ベガス旅日記(1):グラップラーズクエスト参戦&観戦記
■団体:グラップラーズクエスト・ウエスト
■日時:2002年2月23日
■会場:ネバダ州ラスベガス、デュランゴハイスクール
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

ひねリンです。いろんな観戦記を書いてる俺ですが、今回はまた趣向の違うものを書いてみようと思います。先週末、ラスベガスで行われた「グラップラーズクエスト」という大会に行ってきたんですが、観るだけでなく、自分で試合もしてきました。っても俺は凄い選手でもなんでもなく、趣味で柔術やってるだけの格闘技ファンです。ま、真剣に格闘技に打ち込んでる選手の本物の戦いの記述は、そのうち観戦記ネットに本格登場するであろう(?)チーム品川勢にまかせて、俺は日常生活に支障をきたさないようなレベルで格闘技を楽しむ、平凡な愛好家の視点からの、アマチュア大会参戦記でもやってみよかと思います。以下、俺というどうでもいい人間のしょーもない体験の記述がいっぱい出てきますので、これを読まれるモノ好きな方はご覚悟のほどを。

まず最初に、柔術家としての自分をざっと紹介します。二年ちょっとくらい前から、LA郊外にある小さなBJJ道場で練習していて、今は青帯に線が2本です(普通柔術では、4本線になってから次の帯に上がります)。週3、4回通ってるんだけど、きつい練習はほとんどしてません(一日スパー数本。筋トレ等ゼロ。スパー前にウデタテを2、30回やるくらい)。だからまるで強くないけど、試合にはギあり/ナシにこだわらずけっこう出てます。LA近辺には大会がいっぱいあるし。戦績は当然練習相応です。今まで柔術青帯の部には五回出て、一回戦負けが三度、あとは二回戦負け。前回は一回戦、クロスチョーク(十字締め)食らってマットの上で眠りました。力尽きる寸前に、これ以上ないタイミングでタップしたはずだったんだけど、相手の背中を叩く手があまりに弱々しく、相手が気付いてくれませんでした。

で今回は、うちから車で4時間程のベガスで行われる大会に行って来ました。うちの道場はBJJ道場としては極めてのんびりしてて、大会用にチームを作ってトレーニングするということもなく、まあ出たいやつは出ようや、って感じで5人がエントリーしました。「時間作れれば行こ」くらいに考えてた俺は、この一か月ほど本業&副業をがんばって余裕ができたので、大会3日ほど前に出場を本決定しました。一緒に出場するうちのインストラクターがベガスに別邸を持っているので、そこに泊まれるってのもでかいです。

で、その大会「グラップラーズクエスト」について。これはごく初心者から出れるグラップリング(パンクラのキャッチレスリングとかと同じ、ギ無し、打撃無しのサブミッションレスリング)大会なんてすが、同時に目玉として、強い選手だけを集めた優勝賞金$1000(笑)の「無差別級8人トーナメント」もやってます。その金を集めるためか、出場料はこの種の大会としては異様に高い$75(三週間前に登録すれば$50) で、しかも大会Tシャツ配布なし。各階級の子供、女性、青年男子、年輩者の部があって、さらに青年男子はレベル別になってます。レベルの区分けは一応目安として

ノヴィス(初心者・キャリア半年以内)
ビギナー(初級者・キャリア半年〜1年)
インターミディエイト(中級者・キャリア1年〜2年)
アドバンスド(上級者・キャリア二年以上)

となっているんですが、自己申告制で、なにをもって「キャリア」とするかの解釈は各自にまかされているので、例えばレスリング5年、ボディービルも2年はやってそうだけど、柔術歴は1年以内の「ビギナー」とかもごろごろいます。俺はバカ正直に考えれば柔術2年ちょっとやってるから「アドバンスド」なんですが、そこに出るという考えはハナからなく、「ビギナー」か「インターミディエイト」かで迷ってました。正直、ヒールホールド禁止のビギナーの部に出たかったんですが、茶帯のインストラクターが「インターミディエイトにしなよ。強い奴らがみんなインチキでビギナーに出るから、インターミディエイトのほうが楽だ。」と凄い理屈を言って来て、逆らえないのでそうしました。ヒールの体勢に入られたら即タップを決め込んで。

そんなこんなで、前日に仲間とわいわいドライブして、ついでにネバダ州境にあるホテルのジェットコースターに一発乗ってからベガス入り。次の日の朝に、大会会場の高校体育館に向かいました。そして朝っぱらから登録と計量の長蛇の列に加わります。さすがにでっかい大会だけあって野郎がうじゃうじゃ。ティト・オーティズ、ジョン・ルイス等のセレブリティは華やかなムードをまき散らしてます。ちなみにここの体重計が妙に軽く計れるようになっていて、希望の階級リミット(150ポンド=68.1キロ以下)を軽くパス。

