PRIDE19
■団体:PRIDE19
■日時:2002年2月24日
■会場:さいたまスーパーアリーナ
■書き手:ヴァン!

この大会は、
ドン・フライ×ケン・シャムロックに尽きる。
ありきたりな言い方だが、これ以外にない。
『男の闘い』 だった。

全選手入場時。
青コーナーのシャムロック。
赤コーナーのフライ。
リングをはさみ、
スクリーンを背負って立つふたり。
にらみ合い。いや、
視線と呼ぶには、
あまりに鋭すぎる『闘気』がぶつかりあっていた。



▼第一試合 白鯨エリクソンVSオバケ

一種異様。
昭和の外人レスラーの如き妖気を背負った
バーリトゥーダー。
それが、ティム・カタルフォだ。
43歳にして頑健にビルドアップされた肉体。
幾多の修羅場を知るのであろう筋肉が、
ライトを浴びてギラリと輝く。
どこか憂いを含んだ眼差しに
多くの観客がゾクリとさせられたはず。

「VT初挑戦のスケルトンに対しあまりに大人気ない勝ち方。」
「捕鯨を解禁せよ。」
煽りの文言に負けず劣らず
威風堂々たる入場のエリクソン。
トップファイターの風格は健在だ。
セコンドのGGがニヤリとしてささやく。
「マークと一緒にやってたかどうかしらねえが
 あんなロートル、メじゃねえぜ。」とでも言ったのか。

ゴング。
エリクソンの右をくぐったカタルフォの胴タックル。
が、オバケ幻想はそこまで。

白鯨のグラウンドテクニックは半端でなかった。
ギロチン → バックマウント → スリーパー
→ フェイスロック → スリーパー 
→ タップ終了と。
完全にオバケをコントロールしてみせた。

試合の印象としては、
喧嘩で負け知らずの怪物親父が、
レスリングの道場に道場破りに来たが、
そこには運悪く達人がいて、返り討ちにあった、という感じ。

オバケのVT、もっと見たい気がする。
ランペイジとやらせてみるか、
それとも日本人ヘビー級とやらせてみるか。
が、もしかすると、
オバケにPRIDEというリングは似合わないかもしれない。
KOTCや、アンダーグランドなリングでこそ、
妖しい輝きを放てる。そんな印象を受ける男だった。


▼第二試合 狂犬イズマイウVS新星アレックス

喧嘩で、一発相手を殴ったあとの据わった眼。
常時、イズマイウの眼はそれだ。
狂犬と言われる所以も分かる。

アレックスは、あの過激な髪型や服装とは裏腹に
狡猾さも持つ選手らしい。

1R。仕掛けたのはイズだが、
ポジショニングを冷静に制していたのはアレックスだった。
ガードをとりつつ、サイドに行かれかけたら、
バックにまわる。そこでゴング。

休憩中。両者の表情は対照的。
焦りと疲れの見えるイズマイウ。
「これならいける」という確信の眼をしたアレックス。
2R。打撃戦 → アレックスのヒザ → バック
→ アレックス、灘神影流のような両腕を極める変形関節技。
逃れたイズのタックルを潰して、頭部にヒザ連撃。
3Rも、アレックスが打撃で制し、判定勝ち。

狂気に身をまかせて暴れていれば勝利をつかめた
あの頃とは違う。そう感じたのか、
試合後のイズマイウのコメントは冷静。
まるで毒を抜かれたかのごとくだった。
もうひと暴れしてほしいイズだが、
VTの世代交代の波はとどまらないようだ。
若く自らの技術に自信を持つアレックスが
冷静な勝利を収めた。という印象。

だが、VTにおいては冷静さよりも、
「狂う」選手の方が輝く気がする。
たとえその狂気が一瞬でも、
それが原始芸能者プロレスラーを越えるために
バーリトゥーダーに必要なこと。そんな気がする。
イズマイウの狂気はまだ終わってほしくない。


▼第三試合 特攻隊長松井VS新世代ホドリコ

プロレス対グレイシーというアングルに
胸が震えたのは、
桜庭・ホイス戦が最後だったかもしれない。
あれは、単なるVT戦ではなく、
まさに決闘だった。
東京ドームという祭壇に、
高田延彦の十字架を背負い、
マシンマスクを装着して降臨した桜庭の姿は
「プロレス」という神の「よりしろ」だった。

それに比べ、この試合はいわゆる通常のVT戦。
新世代の対決には、新たなストーリーが必要だ。

デンジマンのテーマに乗るホドリゴは
あっけらかんとした明るさ。
これから、死闘の場へ赴く姿とは思えない。
なめられてるのか、松井?
いったれ!!松井!!と、少し思ったが、
アブダビ優勝者、ホドリゴの実力は
ほんものだった。

