Next Big Thing!!
■団体:WWE UNFORGIVEN
■日時:2002年9月22日
■会場:カリフォルニア州ロサンジェルズ、ステイプルセンター
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

10アメさんが日本からまたまたアメプロを観に来られたので(ちなみにこの人、それ以外は観光も何もしない。飯を買って来てはホテルで寝てるだけ)、ロスで行われたWWEのPPVを一緒に生観戦しました。前回のサマースラムで大ホームランを打ったWWEですが、今回はカード的にも、ストーリーライン的にもちょっと弱いのは否めません。動員&視聴率の下降は続いているみたいだし、いろいろ問題起こしたし(後述)。そんなことで、正直あんま期待してなかったんですが・・・。ま、観戦記いってみましょう。正直あんま各試合の内容は細かく覚えてないので、ライブの雰囲気とか、観客の反応とか、そんなんを中心に書くことになると思います。

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PPV開始時刻とほぼ同時に会場入り。アリーナに入ったら、場内が暗くなっていて、音楽と同時に大スクリーンに今回のPPV用の開始クリップが流れている。席を探してたんでよく見てないんだけど、今回の二大世界タイトルマッチ(あとで説明するけど、またタイトルが二つになっちゃたんです)の歴史をたどっているよう。レイスやブリスコやベイダーやスティングやゴーバーの姿が、一瞬光っては消えてゆく。こうやって、映像と音で歴史を瞬時に祝福&消費してゆくスタイルっていいよなあ・・・とか考えてる暇もなく、続いて問答無用でものすごい音響の花火が連発で会場に響く。ダンダンダン・・・と一発ごとに音が体の芯と脳に響き、銃撃蜂の巣疑似体験をした感じ。やがてそれが止まると同時に、会場が明るくなり、「Can you dig it Suckaaaaa!!」の声が響き、しばらく前からベビーをやってるブッカーT入場。クリップ&花火で完全に出来上がった場内も爆発。

「なーんか今日はあんま面白くなさそうだよなあ」

とか思って入って来た俺、まったく心の準備が出来てなかったので、このオープニング演出の衝撃と、この場内の凄まじい盛り上がり方にショックを受けてボー然。そして、テレビ観戦ではなく、プロレス会場に直接身を置いていることの喜悦&快感が徐々に体に沸き上がり、「おーすげーよ、なにこれ、すげー、なんでー。」とへらへら笑いながらつぶやく。アホですね。だいたい、こんなクリップ→花火→入場っていう演出はPPVならいつでもやっていることで、単なる定番のオープニングに過ぎないんだけど。でも毎月やってるだけあって、磨かれた定番の威力は凄いのよ。

第一試合 アンアメリカンズ vs アメリカンズ。

ええと説明すると、アンアメリカンズってのは、ストーム、テスト、クリスチャン、リーガルの4人の非アメリカ人によるアンチアメリカなヒール軍団で、逆さまの星条旗を振っています。9/11以来の世間の風潮に反応してできたキャラ。対するアメリカンズってのは、別にそういうチーム名を持っているわけではなく、要するにアンアメリカンズに敵対してアメリカの強さを示しているベビーの人達のことを、俺が便宜的にそう呼んでいるだけです。今日のメンバーは、ブッカーT、ゴールドダスト、ケイン、ババ。要は8人とも他に役のない中堅レスラーです。。

前述の通りのオープニング演出の余勢で、とにかく入場時の盛り上がりの凄いこと凄いこと。前の席の人たちがひとりひとり入場するたびに立ち上がって騒ぐので、こっちも立たないと見えない。「USA」コールでテンションの高い客席に乗せられてか、試合もテンポ良く進む。後半には全員が一度ずつ、かわるがわる見せ場を持った挙げ句、ケインがチョークスラムでストームからピン。アメリカが勝ってめでだしめでたし。オープニングとしては合格点の試合でしょう。でもやっぱ俺はナショナリズムアングルは嫌い。正直この雰囲気では、恐くてアンアメリカンズに声援を送れない。

