アメリカで、メキシカーンなルチャ体験
■団体:FALL
■日時:2002年5月30日
■会場:カリフォルニア州コンプトン サロン・エル・レイ
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

どうも。今回はじめてこっちでルチャを観てきたので報告します。いや、今までもずっと見たいなと思ってたんですけどね。南カリフォルニアはメキシコ系が多いので、週末にはだいたいどっかでちっちゃなルチャ興行やってるんですよ。

今回観たのは、FALL(Federacion Americana de Lucha Libre)という全然知らない団体の興行(ていうかそもそも俺はルチャに関しては、大団体の知識もゼロなんだけど)。あのドスカラスが出ると友人が教えてくれたので、連れ立ってドライブして来ました。場所はコンプトンといって、ちょっと治安的に言って夜はコワいトコという噂。まー俺のボロ車を襲う奴もいないとは思うが、念のため試合開始の8時よりちょっと早めに行きました。陽が落ちないうちに。

いやー、行きのドライブ、会場に近づくにつれてどんどん風景がメキシカーンになって行くの。なんかストリートに露店がいくつか出てて、果物やらタコスやら売ってるし、そこに陽気なメキシカン達がたむろってて、スピーカーで民族音楽(?)鳴らしてる。見つかった会場もなんだか良く分からん倉庫みたいなとこ。でもその裏に空き地みたいな駐車場があるので、遠くに路駐して会場まで歩く必要がないと分かり、ちょっと安心。

会場はまだ準備中で入れてくれないので、とりあえず周辺で飯を買うことに。一番近くにあるのは、案の定タコス屋さん。さっそく店のおねいちゃんに英語で注文。予想通りというか、全く通じません。仕方ないので、知る限りのスペイン語単語&ボディランゲージでなんとかする。おー海外旅行してるみてえだ。また、その隣の食料品店に入ってみたら、雑誌コーナーにねっとりメキシカンエロコミックが置いてあったんでちょっと感激。
読めないけど、欲しい・・・しかしここで、珍しい東洋系来訪者(俺達)に対する店員のおねいちゃんの冷たい(?)視線を気にする俺。「うーここでエロコミック買ったら、海外でここぞとばかりにエロ本を買いあさる日本人観光客オヤジみたいに見られてしまうぅ・・・」という見栄が頭をよぎり、購入断念。根性無しめ。実際この文脈では観光客以外の何者でもないクセに。セコいプライドはエロ道を極める邪魔になると再確認した次第です。

そんなこんなで、会場前の空き地(兼駐車場)まで戻ってくると、いかにも地元住民みたいな人達がわらわら集まりはじめていました。ほぼ100パーセントメキシコ系。子供多し。さっきのタコス(さすが本物のメキシコ人が作ってるっつーか、うまい。タコベルの10倍うまい)を立ち食いしながら開場を待っていると、さっそくガキの一人に金をねだられたりして。ま、こーゆーのを断るのは慣れてます。そのうち車(別に特に豪華でもなんでもないやつ)が一台ひゅーっとやってくる。そ、その助手席に座っているのは、なんとドスカラスだあ! 車内にいるのにもうすでにマスクを被っているぞう! ドスが車を下りると同時に、あの「プロレス・スーパースター列伝・マスカラス編」の一場面のように、ドスの荷物を持って一緒に無料入場しようと貧しい子供達が彼に群がる・・・わけはなく、別に誰も騒がず。ドスカラスは運転してた人といっしょにとっとと会場入り。「2、3ブロック手前あたりでマスクを被ったのかねえ・・・」と友人がナイスなコメントをしてました。

そんなこんなで、我々も$15ドルを払ってボロ建物に入場・・・と、再び衝撃的な光景が俺の目の前に開けました。地元の子供達15人くらい(男女まぜこぜ)が、リング上で猛烈な勢いで暴れて(遊んで)るんです。プロレスごっこやったり、追いかけっこやったり、ロープで鉄棒遊びしてたり。そして、当然のようにそれを放置する大人達。俺はなぜか分からんが爆笑してしまいました。

