5/11 全日本女子 横浜アリーナ
■団体:全日本女子
■日時:2003年5月11日
■会場:横浜アリーナ
■書き手:しま

THE FUTURE 〜全日本女子プロレス創立35周年記念大会〜

前日は、横浜ビブレ内のHMVで行われた赤いベルトの調印式&極悪同盟トークショーへ。
「レコード店の店内で調印式を行うのは史上初の試みです」と司会を務めた今井リングアナが言って
いたが、大会の行われる地元の、一般の若い客がたくさんいるCDショップで調印式をやるのは宣伝に
もなっていいかもしれない。しか〜し!調印式の立会人がCDショップの店員、ってのは一体何なの
よ?なんのためにコミッショナーっているの?赤いベルトが泣いてるよ。
中西、浜田ともにごく当たり前のコメントと態度で調印式を終え、極悪同盟が登場。(影かほるは本
日は納見のサイン会のマネージャーとして神田の本屋へ行っているので欠席)ダンプのトークをちょ
っと楽しみにしていたのだが、このトークショーもごくあっさりとしたものだった。いまはイラスト
レーターをしているとかいうコンドル斉藤は、明日ダンプの体をキャンバスにしてどんなオドロオド
ロしい絵を描いてくるのかな?
あまりにもあっさり終ってしまったイベントのあと、店内をブラブラしていると、Tシャツ短パン姿
の小関と前村が、後片付けのために走り回っていた。胃炎で入院し、明日の大会の出場も米山に譲っ
てしまった小関だが、元気そうだったので一安心。Hikaruも西尾も辞め、今年入った練習生も早々と
全員いなくなってしまったなかで、いつもけなげに雑用をこなしている小関と前村。この二人にはい
いことがあるように、と祈らずにいられん。

さて当日、アリーナ前はそこそこの混雑。前売りチケットで入る客より、招待券や優待券で入るため
に並んでいる客のほうが多いような、、、。ちなみに今回は、我が家の近所のスーパーには優待券が
置かれなかったので、どうしたのかな?と思っていたら、なんと「週プロ持参の人は1500円でリ
ングサイド以外の席は自由!」なんてことになっていたらしい。1500円でアリーナS席かあ...。

会場に入ると、予想どおり客席はほとんど埋まっておらず、買ったパンフを開いて30周年記念大会
の客席ガラ空き写真と「どっちが入ってるかなー?」などと比べてみたりしてヒトが悪い。最終的に
は5割は入ったかな。

招待券の引き換えに時間がかかったようで、20分遅れで全選手入場式のあとようやく試合がはじま
った。

 

 第1試合 The Opening Bell 30分1本勝負
 前村早紀○、米山香織<JWP>(11分 変形回転エビ固め)
              VS さくらえみ<フリー>×、高瀬玲奈<アルシオン>

と、思ったら、元川改めさくらえみの入場シーンがたっぷりあった。さくらがたった一人で始めた“我
闘姑娘”「一般の人(女子のみ年齢制限なし)にプロレスを教える教室」の生徒と思われる10人ほど
の少女たちが、さくらとおそろいのコスチュームやマスクで登場し、さくらが作った可愛い曲に合わせ
リング内を楽しそうに飛び回る。さくらも初めてのマスク姿。ピンクのリボンとコスチュームですっか
りイメチェンだー。
倒産直後の淋しくなりがちだった全女のリングをこの人がどれだけ沸かせたか、過去の元川の試合が浮
かんでくる。全女どころか、女子プロレス全体が息も絶え絶えになっている今、どこの団体にも新人が
育たないなかで、たった一人でこのような試みを実際に始めたさくらという人の発想と勇気。素晴らし
い。動きのほうも今日に合わせて相当練習してきたのがわかる。コーナーからの大胆な飛び技なんて元
川時代より鮮やかだったかも?「さくら先生」を必至で応援するセコンド少女たちを米山が「うるさい
ーっ!ガキーッ!」と蹴散らしたりして盛り上がる。米山はよその団体のビッグマッチだろうが臆する
ことなどこれっぽっちもなく、楽しい空気を生み出す才人です。前村も米山とタッッグを組めて満足だ
ったんじゃないかな。新しいコスチュームはいまいちだったけど、さくらから勝ちを取れて、前村おめ
でとう!


