オレたちゃそこまで弱くはない 11/1 NOAH 日本武道館大会観戦記
■団体:NOAH
■日時:2003年11月1日
■会場:日本武道館
■書き手:愚傾(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)
 唐突だが、自分は猪木祭で小橋vsミルコが行われることに大賛成である。可能性は極めて低そうだが、是非とも実現して欲しいと切に願う次第。来年中に東京ドームでの興行を予定しているというノアにとって、小橋という看板を世間一般にアピールする絶好のプロモーションとなることは間違いない。

 しかし、両者が対決することに反対するプロレスファンも少なからずいるとのこと。さらにはノアファンでありながら「やる必要無し!」とまで言い切る者までいるというのだから解せない。この意義ある顔合わせの、いったいどこに反対する理由があるというのか。自分はまったくもって解せない!

 考えてもみて欲しい。先の10/13東京ドーム、新日本正規軍との5vs5対抗戦に望む真猪木軍の将、高山善廣が投入した「助っ人」は、昨年の猪木祭においてバード(I編集長はバーリトゥードのことをこう呼ぶ。愚傾の造語に非ず)マッチで雌雄を決し、そこで心を通じ合わせたた戦友、ボブ・サップである。もし両者がリングで闘っていなかったら、サップは高山の呼びかけに呼応したかどうか…。

 それと同じで、小橋とミルコにだって猪木祭という場をきっかけに「闘った者同士にしかわからない友情」が芽生える可能性だっておおいにある。大切なのはリングの上でビッグネーム二人が向かい合うこと。試合形式がプロレスであろうがバードであろうが、そんなことはたいした問題ではないのだ。結果としてミルコをノアのリングに引っ張り出すことができれば最高ではないか。

 諸兄は見たくないだろうか? ノアのリングでミルコの姿を。自分は見たい。猛烈に見たい!
 泉田の頭突きに悶絶するミルコ、田上にタッチを拒否されるミルコ、雅央にロープで顔面をこすられるミルコ、館長のモーションの大きい蹴りを待ちきれず誤って先に蹴ってしまうミルコ、永源のツバをモロに顔面に喰らって苦虫を噛み潰すミルコ、マイティに「(カウントが)オソイヨ!」と猛抗議するミルコ…そんなことを想像しつつニヤニヤしながら九段下を練り歩いてるうちに、気がついたら武道館の門をくぐっていた。

▼第1試合 タッグマッチ 30分1本勝負
○菊地毅、百田光雄(15分12秒 原爆固め)橋誠、鈴木鼓太郎×

 鼓太郎は百田さんと当たれることに有難味を感じてない。
 橋は百田さんと当たれるのは今のうちだけだということに気づいてない。
 菊地は百田さんと組まされることに何の違和感も持ってない。

 問題多いぞ、ノアのジュニアよ。

▼第2試合 タッグマッチ 30分1本勝負
本田多聞、○IZU(12分57秒 不入ドム → 片エビ固め)井上雅央、青柳政司×

 秋山率いるスターネス入りが叶わなかったとみるや、恥も外聞もなく小橋率いるバーニングへの加入を試みる泉田。

 試合前、パートナー多聞に両手で握手を求めるも、思いっきりスカされる。
 試合後、ともに勝ち名乗りを受けようとするも、多聞は逃げるように花道を走って退場。

 元アジアタッグ王者コンビの間に広がる溝は今後埋まることはないのだろうか? ノアにしては比較的引っ張っているアングルなので、大事に育てていって欲しいものだ(ちなみに泉田はメインのときに小橋のセコンドに「勝手に」ついていた)。

▼第3試合 6人タッグマッチ 30分1本勝負
秋山準、斎藤彰俊、○金丸義信
    (16分23秒 垂直落下式ブレーンバスター → エビ固め)
             田上明、池田大輔、川畑輝鎮×

 大輔と彰俊がムキになって遣り合ってたのが好印象。是非とも両者の一騎打ちが見てみたい。というか、このクラスの「タイトル戦線から一枚落ちるメンツ」同士でシングルマッチを組めばいくらでも魅力的なカードが作れると思うんだが、どうか。WLWのベルトを若手だけのものにさせておくのは勿体無いぞ。

