骨を断たせて肉を斬るのがプロレスである
■団体:新日本
■日時:2003年5月2日
■会場:東京ドーム
■書き手:愚傾(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

 いやはや「今年はNOAH”だけ”を追っかける」と年頭に宣言したにも関わらず、今年一発目の観戦記(速報版を除く)が新日本のモノになるとは誰が予想したでしょうか。まぁ既に予想もされないくらいに「観戦記書き」としての愚傾は存在意義を無くしてるのかもしれませんが。それにしても皆様お久しぶりでございます。死亡説も流れましたが(2ちゃんのメモ8スレあたりで)、愚傾はなんとか生きてます。

 当日、ドーム前で待ち合わせしていた友人からの電話で目が覚めたのが試合開始30分前の午後四時半。自分の家から東京ドームまで、どんなに早くても一時間ちょい。この時点で遅刻確定。しかしまだ眠かったので「最悪でも藤田vs中西に間に合えばいいか」と再び床につく。二度寝から覚めた一時間後、重い腰をあげ、ようやくドームへと向かう。

 先にドーム入りした友人からメールが届く。第三試合のジュニアタッグ終了後、丸藤と鼓太郎が獣神に挑発されたとか。丸藤を他団体(特に新日本)と絡めるのは時期尚早…というか今こそNOAH内部で熟成させるべきかと思うが、どうだろう。

 VTマッチが始まる前、猪木の挨拶が終了した頃ドームに着く。不愉快極まりない「ダー!」を聞かされずに済んだことはラッキーだ。というわけで第四試合から雑感を。

▼第4試合 ヴァーリトゥードマッチ 5分3R
 ○LYOTO(3R判定 3−0)謙吾×

 前日の夜から何も食べていなかったため、ここで栄養補給。ハンプティーズのバーガーを久しぶりに食べたが、美味かった。そういう意味では、この試合が一瞬たりとも目を離せないような展開では無かったことは幸いだったと言えよう。試合が面白いとハンバーガーの味もわからんからね。

 しかし3R終了前、自分の後ろに座ってた客が「こりゃあ判定だな。レースとかTバックとか。あ、そりゃパンティーか」という豪快なギャグをカマしてくれたおかげでハンバーガーの余韻が全て吹き飛んでしまった。

▼第5試合 ヴァーリトゥードマッチ 5分3R
 ×ドルゴルスレン・スミヤバザル(1R3分11秒 TKO※左肘脱臼によるレフリーストップ)高阪剛○

 後ろの席のパンティー兄ちゃんが次はどんなダジャレを飛ばしてくることかと心配してるうちにアクシデントで試合終了。スミヤバザルの価値にはさして傷がつかなかったと思うが、あとは怪我が厄介なことにならないことを祈るのみ。ヒジとか肩は癖になるからねぇ。

▼第6試合 ヴァーリトゥードマッチ 5分3R
 ○中邑真輔(2R3分12秒 ギロチンチョーク)ヤン"ザ・ジャイアント"ノルキヤ×

 前二試合が消化不良だったぶん、場内はそこそこの盛り上がりに。中邑は前二試合の四選手に感謝するように。
 ところで、遠目で確認しきれなかったのだが、インターバル中に中邑の両腕を持って上下にブルンブルンさせる例のアレをやってたのは、やっぱり阿部兄?

▼第7試合 ヴァーリトゥードマッチ 5分3R
 ○ジョシュ・バーネット(1R3分5秒 TKO)ジミー・アンブリッツ×

 試合前のVTRではバーネットがまったくといっていいほどクローズアップされなかったことから「まさかアンブリッツをプッシュさせるのか?」と思ったものの、素人目にもわかるほどの技量差でバーネットが完勝。バーネット、売り出し方によっては新日本を根底から変えうるほどの逸材だと自分は思うんだが。