 第2試合 格闘技戦 5分3ラウンド
 藤井巳幸×(1ラウンド 1分36秒 三角絞め)VS エリカ・モントーヤ○

さて、昔から面白い試合などあったためしがないのに、なぜか全女はビッグマッチでは格闘技戦を必ず
やりたがるのであった。今回の犠牲者は藤井。しかも藤井の場合は、自分をバカにした西尾に向かって
「くやしかったら6年も7年もやってみろ!」と悔しまぎれに叫んだら「フン冗談でしょ」とばかりに西
尾が退団してしまうというワケわからん展開の渦中、、、(?)という苦しく情けない、絶体絶命の立
場なのであーる。以前、伸び悩んでいる藤井に目をかけてスネイクピットを紹介し、電車の回数券まで
買ってあげたという貴子の恩をアダで返すように、のらりくらりとやってきた藤井であーる。それがい
きなりエリカ・モントーヤとやることになって、あわててスネイクピットに再入門。今日のセコンドは
指導してくれた大江慎と堀田がついていた。きっと貴子もどこかで見ていただろう。
でも、格闘技戦がそんな甘いものであるはずもなく、、、一瞬で藤井またしても転落。藤井の転落の底
ってどこまで深いのか、こうなったらどこまでも見届けたいもんだ。
セコンドの大江も恥ずかしかっただろうなー。


 第3試合 The Future High Spurt 30分1本勝負
 渡辺智子、前川久美子○(15分50秒 カカト落とし→片エビ固め)
             VS 三田英津子<猛武闘賊>×、日向あずみ<JWP>

ラスカチョ解散以後、にじみ出る地のおっとりした性格と&痛々しい膝で、三田は究極のベビーと化した
感じがする。その三田と組む日向は、存在は地味だけれど、実は実は驚くほどタフで、当りが強く、スピ
ードがあり、ハートが熱くて美しい選手なのであった。輝優優がGAEAに移籍していったときに言い放った
「GAEAが憎いです!」にもシビれたなー(笑)。この試合でも抜群のキレのいい動きで、えぐい攻撃をし
てくる渡辺、前川に対して対等かそれ以上に闘っていた。渡辺、前川のプロレスはもう職人の域に達しつ
つある。ふたりとも赤いベルトを巻くことはなく終るであろう選手だが、今の全女で、いちばん全女らし
いコワクて面白い試合ができるのはこの二人なんじゃないだろうか?

 第4試合 The Anniversary Super Woman 30分1本勝負
 高橋奈苗×、倉垣ツバサ<フリー>、ファング鈴木<J'd>(14分31秒 パワーボム→エビ固め)
         VS 井上京子<NEO>○、井上貴子<フリー>、吉田万里子<アルシオン>

63年組、、、というよりはW井上+吉田万里子、という感じの3人に対して、さらにバラバラ感あふるる寄
せ集め3人組の高橋、ファング、倉垣。全員が、「これはたいしたテーマのない余り者試合」と理解してい
るのがありあり。それならば、と精一杯面白い試合にしようとコミカルな連携をしてみせたりする高橋組、
イジメラレっ子だった万里ちゃんをまたみそっかすにしようと振舞ってみせる井上組、、、でも全てが中
途半端で、インパクトのない試合になってしまった。(しかし、なぜか一人嬉しそうな貴子。)
試合後、自分がフォールした高橋を抱きしめるようにして何やら優しげに語りかける京子。高橋の、この
カードに対する不満や悲しさを敏感に感じとった京子のフォロー。この優しさが全女にはない(たぶん)か
ら、選手が辞めていっちゃうんだろうなあ。かといって、大好きな京子さんに金魚のフンのように一生つい
ていくつもりの選手ばかりいるNEOみたいなのも困るしなあ。
なんてボンヤリ考えていたら、この直後、バックステージで高橋が引退をほのめかすコメントを出していた
らしい。もうイヤになっちゃったんだろうな。でも高橋は辞めないだろう。


 第5試合 松永俊国メモリアルマッチ 〜極悪同盟復活〜 30分1本勝負
 立野記代<LLPW>、小倉由美×(12分36秒 ボディプレス→体固め)
                       VS ダンプ松本○、クレーン・ユウ