1R。スイープなどをかまして
対抗しようとする松井の姿は懸命。が、
いかんせん、技術的にはホドリゴが勝っている。
気合では劣っていないものの、
ガチンコの舞台ではどうしても空回りしてしまう松井は不幸だ。
出血キャラも定着した松井。やはり大流血。
2R。ホドの胴タックル → 
松井のフロントスリーパー(浅い)→ ホド、テイクダウン
→ 膠着、両者イエロー。
松井の背負い(!)を潰して、
ホドリゴがバック、スリーパー。松井なんとかはずす。

3R。松井のタックルをそのまま、
フロントスリーパーにとったホドリゴ。
隙をつかれた。
松井、極められたまま立ち上がるも、余計に深く極まり、
意識喪失。ホドリゴ勝利。
デビュー戦の選手相手に、松井。あまりに切ない幕切れ。

グレイシー反撃の狼煙はあがった。
ヘンゾ、ハイアン、ホドリゴは、
イノキボンバイエ3への参戦も表明。
ヒクソン、ホイスらの様なオーラはまとっていないものの、
新世代のグレイシーは独特の華と力がある。

プロレス対グレイシーを続けるならば、
プロレス側に、新たな物語性を加えていくべきなのかもしれない。


▼第四試合 浪人ニュートンVS喧嘩屋ペレ

剣道家スタイルのニュートン。
ビッグ・ザ・武道を思い起こし、ニヤリとする。
「シウバが畏れる男」ペレの
剛健な闘気もギンギンと伝わってくる。

ゴングと同時に、ペレの左ハイ!!
一撃を狙っているのか。
「潰してやる。」そんな表情が見えた。
ニュートン、ハイをかわしてタックル → スタンド差しあい。
さらにヒザを狙うペレ。
シュートボクセのファイトスタイルは攻めの一手!!

ニュートン、テイクダウン → 三角締め(不完全) 
→ ペレ脱出、スタンディングへ
→ ニュートン一本背負い!! → 腕十字 → ペレ脱出
→ スタンディング
ニヤリとするペレ。
余裕の表情。「そんなモンで、俺を壊せるつもりか。」
ニュートンもヒートアップ。
両者、いい貌をする!!

ペレの右ハイが、ニュートンの顔面を打ち抜く。
喧嘩屋さらに追撃!!飛びヒザ!!!
ニュートンの顎が砕けたかのような音が響く。
グラリと揺れるニュートンに獣のようにのしかかるペレ。

が、「そうはさせじ」と守りに入るニュートン。
スタンドから、タックルを仕掛け、そのまま十字!!
あまりに華麗なムーブ!!
「柔術ごときに、俺たちが負けることなどありえん。」
と確信したペレの顔は、最後まで変らず。
が、ペレのクラッチがはずれ、タップ。
ペレが一本負けした試合など、初めてかもしれない。
ニュートンの技術は偉大。

わずか1Rだが、あまりに充実した試合内容。
何度でも見たい名勝負になった。
ペレの鋭さと、ニュートンのしなやかさが噛みあった。

で、毎度思うことだが、カメハメ波、、
観客席狙って、どうする・・・・・。


▼第五試合 ヒーリングVSボブ

電波少年のようなボードを持って
気の抜けた「秒殺宣言」をするボブチャンチン。
農民のようなやさしい顔をして、
ケタ外れの腕力のあるこのロシア人。
まだまだ、若造には負けて欲しくない。

旧世代ヘビー級を終わらせた男ヒーリング。
人気はすさまじい。たしかにあの体格でサンボ能力は反則的だ。

1R。ヒース、打撃で勝負をかけ、テイクダウン。
この男、ボブまでを完全に終わらせるつもりか。
だが、ボブチャンチンにはまだまだ底力があった。
グラウンドでも、ヒースの関節をしのぎ、
さらにはテイクダウンから締め技まで狙う。
ボブの潜在能力は、未知数だ。
2Rは膠着。3Rも、ヒースが上になるものの、
サンボ技術をもってしても、ボブを極めきれず。

判定でヒースが勝ったものの、
打撃グラウンド、すべてにおいて
つめの皮一枚分ほど、ボブが上回っていた。
戦闘能力に絶対値があれば、
いぜん、ボブチャンチン>ヒースという印象。
ボブは旧世代ヘビー最後の砦となってくれるはず。


▼第六試合 ケンVSフライ

人は「最強」という言葉に酔う。
が、
フライにせよ、ケンにせよ。
かつてのように
「地上最強」に名を連ねる者ではないかもしれない。
ヒースやノゲイラとやれば、完敗する可能性もある。

