7/20 全日本キックボクシング連盟 後楽園ホール興行 観戦記
■団体:全日本キックボクシング連盟
■日時:2003年7月20日
■会場:後楽園ホール
■書き手:高倉仮面
17:55
海にも行かず、花火にも行かず、後楽園ホールに到着。
今日は久々のキックボクシング観戦、団体は全日本キックボクシング連盟。

●ちなみに、この日は「海の日」と「花火」を一辺に満たすイベントが。綺麗だねぇ。夏だねぇ。
http://www.hmk.co.jp/emenu/hanabi_07_hokoku/hanabi_07_hokoku.html

今日の興行の目玉は、何といっても、
サムゴー ギャットモンテープとガオラン カウイチット、
ムエタイの殿堂・ルンピニー スタジアムの2大王者が揃い踏みだ。
ガオランは、昨年の K-1 WORLD MAX の準優勝者でもあり、
サムゴーは、その実力から今年の K-1 WORLD MAX への出場が望まれていた選手。
その両者を後楽園ホールのような小会場で観れるのは贅沢だな。

今日はその他にも、男 vs 女の異色対決や女子同士の対戦があったり、
男子同士のキックボクシングは日本人同士の対戦も日本人 vs 外国人も揃っており、
「色々な対戦図式をつまみ食い出来る」という意味では、
初観戦となる僕が観るには丁度良い興行だな、と思っての観戦。
同じモノが揃っているより、何でもあった方が退屈しない。例えそれが玉石混合でも。

ただ…、欲を言わせてもらえば。
同団体では日本人で一番選手層の厚い、
ライト級の選手がいないのはちょっとネックか。
小林 聡、金沢 久幸、大月 晴明、花戸 忍のうち、
誰か一人でもいいから今日の興行に出場して欲しかった。
まあ、全日本キックは今年の5月にライト級のトーナメントがあって、
上記選手の殆どはこのトーナメントに出場してしまったので、
今日の興行に出場しないのは止むを得ない部分はあるんだけど。

何だかんだとケチを付けても、ルンピニー2大王者を観戦したいのは事実。
チケット売り場で当日券を購入。立見席4000円也。
妥当な値段のように思われる。


18:00
後楽園ホール入り、売店にてパンフレットを購入、1000円也。
内容は試合の見所、結構細かい選手紹介、マンガ、主催興行のインフォメーション等。
1000円の割には作りも中身もシッカリしていて好感が持てる。
全日本キックの観戦の折には、是非とも一冊購入する事をオススメ。

会場入り。会場内では既にフレッシュマンファイトが行われていた。
一瞬焦ったが、お目当ての一つである「男 vs 女」には間に合ったようだ。
とりあえずホール南側の3F立見席の一角を陣取って観戦。

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特別試合 58kg契約 3分3R
○彩丘 亜紗子(157cm/57kg/S.V.G.)
●デンジャー 高山(165cm/58kg/TEAM-1)
[判定 3−0]

キックボクサーとしては21勝1分という輝かしい戦績を持つ彩丘。
これでは足りぬと、総合格闘技であるSmack Girlに参戦、
亜利弥'、薮下 めぐみ、張替 美佳と女子プロレスラー(元を含む)を相手に3戦して3勝。
TV番組で特集も組まれた事もある、「闘う主婦」こと彩丘 亜紗子、
兼ねてから熱望していた男との戦いに勝つことは出来るか?

と、熱のこもった紹介をしたが…。
今日、その無敗の女子キックボクサーと対戦する男は。

キックボクサーとしては1勝12敗2分という輝か…痛々しい戦績を持つ高山。
それでも、ノーガード戦法で打たれまくりながらも、
前に出て「ローリングデンジャー」(胴回し回転蹴り)や「秘打!高山」(バックハンドブロー)を放つ姿は、
全日本キックの前座戦線では欠かせないものになっている…らしい。
そんな名物男の高山だが、女に負けたとあっては末代の恥になるのは事実。
「秘打!高山」は同じTEAM-1に所属する師匠 金沢 久幸譲り、今日は炸裂するか?

