HHHに感謝
■団体:WWE
■日時:2003年1月25日
■会場:代々木第一体育館
■書き手:リー監督(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

 WWEの2日目。代々木第一体育館。

 時は18時ちょうど。ガンズのウェルカム・トゥ・ジャングルで幕開け。ちなみに終わったのが21時45分。昨夜もそうだったらしい。長いのはどうかと思うが、逆に考えると、遅くに入ってもメインまではまだまだ大丈夫、という安心感がある。そういう習慣なのだろうか。

 客が選手の動きに一々反応している。これは幸福なことか不幸なことか。まだ、WWEに関しては日本の客が熟成されていない。確かに会場は盛り上がるし、テレビのヒーローたちが現実に登場するのだから、その気持ちもよく判る。しかし、よく考えてもみたまえ。彼らはビジネスで日本に来ているんだぜ。あまり甘やかすと、どうなることか。今度はさらに安いギャラのメンツが集まるかもよ。

 残念ながら場内ビジョンがなかった。照明は美しかったが、それほど凝ってはいなかった。ビックリしたのは花火ぐらいか。思っていたより金をかけないツアーなのだ。満員。入場者数一万三千人(日本野鳥の会による非公式データ)。

 ハウス・ショーとして考えると、ストーリーも何もない。そもそも英語で展開するわけにもいかないので、そういう意味での限界はある。さらに金もかけていない。なのに、みんな幸せそうに笑みを浮かべて観戦している。なぜだ。

 テレビのヒーローたちを現実に眺められること以外の「何か」がそこにあるのかも。

 例えば、自ずと声を出しやすい、その環境。ひねったマニア向けのアングルでは望めない、ストレートな反応を得られやすい展開。確かに選手の動きだけなら日本のプロレスはWWEより上だろう。しかし、それだけではビジネスにならない。

 入念なキャラ設定と、それを浸透させるメディア(有料テレビやケーブルテレビ)の大切さを再認識。ハウスショーの意義は、マーケティング・リサーチなのだ。現場で返ってくる直接的な声。肝心なのはマニアの声を捨てて、「どういう動きや展開が会場で受けるのか」をしっかり見極め、その中で特に繰り返しに耐え得るものをピックアップし、テレビ用に熟成していく。

 そういうビジネスとして当たり前のことを可能にする、ある程度の経済的規模。WWEの方法が絶対的に正しいのではないのだが、日本のプロレスが学ぶことは多い。スポーツ・エンターテイメントを成功させるコツは、「難しいことを表に出さない」ことだろう。あるいは「表面上はバカに徹する」ことだろう。私たちはエンタテイメントに複雑な展開を望んでいない。複雑なのが大好きで、それをしたり顔で喋っているのはマニアだけなのだ。そして、マニアだけを相手にしているとどうなるかは、今のプロレス・格闘技界の状況が証明しているだろう。どの団体もよく踏ん張っていると思う。でも、今のままでいいのだろうか。

 
 
 第1試合はぶっ飛ばして、第2試合。主役はステイシー。足が長い。羨ましい。私より背が高い。んー満足。欲情しないけど「いいもの観せてもらいました」って感じ。

 第3試合と第4試合もぶっ飛ばして、第5試合。元人造人間トリッシュをナマで観ることが出来て大満足。もう死んでもいい。トリッシュが虐められている時の表情は一部のマニア向き。彼女は自分の努力で捨てられずに生き残った。偉い。

 第6試合はBPP(スコット・リクスタイナー)の登場。対するクリスチャンは実にじっくりと逃げ回っている。素晴らしい。私の隣に座っている某「高田道場嫌いで有名な人」は、大層喜んでいた。うんうん、BPPが出てくれてよかったね。

 第7試合はケインとバティスタ。ケインがこれほど動く選手とは知らなかった。

 第8試合。ダッドリーボーイズ。ぐははははははは。ババに対する声援が圧倒的。試合はリーガル組の勝ちだが、We want tables !! という客の声に応える展開(もちろん事前ブック)で机を壊す。犠牲者はランス。水戸黄門的予定調和は、やはり快楽である。

 セミ。ジェリコ対RVD。まるで昔の全日本でやっているジュニアクラスの外人同士の試合。しかも相手の技の裏の取り合い。こういうのは、日本人の方が上手いのだけど。日本の客向け過ぎるという意見もあるだろうが、これはこれで素晴らしいことだ。私は純粋に楽しんだ。面白かった。やろうと思えば出来るんだぜ、という主張が見え隠れする。考えてみれば2人とも日本でしっかり修行していたのだった。この日の試合としてはこれが一番。

 メインの前にステフ様のご挨拶。リングに上がらず通路の途中でのマイク。したがって、いつもの「ステフ様」ではなく、主催者代表としての、つまりマクマン家を代表してのお言葉である。「今年もう一度日本にやってきてガッポリ金儲けするわよ!」と私には聞こえた。

 メインはタジリ対HHH。展開としてはHHHの圧倒的な攻勢なのだが、なんとHHHはしっかりとタジリの技を受けまくる。毒霧は流石に無理だけど、「ニッポン、チャチャチャ」という観衆の声の中、日本代表選手が繰り出すほとんどの技は受けた。偉い。全くありがたい話である。HHHとはそういう選手なのだ。他のギャラの高い選手はどうでもいいけど、HHHはまた観たい。ありがとう、HHH。

 というのはマニアックな悪しき感想だな。

 一般向きに言い換えれば、「万年大関」でしかないにせよ、王者であるHHHが格下のタジリを受け止めてそれなりに地元のタジリを丁重に扱ったということ。これでみんなが喜ぶ。これと決めたら、それを徹底することは、本当に大事なことだと思う。プロレスは素晴らしい。




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