「どうせ勝つのはあいつなんだ」「いや、まだ決めてない」
■団体:UPW
■日時:2002年5月25日
■会場:カリフォルニア州・rAw トレーニングセンター
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

どうも。久々にUPWを生観戦したんで、レポートします。っても無料の道場マッチ。これはLite Show と呼ばれるもので、毎週土曜日にUPWスクールの生徒達の発表会のような形で、無料で行なわれているショーです。場所はあのNHB系トップスクールのrAw(リアル・アメリカン・レスリング)センター。UPW道場は、今年からそこに間借りを始めたんです。

しかし今回の道場マッチは、ただの練習発表会とはひと味違うものでした。UPWは今月はじめにプレスリリースを出して、ZERO-ONE との協同企画による「インターナショナル・ジュニアヘビー級トーナメント」の開催を発表。これは

5/25と6/1のUPW道場マッチで一回戦。
6/14のアナハイムのUPW定期興行で、準々決勝と準決勝を。
6/27、東京のZERO-ONEのリングで決勝戦。

という壮大な(?)企画なのです。念のため断っておくと、「インターナショナル」ってのは、決勝を日本でやるからそういう名前なだけであって、出場選手達はみんな南カリフォルニアローカルの連中であります。また、このトーナメントの企画が、今のところ日本のメディアでは全く報道されていない(*)ってのもミソです(って、もしされてたらゴメン)。

 *:海外在住の筆者が確認できうるメディアでは未発表でした。(編集者注)

なんにしてもUPWは、「この試合のヴィデオをWWE、ZERO-ONE 等の関係者に送る(=もしかしたら彼らの目に止まるかもしれない)」というのを餌に、南カリフォルニア中のインディーから選手を募っており、けっこうなメンバーが集まった模様。

そんななので、とにかく一度観てみようと、俺も友人といっしょにrAwセンターまでドライブしてみました。中に入ってみると、殺風景な倉庫みたいなところに、リングやウエイトのマシーンが乱雑に置いてある、いかにも格闘技道場ってところ。すでに3〜40人くらいのファンや関係者やレスラーが集まってる。そんななか、レスリングマットの上でウォームアップのスクワットを熱心に繰り返している怪しい東洋人レスラーが一人・・・、と思ったらそれは、こないだスターウォーズ観戦記を書いた柔術家「生首弟」氏でした。

それを見て俺は、この人はこのネタを見せるために、我々が気付くまでずっとスクワットを繰り返してたのか・・・とその芸人根性に感心したんですが、よく見たら彼は本当にギを持参して、さらに下にはNHB用タイツを着用してやって来ていました(実話)。隙あらばこのトーナメントに飛び入り参加して、さらにZERO-ONE参戦を実現させようと本気で狙っているとのこと。本人の頭の中でも、ネタと現実がまぜこぜになっているようです。
まあそれは置いといて、道場内にはつい先日、日本から戻ったばかりのリック・バスマン社長やサモア・ジョーがいたんで、サモアに話かけてみました。

「おー日本は良かったよー。クールクールクールクールクール。今日は試合はしないよ。観に来ただけだよ。俺は今フリーなんだ。今後UPWに出るかどうかは交渉次第だね。いまはZERO-ONEからもらえる金でやっていけるんだ。」

と、超ゴキゲンで話してくれました。いい奴だなあ。やっぱ得るべきはジャパンマネーだなあ。

で、しばらくして試合開始。普段着のリングアナが、地声でアナウンス。リングサイドには、家庭用ヴィデオカメラを持った撮影クルーが約1名。

で、肝心の試合なんですが、一つひとつ結果報告するのは控えます。だってどう考えても、これ読んでるほとんどの人は、出場選手の大部分を知らないだろうから。でも全体的には、気合いの入った好試合が多かったです。さすがVが回っているだけある。また、ほどんどの試合が、明らかに日本テイストを意識したものでした。しっかりと寝技の攻防から入る序盤戦。延々と繰り返される、斬新な形の回転エビの切り返し合いの応酬。片腕に狙いを絞って、そこへの攻撃を試合の焦点にした、筋のとおった展開。サンボムーブを使った関節技。柔術流の三角アームバーによるフィニッシュ・・・など。いやーこりゃタダじゃもったいない。古株レスラー、スメリー君によるギャグアングルもあったし、前回観た有料興行より全然おもしれえ。っても、柔術ペナ級(67kg以下)の俺より小さい選手とか、めちゃくちゃひょろひょろな選手とか、異様に足の短い選手とか、ぱっと見にはおよそレスラーとは信じ難い選手も散見されたんですが。