▼第4試合 タッグマッチ 45分1本勝負
三沢光晴、○力皇猛(12分27秒 ダイビングボディプレス → 片エビ固め)高山善廣、佐野巧真×

 シリーズ中、あれほど煽られていた三沢と佐野の絡みはごく僅か。佐野自身もやる気になっていただけに、今度こそブレイクするかと思っていたが残念極まりない。WJを離脱したコシ(天龍は越中のことをこう呼ぶ。愚傾の造語に非ず)の来場により鉛筆が変わったと見るべきか? とはいえ、どっちにしろ○三沢ー佐野×という星取は動かなかったはずだが…。まあ、「WJ」というプロレス界に蠢く不吉な波動が、今回は佐野のもとに舞い降りたということだろう。そういえば試合前、佐野の顔には「WJだけは勘弁してください」と書いてあったような気がする。

 で、試合後、私服姿(自分はコシはいつでも袴を履いてるものと思っていただけに普通のカジュアルだったのは残念)のコシが登場。

コシ「三沢ぁ、約束果たしにきたぞコノヤロウ。俺は自由の身だ!」

 ひさびさに娑婆の空気を吸った懲役か、独裁政権下から飛び出した亡命者のような台詞で三沢を挑発するコシ。
 対する三沢も、

三沢「いつでもやってやるぞ、オラ!」

 と応戦。しかし、その後の控え室のインタビューでは

三沢「若手のためになるなら来年以降も…」

 と思わず本音をポロリ。ノアがガチであることはもはや定説といって差し支えないが、コシも三沢もセメントすぎるにも程があるというものだ。

 さらに笑ったのは、控え室に戻るコシを先導していたのは、かつての同士、青柳館長だったこと。もしここでコシがWJ版「反選手会同盟」の同士、木村浩一郎をつれてきていたら館長はいったいどういう反応をしたことか…なんてことを考えながらニヤニヤしていたのは自分だけだろうか。

▼第5試合 WLW世界ヘビー級選手権 60分1本勝負
[王者]○森嶋猛(12分18秒 バックドロップ → 片エビ固め)[挑戦者]モハメド・ヨネ×

 NOAHではたった一試合行われただけにも関わらず、早くも「呪われたベルト」というイメージが定着しつつあるWLW王座。今回は選手権宣言を代読するジョー樋口が「この試合は、ダブル・アール・ダブルの…」とやってしまった。ジョーさんもなかなかにセメントである。

 とはいえ、試合じたいはヨネの奮闘もあってそこそこの盛り上がりを見せた。森嶋の巨体をキン肉バスターで持ち上げたところは圧巻。一年前に怪我をしていなかったら…と考えると惜しくてならないが、これから巻き返すにはまだまだ全然遅くない。

 森嶋は日本人相手には旗揚げ戦(vs橋)以来のシングル白星のはず。意外に思われるかもしれないが、森嶋は元GHCタッグ王者にしては信じられないほどシングルでの実績に乏しい。というか、ほぼ皆無といっていい。こういうところに、NOAHの「タッグマッチ偏重主義」の弊害があるように思う。WLW王座は、そのあたりの問題を解消するのにもってこいのベルトだ。やはり若手だけでまわしていくのは勿体無い。

▼第6試合 GHCジュニアヘビー級タッグ選手権 60分1本勝負
[王者]○丸藤正道、KENTA
    (29分19秒 雪崩式裏不知火 → 体固め)
             [挑戦者]フベントゥ・ゲレーラ、リッキー・マルビン×

 この日のベストバウト。さすがの丸藤も今日ばかりはメキシカン二人に喰われた格好。特にフービーは、何度見てもモノが違う。せめて年に二回でいいからシリーズに参加して欲しいというのは欲張りすぎだろうか?

