8・25 DDT KO-Dタッグリーグ優勝決定戦
■団体:DDT
■日時:2002年8月25日
■会場:船橋ららぽーとWEST 5F屋上
■書き手:夏 (ex:「It's Just Another ORDINARY DAY」

 「プロレスですから」
 全試合終了後にビアガーデンに(ほぼ)全選手が散って、祝勝会となったのだが、その際に女性ファンに
「大丈夫ですか?」と声をかけられた坂井良宏の返答が、これ。
 もちろん、その女性ファンは、第3試合の総合風タッグマッチで負傷したと思われる、眼帯をした目を
気遣ったのではなく(それも痛々しかったが)、メインの途中で発生した乱闘騒ぎで流血し泣いていた(?)
ことを指していたのだと思われる。それに対し余計な意見をはさまずに、例えそれを口にすることができな
かっただけだったとしても、「プロレス」という単純明快な一言で返した坂井のセンス、度量は見事だし、
久々に「プロレス」という言葉の持つ「凄み」を感じられた気がした。さすがスーパー練習生。

 8月25日、日曜日。船橋ららぽーとでのビアガーデンプロレス「The Ring」。この日は「第三回KO-D
タッグリーグ戦」のファイナル。すでにオープン前から長蛇の列。タッグリーグ優勝決定戦というバリュー
に加えて、天気、佐々木&GENTAROのWEWタッグ奪取、などの要因が重なっての、この動員なのであろう。
とはいえ、都内では、ここ数ヶ月、月1のビッグマッチを後楽園ホールやジオポリスなどの1000人規模の
会場で成功させているDDTなので、この位の動員数は基本的に確保できるようになったんだと思う。

 この日は全5試合。第1試合は「The Ring」のテーマでもある「若手の底上げ」の中間結果発表といった
感じで、諸橋晴也vs大家健が組まれた。DDTにしては地味なこのカードに、「ビール片手にエンターテイメ
ント〜」を楽しみたい観客から、若干の不満ももれていたが、「普通のプロレス」にして「普通の第1試合」
としてもなかなかの好勝負を展開。この試合と次の試合では、少々雑な技の応酬もみられたのだが、これは
会場規模や「所詮インディー」といった見方によるところも大きく、メジャーといわれる団体でも、第1、
2試合では、実際こんなもんだと思う。充実した中堅層が望めない団体ならば尚更で、ようは全盛期の大仁田
FMWのようにセミ、メインで観客を満足させる内容があれば、それで良いのではないだろうか。

 チビッ子(死語か)に人気のHERO!が怪覆面(これも死語…では、ないな。新日本にもいるし)をした
三和太、藤沢一生とあたったのが第2試合で、太刀光、橋本友彦の総合経験者とDEEP出場が決まった一宮章一
の3人が絡む、グローブ着用、3カウントなしのなんちゃって総合タッグマッチが第3試合。
 ここにすでに2ちゃんプロレス板にスレッドが立った「スーパー練習生」坂井良宏が配置されたのがミソ。
この坂井は練習生にして入場テーマ曲を持ち、メイン出場、格闘技戦出場、マイクアピール経験、などの数々
の偉業を達成した「The Ring」の裏の主役。練習生云々はマニア向けのネタなのだが、体が大きく、表情も
豊か、なのに、あまり強くないというキャラは一般客にも有効で、坂井絡みの試合には「名作」が多い。
この試合でも、格闘技色の強い展開の中、一人対応できない坂井が、最後負けてしまうのだが、試合後の
マイクアピール「なんだよ、みんなPRIDE行けばいいじゃん。ここは日本一のエンターテイメント団体、D!
D!T!なんだよ」がいい感じ。それに対する一宮のレス「坂井!三人で大人気なかった」もストレートで
おかしかった。メインクラスでこの手の展開をされると、それはもう、かなり茶番ぽくなり、げんなりする
のだが、坂井が絡むだけでなんともほのぼのといい味になる。今後のDDTマッチメークのカギといったら大
げさかな。そして坂井の見せ場がここだけでなかった、、、のが上記の台詞につながるのだが、そのきっかけは
もう少し先。

 休憩を挟みセミファイナル。タッグリーグ3位決定戦、高木三四郎&前田美幸vs前々日にWEWタッグ王者と
なった佐々木貴&GENTARO。この中でも体格的に遜色のない前田の動きがやはりキーポイント。開始早々、
GENTAROにキスされるなど、ミックストマッチ風の展開になる、と思いきや、中盤から徐々に激しい技が加わ
りハードヒッティングな展開に。女性ゆえ、打撃の迫力には大きく欠ける前田だが、受けは別。腰と腕にテー
ピング、という姿ながら、佐々木やGENTAROの攻撃をガンガン受ける前田。やはり、技の下手さ加減も含め、
UWF移籍前の前田日明にダブるものがあるなぁ。