計量が終わって空腹から解放され、会場近くでファーストフード食って戻ってきて、スタンド席(選手席と客席併用)でぼけーとしたり、会場に出てる柔術着、格闘技Tシャツの出店を覗いたり(スパッツ購入)、試合用マットで柔軟したりしてるうちに、開会式がはじまります。当初「試合10時開始」とあったけど、そういうのが守られることはまずなくて、はじまったのは12時近くです。それから、女子の部、子供の部、初心者、初級者と試合が続いていく間、ずーっと気長に待つことになります。まー慣れっこです。

俺は女子や子供の試合を間近で観るのが好きです。俺、非力で比較的柔軟性はあるから、女性や子供の闘い方のほうが観てて共感するんですよ。子供の部は男女まぜこぜなので、女の子が男の子を抑え込んだり、十字で泣かすとか日常茶飯事です。大人のNHBファイターをちっちゃくしたようなただずまい+試合スタイルのハードコアな子供とかもいます。ウエイト分けのゆるい女子の部でも不思議な光景がいろいろ見れます。全身ぴちぴちの吸汗スーツに身を包んで宇宙人みたいになってる女子とか、150キロ級の巨女とか、それを気合いで組み倒し抑え込む丸狩りの少年のような女性とか。体育館に敷かれた6つのマットで、さまざまな恰好の選手達が力をぶつけ合い、セコンドがわめきあい、でも大部分の人間はそんなん気にもせず各自好きなことをしてて、全体の空気はゆるやかという、アマチュア大会独得のムードです。さわやかさ、奇妙さ、怖さ、普通さ、残酷さ、過剰さ、カッコ良さ・・・いろんなものが小さく交錯する中を、まったりさが包み込むこの空間。

ちなみにビギナーの部では、うちの道場の仲間二人が出て、両方とも初戦で負けました。まあうちの道場は、出る奴の大半が一回戦で負けますから。うちは練習量が少ないから、そのことを言い訳に出来るぶん、負けてもたいしたことないとも言えます。しかし二人とも俺と同じ青帯で、スキルもあんま変わらんはずなんですが。ってことは上のレベルに出る俺は・・・。

ビギナーの部が終わると、いったんアマ大会の進行は中断し、目玉の無差別級8人トーナメントの一回戦と準決勝が行われます。当初の看板の一人だったデニス・ホールマンが怪我で消え、その代打になんと、今度のUFCでマッハと闘うマット・ヒューズが出ることになったんだけど、なんかUFC以外のプロの試合には出てはいけない契約らしく、別の人が出てました(ヒューズはかわりに一般アドバンスドの部で闘いました。エラい)。俺が一回戦で注目してたのは、70キロもないKOTCライト級王者のハビアー・バスケスと、かつてリコ・ロドリゲスから一本を取ったこともある巨漢アフマド・リースの対決。試合はバスケスが体格差を跳ね返し、迅速のシングルレッグでテイクダウン→パス→マウント。ひっくり返されても、異様に強いガードで逆に三角、十字、ヒールをしかけてパスは絶対許さず、さらにスイープを決め、会場を涌かせまくって完勝しました。ミレニア柔術のバスケスは強いだけでなく、雰囲気も闘いも華のある選手なので、修斗のウェルター級トップ勢と闘わせてみたいです。

しかしそのバスケスも、次の準決勝ではハウフ・グレイシー道場の茶帯、キャメロン・アーレのチョークに完敗。鋭くて直線的なバスケスに対し、キャメロンはボールのように曲線的にハーフの下からスイープできる選手でした。で、決勝はそのキャメロンが、一回戦でボビー・サウスワース(いつぞやのプライドでビクトーに負けた選手)を退けたデイビット・トレルと当たることに。これは大会最後に行われるメインイベント。

さてスーパーファイトが終わると、やっと自分の出るインターミディエイトです。もう4時過ぎなので、会場に来てからかれこれ7時間以上経ってることになります。進行席に置いてあるトーナメント表を見たら一番最初でした。ラッキー。いつ呼ばれるか分かんない状態が長く持続するのは、精神が消耗しますから。でも、それへの対策も最近編み出したんですよ。「これから試合をする」と考えるんじゃなくて、自分がヘルスかソープで順番待ちしてる姿を想像するんです。そうすると「早く俺の名前呼んでくれよー。早くヤリたいよー。」状態になって気分がかなり楽になります。マジです。

とにかく試合。相手はミレニア柔術の選手で、なんか俺より10センチくらい背が高くてひょろっとしてます。ホイスとかバヘットみたいな感じでいかにもガードが得意そう。彼のセコンドには、先程書いたハビアー・バスケスがついてたんでちょっと嬉しくなりました(なるなよ敵なんだから)。

この試合の俺は終始ダサかったです。相手の長い手がすっと足元に伸びてきていきなりこかされて、懸命に相手の膝にしがみついて相手のガードの中に(幸運にもお互いゼロポイント)。で、そこから向こうが下からいろんな方法で腕を取りに来て、こっちは懸命に凌ぐだけ。そのうち相手の足が一瞬で上がって俺の右腕を超えて、三角の体勢に入られちゃってました。こっちもその瞬間に左腕を半分ねじこんだので、完全ではありません。この左腕を相手に内側に引っぱり出されたらおそらく負け。完全にねじ込んで外に出せばパスのチャンスです。

