Smack Girl〜God Bless You!〜
■団体:SmackGirl
■日時:2002年3月2日
■会場:ディファ有明
■書き手:トロピカル
◎WWFは面白かった。完璧だった。完成されたエンターテインメントだった。
そしてその翌日のSmack girlは、あらゆる面においてWWFとは対極のイヴェントと言えるかもしれない。
イヴェントの規模も、ファイトマネーも、観客数も、シュートであることも、女子であることも(WWFにも女子の試合はあるけど)、そして未完成であることも。
しかしこれもまた「格闘エンターテインメント」なのである。

◎新生旗揚戦の前回に比べると、やや空席が目立つも、ZERO-ONEの裏であること(しかもそこで久保田有希vs高橋洋子という試合が組まれていること)を考えると、充分健闘したと言える。しかも新しいファンも付いて来たように感じた。

◎今回の興行の注目は、試合もさる事ながら、前回あれだけ批判を浴びた「進行の悪さ」がどこまで改善されているか、でもあった。
まずはオープニング。
始まりは、テレ朝のニュースでSmack Girlを取り上げた時の映像が流れる。基本的には「力道山を刺した男の娘」篠原光が、格闘技界に罪滅ぼしすべくプロ・デビュー・・・というストーリー。このニュースは見逃していたので、個人的には有り難かった。続いて次回予告の映像。恐らく格闘技史上初の「時間差バトルロイヤル・ROYAL SMACK2002」が次回大会で行われることが発表される。
さすがに前回、批判の集中放火を浴びたMCのアンちゃん2人は今日は出て来ず、非常にこなれた好感の持てるリングアナが進行。意味不明だったダンスも無くなり、やたら長くクドかったルール説明も今回は映像化でやや省略化(まだ若干冗長だけど)。ちょっとした間が空いたときもBGMをかけてつないだりなど、進行の悪さは大分改善された。
しかし、オープニングで映像を長く見せたせいもあるが、今回も第1試合開始は7時をまわってしまっていた。次は何とか、7時前の開始を。

◎<第1試合> ○Eikaエイカ(2R2分50秒 スリーパー)ナナチャンチン×・・・
今回は初観戦の知人と一緒に見にいったのだが、彼は「北の最小兵器・ナナチャンチン」の紹介VTRで、かなりウケていた。そのネーミングが、初心者の格闘技ファンにも分かりやすいのだろう。
相手のEikaは、中学3年生。しかし、長野の格闘技少女ということで、まあ格闘技やってるそれなりのガタイをしているので、「現役女子中学生」という甘美な言葉の響きほどは幻想を持たない方がいいかもしれない。
でも安室の「Chace the Chance」にのって花道からトボトボ所在なげに歩いてくる様子は、いかにも「まだ男の目に晒されていない」感じ(例えば安田がバンナに勝った時に無理矢理リングに上げられた娘・彩美ちゃんと同じ歩き方)で、やっぱ中学生なんだなあ、と思う。
試合は、中学生の割に試合度胸の座っているEikaが積極的に責めるも、負けてられないナナチャンチン(推定32歳)も応戦。一時はナナチャンチンがなんと技を出し、フロント・チョークを取るという画期的なシーンが見られるも、最後はEikaのスリーパーにあえなくタップ。
毎回第1試合に行われるこのナナチャンチン劇場は、「Smack Girlとは何か」を非常に端的に表していると思う。木村浩一郎がAXを立ち上げる際「ナナチャンチンみたいなのは、ウチではちょっと・・・」という言い方で自らの競技志向を説明していたが、言い替えればこれは、ナナチャンチンこそがSmack Girlなのだということだ。修斗でもAXでも見られない、ナナチャンチンが見られるのはSmackだけ。一見さんにいくら言葉で説明するよりも、第1試合でナナチャンチン劇場を見せた方が早いのだ。

◎<第2試合> ○金子真理(1R2分15秒 腕十字)虎島尚子×・・・
紹介VTRによれば「幼児期に虐待を受け、預けられた施設の窓から見えた空手道場に憧れた」という、金子真理(禅道会)。
和術慧舟會の実力派・虎島を相手に、ほとんど試合をさせず。
さすが「孤独の格闘家」と思うとともに、「禅道会強し!」を印象付けた。今のSmack Girlを実質的に支えてるのは、禅道会の選手層の厚さであると思った。