第二試合 ジェリコ vs フレアー。

この試合は特別なストーリーがあるわけでもなく、前回フレアーが勝ったからイーブンにしよう、としか見えないカード。でもなんにしても、俺はリングで動いているフレアーを生で見るのは、新日ドームでの藤波戦(調べてみたら11年前だよ)以来なので、それだけでちょっと嬉しいのだ。体型も動きもあんま変わってないし。フレアーが(たぶん全部ジェリコに一方的に指示しながら)一通り自分の見せ場を作って、それが終わった後で、ジェリコが「ライオンサルト着地失敗→ヒザを怪我→やっぱりウソだよーん」で、油断して後ろを向いてるフレアーを丸め込む。試合としてはちょっとダメですね。

第三試合 エディ vs エッジ。

この試合も特にストーリーのない、前回のPPVの再戦。前回エッジが勝ってるんだけど、俺の評価の中では「最高のレスラーなのにいつも負け役」のエディvs「凄い選手でもないのにいつも勝ち役」のエッジなので、エディが星を返してもらうにしても、クリーンな勝ち方はさせてもらえねーんだろーなーっていう試合。そう思ってたんだけど、なんかエディ、雪崩式ローリングクラッチパワーボム(って言えば分かるよね?)でクリーンに勝っちゃいました。嬉しいぞう。具体的な攻防はあんま覚えてないんだが(エディを本気で応援してたからか?)、ペースは速いのに、メリハリもあるという、非常に見ごたえのある試合でした。

しかしエディは人気あると言うか、会場のここそこらで、エディの超極端なメキシコ訛り英語を面白がって真似する声が聞こえた(「らてぃいのーひぃと!」とか)。俺思うんだけど、アメプロにおいてこうやって「ファンに真似をされる」ってのは重要なことですのよ。ファンはその瞬間、真似してるレスラーになりきってるわけだし。

第四試合 チャック&ビリー vs アイランダーズ(ジャメル&ロージー)

このPPVで唯一、事前に手の込んだストーリーを用意されたのがこの試合。細かく説明したらキリがないんだけど、「ビショフのロウ vs ステフのスマックダウン」の番組間抗争が背景になってます。チャクビリはスマックダウン代表で、(今回が初めての試合となる)アイランダーズはロウのビショフの子飼いの選手。で「チャクビリが勝てば、ビショフがリング上でステフの尻にキスをする。アイランダーズが勝てば、ステフはリング上でビショフ指定の相手とH.L.A.(ホット・レズビアン・アクション)をしなくちゃいけない」という、どっちにしてもステフのお色気に頼った条件つきです。

また、ロウもスマックダウンも、この試合に至るまでのアングルで世間を騒がせています。ビショフは、二週間前のロウにおいて、リング上でキレイなレズビアン二人(実はふたりともUPWのレスラーなんだが)に延々とエロショー(H.L.A.)をやらせて男どもを盛り上げておいて、いきなりアイランダーズがレズビアン達を背後から襲いツープラトンで破壊するという残酷アングルを打っていて、あまりのお下劣さに世間(?)の大拒否反応を引き起こしている。ちなみにその週のオブザーバーの書き出しは、「プロレスファンなら、プロレスを他の誰かと見ていて、(その最低さに)思わず頭を抱えて穴に入りたくなってしまうことがあるだろう。これはそういう瞬間だった。」

スマックダウンの方は、三週間前にいきなり(おかまキャラの)チャックとビリーが婚約。次の週に前代未聞のゲイ結婚式をリング上で敢行すると宣言したので、一般メディアがこぞって面白がって放送しました。で、WWEはG.L.A.A.D. (Gay and Lesbian Group Against Defamation ゲイ&レズビアンへの中傷に反対する会)というマジメな運動団体と交渉して、一般メディア上でG.L.A.A.D.の人たちがチャクビリに結婚祝いを送るなどの前宣伝をする。で当日、いざ結婚式が進行してみたら、途中でチャック&ビリーの二人が「おいおい。どこまでやるんだよ。これは最初から話題作りの演技だって約束だっただろ! だって俺たちはゲイじゃないもん。いや、ゲイの人たちに文句はないよ。本当にゲイならたぶんこいつと結婚するよ。でも・・・」と婚約をひるがえし、観客は大喝采。その後乱入したアイランダーズに暴行されたこともあって「オカマヒール」だったチャック&ビリーは、あっという間に「ストレート(正常性欲者)のベビー」に転向してしまいました。