そんな、いろんな意味で密度の濃い本日の一回戦7試合は、名前のある選手がだいたい順当勝ちする形となりました。例えば、去年の南カリフォルニア最高試合賞を受賞した、俺のひいきのB-Boy、日本でも評判の高かったタッグ、エボリューションの片割れのフランキー・カザリアン、評価の高い職人タッグ、ロス・キューバニトスの二人・・・って、これのどこが名前のある選手達なんじゃ! という突っ込みは禁止。地元インディーファン100人くらいには有名なのよ。

その中で俺の目を引いたのは、第五試合に出てきた、ディヴォン・ウィリスという選手。外見はまあ「ちびくろさんぼ」と言っておけばいいと思います。町によく歩いている、背の低いちょっと肥った黒人の女の子みたいな感じです。名前がディヴォンで黒人なので、てっきりWWEのDヴォンのパロディーだと思った俺は「Testify!」と叫んでみましたが、反応ナシ。

それはともかく、この選手がイイんです。渋いんです。特に派手な技があるわけじゃないが、とにかくバンプの端切れがいい。また、言葉を使って間を取るのもうまい。フレアー流の「やめてくれえ」ポーズ→目突きなどもハマっている。フィニッシュは忘れましたが、勝ちました。もう一回観たいぞ。一緒に観てた友人も「みちのくに呼びたいですね」と絶賛(?)。

で、全試合終了後、なんとこのちびくろディヴォン君(俺より全然背が低い)と話す機会がありました。彼は試合後、我々のすぐ近くにやってきて、すねたように自分の友人に

「僕はちっちゃいから、これ以上勝たせてもらえない。このトーナメントはB-Boyが勝つことになってるんだ。ズルイよ!(It's not fair!)」と、いくら情報公開時代でもそりゃねーだろーというセリフを大きな声で話してました。あまりに面白いんで、君のこと日本のネットに載せるから話聞かせておくれと頼むと、快く相手をしてくれました。(以下、ちょっとフェミニンな少年の声で)

僕はDevon なのでWWEのD-von とは違うよ。別にどこにも所属していなく、UPWだけでなく、いろんなインディーに出ている。もう5年もやっている。ルチャもできるから、右からでも左からでも技を掛けたり受けたりできるよ。好きなのはブレット・ハートで、彼のようなプロレスをずーっとやろうとしてたんだけど、バスマンが「お前はちっちゃいから、空中戦をやらなきゃ駄目だ」というから、仕方なく飛び技もやっているんだ。でもタイガーマスクも好きだ。ダイナマイトキッドと試合してた人。なんにせよ僕はちっちゃいし、カッコ良くもないから・・・

確かにこのディヴォン君、今日の試合で似合わないサマーソルトをやろうとして、あやうく頭から落ちそうになってました。別に飛ばなくても、バンプとサイコロジーと試合運びでこんなにイケてるのに・・・なんか切ないすね。とにかく、この選手ちょっと覚えておいてください。ちびくろさんぼこと、ディヴォン・ウィリス君でした。

で、帰り際、我々はバスマン社長とも話す機会がありました。友人が「このトーナメント、日本のメディアには報道されてないみたいなんですけど?」と大胆な質問をすると、バスマンも驚いて「本当か?それは知らなかった。君達ちゃんとZERO-ONEに伝えておいてくれよ」

で、さらに俺が「トーナメントの決勝でB-Boyと当たるのは誰ですか?」と怖いモノ知らずの質問をすると、バスマンは「君はB-Boyが決勝に来ると思っているのかい?」と聞き返してきました。そこで俺が「いや、ある人がさっきそう言ってたんですよ」と言うと、バスマンは「真面目な話、それはまだ分からないんだ。まだ決めてないんだよ。今日の試合のヴィデオなどを、検討してからなんだ」と、これまたあっぴろげな答え。まあたぶん本当なんでしょう。実際にバスマンは全試合終了後、ファンに向かって「みんな、今日の選手の中で、UPWを代表して日本で闘うにふさわしいのは誰だと思うかい?」と尋ねてましたから。

そんな感じで、試合内容も気合い入ってたし、変な奴もいろいろいたし、レスラーや関係者からイイ話(?)をいろいろ聞けたし、タダだしで、非常にお得なUPW道場マッチの報告でした。本当にZERO-ONEのリングで決勝戦が行われるならば、できれば来週の一回戦第二ブロックに、B-Boyの宿敵のスーパードラゴンが参戦してくれて、二人が日本で決勝をやれれば最高なんですけどね。これこそ南カリフォルニアインディーが誇る、最高峰の試合だから。でも、ドラゴンは別の団体への参戦に忙しいみたいなんだよな。

では。




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