11/8大田区体育館みちのくプロレス10周年記念大会「謝謝」観戦記
■団体:みちのく
■日時:2002年11月8日
■会場:大田区体育館
■書き手:ダイス(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)
10年前、ユニバーサルの後楽園大会を見た。テリーボーイ、TAKAみちのく、獅龍、米河彰弘、モンゴリアン勇牙。デビューしたばかりの彼らの試合を見た俺は、ガラガラの客席で静かに怒っていた。「こんな学プロもどき、なんで金払って見なきゃならねえのか!」と。10年前はカタかったなあ、俺。

あれから10年。平日18時の大田区体育館という厳しい条件の中、フルハウスとは言わないが、たくさんの人がその10年を見に来ていた。会場では現在から過去に向かってのみちのくの歴史を音声で流している。今年のタッグリーグ、鉄人リーグから始まって、クレイジーMAXの上陸、大仁田との電流爆破、スーパーJカップ。いいことばかりじゃない。サスケの絶望的な負傷も大阪立ち上げの記者会見も、すべてを包み隠さずに流している。
一夜復帰の篠塚リングアナの来場が告げられ、試合が始まった。

第1試合 湯浅和也 vs 星川尚弘
星川はもちろん「ハイティーン・ブギ」で入場。曲がストップしても歌い続けるファンがいるのはいつものことだけど、この会場だとよく響く。ロープをあげる山笠の姿が星川の今を感じさせる。
星川、今日は「パチーン!」という高く乾いた音は控えめにして、肉と骨がきしむ音を響かせる。湯浅は口を切ったか、血塗れの顔で立ち向かう。しかし、星川がなにかを伝えるようにたたき潰す。
○ 星川 (9分35秒 逆エビ固め) 湯浅×

第2試合 グラン浜田&HANZO&西田秀樹 vs 折原昌夫&石井智宏&マッチョ☆パンプ
本来MEN’Sテイオーが出るはずだったのだが、右肘負傷ということで代打HANZO。
FECの奇襲から始まって、おなじみムーブをテンポよく出す。ゴザに座って場外戦に巻き込まれながら見たい試合。もちろん土足は厳禁だ。
○ 浜田(9分1秒 浜ちゃんカッター〜体固め)パンプ×

第3試合 原人コントラ原人 つぼ原人 vs ヨネ原人
負けた方は山へ帰らねばならない過酷なルールで、堅い絆で結ばれた?2原人が向き合う。客席の方はゲラゲラ笑いながら呑気に見てるけどね。
リングを飛び出した二人は2階席までやってきてみんなの笑顔の中戦い続ける。しかし、テッドの「エイティーン!」の絶叫を聞いたあたりで我に返り、リングへ向かってダッシュ。もちろん、結果は
つぼ(4分11秒 両者リングアウト)ヨネ
なわけだが、完全決着ルールゆえ、ケリをつけねばならない。サスケ、人生を交えた協議の末「ジャンケン」で決着をつけることになった。ヨネ、山に帰っても元気でな。
○ つぼ(0分01秒 ジャンケン)ヨネ×
しかし、協議中に客席から「ジャンケンで決めろ!」とかいう野次が飛んだので
○野次った客 みちプロ× という感じではある。

第4試合 タイガーマスク&ヒート vs 金本浩二&外道
当初第4試合に出る予定だったハヤシライスマンが、飛行機の遅れで会場に向かっている途中ということで、試合順変更。でも新日でも普通にこのあたりで組まれてそうなカードだな。
ヒートは初見だけど、蛍光色だらけのコスチュームが安い。プロテクターを取ると、タンクトップ型のコスチュームがまた安い。ナルシスティックに紙テープを浴びる金本のゴージャス感と較べるとますます安い。早く稔に戻したれや、新日。
外道がどんだけ職人ムーブをやって会場をうならせても、金本が軽くキメポーズを取るだけでそれ以上の歓声を集めるのを見てしまうと、ルックスって大事だなと思う。だから早く稔に戻したれや、新日。
どーしてもマスクマンが必要なら永田にでもかぶらせろや、新日。
○ タイガー(9分16秒 猛虎原爆固め)外道×

第5試合 CIMA&SUWA&ドンフジイwithTARU vs カレーマン&ドラゴン・キッド&タイガーマスク
当初出場予定のジョディ・フラッシュがケガのため代打キッド、さらにハヤシライスマン間に合わずで代打タイガーと、普段見れない選手を見損ねて残念だったのだが、最近の闘龍門ではなかなか見られないオリジナルクレイジー。入場テーマが「Perfect!」、CIMAゴーグル付き、そして本部席のゴングを奪い取ってのクレイジーファッキン!年甲斐もなく「シーマ!」と絶叫してしまった。
今や、いろんな意味で闘龍門の方がみちのくよりも上の団体だと思う。それでも日本逆上陸を果たしたみちのくプロレスという団体への思いがC−MAXの3人からあふれている。
最近はイタコネ相手に妙に殺伐として、どこか縛られたような戦いばかり見せられていたが、躍動感のみなぎる悪ガキなファイトのCIMA。久々な感のあるキッドをまさしくワイヤー・アクションのごとく蹴り飛ばすSUWAのジョン・ウー。スーパーマイペースのフジイさん。キッド、タイガー、カレーマンも惜しみなく場外弾をぶっ飛ばす。理屈はいらない。すれっからしのマニアから、一見の女の子まで誰もが歓声をあげるプロレス。プロレスについて考えることは楽しいけど、何も考えずに楽しめるプロレスはもっと楽しい。
コーナーのカレーマンにTARUさんの投げた椅子がジャストミートすると、CIMAが久々のビーナスからアイコノクラズム、そして膝の手術以来(本当はもう少し前から)ずっと封印していたマッドスプラッシュ!完全無欠の3カウントが入ると満員の観客と共に我を忘れて絶叫していた。
○ CIMA(11分34秒 マッドスプラッシュ〜片エビ固め)カレーマン×