◎<第3試合・タッグマッチ> Lay-hoレイホー&×高橋千歳(1R4分28秒 腕十字)張替美佳&市村幸恵○・・・
事前のサムライTV「S-ARENA」出演時には、そのキャラで周囲のド胆を抜いたLay-ho。
アクション女優を目指し、中国拳法も修得したという彼女なのだが、要はなんだかイタいコスプレイヤー、という感じなのだ。アニメ声だし。
ただ、試合前に流れる紹介VTRでは、その辺のキャラが殆ど出てなかったのが残念。「まけないぞぉ〜」一言だけでなく、もうちょっと彼女自身に喋らせた方が、観客ももっとノレたのではないか。
試合は、いつもはヤラレ役のGF2・張替&市村が、体格差を活かしてここぞとばかり弱い者いじめ。
Lay-ho&高橋ペアは、タッグマッチなのにタッチして試合に出るのを嫌がってたような・・・。
でもLay-hoはガッツを見せ、彼女なりのプロ意識は、最後まで相手に向かって行ってた。
新キャラ・Lay-ho。次はナナチャンチン戦か?

◎<第4試合>○中村珠美(3R 判定3−0)照井和瑛×・・・
モデル・中村(禅道会)vs 受付嬢・照井(パワー・オブ・ドリーム・・・って無くなっちゃったんじゃなかったっけ)のヴィジュアル対決。
中村は前回同様、オシャレなフレンチ風ポップスにのって花道をモデル歩きで登場。花束やヒールをセコンドに投げ渡す。
試合は、リーチを活かした中村が、照井の顔面にパンチをこつこつヒット。照井はタックルを仕掛けるも切られ、中村は照井の首をとる。しかし中村にも極める技術はなく、そのまま30秒が経過してブレイク・・・という繰り返し。
しかし3Rに入る頃には、照井の右目下が腫れ上がりほぼ潰れる。さすがに女の子のこういう顔は、ちょっと引くかも。あんなに腫れちゃって、受付は出来るのか心配。

◎休憩明け、テーマ曲にのって篠代表が花道から登場(この日、オープニング挨拶に次いで2度目の花道登場で、ちょっとクドいかも。2回目は普通にリングサイドから上がってもよかったのでは)。
昨日のWWFの話題(篠代表は、WWFの試合は見に行けなかったが、その後六本木で遊んでるスーパースターズに遭遇したらしい)から、「今日もWWFスーパースターを呼んでいます!」の煽り。
そして花道からTAKAみちのくが、前日の横アリの1万分の1くらいの声援を受けて登場。
ディファ有明での「KAIENTAI DOJO」興行の宣伝 & 道場の女子選手をSmackに上げる約束。

◎<第5試合>○石原美和子(1R25秒 腕十字)金井広美×・・・
当然秒殺。

◎<第6試合>○しなしさとこ(1R4分30秒 腕十字)瀧本美咲×・・・
しなしが練習しているというGirl Fight関係者が多かったのか、本日最大の声援&紙テープを受けて、しなし入場。
しかし、禅道会の瀧本を相手に大苦戦。
最近打撃の練習をしているらしいしなしは、相手と打ち合いを挑み、その中で瀧本の打撃をもらって鼻血。投げからグラウンドになった際、しなしは血を詰まらせたのか、ゲホッと苦しそうな声をあげ、レフェリーが試合を中断する。
しかしここで、ドクター・チェックだけでなく、ティッシュを鼻に入れて応急処置までやってしまう。この間にしなしはペースを取り戻し回復してしまったようだ。試合再開後も、再度しなしは鼻血を理由にタイム・ストップを要求、レフェリーも応じて止めてしまったのだが、これはレフェリーのミスだろう。
結局は、投げからの腕十字でしなしの一本勝ち。観客は大声援で終わったのだが、この試合のレフェリングには疑問が残る。ストップがなかったら、しなしはかなり打撃を受け消耗していたので、レフェリング次第では瀧本のKO勝ちの可能性もあったかもしれない。しなしの強さの一方で、実はむしろ禅道会の一人勝ち、みたいな印象を持った。
修斗での星野vs尾上戦、ZERO-ONEでの久保田vs高橋戦、そしてこの試合と、最近女子総合で流血の試合が3試合続いた。星野育蒔は試合後にHPの日記で「尾上さんの鼻血が体に染み込んで、何回洗っても血の匂いがするような気がして、昨日は眠れなかった。うなされた。」と書いているが、選手にとって出血は、我々が想像するよりもショックが大きいのかもしれない。今後、女子総合格闘技の普及・選手層の拡大を目指す中、一方ではだんだんと試合がシヴィアになり、流血のような激しい試合も出てくるだろう。その時、ルール等でどういう判断を下すのか、難しい問題ではあるが、常に意識していなければならない事なのかもしれない。