だが、そんなことは関係ない。
この試合はそういうレベルのものではない。
ひとりの男が
どうしても、戦わねばならないとき。
決して、負けられないと決意したとき。
男は自らの「誇り」をかけて死をもいとわず
戦地に赴く。その決意は、美しい。

彼らの見せてくれた試合にはそれがあった。

開始前から、はげしくにらみ合う二人。
決してそれはプロレス的威嚇にはとどまらない
リアルな情念を感じさせた。
このシーンだけでも、
PRIDE史上最高レベルの見せ場。

そしてゴング。
ケンがフライに組み付く。フライは厳格な表情のまま
テイクダウンをゆるさない。
ケンのわき腹に凄まじい拳を打ち込むフライ。
打ち返すケン。
互いにもはやテイクダウンする気はない。
一発殴られ、一発殴り返す。
退くことがゆるされない無限の格闘地獄。
だが、両者の眼はたぎり続けている。
ブレイクがかかり、
ケンの打撃が、フライの顔面をとらえた。
そのままケンがグラウンドに持ち込み、
必殺のヒールホールド!!!
角度を変えつつしぼりあげる。
あわや終わるかと思うものの、
表情をくずさず、ケンの顔面に打撃を入れて耐えるフライ。
だが、ケンは打撃を食らいつつ、
さらに深く締め上げる。
握り締めているフライの足首は、
ケンの「勝利への絆」そのものなのだ。
決して離さずしぼりあげるケン。
決してギブアップしないフライ。そしてゴング。
「意地のはりあい」とはえてして醜いものだが、
彼らのそれは、喩えようもなく美しかった。

インターバル中。

怒りに燃えるフライの表情。
そこに雑念はなく、ただ勝利への執念が輝いていた。

ライオンズデン軍団に囲まれ、
消耗した体力を取り戻そうとするケン。
そこには藤田相手に、スタミナ切れし
タオルを要求した老兵ケンの姿はなかった。
どんなにつらくとも。
「負けられない」そう決意したときの男の姿だった。

2R。やや足首をかばいながら、
なおも攻めに出るフライ。
組み付いたまま、蹴りを打ち込むケン。
3R。開始早々、
両者、凄まじい殴り合い。
フライの連打がクリーンヒットし、ガクリとヒザを落とすケン。
そのまま、フライ、ギロチンへ。
だが、ケン必死にそれをしのぎ、足首をつかむ。
激しく絞り上げるケンのヒールホールド。
フライ耐える。
そして、終了直前、互いに足を極めあう形に。
その姿は、まさにパンクラチオン。
怒り、執念、そして誇りをかけた闘い
を体現するかのような形だった。
そして、ゴング。
ふたりの男の誇りをかけた闘いは終わった。

終了後、抱擁しあうケンとフライ。
敵対しあったふたりが、
信念を超えた互いのファイトを称えあう。
感涙した観客も多数のはず。

判定ではフライの勝利。
だが、もはや勝敗の問題ではなかった。
殴り合い、極め合うことで、
真の理解を得ることができる。

男にとって、真の闘いとは、
敵を潰すことではない。
「誇り高く生きる」ということだ。
ケンとフライは、それを体現してくれた。


▼第七試合 大和魂エンセンVS王者ノゲイラ

ノゲイラの強さは、人のそれを超えてた。

試合開始直後、ノゲイラタックル。
それを切ったエンセン → 猪木アリ状態 → ブレイク。
ここからは王者の独壇場。
ノゲイラ、テイクダウンから、
アームロック、腕十字、ガードポジション、
下からのフロントネックロック、
腕をとり、アームロック、十字、
オモプラッタからヒール、そして三角締め。
失神、大の字に倒れるエンセン。

「タップしないと思ったから、締め上げた。」
いまのノゲイラを倒せる者が現れるのだろうか。
『ゼロ』を思わせる無敵ぶりだ。

エンセンのアピールにはノーコメント。
私情を闘いの場で吐露するのは、選ばれた者だけの特権ということを
知ってほしい。


▼第八試合 田村VSシウバ

田村の見せ場は、
オープニング時の
瞳を閉じうつむき加減の、あの決意に満ちた表情。
そして、「FLAME OF MIND」での
入場だけだった。

タックルを狙い、
ポジショニングで王者を制そうとするものの、
田村がUWF美学を貫くには、
シウバはあまりに強すぎた。
冷酷といえるまでのファイトスタイルに沈んだ田村。
最後の最高のタイミングでの
ストレート剛打は、心までを破壊する勢いだった。

ひとつ気になったのはシウバの眼。
立場が人を大人にするというが、
王者としてのシウバには、桜庭を狙っていた頃の
あの狂気が薄れていた。
守る王者ではなく、攻める王者であってほしい。
シウバは、頂点に君臨するよりも、
戦場の狂える狼であるほうが似合う。


全体的に、すばらしい興行でした。




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