ガファリ様の妙技を味わえ!
■団体:UFC43 Meltdown
■日時:2003年6月6日
■会場:ネバダ州ラスベガス Thomas and Mack Center
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

今回のUFCはベガスなので、一日だけ休みを取れた友人と一緒にクルマを飛ばして、日帰りの強行軍で観て来ました。特別に特定のカードが楽しみだから、とかじゃなく、単にせっかく近く(?)でUFCやるんだから観てみっか、くらいのノリです。

早朝に出発し昼前にベガス入り。カジノでひとしきり遊び、適度に金をスッてから会場に。ティケット受け渡しカウンターに並んでいると、友人が「お、ガファリや」。見るとそこには、あのマット・ガファリ様が招待ティケット受け取りカウンターに並んでいました。次の瞬間、こっちの視線に気づいたガファリ様は、とても温厚そうな顔で自分から目でこっちに挨拶してくれました(もちろん面識なんかないんですけど)。

そこでこっちも嬉しくなって「おおガファリさん! またゼロワンに出るんですか?」と聞くと、ガファリ様はのーんびりした口調で「うん。出るよぉ」「じゃあ橋本と小川をやっつけて下さいね!」「うんー。でも彼ら、とても強いからねー」。

こんな、なんちゅーか超脱力系なほのぼの口調でしゃべってくれるガファリ様は、俺の友人が電話ボックスで知り合いに連絡とろうとしているのを見て(俺ら二人揃って、携帯持ってない化石みたいな人種なんですよ)、「ん。君電話するのー? アメリカ国内? じゃあこれ使いなよぉ」と、なんと自らの携帯を取り出して、友人に貸してくれました。そして、友人にそのまま携帯を預けたまま、自分は巨体を揺らして招待券を取りに行くガファリ様。初対面の日本人なのに、盗まれるとか、そういう疑いを全く持っていないらしい。

舞い上がった我々は「これガファリの携帯だぜ! このまま持ち逃げしちまおーか」と浅はかなことを一瞬画策するも、やはり使用後には丁寧にお礼を言ってちゃんとお返しすることに(当たり前じゃ)。とにかくこの一件で、俺はいっぺんにガファリ様のファンになりました。もっとも周りのアメリカ人達は、誰も彼の存在を知らないか、知ってても無関心なようでしたけどね。まったく失礼極まりない!そのうち世界は全てガファリ様の前に平れ伏すことになるのも知らずに。

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とにかくそんなかんなで会場に入って席を探すと、二番目に安い$100のティケット(スタンド上段)あるにかかわらず、とても見やすい位置。この会場は横アリがちっちゃくなったよーな感じで、段差がキレイにできていて非常に快適ですね。まだ会場が三割ほどしか埋まってないうちに、予備戦スタート。

予備戦第一試合 ヒーゾ vs テリグマン

打撃が上手いくせになかなか手を出さないので、観ているこっちのフラストレーションを高めることにおいては、日本の武蔵と双璧の「じらし王」ヒーゾ。今日も全く期待していなかったんだが、さすがに前座第一試合という崖っ淵に追い込まれて奮起したのか、積極的に打撃を出して、テイクダウンからのG&Pも見せて、最後にはヒザもかまして、テリグマンの顔をカットして勝利。すごいすごい。

予備戦第二試合 リンドランド vs ヴィターレ

誰だか知らないヴィターレ、登場した姿を見ると、パーリングとかジューンとかクーパーとかのハワイ勢の区別が全く付かない俺にとっては、「また同じような顔と体型のハワイ系が増えちまった」って感じで頭が痛い。まー完全な噛ませ犬だろ、と思いきや、リンドランドのはげオヤジのくり出した豪快な反り投げに体を浴びせて(?)マウント奪取。と思ったらそのままリンドランドが動かなくなって、びっくりの勝利。スローで見たら、反りを出したリンドランドの顔が着地するときに、ヴィターレの頭が思いきり上からぶつかって、その一発で完全失神してました。いつぞやのティトvsタナーの、壮絶な自爆ヴァージョンって感じです。完全なる自爆のようにも、ヴィターレが空中で投げられまいと体をコントロールした故とも、また投げられたヴィターレの足がケージに偶然ぶつかって跳ね返ったせいにも見える。

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今んとこすごく面白いんだけど、ここからPPV開始まで長々休憩。一時間近くあったんじゃないかな? 睡眠不足の俺には、寝る時間ができて丁度良かったけど。その間「(暴力)スペクタクルから(厳格な)スポーツへ。ズッファになってUFCは変わった」みたいな宣伝が流されてた。