◎<第7試合>○ドレイク森松(1R4分30秒 逆エビ固め)中嶋智希×・・・
プロレスラーのドレイク森松が、総合なのに「逆エビ固め」で試合を決める。
まあ、約30kgの体重差による部分も大きいとは思うが、それにしても結構エグイ角度で中嶋の背骨は曲がってた。
試合終了後、坂口一美を始めとするGF2軍団3人がリング上に登場。ドレイクに向かって女子プロレスのようにマイク・アピールを始めると思いきや、
坂口「・・・お早うございます。坂口です」
(会場笑)
森松「何?」
坂口「えっと、私たちGF2の誰かと、試合を、やってください!」
森松「今言ってたこと聞いてなかった? もっと強い選手とやりたいんだ。お前らじゃ相手になんないんだよ」
坂口「ちょ、ちょっと待ってください。そんなこと言わないで、お願いします!」
ドレイクは会場に意見を聞き、「3vs1のハンディキャップ・マッチ」で次回試合を行うことを決定。
しかし、ラッシャーに匹敵するマイク・パフォーマンスは笑った。渋谷ATOMでのSmack Girl旗揚げ戦第1試合では、ナナチャンチンと死闘を演じ、客席に感動の涙を呼び起こした「小さな荒鷲」坂口一美。ここに来てキャラが一気にブレイクしそうな予感。
そもそもGF2は、坂口や市村など女子プロをあきらめて格闘技をやっている女の子も多いので、ベテラン・レスラーのドレイク森松とのハンディ戦は、意外に面白いかも(ルールがどうなるのかはわかりませんが)。

◎<第8試合>×篠原光(1R開始と同時にタオル投入)辻結花○・・・
とりあえず、客席から見ていた限りにおける事実を記してみる。
第7試合の途中から、リングサイドで関係者があわて始める。明らかに、バックステージで何か異変が起こっているようだ。
試合終了後も第8試合に入らず、「リング調整のため」ということで時間がとられるも、どう見てもリング調整の必要はなく、明白な時間稼ぎ。数分たって選手入場。篠原はVTRで「ミニモニ辻! マァ☆ティンの仇はとってやる!」と。
しかし、篠原陣営が入場とともに、セコンドが仲間割れを始める(一人がトレーナーと思われる人物を抑えながら「ハウス!」と叫んでたような)。だが、セコンドの一人が制止を振り切ってリングにタオルを投げ入れ、試合終了のゴングが連打される。
レフェリーが辻の手をとって、勝者コール。辻のテーマ曲、QUEEN「Don't Stop Me Now」が流れるも、試合はストップ。辻は目を真っ赤にして泣き出す。赤コーナーでは篠原もセコンドに抑えられている。
会場に不穏な空気が。特に一名、こわそうな人が「何やってんだよ! 説明しろよ!」と連呼していらっしゃるので、不穏な空気に更に拍車がかかる。
篠代表がマイクを手にリングに登り説明。
「ここでお知らせがあります。篠原選手は今日、熱が40度ありまして、試合が出来る状況ではありません。タオルにより(辻選手の)不戦勝とさせていただきます。申し訳ありませんでした。」
篠原は豹柄のタオルを頭からかぶって、セコンドとともに退場。
しかし未だ、一名こわそうな人の怒りはおさまらず、「申し訳ないですむか、バカやろう!」の怒号。
篠代表、そちらを向いて、「ウチのリングは殺し合いではないので、無理をおして試合をさせることは出来ないとジムの方が判断したということで、この試合はここで終わらせていただきます。申し訳ありませんでした。」
篠代表、客席に一礼。客席からパラパラと拍手。そして篠代表、青コーナーで泣いている辻の所にも行って、一礼。
その後、選手全員が入場し、フィナーレのセレモニーになるも、今いちしっくりしないまま、興行終了。
・・・以上。
さて、この件については既にいろいろな所で語られているし、3月3日付で篠代表よりコメントも出ているので、ここではあまり多くは語りたくはない。
ただ1つだけ、このメインの結果だけを見て「女子格闘技はダメだ」とは判断しないで欲しい。この日は第7試合までは好試合の連続だったのだ。

◎WWFは、完成されたエンターテインメントだ。席にいるだけで、最高の楽しみを全て与えてくれる。ブーイングや「What?」で客も参加しているが、その参加すらもWWFが向こうから用意してくれている楽しみである。
Smack Girlは、未完成のエンターテインメントだ。いくらナナチャンチンがRVDなみのコールを煽っても、客席からのレスポンスはゼロである。でもそれは、参加感の低さを意味しているのではない。客席に座っているだけで、我々は女子総合格闘技の黎明期に、500分の1の目撃者として参加しているのだ。
同じ時間・同じ空間を共有している喜びを感じさせてくれるエンターテインメントであるという点において、WWFとSmack Girlは等価である。




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