とにかくリングサイド(しかない)に陣取って会場を観察してみると、なんかこれは昔バーかダンスサロン(ってあるのか?)だったとこみたいですね。カウンターがあるし、四方はベランダの二階席みたいになってるし。さっきも書いたけど、観客は、関係者以外はほぼ全て地元メキシコ系住民のようで、100人くらいはいそう。場内の出店にはルチャマスクや雑誌と共に、全然プロレスと関係ない飛行機のオモチャなぞも売ってる。なんかみちのく的というか、地元に密着した祭りみたいな感じですね。で、ベランダに設置してあるスピーカーがやたらでかい音でエスニック音楽やロックを流していて、遊ぶ子供達の叫び声とあいまって、非常ににぎやか、つうかうるさい。試合前からこんなうるさい会場は久しぶり。ちなみに誰も英語をしゃべってません。

で、まあ15分くらい遅れて試合がはじまったんですが、これがまた、やかましいんです。全試合タッグマッチなんですが、なんかルチャドール一人ひとりに音楽があって、入場する時とコールを受ける時に二回鳴らされるし、試合中もなにやらリングアナのおじさんがスペイン語でいろいろわめいているし、なんか常に騒いでいる煽り屋のおばちゃんみたいなのもいるし、リングサイドにいる子供達は叫びっぱなしだし、盛り上がると一斉にイスを床にぶつけて音を鳴らすし。

試合内容に関しては、とにかくルードとテクニコがしっかり分かれていて、大げさなくらいルードは汚いことを、そしてテクニコはきれいなことをするのが目に付きました。これって当り前のようだけど、ヒールとベビーのプロレスの内容のあまり変わらない現代アメリカンスタイルに慣れた目には新鮮でした。で、とにかく観客へのアピールが多い。10秒間使ってワンムーブ(その八割くらいが各種アームドラッグとラナ)を終えたら、その後1分間はアピールをし、またちょっとムーブって感じで。だから、一試合一試合がとにかく長い。で、観客も子供が多いせいか、とにかく元気にルードを野次り、テクニコには甲高い声で声援します。ルチャドール達も、それにもうコテコテなくらい応える。観客がテクニコの名前をコールはじめると、ルードが耳を塞いで悶え苦しむとか。また、ルード組がレフェリーの死角をついて汚いことをしようとするのを、観客の子供達が必死になってレフェリーに教えようとする・・・なんて光景も20年ぶりくらいに観た気がする。

試合のレベルに関しては、最初の方の試合では、さっきの露店にたむろってた中年肥りのメキシカンの親父達が、趣味でマスク被って日曜ルチャをやってるだけ、みたいなのが多かったんですが、途中からだんだん本格的に動ける選手が増えてきました。みちのくに呼んでも問題なさそうなくらい飛べる選手も二人ほど。一応名前を書いておきます。デュランゴ・キッドっていう選手と、チランゴって選手。

あと、第一試合に「Septiembre 11(9/11)」という名の選手が出てきたのはさすがに驚きました。マスクには二つ並ぶビルと、それに突っ込む飛行機の絵。アメリカンスタイルの興行では、インディーメジャー関係なく、まず存り得ないキャラですね。おまけにこの選手がテクニコだってんだからちょっと信じられないですね。

また、今日は一人だけアメリカ人レスラーがいました。UPWの常連でもある、長身選手ハードコアキッド。この人いろんなインディーに出てるなあ。プロレスが好きなのかな。で、このハードコアがまた、パトリオットばりのこてこての星条旗マスクを着けてルードやってるもんで、観客は
「メヒコ!メヒコ!」の大合唱。でも逆のサイドから、同じくメキシコ系住民からの「USA!」コールが起きたりもして、現地のメキシコ系アメリカ人達のアイデンティティのアンビバレンスが体現されていました(いや、分かんないけど)。