クラッシュ全盛期をまったく知らないワタシ、極悪同盟をナマで見るのは初めてだー。でも、サムライTV
の「全女クラシックス」をかじりついて見てるから(笑)往年のダンプの凄さは解ってるよ。クラッシュフ
ァンに本気で憎まれていた大ヒールのダンプ、いまや風前の灯火のように見える女子プロに、体を張って本
気で喝を入れてくれているのはこの人だけかも?長与をはじめ、現在GAEAに参戦しているフリー勢、ブル、
北斗など、全女の歴史のなかで大きな功績があった人たちがほとんど姿を見せなかったなかで、この人だけ
が昔と同じく威勢のいい様子で暴れに帰ってきてくれたわけで、、、もうそれだけで大ベビーですな!
試合の相手は、立野と小倉。むむむ、現役の立野より「うまい屋」のママの小倉のほうが、動ける!?(笑)
ダンプのフォーク攻撃で大流血の小倉、、、まさかこの歳になって横浜アリーナで流血試合やるとは思って
なかっただろうな。

 特別試合 OGバトルロイヤル
 <参加選手> ジャンボ堀、大森ゆかり、小倉由美、永堀一恵、立野記代<LLPW>、極悪同盟、
井上貴子<フリー>、ZAP T、前川久美子
 (退場順)(1分58秒)影かほる、(2分10秒)ドリル仲前、(2分56秒)コンドル斉藤、(3分44秒)
小倉由美、(4分45秒)立野記代<LLPW>、(5分10秒)大森ゆかり、(6分25秒)
クレーン・ユウ、(7分40秒)ジャンボ堀、(8分25秒)前川久美子、(11分20秒)ダンプ松本
  ZAP T○(12分31秒 回転エビ固め)井上貴子<フリー>× ZAP Tが優勝

続いてすぐにOGによるバトルロイヤル。流血でフラフラになって引っ込んだ小倉をダンプが「小倉〜!戻って
こい!」と呼び戻す。いつもは貫禄のある前川が、先輩方に囲まれて目立たないように振舞う姿が笑いを誘う。
貴子は先程の白いコスチュームからわざわざ黒いコスチュームに着替えて参戦。この人は今日は本当に嬉しそ
う。ひときわ大きな声援をうけているのはジャンボ堀。スタンド席から見ていても、背が高くてカッコイイ。
明るいキャラであることが伝わってくる。張り切りすぎた(?)クレーン・ユウが「腰を痛めて退場」に会場
は笑うが、ホントに痛めちゃったらしい。試合後にリング上から会場に来ているらしい子供に「お母さんガン
バッタよ〜!」と叫んでいたから大丈夫だと思うが。彼女は30周年記念のときも足首捻挫したらしい(笑)。
最後は、ZAP-Tが優勝し。ダンプがまたリングにあがってきて挨拶。リングサイドで観戦していた上田マキと
ジャガー横田が「かけめぐる青春」が流れるなかリングに上がり、お祝いの言葉と、ジャッキー佐藤、リトル
フランキー、植田元コミッショナーなどに対する追悼の言葉。

ここらへんで、全女が全女であるところの証明ともいえる「歌の時間」「歴代ヒット曲大メドレー大会」など
が当初は予定されていたはずなのだが、当然あると思っていた松永会長の挨拶とともになし。(入院中と伝え
られていた会長はその後ロビーを歩いている姿を発見、安心しました。)

そして最後にダンプが「極悪同盟、復活します!」と宣言。ざわめく会場。
構成員として、ZAP-T、影かほる、さそりを紹介する。
“さそり”とは、なんと頭を丸坊主にした藤井であーる!坊主にされたうえに頭に「さそり」の絵が描かれて
いる〜(泣)。これはさっきのあまりにも不甲斐ない格闘技戦への制裁なのか?それとも、いままでのツケを
今日この場ですべて払わせられたのか?さっき「どん底まで見届けてやる」と思ったばかりだというのに、い
きなりもうどん底見せられちゃったようで、正視できないほどの哀れさであった。これで変われなかったら...
って、もう考えるのも面倒くさくなってきた(笑)、とにかくどん底なんだからさそりでもなんでもいいか
ら這い上がってくれ!
ちなみに極悪同盟は、すぐに始まる北海道巡業から行くらしけど、これがまためまいのするような地獄の日程
で、、、歩くのさえ苦しそうなダンプが心臓マヒにならなきゃいいが。


 第6試合 魔界からの招待状 〜ミックスドマッチ〜 60分1本勝負
 金本浩二<新日本プロレス/T2000>○、大向美智子<フリー>(12分31秒 レフェリーストップ)
VS 魔界4号<魔界倶楽部>、A・コング×

