北米のJapanese Puroresu オタク達の空間に蒸せる
■団体:レボルーションプロレス Revolution J ALIVE
■日時:2002年9月28日
■会場:カリフォルニア州ローランハイツ Frank &Sons
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

今回は、今までずーっと紹介したいと思っていたインディー団体について、やっと書くことが出来ます。その名も「レボシューションプロレス(http://www.revolutionpro.com/)」、略してレボプロ(と本当に英語で呼ばれています)。そのコムロテツヤ or SWS天龍チックな団体名から推測可能なように、極めて日本オタクな団体です。あ、去年ここがアルシオンの2選手を招聘したときに、日本の雑誌でも少し紹介されたようなので、覚えている方もいるかもしれませんね。ここは、あらゆる日本のVを取り寄せて見まくって、キャラを真似し、技を真似し、試合展開を真似して喜ぶ、マニアックなファンが行き過ぎて、プロレス団体をはじめちゃったとしか見えないような若者の集まり。レスラー達の体格も正直素人みたいです。平均体重も75-80Kgぐらいではないでしょうか。

と、こう書くと、日本の学生プロレスや、全米に何百とあるバックヤードレスリング(素人プロレス)団体を思い浮かべる方もいるでしょう。いや実際かなりそういうノリは強いんですが、試合レベルは決して低くありません。この団体が去年開催したジュニアヘビー級トーナメント「Revolution J」(当然、新日本のBest/Top of the Super Jrのパクリと思われます)は、去年の南カリフォルニアインディーのベスト興行の評判の呼び声も高い興行でした(ちなみに俺もその日、これを見るために会場の住所までドライブしたんですが、どこでやってるのか見つけることができずに帰って来てしまいました。観戦した友人の話によると、非常に分かりにくい場所で細々やっていたとのこと)。

このレボプロを代表する選手は、今は新団体EPICのレギュラーでもある、ハヤブサ風の覆面レスラーの「スーパードラゴン」。なんとも安易なリングネームですが、印象的な選手なんですよ。ぶっちゃけた話この人、ライガーと大谷とハヤブサを合わせたような試合をするというか、ただずまいやリングの歩き方、間の取り方、試合中の声の出し方まで含めて、全身に新日ジュニアイズムが漂っています。見方によっては、日本のジュニアプロレスの単なるパロディーとも言えるんですが、はっきり言って本家より本家らしいし、試合を見ていると、本家にはないようなオリジナルなムーブも加えてどこまでも進化してやろう、という姿勢が強く感じられます。去年俺は、このドラゴンと、UPW等で活躍する彼のライバルのB-Boyの試合を観てものすごく感激して、その一試合に異常に力を入れたレポートしたことがありました(http://www.kansenki.net/report/01/1103mpw_hine.html )。

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とにかく、そんなレボプロが今年も、他のインディーからのゲストも呼んで「Revolution J」を開催するというので、今度は見逃すまいと友人と観戦して来ました。会場は、なんか巨大なサブカル系マーケットが開かれている倉庫みたいな建物の中にあって、その一角を区切って作られていました。入場料はリングサイド一列目が$25(おみやげVつき)で、あとは$15。もっとも基本的に4列くらいしかイスが置かれていないので、どこでもリングサイドです。

当然$15払って中に入ってみると、隅っこで即席プロレスショップが開かれていて、本やフィギアやVなどが売っています。凄いのがVのラインナップのオタク度。新日や全日やノアはもちろん、女子、デスマッチ系インディーなども含めて最新の日本のVがズラリ(当然わるゐこコピー。テレビ放送の録画から、市販Vのダビングまで)。また、当然アメリカの各種インディーVも。各$10。俺は東で行われている各ROH(Ring of Honor - ロウキ、AJスタイルス、RED、エディ等最高のメンバーが出てる)ショーのVに強く惹かれ、買いかけましたが、ちょっと財布の具合を考えて思いとどまって、別の一角にあるもうひとつの即席ショップの方も見てみることにしました。そしたらこっちのほうはルチャ系Vが中心のラインナップで、こっちのほうが珍しいので、思わず古いマスカラスの映画(らしき)Vと、80年代のホーガンの「ロックンレスリング」というアニメを買ってしまいました。また、その隣には、なんと週プロやゴングのバックナンバーが売ってました。・・・友人「俺も持って来て売れば良かった・・・」

試合が始まる前から、こんな日本オタク濃度の強い空気にくらくらしていると、ふと耳に日本版グレートムタの入場曲が流れてきました。注意して聴いてみると、この会場で流されているBGMの多くは日本のレスラーの入場曲のようでした。ほんとうに、こういう空間が北米に存在するんですよ。

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さて、肝心の試合なんですが、一日に16選手が出場するトーナメントを一回戦から決勝まで全部やってしまおうという無茶な企画なので、全試合&全選手を紹介してたらキリがありません。だいたい、ほとんどの読者はこの大会の参加選手を誰も知らんでしょう。とりあえず出場メンバーの中で、露骨に日本テイストなキャラの選手を数人紹介することにします。

