あのメネーを圧倒!! 君は噂の「足関節の王子様」を知ってるかぁぁ?
■団体:UAGF(Universal Above Ground Fighting)
■日時:2002年7月30日
■会場:カリフォルニア州ハリウッド Hollywood Palladium
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

ども。今回久々にローカルなNHB大会を観てきたんで、報告したいと思います。これはUAGF(Universal Above Ground Fighting) という団体が打っている興行なんですが、俺は名前を聞くのも初めてだし、詳しいことは全然知りません。今回の興行も、Sherdog.comでちょっと宣伝していた以外では、ほとんど告知されていないはずです。でも試合会場が妙にいいんですよ。ハリウッドのサンセット大通りにある、Hollywood Palladiumという中小規模の劇場。演劇だけでなく、各種パーティーや展覧会等にも使われてるようなキレイなところ。ま、どのくらい人が来るのか知らないけど、劇場でNHBってのも面白そうなんで行ってみることにしました。

実は、行こうと思った理由はもうひとつあります。メインイベント第1試合で、デイブ・メネーvsロバート・ファーガソンというカードが組まれていたんです。いやいや、別に田村や金原にぼこられて、でも前UFC王者のメネーを観たかったんじゃないんです。俺のお目当てはファーガソンなんです。この人、日本では完全に無名だと思うけど、一部の英語圏のインターネットではかなり有名なんですよ。まず、彼のニックネームがとても印象的です。これがなんと

「足関節の王子様(The Prince of Leglocks)」。

イケてるでしょ。日本にも足関十段とか、フットロッカーとか言われてる人達がいるらしいけど、王子様とは格が違うでしょ。彼はテコンドーの王者だったらしいんだけど、いろんな選手からセミナーやスパーリングで習った寝技を「私はものごとを素早く学ぶ才能に恵まれている」故に、独学で練り上げたそうです。この言葉からも分かるように、王子はものすごい自信家です。数年前のインタビューでは、同じく「王子様」が主催しているアブダビコンバットについて「あれは選手の選考が甘い。世界の一流が出場しているとは思えない。なんせ私が出ていないんだからな」と切り捨て、ごく最近も「私は数年後には、無敗のUFC王者として引退する予定だよ」とうそぶいています。(ちなみに、このファーガソン王子の御姿を御覧になりたい方は、こちらをどうぞ http://www.sherdog.com/interviews/ferguson_02/ferg8.gif え、怪しすぎる? じゃあこっちも。http://www.sherdog.com/interviews/ferguson_02/ferg9.jpg けっこう強そうでしょ?)

で、どれだけこの王子様の足関節技が凄いかというと、これがもうほんと、コトバもありません。だって、彼が足関節で勝った試合の記録や証言を、俺はどこでも見たことがないんだもん。記録に残っている彼のNHB戦績は1勝2敗。そのうち1敗の相手は、ギル・カスティーリョで、1勝の具体的な内容は不明。サブミッションレスリングマッチでは、あのホドリゴ・グレイシーと対戦したのが有名ですが、その試合は6、7分スタンドで粘った後、グラウンドになったら1分も経たないうちにチョークでケイレン失神負けしたらしい。足関節を出す暇などみじんも与えてもらえなかったと。

でも王子様は、全然コりていません。例のホドリゴとの試合については「最後にやられるまでは、私が勝っていた。あの時は経験が足りなかった。でも次やれば結果は違うはずだ。MMAルールならまず勝てる。」と言い放ち、カスティーリョ戦についても「私が立ち技でも寝技でも圧倒的にぼこぼこに勝っていたのに、あいつのほうが有名なのでインチキ判定で負けた」と決めつけています(ちなみに判定は3-0)。