で、それを見てガチで怒り狂ったのが、「ゲイの結婚式をやるなんて、WWEは進歩的で素晴らしい」とマジメに公開の場で賞賛し、プレゼントまで送ったG.L.A.A.D.の人たち。WWEは、最後の最後までG.L.A.A.D.には「ちゃんと結婚式は滞りなく行われるから」とウソを言って、どんでん返しの結末は明かさなかったそうです。実世間において、ガチでプロレスもどきの裏切り劇が成立したということです。しかし、騙されたG.L.A.A.D.の人たちは気の毒だけど、バカだよなあ。WWEが優先するのは「ファンに支持されること」と「ファンを驚かし続けること」であって、「政治的な正しさ」なんて屁とも思っていないってことに気付かなかったのだろうか。

・・・ってことで長々とこの試合のアングルについて書いちゃいましたが、まだまだ説明不十分なんで、スカパーで見れる人はぜひチェックしてみて下さい。で試合そのものだけど、まーこの人たちが凄い試合するわけないでしょ。なんかの反則攻撃でアイランダーズの勝ち。ヒールが勝ったにもかかわらず、観客は「H.L.A.!!」と大喜び。ステフはみんなのホーだから。

第5試合 世界タイトルマッチ トリプルH(王者) vs RVD(挑戦者)

去年の末に、タイトルを統一したはずのWWEなんだけど、王者のレズナーがスマックダウンと独占契約したことに怒ったビショフが、ロウ用のタイトル(旧WCWベルト)を勝手に作って、トリプルHを王座に認定してしまいました。これでタイトルの価値が分散するし、せっかく売り出したレズナーの最強度も落ちるので、誰がどう見ても非常に間違ったアングルなんですが、とにかくそうなってます。

試合は、ECWスタイルにトリプルHがつき合うと言うか、「巻き投げや首投げの応酬→立ち上がってにらみ合い」を繰り返すゆったりしたオープニング。その後徐々に盛り上げてゆくものの、最後は「レフバンプ→(トリプルHと仲の悪い)フレアーの乱入→トリプルHを殴ると見せかけて、実はRVDを攻撃」という極めてつまらないシナリオの末にトリプルHの勝利。はっきり言ってフレアーが乱入した瞬間この結末は見えた。このパターンもう何度も見てるもん。しかしそれとは関係なく、トリプルHは入場時の存在感が抜きん出てる。廃虚に出現して吠える怪獣というか、子供の頃に見たゴジラみたい。

第六試合 女子タイトルマッチ モリー vs トリッシュ

露骨に席を立ってトイレタイムにする客多し。トリッシュの勝ち。いつものごとく、なにも書くことないけど、この二人は確かにWWE女子の中では一番動けるし、頑張ってるとも思う。ところで、トリッシュってなんか犬みたいじゃないですか?

第七試合 アングルvsベノワ

たいしてストーリーもなく組まれたヒール同士の試合。序盤は寝技の切り返し合い、ちょっとアクションがあってから、ジャーマンの打ち合い(お互い合計10発くらい)で暖めて、最後は渾身のサブミッションの絞り合い&切り返し合い。凄いのは、お互いがサブミッションの体勢に入るたびに、観客達がみんな固唾を飲んで、どっちがいつタップするかを眺めていたこと。こんなふうに、純粋にレスリングの攻防に注目する緊張した視線が、WWEのリングに集中するのははじめてみた。昔のUWFの後楽園ホールかと思った。最後はベノワが切り返して、ずるして丸め込む。マニアサイトでは今年最高試合の声も。アングルもトリプルHと同じく、入場だけで銭が取れる選手ですね。観客はみんな、アングルの入場音楽に合わせて「You Suck!」と合唱したくてしょーがない感じだもん。出てくるだけで一気に場内が明るくなる。

ここで、ビショフが入場し、ステフを呼び出し、約束の公開レズビアンアクションを強制。こーゆーとき面白いのは、俺も含めてみんな観客は、これはテレビなんだし、どうせたいしてHなショーが見られるはずがないってことを分かってる。分かってるのに、みんな大喜びで、あたかもこれからものすごいことが行われるかのように「H.L.A!!」と大コールをしてしまう(もちろん俺もだよ)。たぶんこのへん、本当にエロが見られることよりも、みんなで「俺たちはエロが好きだー」と主張することの方が大事なんですよね。ともかくレズショーは「相手のドデブの黒人女が実は、ステフと組んでいるラキシだった」ということで、ビショフがスティンクフェイスを食らう。スティンクフェイスはもう思いきり定番化してるけど、こういう肉体的下層の笑いを与えてくれるムーブの人気は根強いですね。