セミファイナル ショー・フナキ vs 日高郁人
SmackDown#1アナウンサーが、極東のろくに照明もセットされてない会場に帰ってきた。入場ゲートはお祭り騒ぎだ。
リング上にはほんの4日前のWWEでのタッグタイトルマッチを負傷欠場した愛弟子日高が待っている。「これって、みちのくじゃなくてバトなんじゃねえの」という無粋なツッコミも頭に浮かぶが、それはひとまず置いといて。
篠塚さんのマイクを奪い取って「アイアム、スマックダウン、ナンバーワンアナウンサー!」と、カタカナ英語でコールするスーパースターの帰還を祝って、本当にたくさんの青と白の紙テープが降り注ぐ。ここには花火もスクリーンもないけど、あちらには紙テープはないもんな。
C−MAXのような派手な動きはないけれど、それでもリング上から目が離せないのは、WWEでの生存競争を生き抜いてる力の証なんだろうな。
○ 船木(6分59秒 グラップラー・フェイスロック)日高×

メインイベント ザ・グレート・サスケ&新崎人生&ディック東郷 vs TAKAみちのく&カズ・ハヤシ&愚乱・浪花
「かに道楽」の入場テーマにジェット風船が飛ぶ。10年たった。なんにもできないように見えた素人同然の小僧達が、メジャーと言われる団体に普通にあがり、WCWやWWFで腕をみがいて、みんなここへ帰ってきた。一人づつ入場テーマが流れて、それぞれの姿に、それぞれの10年を思い出す。最後にサスケがオーバーマスクに三度笠で入場して来た。いろんなことがあった彼らの10年、プロレスの10年、ついでに自分の10年も思い出す。
序盤は、顔合わせの豪華さほどにはいい試合にはならなかった。とくにTAKA組は連携がガタガタで、一つ一つの技には声があがるものの、リズム感に欠けていた。だけど10年の積み重ねが空間をつくっていく。客の優しさに頼った試合と言うと悪口になりそうだけど、そういうことじゃない。試合は選手だけで作るものじゃない、ここに集まった観客といっしょに作るものだということがよくわかる。興奮とか熱狂とかとは少し違う、温かな気持ちが会場を満たしていく。
気づくと今日試合に出た選手達、いつのまにか会場に着いてたハヤシライスマンや、負傷欠場のテイオーも含めて、ヒールもベビーフェイスもなく、みんなが「謝謝」と書かれたTシャツを着てリングを囲んでいる。
リング上の6人のリズムも噛み合いだし、何度も何度も歓声が沸き上がる。しかし、そのときアクシデントが起こる。サスケが浪花の技の受け身をとりそこね、観客全員が悲鳴をあげるような危険な落ち方をして、そのままリング下に転がり落ちる。騒然とした空気の中試合は続く。おぼつかない足取りでリングに戻ったサスケはそれでも技を繰り出し、飛ぶ。
どんなトラブルがあっても、どんなケガをしてもサスケはリングにあがって、そして飛んできた。そうやって10年を積み重ねてきた。この日この時に、ただの「10周年おめでとう」で終わらない試合になるのも、サスケ言うところの「選ばれし者の天命」ってことかもしれないと思った。
○ サスケ(21分45秒 サンダーファイヤーパワーボム〜エビ固め)TAKA×

リングに上がった6人が交互にマイクを取る。みんな笑顔だ。6番目に人生がマイクを取る。リング上の選手達に、リング外で奔走するスタッフ達に、今日見に来たお客さん達に、今日見に来れなかったお客さん達に、いつもチームを組んでる選手達に、いつも敵対している選手達に、 一度この地を離れながらも今日集まってきた選手達に、そして今日来れなかった選手達に感謝の言葉を述べる。無口なキャラであるはずの人生による、長い、だけど違和感のないストレートな感謝の言葉。
めでたしめでたしではすまされないことが色々あるんだろうなとも思う。だけど、今日、この日、この時だけはそんなことは関係ない。今この場に集まっている人たちが、幸せな気持ちであること。この瞬間、それより大事なことは存在しない。
「君たちがひとりでもいる限りみちのくプロレスは絶対につぶさない!」
信じているよ、その言葉。だから、プロレスが伝えられることのうち、最上級のものが今日この場にあったことを俺もなるべく多くの人に伝えたい。




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