やっぱりマクマーン一家が好き
■団体:WWE No Mercy
■日時:2003年10月19日
■会場:メリーランド州ボルチモア
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

どーも御無沙汰してます。今回、久々にWWEのPPVを自腹で購入して一人でゆっくり観ました。理由はただひとつ。ビンスvsステフの親娘対決があるからです。これはSmackdownブランドのPPVだから、他にも自分がこよなく愛し尊敬するレスラーがいっぱい出て来ますが、それらは所詮オマケでしかありません。結局俺は心の底からヒュージ・マクマーン・マークであり、俺にとっては、ハイパー超老人ミスター・マクマーンの魅せる過剰なパフォーマンスこそがWWEなんです。

今回彼が、その才能を存分に受け継がれた愛娘である、我らがステフ様との親娘ドンブリをなさるとあっては、これはもう、誰にも邪魔されずにカーテンを閉め切った部屋で一人、左手にティッシュ、右手に愚息の万全の体勢で拝ませていただく以外の選択肢は俺にはありません。もっとも、マクマーン一家にはもう飽き飽きという人も多いと思うし、その気持ちも分からなくはないです。もう何年も似たよーなことやってるし。でも俺にはそれよりも、これを逃したらあの素晴らしき狂気をあと何回見られるのか、という不安がでかいです。ビンスのよーな人はいつ死んでもおかしくないと思うし。

それにしても嗚呼! ビンスvsステフ! これは、20世紀末のアメリカに旋風を巻き起こした連続メディア・イベント「WWE(WWF)」を存分に体現できる最後のカードかも知れません。今さら当たり前のことを言って申し訳ないんですが、プロレスラーでない人間達が堂々プロレスをするWWEはいわゆる「プロレス」を超えています。本物の社長一家が総出で、現実に薬や手術で肉体を極度に変型させ、激しく痛めつけ合いつつ、常軌を逸した崩壊家庭のドラマを人前で演じているのだから、「フィクション」も「ドキュメンタリー」も超えています。また、WWEはよく「ソープオペラ(昼ドラ)」「ホーム・コメディー」と形容されますが、不条理な法を押し付けて来る狂気の父の極限まで怒張した男根を、やはり極端に肥大した胸を持つ愛娘が受け止めてへし折ろういう話を展開する「ソープオペラ」や「コメディー」が世界のどこにあるでしょうか? 

WWEはWWEとしか言いようがない何かであり、マクマーン一家の暴走する異常な家庭内闘争劇にこそ、その真髄があるのです。そして21世紀入って停滞期が来て、過激なアングル&過剰なアクティングにもマンネリ感が漂いはじめ、年齢的にも、人々が超越者ビンスに引退の影を見てしまうよーになった今だからこそ、俺はこのビンスvsステフを見なければいけないんです。そして、ステフの巨大な胸に挟まれ悶えるという絶対に実現しない夢を妄想しつつ、ビンスの大いなる怒張と矮小なる我が愚息と違いを、いま一度思い知らねばならんのです。


はー。力みすぎて前説だけで疲れてしまった(ここまでは番組観る前に書きました。ちなみに上記のよーな俺の意見は当然かなり特殊なモノなのである気がします。オブザのデイブなどは、ビンスがステフやリンダと絡むたびに酷評してますから)。レビュー行きます。

第一試合 クルーザータイトル戦 TAJIRI vs ミステリオ

起承転結をとてもキレイになぞった模範的試合。日本式にさぐり合うスタートから(起)、空中戦スポットや見栄切りを交えつつ中くらいのペースで試合を進め(承)、互いのトレードマーク的大技を出し合ってスピードアップし(転)。最後は「謎の東洋人ファン二人」(ヤンとサコダだそう)の乱入でTAJIRI勝利(結)。TAJIRIはやっぱ悪役が似合うな。相変わらずムタ度めちゃ高だけど。

第二試合 ベノワ vs Aトレイン

これもまたほぼ予想通りの好試合。スピードと浮遊感で引っ張った第一試合に対し、激しく肉体をぶつけあうインパクトを重視したもの。Aトレインのリフトアップスラムが滑って、ベノワが顔の側面から落ちて一瞬ヒヤリ。クロスフェースを逃げられたベノワは、最後シャープシューターできめる。技の体勢に入ったところですでに客が湧く。この技、アメリカではずいぶん特別な位置にあるんだな、ってことを再確認。

第三試合 ザック vs マット・ハーディ

人間的美談で飾り立てられてはいるものの、その試合を眺める者誰もに「ヤバいモノを見てしまった・・・」的不安を起こさせるフリーク、ザック君。でもさすがに彼の試合も日常化してきたなあ・・・と思ってたら今日はその片足空中戦が大爆発。改めてこーやって見るとやっぱこいつ奇形・・・じゃなくて凄いわ。いやマジで。飛びまくって最後はムーンサルトでマットから勝っちゃいやんの。こんな試合して、彼の右足にはものすごい負担がかかってるだろうから、ふつうに考えれば彼のキャリアは数年だと思うんだけど、なるたけ大事に使ってほしいもん。