ちなみにこの王子様は、口だけでなく、アキラ兄さん言うところのペンゴロ、つまり書く方の能力もなかなかのモノらしく、インターネット上で記事を書いたり、掲示板でたまにファンと喧嘩したりもしています。また、サブミッションの技術書も出版していて、俺は読んだことがないからなんとも言えないんだけど、アマゾンコムにある彼の技術書の読者レビューを見てみると、「全く役に立たないクソ本」という評価とともに、誰がどう見ても身内が書いたとしか思えないような露骨な絶賛のレビューも載ってたりします。王子様はいいお友達をお持ちのようで。

・・・そんなわけで、このファーガソン王子ってのがとてもオモロイお方なのは、ある程度分かっていただけたでしょうか。俺的には、今回のこのイベントの主役は間違いなくこの王子です。試合前に(上にも書いたような)暴言満載のインタビューがネットで載ったため、UGフォーラム等では、いかにファーガソン王子がメネーにボコられて化けの皮がはがれるか、そうなったときに、次に王子はどんな言い訳を用意してくるか、などばかりが論議され、他の試合について語られることはほとんどなく、相手の(前UFC王者の!)メネーの試合ぶりに興味を示す者もごくわずかでした。なお王子様は、「WWEのようなアングルは大好きだ。私は喜んで悪役になる」とおっしゃっています。実際、このイベントのアングルは全部王子様が自分の口でつくったようなものです。

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ってことで前フリが長くなりましたが、実際の観戦記にいってみましょう。ありていに言って、これはそうとう大雑把でいい加減な興行でした。宣伝不足もあって動員はさっぱり振るわず、試合開始予定の8時には、2000人は収容できる劇場の席は、2割くらいしか埋まらず。「交通渋滞で客足が遅いから、試合開始を遅らせます」というふざけたアナウンスで開始はどーんと遅れたけど、最終的にも3割くらいしか埋まってませんでした。

席種は$30, $60, $120 とあったんだけど、ぶっちゃけた話、どこでも座り放題でした。$30で買った俺の席は、その番号自体存在していなくて、係員に文句を言ったら、クイントン・ジャクソンが女達といちゃつき騒ぎまくってるすぐ隣のリングサイド席に行けと言われました(そこにエリック・ペレもいた)。確かにリングサイドなんだけど、正直、この連中の近くにはいたくないので、勝手に空いてる別のリングサイドに座りました。

さて、XPWだったらまちがいなく「Start the fucking show!!」コールが巻き起こる一時間遅れの中、興行スタート。といってもはじまったのは公式試合にあらず。NHB名物リングアナのブルース・バッファーが「マーシャルアーツエキシビション」とコールし、キックボクサー2人とレフェリーが登場。瓦でも割ってくれるのかと思ったら、3人でいきなり音楽に乗って「しょっきり」をはじめたんでア然。レフェリーがボクサー達を殴り倒したり、いきなり音楽がスローテンポになると同時に試合もスローモーションになったり、けっこう笑えたんだけど、一時間待ちで冷えきってる会場は白けるばかり。かわいそ。出てくるタイミングが悪すぎたよ。

ってことでやっと本戦がはじまりました。ルールは2分5Rで、顔面は掌底というルール。まー、それなりのレベルのMMAの試合が進んでゆきました。前座試合の結果については、まあみんな無名だからいいでしょ。俺が知ってるのは一人だけ。KOTC中量級のトップランカーで、実力派レスラーのアントニオ・マッキーがグラウンド&パウンド殺法で、柔術系の相手に危な気なく判定勝ち。この人、このあいだのティト主催のサブミッションレスリング大会でも、同じような戦法(パンチはないけど)で勝ってました。まーこっちのローカル有名人ですね。

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で、とにかく待ちに待ったメインイベント第一試合、ファーガソン王子の登場です。「MMAで10勝2敗」と、1ケタずれて紹介され、ラップに載って軽く踊りながら、十字を切って入場してきた王子、緊張した面持ちで、体は引き締っています。対するメネーの方は、いつものようにしょぼくれてて、おまけに腹がちょっと出ててオーバーウエイトっぽいです。とにかく試合開始。