第9試合 WWFタイトルマッチ レズナー(王者) vs アンダーテイカー(挑戦者)

この試合もたいしたアングルは張ってないんだけど、前回のPPVで無敗で王座に駆け上がったレズナーが、妊娠してるテイカーの妻サラに迫り、恐怖で縮み上がるサラの大きくなったお腹に手を当てて「Life's a bitch. (生まれて来てもしょーがねーよ)」とつぶやく劇で、レズナーが明らかな悪役になっている。俺はこれ、あんまピンと来なかったけど、家族は素晴らしいもんで赤ん坊は宝物、というヒューマニズム価値観の強いアメリカ文化の文脈では、けっこうインパクトあったみたい? とにかく前回うまく作ったニュースターのレズナーを、ここで負けさせちゃいけない試合。

とにかく試合。タイトルマッチらしく、どーんとカラー&エルボーで組み合っては、突き飛ばし合ったり、ショルダータックルで倒し合うじっくりオープニング。でっかくて大ざっぱな人たちの試合は、まあこんな感じでいいと思う。後半までずーっと豪快な、というかちと荒い展開が続き(やっぱレズナーのセルが下手だから)、佳境に入ってから「レフバンプ→テイカー幻のフォール」「勘違い男マットハーディー乱入→テイカーにラストライド葬」「再びレフバンプ→ヘイマンの投げ込んだイスで、テイカーが逆にレズナーをぶん殴る」と来て、お互いの必殺技(テイカーのツームストン&レズナーのF5)をなんとかかわし合って、最後はレフをはさんでぐちゃぐちゃに殴り合ってノーコンテスト。俺はこういう大型同士の豪快な試合は好きだし、結末がノーコンテストってのもけっこう珍しくていいなあと思ったんだけど、周りの客は「ブルシットだあ」と怒っている。そんなぜーだく言うんじゃないよ。テイカーのイスでの一撃、凄かったじゃんか。

でもま、(トリプルHの試合も合わせて)今日三回もレフバンプやったのは頂けない。だってレフバンプって、一番お手軽でチープに客を盛り上げる手段なでしょ。レフバンプ=リングが無法地帯化することであって、絶対にそこでなにか展開があるっていう指標なんだもん。つまらん試合でも、とりあえずレフバンプすれば客は注目する。だからこそ、あんまり汎用しちゃいけないでしょ。だいたいレズナーを怪物王者として育てるんだったら、テイカーあたりにはレフバンプ無しで勝たせてもいいのに。テイカーなら、一度負けたくらいで人気落ちないって。英語サイトのマニア達の意見を見ても、「テイカー攻め過ぎ」「テイカージョブしろ」「次でブロックをきれいに勝たせないと、WWEはまじでやばい」っていう意見が多い。俺もそー思う。まー会場では、テイカーへの声援が圧倒的なんだけどね。

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ってことでいろいろ不満もあったけど、最初から大して期待してなかった俺にとっては、案外いい試合も多く、何よりライブでプロレス会場に居合わせることの喜びを再確認できた今回のPPV大会でした。やっぱなんだかんだでねえ、インディに比べれば全然WWEは豪華ですよ。ロックやストンコがいなくても、これでもかってくらいスターがどかどか出てくるし。

ちなみに次の日のロウも10アメさんと生で見たんですが、ありていに言ってこっちは相当つまんなかったです。だから観戦記はなし。ただひとつだけ小咄を。ロウ終了後、トイレで白人の兄ちゃんの横でションベンしてたら、俺のモノをちらっと見た兄ちゃんが笑いながら「おお、Next Big Thing (俺の隣のでかいモノ)だ!(*)」。そう言った兄ちゃんのソレは、俺のモノの1.5倍くらいのNext Big Thing でした。くそーなめんなよ・・・。

(*)知らない方もいるかもしれないので説明しますと、Next Big Thing (次の世代の大スター)ってのはレズナーのキャッチフレーズです。




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