 さて、ここまで流れも試合内容も平均点以上で進んできた興行。残るはMIKAMI&タノムサク鳥羽vsスーパー
宇宙パワー&ポイズン澤田JULIEのメイン、KO-Dタッグリーグ優勝決定戦のみ。DDTならではの小兵レスラー、
MIKAMIと鳥羽が、意外と長いプロレスキャリアを持ち、大ヒットキャラを得て今が円熟期のポイズンと、
未だDDTの「強さの重石」宇宙とあたるというのは、いかにも、な好カード。WEWタッグ王者を優勝決定戦に
絡めなかったあたりに、微妙なモノを感じなくもないが、試合として、DDTらしい意味も意義もあるカード、
で勝負を賭けたんだと好意的に解釈することにする。
 試合は定石通りMIKAMI&鳥羽の奇襲でスタート。体格差に勝る宇宙&ポイズンの非情な攻めで苦戦するMIKAMI
&鳥羽に観客が一喜一憂、という良い展開だったのだが、売店前での場外乱闘時に状況が一変する。

 直接自分の目で見たことだけで書くと、なかなか収まらない場外乱闘が徐々に大きくなり、マジで逃げてくる
観客や、覆面越しにも表情が凍り付いているのがわかる蛇影、聞こえてくる怒声と揉み合う人垣がリングサイド
まで到達、セコンド陣に加え、控え室からも高木をはじめとしたレスラーが次々と飛び出してくる、鼻と口から
おびただしい流血をしながら泣きじゃくる坂井良宏、、等々。
 当初、興奮した観客がレスラーに手を出して揉めたのか、と思っていたのだが、じきに暴れているのが複数
であり、「お調子者」なんかではなくヤクザ風の集団だというのがわかった。流石にここにきて身の危険を
感じ、自分の連れを後方へと誘導、さらに近くのテーブルにも気を配る。案の定、リング上などに壊れたテーブル
やイスを投げ入れたり、レスラーや関係者だけでなく手当たり次第に暴れているのが目に入る。レスラー、関係者
の必至の努力で、暴れている集団を控え室方面へと誘導、リング上では試合が再開される。なんとか体裁を
整えようとするレスラー達に共感し、声援を送るが、花道近くの席では再びリングに介入しようとする者が
飛び出してきたりと、落ち着いて観戦できる状況にはならない。テーブルとイスが壊されガランとした売店前
フロア。席を奪われた観客が次々と帰っていく。呆然と立ち尽くす子どもの客がいる。ただただ悲しい。
 控え室方面ではまだ揉めてるらしく、ららぽーとの警備員らしき人たちも到着。ただ、周りのイスの何個かを
運んでいく人物がいたので、「話し合い」レベルにはなってるようだ。その間も直接、被害がなかった正面方向
の客席とスーザンやレスラーたちの努力で「試合」は続けられている。しかしそれはそれで今度はリング上で
試合をしているレスラーたち、とりわけ派手な飛び技を使うMIKAMIが、集中力を欠いて、怪我をしたりしない
かどうか心配になってくる。こんな思いをしながらプロレス観るのはじめてだ。そして、もう嫌だなぁ、と思った。

 結局、MIKAMIがラダー最上段からのスワントーンボムを宇宙に決めて、試合終了。MIKAMI&鳥羽が優勝、
そしてKO-Dタッグ王者に。まだ少しごたついていたものの、記念写真、そして祝勝会へと続く。記念写真に
は間に合わなかった高木三四郎も駆けつけ三四郎集会。少しはシリアスなものになるのかと思われたが、内容
はいつもの、というかいつも以上の、バカネタ、大盛り上がり状態。これはこれでプロを感じて頼もしかった。
そして、冒頭の坂井の発言へとつながる、というわけです。

 不謹慎を承知でいえば、ライブならではのハプニングにとても興奮した興行ともいえるし、あと、ハプニング時
の高木、佐々木、GENTARO、一宮、太刀光、橋本、HERO!らの真剣な表情はとてもカッコ良くて、ちょっと得した
、いいもん観たという気持ちもある。しかし、まぁ、大人の男である自分はともかく、DDTだから来ている女性客や
子どもたちのことを考えると、とても胸が痛むし、腹も立つ。また、この件をもって、またぞろDDTに否定的な
マスコミや他団体ファンらから様々な批判が出るのだろうことにも、忸怩たる思いがする。
 が、未だに地方巡業なんて形態も残るプロレスのことだから、こんなことくらい飲み込んでやってかなきゃ
いけないんだろうし、エンターテイメントを標榜するDDTのレスラー、関係者にも、そういった覚悟が見て
取れたのは良かったかもしれないな。
 なんたって、プロレスですから。




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