・ビンスの控え室にリンダ(本日のステフのセコンド)が入って来て、今ひとたび今日の試合決行を考え直してくれと懇願。サイコ・ビンスは当然のように聞く耳を持たない。ただしハンディキャップとして、本来「I quit」マッチ(どちらかが負けを認めるまで行われる試合)だったのを、ステフに限ってはビンスをフォールすることでも勝利を認めることにした、と。そして同時に、この試合を何でもありのノー・ホールズ・バードにするとも。リンダは呆れて出てゆく。

第四試合 APA vs バション・ブラザース

二人ともスキンヘッドで黒のロングタイツ。同じよーな体型。特に際立ったムーブはナシ。で与えられたキャラは、アマゾネス女王様・シャニクアの子分(つーか奴隷)・・・と、客に顔を覚えてもらうための全ての要素をはく奪されてるバション兄弟。今日は絶好のチャンス・・・だったのかどーかは知らんけど、とにかく試合は先日ブラッドショウにやられたシャニクアが乱入して勝利。シャニクアの革コスチュームはSM度がアップし、それよりなにより、む、胸があ!! 平べったかったのがいきなりぽこーん! うーんまあこれはWWE女子の通過儀礼みたいなもんだよな。おめでとう、キミはこれでTough Enough 2のおねいさんのリンダから、WWEスーパースター、シャニクアになったんだね。今後も女子軍団に埋もれず男子レスラー達と絡んで、できるならチャイナを超えてくれ。

・シャニクアインタビュー。ブラッドショーに食らったクローズライン・フロム・ヘルのせいで胸がこんなに腫れ上がったんだと、おっぱいジョブに気付かなかった人々にも再強調。そしてバション兄弟にも今夜、ごほうびのSM折檻を予告。喜ぶ奴隷ふたり。


そしてメインイベントは唐突に 第五試合 ビンス vs ステフ

俺の考えるこの試合の意義については冒頭でさんざん書いたけど、それでも俺はこの試合自体が「見ごたえのあるモノ」になることはまったく期待してませんでした。だって二人とも本職がレスラーじゃないんだもん。二人ともプロモ能力は素晴らしいけど、試合での動きがしょぼいのはこれまでからも明らかです。ビンスのストンコ戦、ホーガン戦、フレアー戦は盛り上がったけど、それは相手がいずれもビッグネームか超一流だから。シェイン戦はシナリオが優れてたし、あの息子はとんでもない飛び方ができる。でも、さすがに今回はキツいだろ・・・。

しかし、その予測は見事に裏切られました。この試合はめちゃくちゃ見ごたえがあり、時間が経過するにつれて場内を熱狂の坩堝に叩き込みました。そして、こんな非レスラー同士の試合が凄まじく面白いという、その不条理さに俺は大声で笑いました。それまでステフのわめき声や悶え声に反応して愚息をいじくってた俺は、ティッシュを放り捨ててこの試合に引き付けられ、ひたすら笑いました。

どうしてこの試合が盛り上がったのか、理由は映像を見返せばいろいろ見つかります。ひとつにはビンスの見栄の切り方とタイミングの取り方がめちゃくちゃ上手い。技自体は下手でも、いちいち表情を作ってからかますし、限り無く男根的な人だから、ちんこ攻撃を食らうとめちゃくちゃ映える。フレアー的懇願も板に付いている。また、セコンドの二人もキャラが立っているから、セイブルが隙を見てステフにビンタをかまし、それを見て怒ったリンダがセイブルを追っかけるだけで客が湧く。。

で、何よりシナリオが練れていた。試合も佳境に入った頃、ビンスに鉄パイプを手渡そうとするセイブルをリンダが攻撃。怒ったビンスがリンダにつかみかかると、リンダがビンタ。ひるんだビンスにステフがちんこ攻撃。さらに鉄パイプでステフが連続攻撃し、セイブルとビンスの同士打ちもあり、いつ決まってもおかしくないよーなカウント2.9の連発で場内を揺らす。しかし最後はビンスが鉄パイプでステフを絞首刑にして、リンダがタオルを投げ込み終了(ステフは自分でI quitとは言わなかったので、これが後につながるのでしょう)。

この試合で再確認したんだけど、試合自体に魅せられるということよりも、それによって激しく「笑える」ということが、俺にとってのビンスWWEの際立った魅力ですね。このレスリング能力的にはとてもしょぼい老人の試合が、とてつもなく盛り上がってしまう、その不条理が俺には愉快です。そもそもビンスのパフォーマンスには常に笑いがつきまとっています。俺はビンスがマイクを取るたび、あまりにも無根拠に、なのにものすごい強度と迫力で分かりやすく怒る、そのあからさまさにいつも爆笑します。そしてビンスを初めとするマクマーン一家の一連の異常な家庭アングルも、その徹底して単純明解なめちゃくちゃさが俺には笑えてしょーがありません(正常に対する異常だから笑えるんじゃないです。異常さが突き抜けてるから笑えるんです)。今回のステフ戦には、それらの笑いがすべて重なりました。