で、その高山の入場…なのだが。
何故か会場にはOFFSPRINGの「Come Out & Play」が流れている。

…インディプロレスファンならこれから何が起きるか直ぐにわかるだろう。

おもむろに両腕を広げた高山、体を左右に揺らしてのダンスを披露。そう、ブリブラダンスだ。
何で高山がブリブラダンスを踊っているのかはサッパリわからないが、会場には結構ウケている。
トップロープを使っての前転リングインはバランスを崩して大失敗、
リングイン後は宮田 充リングアナと野口 大輔レフリーを加えて3人でブリブラダンス。
高山の一つ一つの挙動に観客から笑いが起こる。成程、名物男だな。

で、肝心な試合…なのだが。

1〜3ラウンドの全てにおいて、手数で圧倒した彩丘。
距離が離れていれば積極的にミドルキックで蹴っていき、
距離が詰まれば組み付いてのヒザ蹴りをガンガン高山のボディに入れていき、
首相撲からの投げで高山を転ばせていく。パンチも冴え渡り、試合のペースは完全に彩丘だった。

対する高山、こちらはパンチにキレがなく、キックにもキレがない。
序盤こそミドルキックで互角に渡り歩いたものの、時間が進むに連れて手数で圧倒的に下回る展開に。
ガードも甘く、彩丘のストレートを何発も貰っており、
組まれてからの首相撲では彩丘の成すがままの状態、
何発もボディにヒザ蹴りを食らったり、投げられたり。
そんな中、1Rでは飛び蹴り、2Rではタックル(オイオイ)、
3Rではローリングデンジャーを出したが、全て不発。
これでは女相手と言えど、全く勝ち目がない。

…と、ここまで見ると彩丘の圧勝のように感じるだろう。
実際、ジャッジも3−0のストレート、彩丘の圧勝、ではあるのだが…。

悲しいかな、彩丘の一発一発の打撃に破壊力がないのだ。
実際、高山は良い様に彩丘の打撃を受けていたのだが、
試合全般に渡って、フラフラしたりダウンしそうになった場面は一つもなかった。
逆に、まれに出す高山の渾身のミドルキックの方が重い音を出したりしていたので、
「やっぱり、男と女って持っている資質とかが根本的に違うんだなぁ…」と感じた。

「男 vs 女」ねぇ。
彩丘は高山のような選手なら勝てるだろうけど、
ランカークラスを相手にしたら勝てないだろうなぁ…。

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18:30
いよいよ本戦開始。
今日の客入り、客席は超満員で立見も結構埋まっている。
普段の全日本キックの客入りをを知らないので何とも言えないが、
とりあえずサムゴーとガオランの2枚看板の効果は大きかったようだ。
興行開始前にかかっていたEW & Fの「Let's Groove」を、
「'70sは嫌いじゃない」と感じながら観戦開始。

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第一試合 全日本 ミドル級ランキング戦 サドンデスマッチ 3分3R(延長最大2R)
○中村 高明(188cm/72.2kg/藤原ジム/同級三位)
●上林 剛(176cm/72.5kg/青春塾)
[判定 2−0]

中村、どっかで聞いたことのある名前だなぁ…と思っていたら、
僕は彼が極真の「一撃」に出場していたのを観戦していたようである。
この時は、長身を生かした首相撲からのヒザ蹴りで極真戦士から勝利していた。
ミドル級としてはかなり反則と言える身長を持っている中村、
今日の対戦相手は昨年30歳にしてデビュー、後楽園では4戦4勝の上林だ。
上林の入場曲はGipsy Kingsの「Bamboleo」、ラテン音楽は嫌いじゃない。

1R、身長差12cmという大きな差を利用した中村が、
アウトレンジから1・2パンチやミドルキックを繰り出していく。
これに対して、懐に潜ってのボディブローや組んでのヒザ蹴りを出す上林。
組まれた中村もヒザ蹴りやヒジ打ちで対抗。まずは互角か。

だが、2Rからは一方的な展開に。
ラウンド序盤、ローキック中心で攻める上林、不意に放った左フックが中村にヒット。
これがちょっと効いた中村が、戦い方を変える。
積極的に上林に組み付き、長身を生かして上から抱え込んで、ヒザ蹴りやヒジ打ちの連打で攻めていく。
K-1で言うところの、「セーム シュルト戦法」である。
「一撃」でも極真戦士を圧倒していたこの戦法、上林は突破口を見出せず苦戦する。

3R、中村は2Rと同じく「セーム シュルト戦法」で攻め続ける。
これに対して上林も、距離が開けばストレートを打ち返し、
組み付かれた時に隙間がある場合はボディブローやヒザ蹴りを打っていくが、
その打撃以上に、何度も組み付く中村のヒザ蹴りやヒジ打ちが何発も入ってしまう。
結局、この中村のペースは崩れる事なく3Rも終了。

判定、特に2Rでの攻勢が評価され、中村が2−0で勝利した。


第二試合 全日本 ウェルター級ランキング戦 サドンデスマッチ 3分3R(延長最大2R)
○山本 優弥(175cm/66.5kg/空修会館/前ライト級七位)
●小松 隆也(180cm/66.5kg/建武館/同級五位)
[判定 3−0]