で、本戦開始のセレモニー。思いきりWWEの真似としか思えない花火と火薬でド派手に盛り上げて、会場の雰囲気も一気に最高潮に。しかし、その後すぐに試合につなげずに、テレビで司会者達のトークやイントロなどを放映している間を埋めるために、会場では音楽を10分以上流したので、せっかく盛り上がった雰囲気がみるみるしぼむ。このへんでWWEとは致命的に差がある。ソープ嬢が口でやってくれた後、そのまま本番に移行せずに、一人でトイレにいっちゃうよーなもん。

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本戦第一試合 ミア vs シムズ

試合前に流されたばかでかいシムズが、なんか得意げに話してるクリップを観た友人が「頭わるそー」と感想を漏らす。うむ確かに。地元のミア、入って来るだけで会場が揺れてる。

試合。ミアがいきなりテイクダウンすると、再び爆発する会場。せいぜい7割くらいの入りなのに盛り上がり方は凄まじい。そのままミアがマウントやバックから圧倒的に攻めるも、シムズ粘る。そしてミアが十字でフィニッシュを狙ったところで、シムズが起き上がってディフェンス。持ち上げてパワーボム気味に落として十字が外れると、金網を掴みながらミアの顔にストンピングを連発。ミアは死亡し、シムズは手を挙げて吠えまくる。そして反則負けの裁定(当然じゃ)が出されると、マウスピースだかグローブだかを豪快に叩き付けて、ものすごく分かりやすく悔しさ(&頭の悪さ)を表現して帰ってゆくシムズ。先ほどの「UFCは暴力スペクタクルではなくスポーツである」という宣伝を真っ向から否定する存在だなコイツは。単に永久追放すべき。

ただ、やられたミアにも失敗があって、個人的にちと考えされされるモノもあった(ので以下、しばらく脱線失礼)。

俺は柔術界では概して「下から十字や三角を取りかけたところで、相手が持ち上げに来たら(持ち上げられちゃったら)どーするか」ってことへの指導が決定的に不十分なんじゃないかって思う。今回のミアや、以前ヒューズにやられたニュートンみたいな超実力者ですらこの状況で失敗しているし、叩き付けられて選手として致命的なダメージを追った人も知ってる。これは現行の柔術ルールでは相手を頭から叩き付けることが禁止だったり、常識として、普段のスパーで人を頭から叩き付ける奴などいなかったりするせいなんだろう。

で、今年のはじめにホリオン・グレイシーが開いた柔術トーナメントは、この点に異議を唱える意味で「下から十字や三角を仕掛けられた場合、相手を持ち上げて叩き付けるのは可」というルールが採用されていて、事実パワーボムによるKO決着が生まれたりした。セルフディフェンス的な見地からして、技を仕掛けた方が、持ち上げられないように/叩き付けられないように対処すべき)という考えによるもの。批判続出だったけど、意義はある実験だったと思う。実際俺もこの大会に出てガードから何度か叩き付けられたので、個人的にそれ以来、下から十字や三角をとりかけても相手に持ち上げられかけた場合は、自ら決まりかけの技を諦めて解いて自分から落ちるようにしている(もちろん、スパーでこっちを頭から叩き付けるような奴はいないけど)。ま、持ち上げられないように工夫することが第一なんだけど。

ってことで今回の試合、まっ逆さまに持ち上げられたのに、ミアが十字を離さず腕を伸ばしにいったのは、重大な判断ミスだったんでしょう。本人には「ここで極められる」という感触があったからそうしたんだろうから、ものすごく微妙な判断なんだけど、ミスはミス。だからといって、この試合について「喧嘩ならシムズの勝ち」って意見もナンセンス。喧嘩なら、ミアがバックマウントを取ってシムスの体を伸ばした時点で終わってる。後頭部や頚椎にエルボーを思いきり打ち降ろせばいいだけ。だいたい、問題なく上をキープして圧倒的だったミアがわざわざ十字を狙ったこと自体、プロとしてきっちり決めようとしてやったこと。勝つことだけが目的なら、そんな必要はなかったはず。

・・・この件について、まだまだうだうだ考えることはあるんだが、このへんで。

本戦第二試合 フリーマン vs ヴァーノン

最初から誰もフリーマンに興味などないところに、唯一の見どころであるケンシャムが欠場。そこで代わりに出て来たのは、こないだのKOTCでホーンと恐怖の超退屈試合をやってのけた挙げ句に敗れたヴァーノン。こんな観客にとっては悪夢のような組み合わせとしか思えないこの試合も、一進一退の大熱闘に。詳しくは書かないけど、フルに闘って引き分け。両方ともエラい。

