老雄ハルカマニア、驚異の大ブレイク!
■団体:WWF Wrestlemania 18
■日時:2002年3月17日
■会場:カナダ・トロント・スカイドーム
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

レッスルマニアは「歴史」あるイベントということになっている。興行前に流される予告CMの多くは、フィルターがかけられて幻想的な初期レッスルマニアの英雄達の映像の断片がスローモーションでつなげられて、レッスルマニアがいかに過去の伝統の蓄積の上に積み上げられた特別な興行なのかを強調する。また興行一週間前からは、必ず過去のレッスルマニアの栄光を特集した番組が流されて、来るべき本番を盛り上げる。その本番は、後に語り告がれるべき新たな歴史の創出の場とされる。

その建て前から見るなら、今回組まれたロックvsホーガンのドリームカードは、最高にレッスルマニアにふさわしいカードということになる。第一回からずっと主役を務めてきた、レッスルマニアの過去の栄光そのもののホーガンと、現在のWWFの象徴であるロック様。このカードはどう考えたって大いなる世代交代の歴史的儀礼でなくてはいけないわけで、ここでロックがホーガンに負けたら、それこそWWFの歴史の流れが狂ってしまう。

もっとも近年のWWFは、一昨年に「レッスルマニアのメインでは善玉が勝つ」という不文律をぶちこわし、さらに去年は絶対的なベビーであったオースティンのヒールターンを敢行し、以後の会社の業績急降下を導くなど、自己破壊的な面をみせているので、なにをやらかすか分からないところもある。また、WWFはよく表層的に歴史を持ち出し強調するものの、実は相当テキトーにそれを扱っていて、その場その場のサプライズのほうを優先したりもする。昨年末の歴史的2大ベルト統一戦が、ジェリコのチープな勝利で終わったのはその一例。さてどーなるか?

と、そんな感じで、今回もスポーツバーで観戦してきました。場内ではLAレイカーズの試合の音を主に流していたので、音響はあまり聞こえなかった。

インタコンチ戦。リーガル vs RVD
二人ともWWFの基準では変則的なレスラー。特にRVDはふつうのキックやパンチやチョップやラリアットでなく、とにかく飛び跳ねたり回転したりすることをベースに試合を作る、ちょっと他にはいないタイプ。それらは基本的に攻撃ムーブだから、RVDは、攻めてこそ持ち味を発揮できるレスラーと言える。その通りRVDがテンポ良く攻めて、必殺のファイブスター・フロッグスプラッシュで勝利。ちなみに試合中、リーガルのハーフネルソンスープレックスがものすごい角度でRVDを落とした。

ペイジ vs クリスチャン
ペイジ勝利。最後のダイヤモンドカッターのタイミングはいまひとつ。

ハードコア戦。ゴールドダスト vs メイヴァン
市場を制圧したWWFが、自分とこのファーム団体以外のインディーに金を払って提携する必要がなくなったおかげで、例えばUPWのようなインディー団体兼プロレス学校は、生徒は来なくなるは、金はもらえないわで瀕死の状態になりかけていることは以前掲示板で書いた。そんな弱い立場のインディー若手製造機関にムチを打つかのように、WWFが去年から自前でやりはじめたレスラー養成手段がTought Enough 。この第一回の優勝者のメイヴァンにこうやってスポットを与え続けることは、例え彼がドロップキックしかできなくても重要ではある。彼がこんなに優遇されてるのを見れば、そりゃTought Enoughの応募も増えるわな。試合は乱入クラッシュ・ホーリーがタイトルをかっさらい、さらに試合の合間のショートコントとして番組を通して続く。数時間後、最後にベルトを持って闘争したのはメイヴァン。賢明なオチか。

アングルvsケイン
プロレスプロパーではないアングルだけど、プロレス界の宝物と言っていいと思う。体力、跳躍力、スタミナ、瞬発力、技術、話術、リングサイコロジー、試合運び、どれをとっても満点に近い。小技も大技も投げ技も寝技も飛び技もなんでもござれ。こんな奴はどこにもいない。どれも「満点に近い」だけで、120点の項目がないのがタマニキズなんだろうけど。で、このアングルvsケインというのはRAW等で好試合を繰り返してるんだけど、基本的にアングルは誰とでも名勝負をやるので、特に相性がいいというわけでもないのかもしれない。今日はアングルがビクトル投げから丸め込んで勝ったんだけど、ちょっとスムーズにいかなかったのが残念だった。