で、メインには我々のお目当てのドスカラスが登場し、当然テクニコ組の親玉としてシめたんですが、観客が彼に特別な反応を示すことはありませんでした。ていうか、あの子供達は誰もドスカラスを知らないんじゃないかな。年齢を考えると、ドスの肉体はたいしたもんでした。10年前のマスカラスみたいな突き出た大胸筋をしてた。動きもまあ、クロスボディー二回ほど放ったし、悪くなかったのではないでしょうか。さすがに激しいバンプを取るのは、全て周りの若い選手達が担当してたけど。ってことで、我々だけは試合終了後も遅くまで粘って、出て来たドスにサインをもらいました。すぐメキシコに戻るそうです。

とまあ、こんな感じのルチャ初体験だったんですが、なによりこれは、今までこっちで観たインディーとは一線を画するというか、別種の空間なんだって感想を持ちました。とにかく全部スペイン語でメキシコ系の地元の観客を相手にやってるし、ここには大団体(つまりWWE)の影響が全くみられないんですね。これって、他の非ルチャ系インディーではあまり無いことです。どこのインディーでも、だいたい一人くらいは大団体の選手のパロディー選手は出てくるし(RVDをパロッたRCDとかOVDとかなんとか)、動きを真似る奴も多い。試合スタイルでも、ハードコアマッチが混ざるとか、リング上でスキットをやって遺恨をつくるとか。観客の声援でも、What とか Whoo とか、大団体の流行りモンを叫ぶやつが必ず何人かいる。あと、ちょっとマニアックなインディーでは、WWEより日本スタイルを真似の方が多かったりってのもあります。でもこのルチャ空間においては、WWEとか日本でなにが起ころうとあんま関係無さげなんですよ。大衆娯楽として独立したルチャスタイルがそこにあるって感じで。プロレスにおける、団体をまたぐイァuターテクスチュアリティ(笑)があんまり成立していない。

あと、やはり上とカブる話なんだけど、地域に密着してやってるせいで、このルチャ空間はほとんどインターネット世界とのつながりがなさそ
う、ってのも俺には印象的でした。というのも、俺が今まで観た南カリフォルニアのインディーの多くは、インターネットをよく観ているマニアックなファン・ベースを持っていて、団体も盛んにネットを利用して宣伝してるんですよ。特にテレビのない、アンチWWE系の日本スタイルを売りにしている団体は、「ネットマニアで日本V交換オタクなあんちゃん」みたいなのがファン層の中心になっている感がある。だから野次なんかもやたらマニアックなんですよね。WWEとの関係も切れて、テレビ放映も切れたUPWなんかも、最近はさかんにマニアサイトを使ってプレス・リリースや選手募集を行っているし。

まあ例外(?)として、去年いちばん初めに俺がインディー観戦記を書いたEWFという団体があります。ここは地域(クリスチャン系シェルターなど)を巡回しながら、自分とこのプロレス学校の生徒を使った、ちいちゃな売り興行をコンスタントに打っていて、インターネットのプロレスサイトなぞあまり見ないような地元の子供&家族達を動員してるみたいですね。で、今回俺が観たルチャの観客もやっぱり、地元の子供とその家族。いや別に、この辺のメキシコ系住民は貧乏だからインターネットへのアクセスなどまずできないだろう・・・と言いたいんじゃないです。単に彼らが、プロレスインディーマニアサイトなぞをチェックしてる人種だとは思えないってこと。

ってことでとにかく、他とあまり交わりの無い独自の空間ができてるって点で、俺には新鮮なルチャ初体験記でした。ルチャ特有の試合スタイルの特色とか、正直今回だけじゃイマイチ把握できなかったので、今後も機会があったら行ってみたいですね。まースペイン語が全く理解できず、場内の野次や煽りの内容が分からないのがかなり悔しいんだけど。




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