山本は若干19歳にして、今年5月のライト級トーナメントにも出場している期待の新人。
ここ最近は育ち盛り故に身長が伸びてしまい、ライト級での試合の度に減量に苦しんでいた。
この試合より階級を上げて試合を行う山本、その第一戦はどうなるか?
対戦相手は、ウェルター級五位、見た目がちょっとワルそうな小松だ。
小松の入場曲はEminemの「Lose Yorself」、HipHopはあんまり好きじゃないがEminemは嫌いじゃない。

試合は、山本のワンマンショー。
テクニカルなコンビネーションには、観客からは何度も歓声が起きた。

1Rから山本が手数とテクニックで圧倒する。
積極的に前に出てくる小松のストレートに合わせてのカウンターのストレート、
更にはハイキックをかわしておきながらのカウンターのストレート、
前に出て1・2・3・4と素早いパンチのコンビネーション、ローキックで締める。
山本のボクシングテクニックは中々のモノ。
これらのパンチのラッシュの中に、
アッパーやソバットと言った見栄えのする技も適度に混ぜて山本が攻め続ければ、
小松は早くも防戦一方。

その後も、カウンターのストレートと止まらないコンビネーションを小松の顔面に入れまくった山本。
若いくせにやたらと華麗でテクニカルな攻めに魅せられた観客は、
ラウンド終了時に歓声を挙げてこれを支持する。

2Rも山本の芸術的な攻めが冴え渡る。
ストレートとローキックを中心に攻めてくる小松に対して、
反撃のストレートを一発入れば、1・2・3・4のコンビネーションで何度も倍返し。
アッパー・ストレートが連続でクリーンヒットした中盤からは一方的な展開。
山本は伸びるストレートを何発も小松の顔面に入れ続ける。観客からは歓声。

3R、山本はパンチのコンビネーションの中にさりげなくヒジ打ちを入れて攻める。
更にはアッパーやフック等も多用、反撃できない小松、試合はやはり一方的な展開。
終盤にはソバットやバックブローで観客を沸かせた山本、KOこそ奪えなかったが、
圧倒的に美しくてカッコいい攻めに、試合終了時には再び観客から大歓声が沸き起こる。

判定は3−0で山本。華麗なる若きテクニシャンの今後に期待大。
19歳とまだまだ若いし、本気で注目していても良い選手だと思います。


第三試合 日本 vs ギリシャ 54kg契約 3分5R
○カリオピ ゲイツィドウ
 (157cm/53.8kg/ギリシャ/スポーツクラブ パグラティオ/WKA世界女子 バンタム級王者)
●WINDY 智美(158cm/53.8kg/AJパブリックジム/WPKL世界女子 Sバンタム級七位)
[4R 2分45秒 KO]
※右ストレート

Smack Girlにも進出しているWINDY、
総合の舞台では星野 育蒔や辻 結花といったエース級選手と対戦している。
総合での戦績は3勝3敗の五分だが、キックボクシングでの戦績は7勝3敗4分と上々だ。
今日は10ヶ月ぶりの古巣での試合となるWINDY、
姫神の「神々の詩」と共に入場してきた。大陸系ニューエイジは嫌いじゃない。

その対戦相手となるのは、
WINDYが2001年5月にギリシャで対戦して判定負けしてしまったカリオピ。
ハードパンチャーで、この試合ではWINDYの鼻骨を折ってしまったそうだ。
ちなみに、地元ではファッション デザイナーとしても名を馳せているらしい。
WINDY自身が「過去対戦した中では最強の相手」と語るカリオピ、WINDYは勝てるか?

そして試合…なのだが、
1Rから女子とは思えないような迫力のある打撃を繰り出す両者。
WINDYは序盤から破壊力のありそうなパンチをブンブンブンとブン廻し、
フックや1・2・3のコンビネーションにミドルキックやローキックを織り交ぜた攻めを見せる。
対するカリオピもパンチを返すが、こちらも破壊力が大きそう。
綺麗なストレートのラッシュを中心に、ミドルキックなんかを混ぜている。
試合中、両者は接近する度に迫力ある打撃が交差させ、これを見た観客が何度も沸き返る…のだが。

兎に角、WINDYの打撃をちょこちょこ食らいながらも、
破壊力のありそうなパンチを起点に前に出続けたカリオピ。
これには、気の強そうなWINDYが下がる場面が多く見られた。

カリオピはこうしてWINDYをコーナー際に追い詰めては、
ストレートとボディブローのラッシュでWINDYをボコボコと殴っていく。
1Rでは計2回追い詰められたWINDY、鼻からは早くも出血が。
その脳裏に蘇るのは、2年前の惨敗の悪夢、か。