 試合後、敗れた挑戦者チームが王者チームの腰に、自らベルトを巻いてやり、そして健闘を称えあう抱擁。王者組も「今日は俺たちが勝ったが、おまえらも充分このベルトに相応しいチームだ」とばかりに、挑戦者組の腰にベルトを巻く。そして、四人揃って勝ち名乗りを上げての大円団。

 自分には「好きなようにやらせてくれてありがとう! おかげで最高に楽しかったぜ!!」という、メキシカン二人から王者組へのお礼のように見えたが、どうだろうか。

▼セミファイナル GHCジュニアヘビー級選手権 60分1本勝負
[王者]○杉浦貴(14分20秒 オリンピック予選スラム → 片エビ固め)[挑戦者]外道×

 九割九分、外道with邪道、竹村が反則の限りを尽くした試合。この三人は今大会の裏MVPといっていい。

 が、しかし。自分は敢えて杉浦の「途中で反撃することを我慢し通した」ことを褒めたい。外道がいい仕事をするのは言わば当たり前。キャリアの足りない杉浦が「最後の最後まで我慢する」ことを実践できたことのほうが、自分的にはよっぽど驚くべきことである。

 同時にほとんどやったことないであろうレフェリーブラインドを見事にこなしてみせた福田レフェリーにも拍手を送りたい。

▼メインイベント GHCヘビー級選手権 60分1本勝負
[王者]○小橋建太(29分51秒 剛腕ラリアット → 体固め)[挑戦者]小川良成×

 マクロな意味でのミスター・プロレスと、ミクロな意味でのミスター・プロレスによる、古き良き匂いのした試合。良成の国籍がアメリカだったらもっと盛り上がったんだろうな。日本人に生まれてしまったことが、良成の最大の不幸だと自分は思う。

 とまぁ、メインの試合をたった二行程度で纏めてしまうのもどうかと思うが、これにはちゃんとした理由がある。

 小橋vs良成、別に悪くはなかった。この二人が闘ったらこうなるだろう、という予想のしやすい顔合わせで、実際その予想の通りとなった。よくも悪くも予想の範疇を超えてない。が、期待値を大きく上回る試合を毎回やってくれというほど、自分はプロレスファンとして若くはない。だから、小橋vs良成は勿論、森嶋vsヨネにもJrタッグにも杉浦vs邪道にも、どれも「試合そのもの」には不満は無い。

 じゃぁなにが不満なのかといえば、それは上記四試合がすべて同じ展開に終始していたこと。挑戦者の一方的なペースで試合が進み、最後の最後まで我慢した王者が逆転勝ちという、言わば教科書通りのタイトルマッチが四試合。起承転結がすべて同じ四部作のオムニバス映画のようなもの。これで(悪い意味で)お腹いっぱいにならないわけがない。

 繰り返すが、一つ一つの試合そのものに不満はまったく無い。教科書通りのタイトルマッチにしかならないであろう顔合わせを意味も無く羅列したマッチメイクに不満があるのだ。まあ、前三試合と同じような展開に終始した、すなわち「事前に用意された進行を滞りなく無難に遂行しただけ」の、「絶対的エース」としての小橋に若干の不満がないわけでもないが。試合後、秋山と高山が小橋を酷評したのも、自分と同じような不満からではないだろうか。

▼総括

 なんというか、「武道館というハコに慣れすぎた」、「試合重視主義による展開の閉塞化」という、兼ねてからノアが抱える問題点が如実に露出した興行だったように感じる。小橋、丸藤、そしてWLW王座という魅力的なアイテムを、まったく有効活用できてない。

 シリーズ全体の流れのなかで、良成が果たした役割は大きい。自己責任という名目で逆に選手を縛り付けてるノアにおいて、できることを精一杯やったと思う。あれだけの悪辣ぶりを発揮しながらも、この日、リングに向かう良成にはキッチリと声援が送られていた。ノアファンは身内にブーイングなど絶対しないのだから、良成の小橋に対するチョッカイは、ちゃんと評価されていたと考えるのが妥当である(単にファンの間に届いてなかっただけかもしれんが)。

 ようは、多少の冒険をしてみたところで、ノアファンはそれを拒絶などしないのである。それが証明されたことが、今回の武道館における収穫か。

 ファンはノアを信用しきっている。
 三沢もノアファンを、もっと信用してくれてもいいんじゃないか。





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