3月の後楽園大会で星野総裁からの果たし状が読み上げられた時は、なんの冗談かと思ったが、こうして本当
に星野勘太郎が金本、魔界4号を連れてやってきたのを目にするとさらに壮大な冗談のように見える。コール
は新日のリングアナ、ケロ。けっこう客は沸いている。金本と大向、色気を振りまいているつもりの、見得を
切りまくりながらの、見てるこっちが恥ずかしい入場。金本はイヤな顔せずよくつきあってくれたと思うけど
、でもこんな全女になんの関係もない試合、別に見たくもないんだよね。それにさ、魔界4号!女となんかや
れねー、って思ってるのがバレバレなんだよ。ここまで来たらちゃんと仕事しろよ!魔界4号が何もしようと
しないので、客席から「ビッシビシいけよー!」の苛立ちの声が飛ぶ。
そもそも星野総裁を動かしたという女総裁は誰だったのか、というと今年65歳になる小畑女史であったのだ。
「紙のプロレス」などで「神取、かかってらっしゃい!」なんていまだ現役であることを主張している熱き人。
浅草でバーを営んでらっしゃる方らしい。ほんとに迫力あるんだよね。魔界4号より強そうです。
試合後、金本と鈴木みのるがリング下でにらみあってた。

 第7試合 魔界からの招待状 60分1本勝負
 堀田祐美子×、神取忍<LLPW>(5分55秒 ダイビングフットスタンプ→体固め)
VS 魔界魔女1号<ヘルズデビルス>○、魔界魔女2号<ヘルズデビルス>

続いてまた魔界の試合。魔界魔女1号は伊藤であろうことは予想できたが、2号は目をこらして見ていても会場
では判然とせず、あとで某格闘技巧者の選手とわかる。伊藤は、現在中国にプロレスの指導者として派遣されて
いるということなんだけど、いったい誰が派遣して、誰が受け入れ、誰が指導を受けているの?なんてことは一
切謎なのであーる。伊藤は「日本に戻りたくない」なんて言ってるが、ここにきてこのSARS騒ぎでは、、、もう
帰国して魔界やるしかないのかな?
久々に見る、伊藤の超強烈ダブルフットスタンプに堀田がやられてフォールされる。
そしてそこに「神取〜!」と叫びながらドドドドッと風間率いるLLPW勢がなだれ込んでいて、神取に向かって何
か言っている。この唐突感といい、それが驚きや興奮より失笑しか生まないのが限りなく風間=LLらしい。この
乱入は、増殖した新生ブラックジョーカーのお披露目のつもりだったらしいが、そんなもの全女でやるな(笑)。
間の悪いLL勢が去ったあと、堀田の「今日かぎり退団します」のマイク。
去年おなじように試合後のマイクで「今日かぎり!」と叫んだ豊田の退団宣言の時は、会場に悲鳴が渦巻いたが、
今日は妙にシーンとしていた。堀田がけっして人気がなかったわけではなく、彼女の存在が新生全女にとってど
んなに大きなものであったかは客も知っている。のんきな私は、一線を退いてもガレージマッチで見せる過激な
サービス精神や、全女を思う気持ちなどから堀田は最後まで全女とともにあると思い込んでいた。「全女を守る
!」と言った豊田がGAEAに去ってしまったように、堀田までGAEAに行ってしまうの?という疑いと、もう、その
ことを批難する心になれない今の状況が、よけいに悲しい。

堀田に憧れて全女に入った藤井の、今日の試合にセコンドとしてついていたこと、「歌の時間」がいつのまにか
消えていたことの意味に、この時になって初めて気がつく。気がついたときにはもう堀田はいなかった。
  
 第8試合 オールパシフィック選手権 60分1本勝負
 納見佳容(王者)○(25分18秒 フィッシャーマンズバスター→片エビ固め)
                      VS 下田美馬<猛武闘賊>(挑戦者)×
 納見佳容が2度目の防衛に成功

もともとは休憩明けに予定されていたこの試合がセミに変更になった時点で、白いベルトを持つ納見は、堀田の
退団と、この試合の重要性を悟ったはず。絶対に勝たねばならない。ミホカヨ時代にさんざんいたぶられたラス
カチョの下田の胸に、ここではっきり自分が強くなったことを刻印しなければならない。互いに、よく似たスタ
イルのプロレスをするふたり。強くも上手くもないのに、驚異的に打たれ強いところをみせて客を感動させると
ころまで似ている。納見は新しいガウンに、茶とピンクのコスチューム。ピンクを使うところまで二人はいっし
ょだ。
試合では下田が、大きな会場であればあるほどやる“できるだけ遠くまで相手を引きずり回していって客の目の
前で痛めつける”戦法に出る。近くにいた客は面白かっただろう。納見はさんざん引きずりまわされ、硬い通路
でぶっ倒され、すぐにヘロヘロの流血姿になってしまう。そのヘロヘロの納見をリング上でもいたぶり続ける下
田。納見も必死に返していく。いつもは丸め込む隙をうかがっている納見が今日は雪崩式フランケンなどを何度
もかける。(下手なのでヒヤヒヤしっぱなし)とにかく打たれ強さで魅せる二人の試合が長くなるのは当然。ほ
とんど負けていた、としか言いようのない納見が脇澤譲りのフィッシャーマンズバスターでベルト防衛。トロフ
ィー授与の時も、意識が朦朧としているのがはっきりわかるほど、体が揺れている納見。勝って喜び爆発、とい
う雰囲気からは程遠い。