2Rもカリオピはパンチを起点に前に出てWINDYにプレッシャーを与え続ける。
そして追い詰めてのパンチのラッシュ、モロに食らい続けたWINDYはダウン寸前。
カリオピの闘い方はSBのアンディ サワーを思い出させる。

それでもこのラウンドは、WINDYも果敢に前に出てストレートをハードヒットさせる場面もあった。
これに便乗してWINDYは投げやキックを連打して攻めたが、それでも前に出てくるカリオピ。
気がつけば、WINDYは再び後ろに下がりながらの前蹴りで距離を置こうとしている。

3R、距離が開けばキックで様子を見、距離が詰まってのパンチ合戦…と言った試合展開の中、
ラウンド中盤、カリオピはまたしてもWINDYをコーナーに追い詰めてのパンチのラッシュ。
破壊力のありそうなストレートやボディブローが何発も入り、WINDYはかなり苦しそう。
そんなWINDYをカリオピは逃がさず、さらに捕まえてのボディブローの連打、おまけのヒジ打ち。
WINDYは体力をかなり消耗してしまった上に、顔面からは再び出血、大ピンチ。

4R、何とか気力で前に出るWINDY、カリオピとの距離を詰めて、
最後の力を振り絞ってパンチ合戦に挑む。
観客が沸き返ったが、カリオピがアッサリ反撃。
WINDY、万策尽きた、か。

じわり、じわり、と、カリオピは下がるWINDYを再びコーナー際へと追い詰め始めた。
一度は組み付いてのブレイクでかわしたWINDYだったが、ラウンド中盤に捕まった。
ボディブローとヒザ蹴りのラッシュを食らってしまうWINDY、一度はコーナー際から脱出したものの、
カリオピは尚もロープ際でストレートの連打を何発も何発も何発も食らわせた。

ついにWINDYが力尽きる、ダウン。
レフリーのカウントが進む中カウント9で立ち上がったが、
フラフラで立っているのもやっとの様子を見たレフリーが試合をストップ。

WINDY、リベンジならず。ガックリとうなだれてリングを降りていく。
反対にカリオピは、勝利の瞬間は飛び跳ねて喜び、トロフィーを嬉しそうに抱えていた。

イヤイヤ、それにしても女子にもこんな強打者がいたとはなぁ…。カリオピはまた観てみたい選手だな。
対するWINDY、決して弱い選手ではない事はわかった。再起に期待。


第四試合 日本 vs イタリア 67kg契約 3分5R
○ファビオ コレーリ
 (178cm/66.7kg/イタリア/プロ ファイティング リミニ/WKN世界ムエタイ ウェルター級王者)
●山内 裕太郎(180cm/66.9kg/AJパブリックジム/全日本 ウェルター級王者)
[判定 3−0]

デビューしてから一年、わずか6戦目にして、
今年3月に行われた「全日本ウェルター級王座決定トーナメント」を制してしまった山内。
この試合は載冠第一戦となる。得意技はカウンターだそうだ。

対戦相手は、戦績107勝24敗2分の大ベテラン、コレーリ。
試合前のインタビューでは山内をグリーンボーイ扱いしていた。まあ、仕方がないか。
ちなみにこの試合のレフリーは和田 良覚。そう言えば豊永 稔もレフリーやってたなぁ。
特別試合を裁いていた野口レフリーも含めて、総合系のレフリーが勢揃いだ。

で、試合…なのだが。

とにかく両者、全く打ち合わない。
お互い距離を稼いで、アウトレンジからの打撃しか出さないのだ。
そして充分に距離があけば、山内はストレートとミドルキック、ローキックを放っていき、
コレーリは破壊力のありそうなローキックとミドルキックを放っていく。
打撃を単発で繰り出す両者、そして再び距離が開き…という展開のまま、試合は淡々と進んでいく。
お世辞にもエキサイティングとは言えない試合展開に、観客が静まり返っている。

そんな中、試合を優勢に進めたのはベテランのコレーリ。
ラウンド全般において蹴っていたローキックが有効打になっていた。
2R、山内のハイキックに合わせたローキックで軸足払い、山内を転ばせる。
3Rあたりから山内が若干コレーリのローキックを嫌がる場面が出始めた。
それでも山内は同じローキックで対抗していたが、
コレーリはこれに合わせたインローのキックで山内を何度も転倒させる。ベテランならではの攻め。

4R、序盤は山内のミドルキックがモロにコレーリの胴に入り、その後のラッシュを許したが、
これを組み付いて防御したコレーリは再び試合を自分のペースに戻す。
再び距離をあけて、徹底してローキックを放ち続けるコレーリ、
ラウンド終盤、このままでは敗戦濃厚な山内が前に出ようとした瞬間に、カウンターの左フック一閃。
モロに食らってしまった山内は痛恨のダウン。

