三沢将軍、維新を許さず
■団体:NOAH
■日時:2002年9月23日
■会場:日本武道館
■書き手:愚傾(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

 試合開始時点ではおよそ八割の入りでしたかね。最終的には九割五分くらい入ってました。超満員を記録した前回、前々回の同会場での興行に比べると若干物足りなさを感じますけど、前回はプラチナチケットとなった小橋復帰戦、前々回が武道館初進出という記念碑的な興行であることを考えると、特に目新しいニュースがあるわけでもなく、純血興行(高山は外様っちゃぁ外様ですが)でこれだけ客席が埋まればヨシとすべきですかね。

 今回は入場ゲートも花道も一つに統一。節約したぶん、照明効果はこれまでよりも豪華になったような感じを受けました。

▼第一試合 百田光雄、○青柳政司(8分38秒 ジャンピング後ろ回し蹴り → 片エビ固め)永源遥、川畑輝鎮×

 今日はラッシャーさんが急遽欠場となったんですよ。それで代打で館長が出場することになったんですけど、満足に動けないお荷物が一人減ったせいでいつも以上に激しい試合になってました(といっても良くも悪くもロートルの試合であることには変わりませんが)。

 フィニッシュなんか凄かったですよ。館長の後ろ回し蹴りがキシンの顔面にバコンと入って、それでピンフォール。この顔ぶれにおける定番フィニッシュである百田式エビ固めに比べると説得力という点で天地の差がありましたもん。まさかラッシャーさん一人いないだけでここまで試合が締まるとは思いませんでした。

 つーことは、ですよ。長らく全日本/NOAH者の間で繰り広げられてた「ラッシャー必要/不要議論」というのは、ここにある程度の結論を見たんじゃないかなって。

「ラッシャー木村は引退しても構わない」

 だってそうじゃないですか。ラッシャーさんが引退するだけでヌルい試合が確実に一つ減るわけだし、試合後のマイクアピールが無くても特に違和感は覚えなかったので、「損した」とも感じない。地方でどれだけ動員力があるのかわかりませんが、少なくとも都内近郊での興行ではラッシャーさんがいなくても全然マイナスにならないわけですよ。それどころか「ラッシャー木村引退記念シリーズ」とか組めば、やりようによっては荒稼ぎできる。むしろいいことづくめじゃないすか。

 そろそろ誰かが言わなきゃいけないんじゃないですかね。でもまぁ言えないだろうなあ。手前だって、書いてるうちに物凄く罪悪感を覚えましたもん。

▼第二試合 ○KENTA(12分7秒 原爆固め)鈴木鼓太郎×

 鼓太郎は使える技が増えましたね。増えたというより「解禁された」といったほうが適切ですか。髪の色も地味な黒からアッシュに染めて洒落っけづいてたし。三沢の秘蔵っ子がようやくジュニア戦線に絡んできそうな予感がしますな。あの上背とバネは魅力的ですよ。NOAHの将来は明るいです。

 対するKENTAなんですけど、いまは自分の進む道を模索してる最中なんでしょうね。なにをやりたいのか全然わからない。金本浩二になりたいのか、田中稔になりたいのか、大谷晋二郎になりたいのか、ケンドー・カシンになりたいのか。

 二人とも練習熱心なのがよくわかる試合でした。あとはそこに感情を表現できるようになれば言うこと無しなんですが、それはもうちょい先の話かな。

▼第三試合 田上明、○泉田純、杉浦貴(18分57秒 イズミダクラッシャー → 片エビ固め)橋誠×、池田大輔、志賀賢太郎

 シガケンの体が一回り大きくなったような気がしました。欠場中にきちんとウェイトトレーニングをやってたんでしょうね。地道にマジメにコツコツと。

 以前、手前は「シガケンの最大の弱点はプロレス頭が致命的に無いこと」と書きましたが、もっと正確には「プロレスについて考えすぎちゃう」んでしょうね。一歩踏み出すべきタイミングで「これでいいのか?」って考えちゃう。だからなんでもかんでも後手にまわってしまう。技を出すときのリズムの悪さもそうだし、本来格下であるはずのダイスケにいつのまにかタッグにおけるリーダーシップを握られてしまう。

 そういうシガケンの弱点が如実に表れた試合でしたね。

 あ、そうそう。試合中、全然動かない田上に「たまにはカットに入ってくれよ!」という声が客席から飛んだのには笑いましたね。杉浦なんか「よくぞ言ってくれた!」と思ってたんじゃないかな。

 まぁその杉浦にしても、ダイスケのイナズマポーズを蹴りでカットした後、エプロンに戻ってから思い出したように人差し指をあげてたところなんか見ると「ダイスケの前でイナズマポーズをきめるっていう段取りを忘れた」というのがバレバレだったので、どっちもどっちですがね。

▼第四試合 ○小橋建太(11分47秒 剛腕ラリアート → 片エビ固め)モハメド・ヨネ×

 この試合の前に休憩時間が設けられたんですけど、仲田リングアナの「まもなく試合を再開します」というアナウンスが聴こえると、みんなサーッと席に戻っていきましたね。やっぱり小橋人気って凄いです。こと会場人気だけで言えば三沢も高山も秋山もかなわないんじゃないかな。