▼第8試合 ヴァーリトゥードマッチ 5分3R
 ×中西学(3R1分5秒 TKO)藤田和之○

 必見とまでは言わないまでも、せっかく金払ったんだから見とかなきゃ損だなくらいに思っていたこの試合。藤田の存在感に恐れをなしたか、練習すらしたことないであろうローキックに活路を見出そうとするあたりも含めて、自分の中では中西は合格点。ヘタにプロレス技でも出して玉砕されようものなら完全に見限るところだったが。

 ここですべてのプロレスラーに言いたい。「観客論、興行論に逃げるな。ガチンコやるならガチンコと真摯に向き合ってくれ。」
 W−1を始めとした格闘家のインチキプロレスに嫌悪感を抱くなら、自分らもガチンコやるときゃガチンコの流儀に合わせるべきだ。

 ようは、見飽きてるんだよな。プロレスラーがプロレスラーとして散っていく姿というものを。ドン・フライやボブ・サップに玉砕した高山だって、次にまた玉砕したら皆飽きるべ。とりあえず自分はもうお腹いっぱい。アマチュアっぽくてもいい。「負けたくない」という心意気を見せてくれ。

 そういう意味では、この日の中西はプロレスラーらしかった。「負けたくない」というよりは「負けるのを恐れていたた」ように見受けられたが、それも自身がいままでやってきた「プロレス」に自信と誇りを持っているからこそであろう。

 ところで、自分はこの試合「3R判定で藤田」を予想してたのだが、試合前の「バカが染つるので早く終わらせる」という藤田の発言から、逆説的に「3Rまで持たせるぞ」という藤田なりの「仕事宣言」と読んだわけだが、これは考えすぎだろうか?

▼第9試合 シングルマッチ 30分1本勝負
 ○エンセン井上(6分33秒 マウントパンチ→失神KO)村上和成×

 ノアヲタ宣言をしておきながらも、唯一、他団体で動向が気になってしょうがない存在というのがZERO−ONEのLowKiと、魔界倶楽部の星野総裁。その星野総裁が活躍する場がまったく無かったのがちょこっとアレだが、それ以上に試合展開そのものが大いに不満。

 村上奇襲→エンセン場外で反撃→村上流血→エンセンがタコ殴り→村上反撃→エンセンさらに反撃…というところまではいいが、何故ここで試合が終わる? ここからさらに村上大反撃! と続くべきじゃないか。なにかアクシデントでもあったか? エンセンのパンチがマジで入っちゃったとか。

 ともかく、新日本VT部隊のコーチ役として以外にエンセンを招きいれた理由がわからない。どうせならコーチ役としてだけじゃなく選手としても使おうってことか? 長い目で見ても短期的に見ても得策とはどうしても思えないが。

▼ダブルメインイベント GHCヘビー級選手権試合 時間無制限1本勝負
 ○小橋建太(28分27秒 豪腕ラリアット2連発→体固め)蝶野正洋×
   *王者、小橋が二度目の防衛

 自分の後ろに座っていたパンティー兄ちゃんもNOAHのファンであるらしく、エンセンが退場するあたりから小橋コールを盛んに送る。つられて自分もノドが枯れんばかりの勢いで小橋コールを張り上げる。この日のチケット代5000円は、この試合のためだけに払ったといっていい。

「ミスター・プロレス決定戦」と銘打たれたこの試合。結論から言えば、この日の二人はその命題通りの試合をやってのけたとは言いがたい。むしろ、この試合は「どちらがミスター・プロレスかを決める闘い」ではなく「二人がミスター・プロレスであることを証明する闘い」であったのではないか。そして、小橋は、蝶野は、それぞれがミスター・プロレスであることを体を張って証明してみせた。