山内は立ち上がったものの、結局、最後まで試合をさせてもらえなかった。
5Rもこのペースを崩さなかったコレーリが3−0の判定勝ち。
ベテランならではの老獪さにやられた山内、ガックリとうな垂れながらリングを後にしていた。


第五試合 日本 vs イギリス 60kg契約 3分5R
○リアム ハリソン(170cm/60kg/イギリス/バッド カンパニー ジム/WAKO-PROイギリス Sフェザー級王者)
●増田 博正(170cm/59.6kg/ソーチタラダ/J-NETWORK フェザー級王者)
[3R 2分55秒 TKO]
※左フック

他団体となるJ-NETWORKの王者としての出場となる増田。
フェザー級ではMAキックの王者や全日本キックの王者も倒しており、
同階級では国内最強の呼び声も高い。
で、パンフレットによると、増田はフェザー級からライト級に階級アップするのだそうな。
相手がいなくなったからなのか、それとも噂されるK-1 ライト級トーナメントの為なのか?
入場曲はElvis Presleyの「A Little Less Conversation」。
最近、NikeのCMで有名になった曲だ。この曲は嫌いじゃない。
今日の対戦相手は、デビューして16戦にして二冠王、若干17歳の"神童"、ハリソン。

試合前、増田に花束が贈呈されたが…、これが女性の長蛇の列。モテる選手だ。

1R、増田はローキックやミドルキックを中心に攻め立てるが、
ハリソンは序盤では増田のローキックの軸足にローキックを合わせたり、
ミドルキックをキャッチしてローキックで払ったり等で、増田を何度もマットに這わせる。
中盤以降は増田のキックに合わせて、ハリソンがカウンターのストレートを放つ場面が多く見られた。

2R、増田が攻める。遠距離から徹底してのローキックとミドルキックだ。
対して、中距離まで詰めてのストレートで対抗するハリソン。
増田はこれに付き合わずに、距離が接近すれば組み付いてのヒザ蹴り。
ハリソンもこれに対抗してヒザ蹴りを出していったが、
遠距離攻撃と近距離攻撃の使い分けで、徐々に増田がペースを握り始める。

中盤からは、増田はこれらの攻めに中距離でのストレートを織り交ぜる。
ペースを握られた事に苛立ちながら前に出るハリソンに、そのストレートがカウンターでヒット。
ハリソンはラウンド終盤に逆襲の重いミドルキックを二発ヒットさせたが、
2R終了の時点では、試合は増田のペースで進んでいた。

ところが、の、3R。
開始して間もなく、増田のローキックをキャッチしたハリソンのストレートがハードヒット。
これで怯んだ増田に、ハリソンは追い撃ちのストレートを数発入れ、これで増田がダウン。

応援団の歓声の中、増田はなんとか立ち上がる。
反撃を開始するが、力のない攻めを完全に見切られている。
逆にハリソンは、増田のパンチをかわしながらカウンターのストレートを入れ続ける。
2Rとは打って変わって一気に敗色濃厚になる増田。
それでも前に出続ける姿勢に応援団から大歓声が。

だが、ハリソンは増田を捕まえてヒジ打ちを連打すると、
更にパンチのラッシュで増田を追い詰めていく。
ハリソンの打撃が次々にヒットしていく中、反撃が出来ない増田、
見かねたレフリーがスタンディングダウンを要請。

それでも試合の意思を見せる増田、応援団の歓声の中、試合は続行。
増田はハイキックを出して一打逆転を狙うも、ダメージを負った体では焼け石に水。
尚もラッシュで攻めてくるハリソン。ストレート、アッパー、ヒジ打ちをいいようにもらってしまい、
最後は左フック。スリップ気味に尻餅をついた増田に3度目のダウンが宣告されて試合終了。

試合後、「最後のダウンはスリップだっ!!」と主張する増田だが、
正直、このまま試合を続けていても結果は同じだっただろう。
階級アップの為の調整試合での敗北、増田の胸に去来するものは何なのだろうか…。


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●現役王者の引退
ここで、現役の全日本バンタム級王者である安川 賢の引退式が行われた。
引退の理由は、今年2月に行われたソッチューン イングラムジムとの試合後、
精密検査を行った結果、「被殻部の陣旧性脳出血の疑い」が認められたからなのだそうな。

安川はこの結果を受けた後も、極秘裏にタイに出向き試合に出場しようとしていた。
が、試合の前日に奥さんから電話があり、「絶対に安静にしてなさい。」と言われたそうだ。
安川の奥さんは、わざわざ、はまっこムエタイジムに連絡して、
ジムの会長であるユタポン氏に安川がタイのどこにいるのか調べてもらったのだ。
そして、この電話が安川が引退を決意する切欠となったようである。