本戦第三試合 ヴィクトー vs イーストマン

ホームレスみたいなワイルドな髪と髭になったヴィクトー。以前よりさらに絞ってグッドシェイプ。注目株イーストマンの力入りまくり打撃をかわしつつ、ヒザ蹴りでぶっ倒して伝説の北斗百裂拳で秒殺激勝。これはこれで凄かったけど、さらにその後のインタビューで「神のおかげで勝てた。神のおかげで僕は変われた。神のおかげで・・・」と連発したのもかなりの衝撃でした。現在完全にそっちの世界に没入しているようです。それで強くなれたよーだからいいけど。ついでに、ヴィクトーの神風によってぱっくり切り開かれて、広く肉が露出したイーストマンの傷も凄まじかった。グロ写真サイトにそのまま掲載できるなアレは。

時間調整用試合 エドワーズ vs ルイズ

イベントの進み具合で、どこに挿入されるか決定されるこの試合。さくさく進んだのでメイン二試合の前に行われることに。圧倒的に実力差があるも、ルイズが粘ったのでエドワーズの判定勝利。この試合もnot bad でした。

セミ キモ vs タンク

顔のほっぺたから下がふくれてしまい、ひょうたん顔になってしまったキモ。年を感じさせるけど、体はまあまあグッドシェイプ。タンクの方は、出て来るだけで会場の雰囲気が一変。それだけなんだが。試合はふつうに格闘技の試合をやったキモが、がぶって上を取り、パスしてマウントからの肩固め。たぶん極まってなかった(頸動脈は締まってなかった)と思うんだが、非常に不快で呼吸も苦しい状態になったのでタンクはタップしたんでしょう。

両雄が向かい合ったときのあの期待感の盛り上がり。実際の試合が始まって、現実が露呈されてゆくにつれて微妙に冷めてゆく会場の雰囲気。そしてあっさり試合が終わってやや拍子抜けする客席と、爆発的に喜ぶ勝者との妙なズレ。鈴木vsライガーもこんな感じだったんじゃないかなと思う俺。

メイン ライトヘビー級王座決定戦 クートゥア vs リデル

もういろんなところで熱く報告されてるだろうけど、ランディのおやじが立ち技でリデルを圧倒。いつもの打撃リズムが全く取れないリデルに対して、プレッシャーをかけてジャブを当てまくる。あれだけ強かったリデルが後退し、序々に疲れゆき、やがて打つ手をすべて失ってゆく光景は俺には非現実的というか、ちょっと信じられなかった。超人ですねランディは。そして最後はテイクダウンして一方的にマウントパンチ。リデルは叩き潰されたバッタのように、なすすべもなく長い両手を伸ばしてゆっくりばたばたさせるのみ。あれだけこつこつ積み上げてきた実績が、こんなにあっさりと崩れてゆくなんて。

しかしリデルのマウントを取られたときのあの無策ぶりはなんだったんだろう。今まで誰もリデルからマウントを取れなかったから分からなかったけど、この状態の練習を全くしてないのか? あるいは単に心が折れちゃったのかもな。ゲイだとすさまじく不評の、TAPOUT兄ちゃん出演によるリデルのパンクな登場クリップは俺は別にきらいじゃない。そーでもしないとキャラがつくれないし。まあ俺はあの系の文化にさっぱりうといから、良いにも悪いにもこだわりが全くないってのもある。

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ってことで、ほとんどの試合がびっくりするほど面白かった今回のUFCでした。空席は目立ったけど、盛り上がったし。正直これなら、次回ベガスでやる時はまた行きたいですね。リピーターになってもいいです。

上にも書いたように演出ではWWEにははるかに劣るけど、あれだけ地道な努力を重ねて、とうとう主役になったリデルが無惨にやられてゆくあの光景の残酷さってのは、プロレスではあまり見れない。少なくともあの強度では(ランディの超人ぶりも凄かったけど、この種の感動に関しては、こないだのロウでのフレアーのトリプルH戦のすさまじさのほうがびっくり号泣もんだった)。もっとも、こないだリコがシルビアにやられた時にも似たような感じの衝撃があったかな。シルビアの場合は「お前誰?」って感じでホントに主催者泣かせなんだけど、超人ランディの場合は、次に誰と当てても面白いからOKでしょう。




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