 前回の武道館大会の時もテーマ曲が聴こえないくらいの大歓声で迎えられたわけですけど、今回もそれに劣らないくらいのボルテージで迎えられてましたもん。いくら一年九ヶ月ぶりのシングルマッチだからって、この人気はちょっと異常ですよ。まぁ手前も大「小橋コール」を送ってた一人なんですが。NOAHに入団後、間違いなく最大のチャンスなはずのヨネへの声援が、この時点でまったく聞こえなかったのはある意味かわいそうでした。

 それでも、試合が始まってからは、その元気の良さで自分に声援を集めたのはたいしたもんでしたね。ヨネの立場からすれば、試合後に「よくやったぞ!」という声を集めることができれば「合格」じゃないですか。そういう意味では、ヨネはやっぱり素晴らしかった。終盤、もっと技を出す間隔を縮めてもいいかとも思いましたが、これは小橋の体調もあることなのでなんともいえないですね。メインを別格とすれば、今日のベストバウト。

▼第五試合 ×佐野巧真、小川良成(18分12秒 横入り式回転エビ固め)井上雅央○、本田多聞

 試合巧者三人が作るまったりとした心地よいリズムを多聞が一人でブチ壊してました。フィニッシュ前にカットに入るところでタイミングが二歩三歩遅れたばかりに、雅央が佐野を丸め込むというアップセットが台無しになってしまった。

 技術はあるのにいつまでたっても中堅から脱せないのは「華」が致命的に無いからだけではなくて、「運」そのものも悪いからなのかもしれませんね、雅央。

▼第六試合 IWGPジュニアタッグ選手権試合
 (選手権者)○金丸義信、菊地毅(14分33秒 垂直落下式ブレーンバスター → 片エビ固め)成瀬昌由×、エル・サムライ

 ついにNOAHのマットに木村健悟が登場! IWGPジュニアタッグ選手権を認定宣言!!

 まさかNOAHのリングで健悟を見れるとは思ってもみませんでした。バックステージで彰俊や館長と再会し維震軍時代の昔話に花を咲かせてたんじゃないかとか、もっと遡って永源と日プロ時代の昔話に花を咲かせてたんじゃないかとか、かと思えば「おまえには期待してたのにメガネスーパーなんかに行きやがってバカヤロウ」と佐野に対して凄んでたんじゃないかとか、そういうことを考えてるうちにもはやそれだけでお腹いっぱいになってしまって、試合どころじゃありませんでした。

▼セミファイナル GHCタッグ選手権試合
 (選手権者)森嶋猛、×力皇猛(22分47秒 スイクル・デス  → 片エビ固め)秋山準、斎藤彰俊○

 もはや多くの人が忘れてると思いますけど、もともとワイルドIIっていうのは彰俊がリーダーで、森嶋、力皇の「Wたけし」はその下だったんですよ(詳しくは昨年五月のディファ有明大会をご覧ください)。NOAHでは初の本格的トリオ編成チームということで期待してたんですけど、二週間後の横浜大会で彰俊が秋山と結託、そしてリーダーを失った森嶋と力皇は「ワイルドII」を始動した、と。

 とはいえ、その後にGHC王座を奪取した秋山がNOAHのエースとして君臨したため、彰俊は秋山軍スターネスの副将として地道な役回りを余儀なくされることとなり、しかも今年に入ってからはおよそ三ヶ月に渡る負傷欠場。その間にワイルドIIはタッグチームとして実績をつみかさね、ついにはタッグ王座を奪取したことで押しも押されぬNOAHの中心選手となったため、両者の関係は見事に逆転してたわけですよ。だからこの試合では「かつてのチームメイト」という背景は殆ど感じられませんでしたね。手前自身も試合が始まるまで忘れてましたもん。

 で、試合のほうなんですけど、面白かったですよ。秋山は力皇とやってるときが一番楽しそうですね。最後は彰俊が念願のタイトル初戴冠という予想できた結末でしたけど、ワイルドIIも一通り防衛を重ねたことで、ひとまずは次の路線を探せばいいと思いますし、とりあえずはシングル王者時代には未遂に終わった秋山の構造改革、つまりは底辺及び中堅どころの底上げ政策に期待です。

▼メインイベント GHCヘビー級選手権試合
 (選手権者)×高山善廣(23分50秒 エルボー → 片エビ固め)(挑戦者)三沢光晴○

 個人的には高山に勝って欲しかったですよ。前回の対戦では三沢が勝ってますしね。手前は確かに三沢ファン…というか三沢者ですけど、少なくとも今年中は高山をプッシュしてもいいんじゃないかな、と。でもまぁ、「三沢越え」というのはいまの高山をもってしても、まだ条件が揃ってないということなんですな。

 結果については納得してますよ。というか試合内容が素晴らしかっただけにケチのつけようが無いです。確かに王者・三沢というのは現在の流れからすると逆行しているような気もしますけど、永遠のライバル武藤敬司がますます円熟味を増してるのを見るにつれ、まだまだ三沢が老け込むのは早いかなとも最近考えましたし。

 全日本時代から川田や小橋の「天下獲り」をことごとく阻止してきた三沢の強さを改めて再確認できました。

 それにしてもアレだな。満足度が高い興行だと筆がイマイチ踊らず、ケチのつけやすい興行のほうが書いてて楽しく思えてしまうというのは手前の良くない癖ですね。




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