テイカーvsフレアー
親友のアンダーソンや息子のデイビッドを理不尽に痛めつけられ、復讐の鬼と化したフレアー、拳を振り挙げての奇襲攻撃、血染めの金髪、晒される顔、髪を振り乱してのチョップ、四の字固め。なんなんでしょうこの人の存在感は。WWFスタイルとは一線を画して、ゆっくりゆっくり回した見事な28分。テイカーもうまかったんだろうけど、フレアーだけしか印象に残ってない。最後はテイカーが、乱入したアンダーソンも蹴散らした上、ツームストンで勝利。最初はラストライドを試みたんだけど、フレアーの体が上がらず。どうやらこの技、受けるほうに相当腹筋が必要みたい。

エッジvsブッカーT
何度も書いてるけど、シングルプレイヤーとしては、かっこいい以外にはなんとも特徴がない(でも人気は高い)エッジ、今日も勝つ。

オースティンvsホール(withナッシュ)
今回は腋役に回されたオースティン、勝つ(ナッシュは途中で強制退場)。ホールのオモロイところは、けっこうランクは高いのに、常にラリっててほとんどやられるだけなこと。

4 way タッグタイトル戦
つなぎの試合。チーム名書くのめんどくさいや。二年連続でTLCやってたハーディーズとダドリーズ、肉体的限界なのかアイディア的限界なのか、今回はこんな場所に。チャクビリ勝利。チャクビリのチャクの顔をみると、なんか日本のAV男優を思い出す。

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そして、ロックvsホーガン。本日の目玉。

いや俺、こんなすごいの、久々に見た。

試合開始前、二人が睨み合っただけで会場がワンワン言ってる(いや、最初にも書いたようにスポーツバー内はバスケットの音声を流していて、あんまレッスルマニア中継の音響は聞こえないんだけど、んなもん関係なく伝わってくる)。で、ゴング後も二人は睨み合い。しばらくして組み合うと、ホーガンがロックを吹っ飛ばす。

その瞬間、会場が揺れた。驚・天・動・地! ぎゅわーんぎゅわーん。

別にムーブそのものが凄いんじゃない。ホーガンがやったから凄いんだし、吹っ飛ばしたのがロックだから凄い。ホーガンはマッスルポーズを取り、吹っ飛ばされたロックは、座ったまま目を見開いて驚き、やがてゆっくり立ち上がる。そう、これ。別にがんがん動かなくても、レスラー二人がゆっくり向かい合い、触れるだけでファンが湧き返り、ワンアクションごとに会場が震撼する。こんなプロレスみるの何年ぶりだろう。それにしてもホーガン、今まで作ってきたハリウッドの悪役キャラを僅かワンムーブで、ロック様と一緒に吹き飛ばし、一気に観客を味方につけてしまった。

その後試合は、同じようなたっぷり間合いをとった攻防を経てから、定石通り徐々にペースをあげてゆく。観客のテンションはほぼ落ちず。当然ロックが攻勢になればファンは騒ぐが、ホーガンが攻めるともっと湧いているよう。後から読んだ情報によると、全然ホーガンへの声援が多く、ロックにはブーイングも起きていたのに、JRは「五分五分の声援」と無理な実況をしたらしい。ホーガンの神通力はWWFの都合をはるかに超えていたのか。

この試合、それそのものを注意して観ると、実は全然たいしたムーブはなかったりする。ホーガンの攻撃はWCW時代と同じように緩慢でソフトヒットなままだし、それをロックが派手に受けているというだけ。ロックの攻撃はいつも通り鋭いけど、いかんせん受けるホーガンがとろい。それでも、この二人がやり合っているというだけで客が熱狂している。そもそもこの試合の公式テーマは、「どっちが偉大なスーパースターなのか」なのであって、どっちの技がどうしたとか、パワーがどうしたとかは最初から全く問題になっていない。大事なのは希代のカリスマ同士がぶつかり合っているという事実そのもの。プロレスって不思議。