まずは「ディスコマシーン」。この人は闘龍門のマグナム東京の露骨なパクリレスラーで、同じような覆面をして、同じような踊りをしながら入って来ます。ま、それだけです。中身はディスコ・インフェルノを頼りなくしたような(80キロくらい?)若い白人です。

お次は「TARO」。この人はなんなのかというと、ウルトラマンタロウの覆面を被っていて、東京出身と紹介されています。でも入場曲が単なるハードロックで、あの「♪ウルトラの父がいる!」じゃないのが不思議です(ちなみに体重は60キロ台じゃないかな?) 

また、朝日新聞仮面(と俺が勝手に命名する)「ライジングサン」という人もいます(ちなみに「サン」は sun でなくて son だったりする)。祖先は熊本、と紹介されていて、実際マスク越しにうかがえる顔はかなり日本人ぽい。非常に元気のいい選手ですが、やっぱり60キロ台です。

また、UPWでも何回か見かけた好選手、スコット・ロストも参加していたんですが、この人はいつのまにか大仁田そっくりの雰囲気になってました(意図的なのかどうかは分からんけど)。大仁田の100倍くらい速くハードに動けますが。

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そんな感じの、パロディ感というかコスプレ感の強い面子の集まったトーナメントで、一番目立ってたのはやはりスーパードラゴンでした。EPICでヒールを経験しているせいもあって、以前に観たときよりさらに進化しているのが見えました。

一回戦では、身内のエクスカリバー相手に模範的なレボプロ流日本スタイルの試合(の短縮版かな)。序盤に寝技の攻防を少し見せて(見たことないようなオリジナルな関節もあり)、倒れている相手に強い打撃を入れては見栄を切ってリングを歩き回り、余裕と強さをアピールし(こういう時の雰囲気がライガーそっくり)。そして旧全日的な三沢エルボー&回転エルボーの打ち合い&かわし合い&ブロックし合いを見せて、最後は大技スポットを交えたカウント2.9プロレスに。オリジナルの必殺技、サイコドライバー(アルゼンチンから相手をまっ逆さま)と、スーパーナチュラルドライバー(コブラツイストボムの体勢からまっ逆さま。この危なさはちょっと見ないと分からない)を爆発させて勝利。

そして2回戦でドラゴンは、エル・ガリネロ・トレス(=ニワトリ仮面3号)を相手にヒールぶりを見せつけます。彼の(大谷・金本から影響されたと思われる)得意スポットなんですが「相手をコーナーに逆さ吊りにして、自らもロープに登って股間を踏み付けアピール。さらにそこからドロップキックで顔を攻撃」というパターンが見事にハマってました。ニワトリの必殺チキンウイングフェースロック(笑)を逃れた後は一方的な展開となり、グロッキーのニワトリに大技を炸裂させては、カウント2.9で無理やり頭を上げさせるというイジメ行為を繰り返し、最後はいきなりスモールパッケージホールド。カウント3が入った後、わざとらしく頭を抱えて突っ伏して(あたかも大熱戦を制したかのように)感激を表現するという、相手を小馬鹿にしたイヤミキャラを見せてくれました。これがまた見事にハマっている。

そして準決勝、ここではおそらく多くの観客が、宿命のライバルB-Boyが上がって来て、名勝負数え唄がまた見られると思っていたと思うんですが、驚くことにB-Boyは二回戦で、東のインディーから来たマイク・クワッケンブッシュに敗れてしまいました。このとき、アテが外れて動揺した観客達がすかさずブーイング。でも、(俺も知らなかったんですが)このクワッケンブッシュって人は、東部のインディーではすごく評価の高いベテラン選手だそうです。実際彼は、細身の体からいろんな見たことのないムーブを連続して出してくれる万能レスラーでした。あるマニアは、レボプロの観客達がクワッケンブッシュの勝利にブーイングしたことに対して「無知すぎる。このブックは正しい。全米レベルでインディーを追っている者なら、ここであの高名なクワッケンブッシュをB-BOYにジョブさせるほうが、よっぽどおかしいということが分かるはず」とカキコミしていました。いや、俺もインディーの世界をもっと勉強せんと(笑)。

とにかく、そのクワッケンブッシュ(ちなみにこの人、出店で自伝売ってました)とスーパードラゴンの準決勝。この試合も長くなりそうな雰囲気だったんですが、ドラゴンは、もうすでに十数試合見せられて(しかもどれも似たようなルチャレス* マッチ)疲れている観客のことも配慮したのか、10分過ぎに突如スパートして、大技を(フォールにいかずに)連発して畳みかけて、一気に決着を付けてみせました。ちょっとあっけない感じもしますが、ここまで3試合、全て違うパターンのフィニッシュを見せてくれていることは特筆に値します。それもすべて見事にハマっているし、「圧倒的な強さ」と「余裕」の表現力が非常に高い。ま、ドラゴンが標準的ジュニアの体格なのに対し、相手がみんな極度に貧弱=70kg前後だという特殊事情もありますが。