それでも、現役王者としての引退を決断するに至るまでは、
やはりそれなりに葛藤があったようだ。

「現役時には「35歳までやる」といった手前、こういう形でリングを去るのは悲しかった。
 だが、こういう事がなければ、自分はやめる切欠を掴めなかったかもしれない。
 そう思ったら、これもチャンスなのかと気持ちを切り換えれるようになった。」

引退についてこう語る安川ではあるが、
その無念たるや、素人の察する域を超えているのだろう。
歓声の中、入場してくる安川の姿を見たマニアがぽつりと洩らす。
「キックボクシングって競技は、長くやっていると必ず体のどこかにガタが来る。
 まあ、ケガはともかくとして、後遺症が残るのがなぁ…。キツい商売だよ。」

引退式の前には3分1Rのエキシビジョンマッチが行われた。
安川の対戦相手はS.V.G.の後輩、藤原 ひろし。
大きいグローブをはめて、しっかりとレガースを付けて試合開始。
序盤からお互いに遠慮なく蹴り合い、気持ちの良いほどにミドルキックとヒザ蹴りが交差し続ける。
3分間はあっという間に過ぎ去り、試合終了後には観客から暖かい拍手が贈られた。
この試合での安川を見る限りは、まだまだ選手としていけそうな勢いがあったように思う。
その事実が、益々、現役王者としての引退の悲しさを募らせる。

引退セレモニー。
功労賞の授与、各マスコミからの記念パネルの贈呈、花束の授与。
花束の授与には、安川がNJKF在籍時代に2度に渡る激闘を繰り広げた佐々木 巧輔の姿が。

安川が最後の挨拶。

「安川 賢は、今日を持ってキックボクシングを引退します。
 ドクターストップによる無念の引退となりましたが、
 この悔しさを次に人生に持っていきたいと思います。

 振り返れば、S.V.G.に入門して10年、色々なことがありましたが、
 思い出に残っているのは、高架下での練習と、72秒で終わったデビュー戦です。
 そこから這い上がってここまで来ました。
 素晴らしい10年間をくれた皆さんに感謝したいと思います。(観客拍手)

 不器用でしたが、ここまで来られた事を嬉しく思います。
 ありがとうございました(観客拍手)。」

その後、10カウントゴング、S.V.G.ジムの同門達による胴上げが行われ、
安川は惜しまれつつ花道を後にしていった。

安川 賢 2003年7月20日 引退
元NJKFフライ級王者 現全日本バンタム級王者
通算戦績 30戦22勝(11KO)8敗


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第六試合 日本 vs タイ 70kg契約 3分5R
△ガオラン カウイチット
 (177cm/68.7kg/タイ/ペッティンディー ボクシング プロモーション
                              /ルンピニースタジアム ウェルター級王者)
△清水 貴彦(170cm/70kg/超越塾/全日本 ミドル級二位)
[判定 1−0]

いよいよ、ルンピニー2大王者が後楽園ホールに光臨。会場の空気が微妙に変わる。

昨年のK-1 WORLD MAXにムエタイ代表として出場、
散打代表のジャン ジャポー、石井館長推薦枠の小比類巻 貴之を、
得意の組み付いてのヒザ蹴りを何度も連打してこれを退けながらも、
決勝ではアルバート クラウスのパンチ一発に沈んでしまったガオラン。
同大会で準優勝という輝かしい戦績を収めながらも、
地味な得意技の印象と、派手なKO負けの姿が目立ってしまい、
大会後には「ムエタイ王者ってこんなもの?」という疑念の声が絶えなかった。

今日は「ヒジあり・ヒザの連打あり」のキックボクシングルール。
ガオランはK-1で出せなかった本領を、この全日本キックで出す事が出来るか?
観客は大きな拍手でルンピニー王者の入場を迎え入れる。

そのガオランの対戦相手に選ばれたのは、ミドル級二位の清水。
清水はウィーン・オランダでの武者修行帰り、
オランダではメジロジムやドージョー チャクリキのお世話になったそうだ。
試合が決まった時は、嬉しさと怖さが混じった複雑な心境になったという。
それでも「(ボクサーの)バタービーンばりに行こうかなと思ってますよ。」と抱負を語る清水。
ルンピニー王者を相手に金星なるか?