試合は終盤、レフバンプ、シャープシューターでホーガン幻のタップ。急所打ちで逆転→ウエストベルトで攻撃。ロック様も反撃。ホーガンもハルクアップで驚異の大復活&反撃。必殺ビッグフット&レッグドロップ。ロック様も驚きのキックアウト・・・と会場を震撼させまくる。そしてホーガンの二発目のレッグドロップをかわしたロック様は、ヘッドスプリングで跳ね起き、ロックボトム二発→ピープルズエルボーの必殺連携でついにカウント3。26分57秒。多くのファンはロック様大勝利に驚喜するというより、ホーガン敗北にボー然としているようだった。

その後、ホーガンとロックはゆっくり時間を使っての握手。観客のリアクションは予想外だったんだろうけど、とにかく世代交代完了。ロックが引き上げた後、老雄というか、どっかのやさしいおじいちゃんみたいな安堵した顔をしているホーガンをナッシュ&ホールが急襲。それをロック様が蹴散らし、ホーガン&ロックのベビータッグ誕生することで、ストーリーもつないでみせた。最後にホーガンはロックに促され四方にマッスルポーズして、ガチで傷めていたわき腹を抑えながら引き上げる。

まあ最後はアメプロならではのお約束って感じだったけど、そこに行き着くまでの過程にはプロレスの驚異がいっぱい詰まっていた。ジャスティン・クレディブル。

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女子の3way。
これも名前書くのめんどくさい。ジャズ勝つ。

ジェリコ(withステフ)vsトリプルHのWWFあんでぃすぴゅうてっだあ!タイトル戦(メイン)。
偉大なるトリプルHだけど、同時にけっこうつかみどころのないレスラーでもある。ムキムキだけどパワーファイターじゃないし、専門家的にはめちゃくちゃプロレスうまいんだろうが、テクニシャンタイプでもない。キャラもまあ、策略家の兄ちゃんという感じではあるが、同時にロッカー系なとこもあるし、ハンサムというよりはオモロイ顔だし、なんだか良く分からん。で、怪我から復帰以降は、その怪我を使ってキャラに新しい面が加味された。つまり「苦境を乗り越えて復活する生命力の象徴」みたいな感じ。特に復帰戦ではそれこそ、大復活を遂げる怪獣のようにすごいインパクトを残した。でもまあそこはWWF、根本的にお色気コメディー&ソープオペラ色の濃いステフ&ジェリココンビとの共演だから、やがてトリプルHの生命力も中和されてしまった感がある。まあでも、そのおかげで先週はステフの生半ケツや片オッパイがおがめたわけで、コメディ路線に俺は文句があるわけでもない。

とにかく試合は、そのトリプルHが数週間にわたってじらし続けたステフへのペディグリーを決めたあと、ジェリコもペディグリー葬して新王者
に。

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今回のレッスルマニア全体を観て、俺的に最も驚きだったのは、個人的に一番面白かった二試合(フレアーvsテイカー、ロックvsホーガン)が、どっちも今のWWFスタイル(=RAWやSMACKDOWNでその極致が観られる、とにかくインパクトを重視して、打撃技、叩き付け技、飛び技を中心に早いテンポでがんがん試合を回して行くもの)とは違ったものだったということ。ホーガンとフレアー、どっともWWFスタイルにはついていけそうもない老人なんだけど、今回ゆっくりした動きで、見事な30分近い試合をやってのけた。まあ単にホーガンやフレアーがまだWWFに来たばっかで目新しいのに対し、他の選手達の試合はもう飽きられいる、ということがでかいんだろうけど、それにしてもこれはびっくり。フレアーの血染めの金髪、ホーガンのハルクアップの持っている不思議な力ってなんなんでしょう?

もうひとつ。やっぱ単純にホーガンへの声援がロックのそれを上回っちゃった事実。おい観客、お前ら順調な世代交代を観たくねえのかよ? このままあと5年くらいホーガンがのさばったらどーずんだよ? と思わないでもないんだけど、これってホーガン全盛期の記憶が残っているUSA&カナダローカルならではの出来事なんでしょうかね? それとも、他の国でもこうなるのかな? いややっぱなんないだろうな。ロック様のアジアツアーが成功し、自分達の商品のさらなるグローバル化を狙っていそうなWWF、世界進出に必要なのものと、自国(アメリカ&カナダ)で受けるものってのは、意外にちょっとずれるのかも。




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