 第9試合 WWWA世界シングル選手権 60分1本勝負
 中西百重(王者)×(21分47秒 APクロス→片エビ固め)VS 浜田文子<新間事務所>(挑戦者)○
 中西百重が3度目の防衛に失敗、浜田文子<新間事務所>が第55代王者に

我が家では「陰気なメキシコ娘」(笑)と呼ばれている浜田が、父・グランを伴って登場。
どんなビッグマッチの時でも、「いつも通りの試合ができたらいい」「いい試合がしたい」など面白みのない受
け答えしかしない浜田。今回も試合前から「夢の対決」とまわりが煽っても顔色ひとつ変えない。中西が「実家
からビデオを送ってもらって研究してる」と言ってるのに対しても、浜田は「うーん、ビデオもあんまり見たこ
とないねー、本番ぶっつけです」(そりゃ、ぶっつけ本番)って、おいおい、これじゃどっちが挑戦者なんだか
わかんないよ?(苦笑)という展開だった。アルシオンやGAEAの大会で見た浜田は、動きは美しいけれど、強さ
や凄みを感じることはなかったので、今日は当然中西が勝ち、問題なのは面白い試合ができるのかどうか、それ
だけだと思っていた。
ところが、入場してくる中西を見てイヤ〜な予感。白いガウンの下の新しいコスチュームは今まで中西が身につ
けたことのない黒だった。元気いっぱいのゼブラ柄で巻いたタッグのベルト、輝くような真っ白なコスチューム
姿で初防衛した赤いベルト、、、いままでずっと身につけてきたカラーがあるのに、よりによってどうして今日、
この喪服を連想させる似合いもしない黒を身にまとってくるのか?
イヤな予感は当って、試合は浜田のものであることが徐々にわかってくる。中西の得意な動きがいつものように
出ない。反対に浜田の方は、モモラッチを軽く封じてしまうような力の強いところも充分に見せつけたうえで、
棒立ちの中西にスピンキックを何発も何発も連続で見舞ったり、華麗に飛んでみせたり、一時も中西を休ませな
い。途中から「これは浜田の勝ちだ」と確信する。今の全女にとって赤いベルトの流失がどれだけ痛いことか、
痛いんだろう、痛いに決まってる、、、でも、もうどうでもいいや!どう見たって今日は浜田のほうが強いんだ
から!持ってけ赤いベルト〜!ってなもんである(もうヤケクソ)。浜田は今まで見たなかで一番すばらしい試
合をしたと思う。結果は思っていたものとは違っていたけれど、心配していた「花プロレス」ではなかった、と
いうところが皮肉だ。中西の負けは決まっていたのかもしれない。白いベルト戦の時でさえ、前川の蹴りを受け
ながら60分フルに闘えた中西にしてはあまりにも簡単に負けた気がするもの。しかし、今日の浜田の勝ちには
説得力があったから、これ以上は言ってもしかたない。試合には満足したからよしとしよう。
ただ、会社が、大阪のビッグマッチに浜田を呼ぶためにベルトをあえて流出させ、リターンマッチを組む算段を
しているのだとしたら、あの黒いコスチュームは中西の精一杯の気持の表現だったのではないか。しかし、、、
試合後「悔しいです!」「もういちどやらせて下さい!」としぼり出すように叫んだ中西に対しての浜田の返答
は、「全女にあがるのはこれが、最初で最後。挑戦したかったら、海外まで追いかけてくればいいこと」という
見事なまでにクールなものだった、、、。

これじゃまるで、全女終焉記念大会ではないか。

その時、バックステージで高橋が引退をほのめかせ、泣き続けていた選手がいた、ということなど客席にいた私
は知らなかった。それでも「何かが終っていく」哀しみのようなものがアリーナに濃く垂れこめてきたのを感じ
て、振り払うようにして会場を出た。




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