相手はかなり足の力が強く動けないし、セコンドのバスケスのいちいち的確な指示に従って、いろいろやってくるんでそれを防ぐので精一杯。で、クラッチを組んで左腕をひっぱり出されないようにしてたら、相手が俺の顔を股間に押し付けて強引にタップを取ろうと締めてきました。苦しいけど、別に頚動脈が締まってるわけではないのでじっと我慢してると、レフェリーが「Are you OK?」と聞いて来ます。「OK」と答えたかったんだけど、苦しいときにしゃべりたくないし、口がふさがってる状態で話そうとすると「ふがふがー」としか言えなくて、あたかも効いてるように見えちゃいそうで無視してました。そしたら「答えなきゃ試合ストップするよ?」と言って来たので、なんとか頭を動かして口を少し自由にして「No problem. I'm just fine. 」と(懸命に)ごく平静を装って言いました。

このハッタリが効を奏したのか、相手があきらめて力を少しゆるめ、ちょっと楽になったので、こっちのセコンドの指示通り、背筋を伸ばして立ち上がろうとしました。そしたらバスケスが「奴が立ち上がりかけたときに体を返してスイープしろ!」とか言ってるのでやめました。ホントイヤなことを言って来ます。この半分三角状態のままやがて時間が無くなってきて、このままじゃポイント 0-0 でも絶対負けなので、こっちのセコンドが「サイドに頭を抜いてパスだ、パスパス!」と叫び出します。それで俺も焦ってきて、まだ完全に相手の締めがゆるんでない状態で、強引に自分の頭を横に抜きにいきました。これが運の尽き。見事に失敗してバランス崩し、気付いた時には仰向けフェラチオ舐めろやオラ状態にされてました。相手に2ポイントが入り、時間も無いので万事休す。仰向けにひっくり返って戻れないゴキブリみたいなもんです。半分自滅ですね。

ってことで結局、自分からなにひとつ攻撃を仕掛けることが出来ず、終始相手のペースにはまったまま判定で完敗でした。ほんとダサ過ぎだけど、同時に怪我しなかったし、一本負けもしなかったことにホッとしてる自分もいました。ちなみに俺に勝った選手は、次の試合で、特殊体質で膝がくねくね回る選手に負けてました。このインターミディエイトの部は、LAの柔術トーナメントの青帯の部と同じか、それより少しレベル高いかも、と思いました。

とにかく試合時間5分で、75ドルが消えました。トイレの鏡で顔をみたら、相手の股間に顔を思いきり押し付けコスられたため、目の周りにスリ傷ができてました。男の股間で出来た顔の傷。なんと不名誉な負傷でしょう。もうブロンコバスターもスティンクフェイスも恐くない・・・本当は、金も時間も強制フェラの屈辱もたいした問題じゃないんですよね。自分の非力さ、勇気の無さ、凡庸さがいま再び現実として明るみになった。それを笑ってごまかしつつも、きちんと受け止めてなんかにつなげます。別に格闘技に限らず、なんかに。

自分の試合が終わった後は、アドバンスドに出る仲間(インストラクター)二人のサポートに徹し(一人はベスト4入賞!)、うちの選手の試合が全て終わったときには8時過ぎになってました。マット・ヒューズも自分の階級で、予想どおりというか、テイクダウンして何も極めさせない戦法で優勝してました。でも決勝では相手の柔術家からまったくパスを取れず、三角の体勢に入られたりしてだいぶ苦戦してました。マッハにもチャンスはありそうです。もう参加者や観客の大半は帰っているのに、スーパーファイトの決勝はまだ行われていません。我々もとっとと帰ることにしました。

で、帰って腹ごしらえしてシャワー浴びて一休みした後は、本日の第二メインイベントがスタート。ここは眠らない町ベガスだぜべいべーとばかりに、夜の町を走り、ダイハードに朝の4時までカジノを渡り遊びました。 両刀系のストリップバーに行こかという話も出たけど「いや、俺は今日さんざん男の股間を顔で満喫したからもーいいよ。すげースパイシーないい匂いで、逃げる気になれなかったよ。」と断りました。みんなハイだったためか、こんなベタなネタにバカ受けしてしばらくイジられました。ま、自分のダサいとこ見せちゃった時はギャグにして自爆するに限ります。

最後にちょっと真面目モードに戻ると、今回短い試合でも三角の対処等、いろいろ自分の欠点が見えた収穫はありました。直して次の欠点探しにまた試合に出ます。残酷さをさわやかにごまかすまったり空間に戻ってきます。今日の試合は余裕が無くてディフェンス一辺倒だったせいもあって、(持続でなく)コマ切れの映像や写真のような形で多くの記憶が残っています。以前やってた空手の試合に近いかな。そういう点では、妙に落ち着いて自分のペースでやれる試合よりも、知らない人とぶつかり遭う瞬間瞬間のスリリングさを存分に味わってはいました。この感覚もまだまだ味わいたいです。もう20代も残り少ないけど。

ってことで、俺の週末のベガスの旅は、翌日曜のプロレス観戦に続きます。




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