に並ぶ。やがて、「ごおぉーーーーん!」と、あの鐘の音が響き、ライトに照らし出されたテイカーの影が、ステージにゆっくり姿を現わす・・・。カ、カッコイイ!

俺は悔しいことに90年代前半のアメプロの知識をあまり持っていないので、初期のテイカーがどんな感じに死と再生を繰り返してきてたのかを知らない。だから以前と比べてどーこー言うことはできないんだけど、今回の演出に関しては、サイバーの勝利って感じだな。数週間前から打たれた復活を予告するアングルは、スクリーンに浮かぶ装飾文字やらサイバーパンクなクリップをふんだん使って、電子メディア(笑)の奥につながる冥界とゆーか、その種の想像力を心地よく刺激するよーなものだったし、この日の入場時の復活する影も、エレクトロニクスの中から浮かび上がるよーで。電子の奥には生と死が隠れているんだよね。

ま、このカードは入場が全て。試合自体はどーでもいいでしょう。当然テイカーがツームストンで勝利。ケインのチョークスラム一発食らっただけで、テイカーが例の「復活」を出してしまったのは明らかに早すぎ(カメラも捕らえこそこねたし)。


12)HHH(王者)vs HBK vs ベノワ のトリプルスレット世界タイトルマッチ


正直個人的にはほとんど興味のなかった試合。ここに至るまでのアングルもイマイチだった。(いくら試合内容が優れていても)さすがにマンネリ気味のHHH vs HBKの抗争に、ベノワを混ぜてみただけ、みたいな。やっぱり最高に分かりやすい「黒vs白」ではなく、そこに赤も入るトリプルスレットでは、ストーリーの焦点は出来にくい。ので、俺はそもそもトリプルスレットの試合にはどーも胸が踊らないのである。

でも結果として、この試合は誰もの予想を超える凄い出来のモノになった。見てて思ったんだけど、トリプルスレットって形式は、単純明解なストーリーが作りにくいぶん、試合自体において、観客を飽きさせずにテンションを持続するには(ふつうのシングルやタッグ以上に)優れているのかもしれない。第三者が常に介入できるから展開が停滞しないし、連係等でも敵と味方がくるくる入れ代わる意外性を作り続けられるし。また、一人がしばらく倒れてれば、残る二人の攻防をゆっくり魅せることもできるし。今回の三人は、そんなトリプルスレットマッチという形式の特性をフルに生かして、序盤から大技を惜しげもなく使いつつ、カットや連係の入れ代わりを繰り替えして観客の興味を持続していった。

起動力に優れたHBKと、技のインパクトが抜群のベノワがムーブ自体で魅せまくったのに対し(HBKは場外にムーンサルトアタックやったよ!)、試合全体のペースを作っていたのはおそらくHHH。あまり急がないペースで二人の技を受けたり出したりしつつ、彼がもっとも得意とする、重厚に確実に大技を積み上げて、クライマックスに持っていくパターンで、隙なく試合を運んでいった。で、最後の死力を尽くした攻防でも、単にカウント3が入るか入らないか、タップを取るか取らないかだけでなく、「もう一人がいつカットに入って来るか?」という緊張感が最高潮の盛り上がりを作った。

また、上でトリプルスレットは「黒vs白vs赤」では抗争ストーリーが作りにくいって書いたけど、この試合はそこもうまくクリアした。後半で「HHHとHBKがまさかの連係でベノワをイス破壊葬」という名場面を作ってベノワをしばらく戦闘不能にしておいて、「HHHとHBK」という長年の抗争ストーリーをしばらく魅せた後、今度はベノワが復活し(当日のスキットでもお膳立てをした)「今まで報われなかったベノワの挑戦」というストーリーに移行する、って形で。で、(ここまでの完璧な試合展開で暖まり切っていた)観客はクライマックスにおいて、この後者のストーリーに完全に乗っかる形で熱狂した。

試合の最終局面。ベノワがまず(アメリカの文脈では誰が使っても最高レベルの必殺技ということになっている)シャープシューターを使って盛り上げておいて、それが強烈にカットされた後にも復活し、遂に切り札のクロスフェースを爆発させる、というフィニッシュパターンも秀逸。というわけでこのメインは、三人の違ったタイプの優れたレスラーが、トリプルスレットという形式の可能性を改めて教えてくれた。出色のものだった。

試合後は、エディが入って来て感無量の表情でベノワを祝福し、二人で高々とベルトを誇示。個人的にはこれはもー、夢を超えた風景。この二人がWWEの頂点だなんて・・・当然テレビの前でひとり涙ぼろぼろ。ちなみに某氏いわく「ライガーがこの光景を見たら絶対泣いただろうなあ。もっとも、かつて一緒にやってた仲間たちへの感激なのか、『こいつらに比べてどーして俺だけ・・・』って意味での涙かは分からんが。」だって。


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ってことで今回のレッスルマニア、とにかく体格にもオーラにもあまり恵まれないけど、プロレスに打ち込んで高度な技術を身に付けた、いわゆる「ワークレイト」の高い選手達のための夜になりました(同時に、体格と身体能力に圧倒的に恵まれているけど、どーもあまりこの仕事にあまり情熱はなさそーな二人の選手はファンから悲惨な仕打ちを受けたという)。ついにWWEが、ふだんはくすぶってるある種のマニアたちの夢を思う存分叶えてくれたという感じなんだけど、これはちょっとレッスルマニアらしくない、って言い方もできる。もともと「ホーガン」という、ファンタジーパワーでワークレイトの低さをぶっとばすレスラーが中心になってはじまったイベントだからね。

ベノワとエディ。この仕事に自分を捧げて、最高レベルの試合を常に魅せてくれる選手たちが評価され、報われるのはものすごく健全なことではあるし、俺はもう限り無く嬉しい。でもやっぱりそれは、今のWWEには問答無用でファンを引き付けるカリスマがいなくて、最盛期のパワーを失っていることの証しでもある。こういう時期にただでかいレスラーを強引にトップに持って来るのでなく、あえて体格的にはジュニアの彼らをプッシュするWWEの判断は正しいと思う。でもやっぱり、彼らの技術をオーラで軽く凌駕して、会場を震撼させまくるスーパースターが出てくれば、それにこしたことはないし、WWEの真の醍醐味ってのはそっちにあるんだろーなと思う。




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