ガオランによるワイクーの舞の後に試合開始。
1R、清水は足を使ってガオランの周りを回り続けて距離を置き、時折接近してストレートを入れていく。
対してガオランは、距離がある時は破壊力のあるローキックやミドルキックを清水に入れ、
清水のパンチの距離になれば、逆にストレートを清水に返していき、
接近すれば首相撲からのヒザ蹴りをガンガンと清水のボディに入れていく。
特に首相撲ではガオランに一日の長があり、清水はヒザ蹴りを何度も食らっていた。

だがラウンド終了直前、
清水はアウトレンジからのストレートを2発クリーンヒットさせた。
この攻めに、ゴング直後には観客から歓声が沸く。

2R、尚もヒザ蹴りを入れてくるガオランを引き離した清水、
ガオランの打撃に対してカウンターのストレートをクリーンヒットさせる。
観客の歓声の中、清水はそれからもガオランのヒザ蹴りを凌ぎつつ、
中距離からのストレートを何度もヒットさせた。観客から「行けるぞ、清水!」の声が起こる。

中盤以降、
ガオランは首相撲からのボディへのヒザ蹴りや投げを連発し、試合を自分のペースに引き戻そうとする。
だが清水は、そんなガオランに立て続けにストレートを3連発でヒットさせ、更にはヒジ打ちで追い詰める。
観客の大歓声の中、清水のバックに回ってヒジ打ちとヒザ蹴りを連打して反撃するガオラン、
中々、試合が自分のペースにならない事に苛立っているようにも見えた。

3R、やはり図式は、
「距離を稼いで、中距離からのストレート」の清水 vs 「首相撲からのボディへのヒザ蹴り」のガオラン。
しかしこのラウンドでは、ガオランがヒザ蹴りで攻める場面の方が多く見られた。
逃げる清水を何度も何度も捕まえてのヒザ蹴り連打、またミドルキックも良く出した。
清水は終盤にヒジ打ちをヒットさせるも、このラウンドの印象点は悪いか。

4R、やはりミドルキックとしつこいまでの首相撲からのボディへのヒザ蹴りで攻めてくるガオラン、
だがこのラウンドの清水は、1・2のパンチやストレートをクリーンヒットさせる場面が多く見られた。
特に序盤とラウンド終盤に入った1発は、ガオランを一瞬棒立ちにさせる程の一撃。
ラウンド終了後、清水は観客の「勝てるぞっ!」の大歓声にガッツポーズで応える。

5R、清水が勝負に出る。距離を稼ぐ戦法を捨て、前に前に出てガオランと打ち合い始めた。
そんな中、清水の打撃が当たる当たる! 1・2、ストレート、アッパー、ヒジ打ち、ヒザ蹴り。
清水の打撃は確実にガオランにダメージを与えていく。

ガオランが直ぐに接近して距離を殺し、
首相撲からボディへのヒザ蹴りを出してくる為に、清水の打撃は連発では当たらなかったが、
その一つ一つはクリーンヒットしていたので、観客は歓声を挙げて清水の攻めを支持。
そして試合終了。ルンピニー現役王者を追い詰めた清水の大健闘を称える大歓声が会場に沸き起こる。

判定、3Rでの攻勢を見たレフリー1人がガオランを勝者にするも、
残り2人は、甲乙つけがたし、のドロー裁定。
だが観客は、清水の攻勢を支持していた為にこの判定に不満そうだ。
僕自身、ドロー裁定自体には文句はないが、
確かに清水の攻めはガオランを倒すだけの勢いはあったように思える。

この判定結果には不服そうだった清水だが、
堂々と手を挙げれば、観客は大歓声で清水の健闘を労う。
…と、同時に聞こえてきたのは「やっぱり、ガオランってこの程度なんだな…」の声。
やはり我々がK-1 WORLD MAXで見た彼の姿を、そして今日の姿を、
そのまま「ムエタイ伝説の失墜」と捉えて良いのだろうか…。

それは早計だろう。
何と言っても、「ムエタイ伝説」にはサムゴーがいるのだから。


第七試合 タイ vs フランス 62kg契約 3分5R
○サムゴー ギャットモンテープ
 (172cm/61kg/タイ/ギャットモンテープ ジム/ルンピニ−スタジアム スーパーフェザー級王者)
●エンバイエ アブドゥライエ(172cm/61.4kg/フランス/RM ボクシング/WPKLヨーロッパ ライト級王者)
[3R 1分24秒 KO]
※左ミドルキック

ムエタイの殿堂、ルンピニー スタジアムのNo.1 プロモーターですら、
強すぎる為に扱いに困っている男、サムゴー。
同階級では敵なし状態の為、試合によるギャンブルが成立しないからだ。

全日本キックの舞台では、日本人エース選手である小林 聡やベテランの金沢 久幸を、
得意の左のミドルキックで寄せ付けずに連続KO勝ち。
その強さ故、今年は階級がかなり上であるK-1 WORLD MAXからもお声が掛かったサムゴー、
本日はメインイベントに興行のエース選手としての出場だ。
サムゴーの入場、観客は大歓声でこれを迎え入れれば、
上機嫌のサムゴーはリングインと同時にシャドーボクシングを見せるサービス。観客は大歓声。