 しかし、自分は思う。

 蝶野は「この試合がVT路線への回答だ」と言う。確かに、プロレスの持つ無限の可能性というものを示したという点で、その試みは一応の成功を果たしたと言っていいだろう。

 だが、果たしてVT路線への、ひいてはアントニオ猪木という神に対しての、百点満点の回答であったと言えるだろうか? 自分はそうは思えない。

 片足を引きずり、VT用にスプリングを効かせなかったであろうマットに頭から何度も落とされ、セコンドが投げ込もうとするタオルを拒否してまでも立ち上がった蝶野は確かに凄かった。プロレスの凄みというものを見せてくれた。小橋に自らの骨を断たせることで猪木の肉を斬ることには確かに成功した。

 しかし、相手は外の人間じゃないか。猪木に対して胸を張るのなら、身内を相手とした上でこういう試合をしなければならないのではないのか? それができないからこそ、猪木はVTという劇薬を投入したのではないのか?(ついでに言えば、仮にこの試合が身内同士のモノだったとしても、アタマからケツまでどっぷり四天王プロレスだったこの試合を、猪木はNOと言うのではないか。)

 今後も、猪木と蝶野のシュートなイデオロギー対決はまだまだ続く。今回の対決では蝶野がとった。が、次の機会でまた外部の人間を頼ったところで、猪木という百戦錬磨のツワモノにダメージは与えられまい。というか、小橋という最後の切り札を使ってしまった以上、外部の人間に頼る術は、既にもう無い。

 ファーストラウンドは10−9で蝶野。第二ラウンドはどうなるか。蝶野は、猪木は、いったいどうでるか。

 というようなことを考えてるうちに…

▼ダブルメインイベント IWGPヘビー級&NWFヘビー級選手権試合 60分1本勝負
 ×永田裕志(18分17秒 エベレストジャーマン→片エビ固め)高山善廣○

 メインの試合が終わってしまった(笑)。まぁあれこれ思考することを中断させるほどの試合ではなかった、ということで。それにしても、ベルトを巻いてからの高山の試合というのは本当に面白くない。

 戦前の予想では、順番的にもこれまでの伏線からいっても、また今後のことを考えても高山の勝ちなのだが、いくらなんでも中西(勝てるとはフロントも思っていなかったはず)、蝶野に続いて永田も撃沈という、TOP3が総崩れなんていう無茶なことはさすがにしないだろうと踏んで永田を推したんだが、自分の読みはまだまだ甘かった。新間相談役の「IWGP封印宣言」というフライング気味の隠し玉も含めて、新日本という団体は良くも悪くもアナーキーである。ここでようやく、蝶野と猪木のイデオロギー闘争についての思考が頭から離れた。

▼総括

 さて、他に類を見ないプロレスとVTの二本立て興行。結論からいえば、「VTはつまらない、プロレスは面白い」という見方が、この日ドームに集まった観客の多くが抱いた感想だと思われるが、自分はそういう考えには至らない。二本立て興行、面白いじゃん? プロレス部門とVT部門で、それぞれがお互いに凌ぎを削っていきゃいいじゃん、というのが自分の意見。

 プロレス派にしてみれば、今回はたまたま「プロレスの勝利」ということになったけども(てゆーかNOAHに感謝しろよ>新日派プロレスファン)、次はどうなるかわからない。藤田が、中邑が、はたまた猪木の気まぐれでガチンコをやらされた新日レスラーがとてつもないガチンコ名勝負を演じる可能性だって無いとも限らない。

 それに、興行的な成果が見えにくくても、いまいち芽の出ないレスラーや落ち目のレスラーに対して「おまえ、チンタラやってると次のドームでガチンコやらせるぞ?」という、ある種の脅しみたいなモノとしても、VT部門は機能するのではないか?

 真剣勝負原理主義の「ガチバカ」も見てて見苦しいが、ワーク原理主義の「プロバカ」というのも、同じプロレス派としてみっともなく思う。なにも最初の一回で結論を急ぐこたない。長い目で見ようじゃないの。ていうか、猪木と蝶野のイデオロギー闘争は見てて単純に面白い。

 なにはともあれ、今回は蝶野と小橋に乾杯しよう。




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