どれだけの人が同調してくれるか分からないけど、俺はこの試合を観ている間、極上の幸福を味わいました。結果的にティッシュは不要でした。

第六試合 アングル vs シナ

個人的にシナを見ていつも感じるのは、とにかく「全身全霊」「一生懸命」ってこと。ヒールをやろうがベビーをやろうが、彼が手を抜いているところを見たことがない。入場時の歩き方でもプロモでも、仕種の一つ一つに神経が張り巡らされているし、試合でも最初から終わりまで、いつも全身をいっぱいに使って動いている。こないだもConfidentialを見ていたら、どっかのFM放送のHip Hop番組に立て続けに出演させられた彼が、必死にフリースタイルラップ(?)をこなしているシーンが出てきた。それは、Hip Hopについて何も知らない俺の耳で聞いてもかなりイタいシロモノで(そらそーだ。いくらベシャリが上手くても、数カ月前からキャラを演じてるだけなんだから)、本職の人達も苦笑いしてたよーだけど、なんか一生懸命なシナらしい気がした。

彼に天性のオーラとプロモ能力が備わっていることは誰も異論がないと思うけど、俺はこの人は肉体的/運動能力的には、レスラーとしてすごく恵まれているとは思わない。UPWの頃もキャラはズバ抜けてるけど、どーも動きにはセンスが感じられず、この先どーなるんだろうと思ってた。それでもファームでじっくり修行して、特に目立ったムーブはないものの、何でもソツなくこなせるようになってメジャー入り。あっという間に準トップの地位に。がんばってる選手は見てて気持ちいい。

そんなシナ、今日のアングル戦もいつもと変わらぬ全力投球。彼は特別凄いムーブがないぶん、変わった技(相手の首をロープにひっかけてのギロチン、前方回転ネックブリーカー、コーナーに叩き付けるパワーボム)を要所で出して盛り上げ、必殺F-Uにつなぐ。それも返され、アンクルロックでタップ。アングルはアングルでやっぱ天才なんだよな。最後のアンクルロック、自分から後方に倒れこんでヒザ十字っぽいカタチでがっちり固めてフィニッシュ。格闘技的に見ると、倒れ込んだところで別に威力が増すわけじゃないんだけど(相手に切り返されない安定感は増す)、プロレス的には、この倒れ込みムーブで技のランクが一段落アップするってことで文句無し。

第7試合 USタイトル戦 エディ vs ビッグショウ

いくらエディひいきの俺でも、この試合はちょっと拍子抜けとゆーか。善玉のエディが小ずるいことをやりまくって、愚鈍な悪役のビッグショウがバカ正直に戦うという。この逆転現象自体は面白いけど、それでビッグショウが勝っちゃうってのはどーも(もっとも俺の場合、エディが負けるとどんな試合でも気に入らないのかもしれんが)。フィニッシュのチョークスラムもすごくスロッピーだったし。まあビッグショウは上で語ったシナとは正反対で、常に試合中に集中力が切れて動きが緩慢になっちゃうタイプ。でもそんなん分かり切ってんだから、それをカヴァーするだけの工夫が欲しかったとゆーか。

でも考えると、昔の新日の藤波 vs アンドレとかもこういう感じの試合で、でも俺はいつも楽しんでいたっけなあ。アンドレは、どんなにハンディキャップがあっても勝って当たり前の存在で、でもビッグショウが自力で勝っちゃうと納得行かないという。古き良きプロレスの論理だと、ビッグショウみたいな存在を、今日の試合みたいに力で勝たせて価値を上げてゆくのは正しいんだろう。でも、ビッグショウの場合もう遅いだろ。ジャイアントプレス的な新必殺技を作れば少しはいいような気もするけど。

第8試合メイン WWEタイトルマッチ レスナー vs テイカー

いいんじゃないでしょうか。でかい人達による肉弾戦は、ある程度は観客を満足させられる保証付きだし。レスナーはムーブの端々から、ただごとでない筋肉の躍動感が見て取れる。対するテイカーはやっぱり魅せる職人。殴り方、走り方、見栄の切り方のかっこいいこと。何をやっても絵になる(絵にならないのはまったく締まってない三角締めだけ。あれだけはやめちくりー)。で、今回はどっちがチェインを取るか、という焦点を作ることで見せ場が増えた。片っ端から悪役勢が乱入し、それも全てテイカーが蹴散らしたところで、悪の切り札ミスターマクマーンが満を辞して登場。レスナー防衛。


ってことで本日の総括なんですが、俺はもうマクマーン親娘対決に印象の全てを奪われてしまって、なんと言えばいーのかよく分かりません。他の試合も全般的にいい試合が多かったのは確かだけど、でも別にPPVで大枚はたいてまで観ようという気になるかと言えば、正直俺はならないなあ。やっぱりSmackdown勢だけしか出てないし。別に見通し暗くはないけど、特に明るい未来が見えるわけでもないとゆーか。二リーグ制やめろとは言わないけど、そろそろメンバーを大きく入れ替えてほしいなあ。

もっとも次のサバイバーは合同PPVで、ビンスvsテイカー、シェインvsケインが両方実現するなんてゆー話もあるみたいですね。そしたらマクマーン・マークの俺はまた買っちゃうかも? うーん内職増やさなきゃ・・・。




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