今日の対戦相手は、現在、フランスのキック界で話題の男となっているエンバイエ。
サムゴー、エンバイエ、共にワイクーを披露した後に試合は開始。
それにしても今日のサムゴーはわかりやすいくらいに機嫌が良い。
ワイクーをノリノリでこなして、再びシャドーボクシングで観客を沸かせていた。

1R、サムゴーが距離を取りながら牽制の左のハイキックを出せば、
その凄まじい圧力に、早くも観客から驚きの歓声が沸き起こる。
これに対して、エンバイエは下がって様子を見ながらローキックやミドルキックを出して様子見。
だが、サムゴーはエンバイエの放つ打撃の一発一発に、凄まじい圧力と威力を持ったキックを返していく。

これらの打撃、手数の上では互角だが、破壊力はあからさまにサムゴーが上。
得意の左のミドルキックとローキックが、エンバイエの出したキックの数倍の威力でヒットしていく。
終盤には間合いを詰めてのヒジ打ちも繰り出したサムゴー、
ラウンド終了時には、観客からの大歓声がサムゴーに贈られた。

2R、エンバイエは前蹴りで距離を取りつつ様子を見ていたが、
サムゴーは破壊力のある左のミドルキックを出しながら、
じわり、じわり、とエンバイエを追い詰めていき、
距離が詰まれば、組みついてのヒザ蹴りを狙う。

だが、この時、エンバイエの縦のヒジ打ちがヒット。
そしてサムゴー、何と流血。
傷が深そうだと見たレフリーがドクターチェックを要請。
おっ、大番狂わせかっ!?

しかし、サムゴーは試合続行の意思表示、
ドクターからもOKが出て試合再開。
観客からは安堵の大歓声が沸き起こった。
どうやら殆どの観客は、サムゴーの堂々の勝利をお望みのようだ。

そして、この流血でスイッチの入ったサムゴーが大反撃を開始。
尚も追い討ちを掛けてくるエンバイエを寄せ付けずに、
組み付いてのヒジ打ち、左のローキック二発に左のミドルキック、
左のローキック、組み付いてのヒザ蹴りを次々にヒットさせていく。
その一つ一つが凄まじい破壊力でヒット、エンバイエの下がる距離が段々と大きくなっていった。

それでもエンバイエは、遠距離からローキックを繰り出す等して反撃していたが、
サムゴーはラウンドの最後に、ガードすらも吹っ飛ばす左ミドルキックを放つ。
エンバイエが腰砕けになったところで2Rは終了。観客からまた大歓声が沸く。

3R、左のローキックやミドルキックで再びエンバイエを追い詰めたサムゴー、
相手が2R終盤のミドルキックで戦意が萎えているのを見るや、スパートを掛ける。

左のミドルキックから左のローキックの3連打、そして渾身の左のミドルキックを1発!!
再び吹っ飛ぶエンバイエ、組み付いてのヒジ打ちで更に攻め立てれば、
ブレイク後のエンバイエは既に戦意喪失状態だ。

最後は左のローキックからの左のミドルキック。
コーナーにもたれてうずくまるエンバイエ、カウントが進んでも頭を上げず。
やがて10カウントが数えられ、ゴングが鳴り響く。
サムゴーが下馬評通りの強さを見せての圧勝、
観客は期待通りの活躍に歓声を挙げた。

それにしても、サムゴーは強い。
身体は小さいにも関わらず、出すキックの圧力は大変に圧倒的。
残念ながら、小林戦で見せたあの左ミドルキックの超速連打は出なかったが、
そのミドルキックは、単発でも僕のような一見さんを虜にするだけのモノがあった。
もしキックに興味があって、まだサムゴーを見てない人は、
是非、一度見る事をオススメする。

ムエタイ伝説は死んではいなかったっ!!

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雑感:
初めての観戦でしたが、いい試合が続いた為に好印象のまま家路につけました。
特に第二試合の山本、第三試合のカリオピ、そしてメインのサムゴー、と、
良い選手を生で観戦できた事が非常に嬉しいです。

あえて気になった点を挙げるなら、
キック興行の宿命なのか、興行時間が長いのがひっかかりました。
終了が22:00近くなってしまうのはちょっと気になりますね。
ダークマッチ含めて、全10試合(僕は計8試合を観戦)、
興行時間の総計が4時間30分というのはちょっと長いように感じます。

…が、今日は4000円でこれだけの試合が観れたので、満足しています。

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以上、長文失礼。




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