* Lucharesu。lucha libre と puroresuを組み合わせたスタイルのことを、インディーファン等がこう呼ぶことがあります。まあ反WWEのアルタナ系アイディンティティの表現ですかね。

そして決勝戦。もう一つのブロックから上がって来たのはハードヒッターのミスターエキサイトメント(このトーナメントで、唯一上半身裸で闘っていた選手。つまり、唯一客の鑑賞に耐える体を持っているということでしょう)。この決勝もよくシナリオの練れた試合でした。ストロングスタイル系のミスターエキサイトメントが、試合開始後いきなりデンジャラスな高速低空バックドロップ。これを食らったドラゴンは、後ろに一回転して、さらにもんどりうって場外に転げ落ちて、観客席に突っ込むと言う派手なセルを、見事に決めました。その後は、関節技を多く使うエキサイトメントに対抗して、サブミッション合戦を主軸に試合が進む。こないだのベノワvsアングルをちょっと彷佛させるような絞り合い。そして四天王風のハードな打撃戦が入り、最後はやはり、クライマックスにふさわしく渾身のカウント2.9プロレス。正直、マッチョ系のミスターエキサイトメントは非常に荒削りで、どうしてこんな穴の見える選手を決勝に持って来たのか疑問だったんですが、最後に関節技を多用し、力強いプロレスで盛り上げようと思ったら、彼が適役だったのでしょう。ドラゴンが見事に彼を引っ張って、場内大熱狂の中、最後は負けて見せました。やっぱ2年連続して優勝しちゃだめですよね。

ただ、この決勝戦が盛り上がったのは、単に二人のレスラーの努力のせいだけではありません。(これもおそらく日本のプロレスの影響だと思うんですが)レボプロの試合の多くでは、いつも各選手に二人(かそれ以上)のセコンドが付いて、激を飛ばしたり介入したりします。それだけではなく、このセコンド達は、敵を応援する観客とやり合ったり、試合の展開に応じて喜んだり悔しがったり、また試合の盛り上げ時に、観客に味方の選手へのコールを要請したり、マットをばんばん叩いて観客の足踏みならしを呼び込んだりして、見事に会場の雰囲気を操作します。つまりはノリ・・・じゃなくてDr. ナントカがこないだのコラム(http://www.kansenki.net/colum/02/0928colum_moat.html)で指摘していたところの

「舞台の上を現実として見て翻訳し、(舞台上を現実としてみない)観客と舞台の間に熱狂を繋ぐ」

ギリシア神話のコーラス隊の役目果たしているのです。ちなみにレボプロには、やはりDr. ナントカが指摘したような「妙に賢いふりをしたい」新日の辻アナのような連中もいます。試合中、なにかあるごとに重箱の隅を突つくように(ECW起原の)「Holy shit!!」や「You fucked up!!」コールを過剰に連発し、それよって自分たちがマニアなファンであるということを自己確認したくてしょうがないような観客連中です。いや、こういうコールは適度なタイミングと頻度で行われれば非常に楽しいんですけど、今回の興行では、単細胞にコールを連発するイタい連中が我々の真ん前にいました。あーうざかった。

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ま、それはそれとして、このジュニアトーナメントは(長かったけど)とても盛り上がった興行でした。最初にも書いたけど、この団体の選手達の試合を見てて思うのは、とにかく野心と向上心があるってことです。彼らからは、常に前より進化した試合をやりたい、メインストリームでは見れない試合をやりたい、誰もやったことのない試合をやりたいって姿勢がすごく感じ取れます。その点で、日本の大団体やWWEの試合からはほとんど感じられない爽快さを感じます。大団体の試合は、技術的に洗練されているかわりに、定番化しちゃってる面がでかいから。常に支配的な文化から距離を取り、でもそこから盗めるものは片っ端から盗んで新しいことを模索している彼らインディーの選手達の試合を見ると、俺の自分の本業で、同じようなことをやってみてーなーなんて刺激されちゃったりもします。

そして、日本で試合をすることが夢だというスーパードラゴンに関しては、もう日本のどこの団体でも通用する選手になっていると思います。個人的には彼は新日ジュニアのパロディーみたいなところがあるので、ゼロワンが合っていると思いますが(ちなみにスーパードラゴンは、こっちのインディーでロウキやスパンキーと非常にいい試合をしています)。ロウキもそうですが、日本に憧れて生まれた、日本より面白いプロレスが、日本に輸入されるというのはなかなか素敵な現象です。その結果、アルタナ系だった彼らが、いつの間にかメインストリームの風景になってしまっている、なんてこともあるかも知れんが。




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