ゴングと同時に王子、いきなり飛び込んでジャブのように右掌底を、メネーの顔にぺちんとヒット。おお速い。その後も王子はけっこう軽やかに舞って、サウスポーからの右ジャブ掌底をぺちぺち当てる(で、アピール)。当てるのはけっこううまい。メネーもローやミドルを出すけど、王子は軽やかにステップバック。やるなあ。でもたまに下がりきれずに当てられる。ローのブロックができないみたい。王子もハイを蹴り返す。スピードはあるけどスナップ系の軽い蹴り。うーん、この王子がテコンドー王者だったのは本当みたい。長所も欠点も含めて。

メネーは、たまに距離がつまると王子を首相撲につかまえて、膝を入れにいくんだけど、王子はなんとか振りほどいて距離を取る。けっこう立ちレスの力もあるみたい。さすがにホドリゴ相手に7分間倒されなかっただけのことはある・・・。でも1Rは、メネーが組んで金網に押し付けて腹を殴ったり、ローが当たって王子が下がり出したりして、ちょっとメネー優勢。

さて2R、とおもいきや、なんかしきりに王子が右の掌をぶらぶら振ってはレフェリーにアピールしている。「怪我してるから治療させてくれ」とでも言ってるのか。でもレフに聞き入れてもらえず、ラウンド開始。いやいやながら出てきた王子は、それでもしきりに右手をぶらぶら振っては、痛みを観る者にアピール(つまりセル)。で、展開は1Rとあまり変わらず。メネーは相変わらず首相撲狙いで、全然テイクダウンにいかない。王子も致命的な膝を食らう前に振りほどいて逃げている。で、後半、王子のぺちぺちヒット&アウエイ掌底が妙に当たり出して、すかさず行うアピールも含めて、明らかに王子が優勢な雰囲気に。おいおいこの人、本当に前UFC王者と互角以上にやってるぞ。ラウンド終了間際、王子はちょっとすべってこけ、メネーに上になられるも、間もなく試合終了。あれー王子の方が押してたぞ。

試合終了後、最初と変わらないしょぼくれた顔でコーナーに戻るメネーとは対照的に、精根尽き果ててへたり込む王子。このへんの表現力でも差を見せる。凄いぞ王子。あれでも、確かこの人「足関節王子」じゃなかったっけ? グラウンドは徹底的に避けてたぞ???

この試合の判定はなんか妙で、最初にバッファーが「第3ラウンド」をアナウンスして、(もう試合をしたくない)王子陣営が「2Rの契約だっただろ!」と文句を付け、そうだ2R契約だったと、判定になってドローのアナウンス。で、両者が引き上げた後に、またバッファーが出てきて「ドローの場合は延長ラウンドというのがUAGFルール。しかし王子陣営がこれ以上続けられないので、メネーの勝ち」とアナウンス。なんじゃそりゃ。

なんかUG投稿によると「最初はこの試合は3R契約だったが、当日メネーが190パウンド、王子が175パウンドで差があったので、王子陣営の要求で2Rマッチに変更された。で、試合後いきなりそれがまた覆された」なんて説がある。王子騙されたのか? でもなんにしても、メネーが王子より重かったのは見た目にも明らかで、形はどうあれ、王子が内容で互角以上に戦ったのも確か。王子が本当に足関節ができるかどうかは不明なままだけど、テコンドーと立ちレスの力はモノホンだと証明した。エライぞ王子。いかにも自分がインチキおじさんみたいなアングルを張っておいて、本番で実はマジに強いところを見せるとは。それにもかかわらず、大袈裟なセル&アピールに加え、足関節技をあえて封印することで、まだまだヘタレ&インチキ疑惑も残しておくとは。凄いぞう。(←本気で取るなよ)

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ってことで、謎の「足関節王子」が予想以上にがんばったんで面白かったUAGFでした。ちなみにメインイベント第二試合では、会場人気が異様に高かったビバリーヒルズ柔術クラブの巨漢、マーク・スミスが体重差を利して判定勝ち。正直、俺はこちらは関心なし。




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