ハシモト桃太郎侍劇場、異国で(場違いに)炸裂。
■団体:UPW
■日時:2001年12月19日
■会場:カリフォルニア州サンタアナ ギャラクシーシアター
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

WWFからはほとんど見捨てられ(?)、開始したはずのテレビ放送はなぜかやらなくなっちゃって、(従来のサンタアナに加え)ロスでも定期興行を開始したけどあまり動員が振るわない・・・と近ごろさっぱり冴えないUPW。こっちも最近足が遠のき気味だったんですが、今回の興行はまさに起死回生の豪華メンバーの出場が発表されました。

目玉はなんと言っても(WWFを首になった)グランドマスター・セクセイとベイダーの初出場。また、(ノアで成功したためか、北CAのAPWから独立して自分たちの学校を設立した)マイク・モデストとドノバン・モーガンも久々の登場。さらに(動員力はあまりないと思われるが)日本からハシモートーとホシカーワーも顔を見せるらしい。これだけ豪華な布陣なら観に行くしかない、と思ってたんですが、セクセイはWWA英国ツアーで怪我したとかで早々と欠場が決定。さらに土壇場でベイダーも膝の手術が必要とかで出場キャンセル。なんてことはない、結局目玉の二人が出なくなっちゃったんです。でもま日本人としては、ノアで評判の外人二人とゼロワン軍を観れるならまあいいだろう、ということで久々にUPWのサンタアナ定期興行に足を延ばしてみました。

会場入りしてみると、さすがに前回みた興行よりは観客が入っている模様。超満員ではないですが、テーブルはほぼ埋っています。橋本に引き付けられたのか、日本人のグループもいました。セクセイとベイダーの欠場を踏まえて、観客に料金払い戻しや、全員にUPW第一回制作ヴィデオの無料プレゼントなどのサービスをしてました。タダVもらっちゃった。よっ太っ腹!っていうか、V大量に売れ残ってたんですね。

ええと、個々の試合の感想を書く前に、始めての方のために、元WWFの下部団体・UPWの特質をいま一度ざっと紹介させてください。ここの興行は、ライブで観るショーとしてはコストパフォーマンスは抜群です。会場がこじんまりしたダイニングシアターなので、飲んだり食べたりしながらリラックスして観戦でき、音響やライトも文句なし。15ドルでどこでも超リングサイド。試合スタイルはWWF流でとにかくテンポがいい。興行のダンドリもWWF並みに素晴しく、とにかく間延びせずさくさく試合が進行してくれる。しかし、アングルの打ち方、次の興行への繋ぎ方などがWWFに遠く及ばない、またテレビ中継が恐ろしくつまらない(カメラワーク、集音、編修、ストーリー作りどれもひどい)、という弱点もあります。生観戦の面白さと、それをテレビで見直したときのつまらなさの落差がこれほど激しい団体も珍しいでしょう(よくデスマッチ系の団体に同様の傾向があると言われますが、こっちのデスマッチ系インディーのXPWの中継と比べても、UPWのライブの快適さ&テレビ放送のつまらなさは際立っています)。

ってことで、個々の試合の観戦記にいってみましょう。全部で12試合もあったので、目についた試合だけ書きます。今日の観客は、いつもにもましてノリが良く、というかうるさく、試合前からストーンコールドの「WHAT!?」やフレアーの「WHOO!!」を意味なく叫んでるアホ(含む俺)が多かったです。メジャー団体での流行りは、すぐにインディーにも伝染します。

第一試合 マイク・モデスト&ドノバン・モーガン組 vs ハードコアInc.
UPWの興行は、つかみには若手や新人の試合ではなく、ランクの高い選手たちによる、確実に面白くなる試合を持ってきます。モデストとモーガンはそれだけ信頼されてるってことでしょう。それに答える形で、モデストがいろんな面白ムーブを披露して、最後はモーガンが、ダブルアームパイルドライバー(そんな技の名前ないか)で勝利。モデストは動きもさることながら、とにかく顔つきがいいですね。アメコミの登場人物みたいな笑い方するし。

第三試合 スパンキー vs ピノイ・ボーイ
スパンキーはHBK道場出身、動きの鋭いライトベビーの期待の若手。対するピノイ・ボーイは、以前MPWの興行で観たことある、まだまだ体のできてない(75キロくらいかな)フィリピン系の新鋭。やっぱり動きはいい。普段のUPWの試合なら、開始早々がんがん殴り合ったり飛び合ったりして、さくっと決着をつけるのですが、今日は日本のゼロワンのスカウト(いるのか?)の目を気にしているせいか、なんかアームドラッグの打ち合いをじっくりみせたり、グラウンドをやったりしている。複雑な関節技も披露し合ったりして、いわゆる日本式ジュニア=ルチャレス(ルチャリブレ+puroresuの造語)スタイル。スパンキーなんてボーアンドアローまでやってた。その後飛び&大技スポットも出はじめて、いつもよりはるかに長い試合で時間切れ引き分け。やっぱみんな日本に行きたいんだなあ。

第六試合 星川 vs リッキー・ライレス
リッキー・ライレスは、このへんのいろんなインディーに出場しているキューバ人ルチャコンビ「ロス・キューバニトス」の片割れ。派手さはないけど、堅実な動きで評価の高い軽量級職人レスラーです。Samurai! のカメラ(?)が回り、ゴング、週プロ、東スポのカメラマンが構えるなか、気合いで登場したホシカーワー。なんか勘違いした観客グループがハシモトコールを行ったりしてます(他に「アリガトー」「ワサービー」「イチバーン」等の声援もあり)。試合は明らかにライレスが星川に合わせる形で日本テイストで進んでゆきました。キックやチョップをお互い力をこめてゆっくり打ち合っては、気合いでこらえたりしています。腕をねじるときも「いっせーの、うりゃー!」って感じで様式的に絞り上げ、やられたほうも、タメてから「うわー!」と痛みの表現をしたりしている。UPWのハードヒットのスタイルは、日本のスタイルにけっこう近いと思ってたけど、こういうベタな日本スタイルを目の当たりにすると、やっぱ全然違うなあと思った。そのうち試合はリングを立体的に使った大技の攻防に。これは、ほとんどライレスがささやいてキャリーしてましぁuス。で、最後は星川のトップロープからの延髄が決まって3カウント。はじめての相手、はじめてのスタイルでここまで試合を作ったライレス、やっぱ地味にうまい。もちろん星川も良かった。

第八試合 UPWタッグ選手権 エボリューション vs マニラ・スリラーズ
現在のUPWのジュニアタッグ頂点の二チームによる対決。エボリューションの二人が長髪のかっこいい系で、マニラの二人はアジア系ちびっこギャング達(ちなみにこの南CAのヤバい地域のアジア系不良ティーンネイジャー達って、ほんとうにコワいって聞きます。そういうのがこのチームのキャラの背景にあるのでしょう)。両チームとも独自の派手なスポットをいっぱい持ってるんだけど、闘龍門の試合とかと比べちゃうと、ミスやアラがかなり多いだろうな。でも、この試合でもフィニッシュとなったエボリューションの必殺技「ダブル雪崩式サマーソルトブレーンバスター(どういう技だか分かる?)」はいつみても壮観。他の団体のチームからのパクリらしいけど、もし日本未公開なら、みなさまにも見てもらいたいです。

第十一試合、サモア・ジョー vs コナン
ベイダーと試合が組まれていたサモアが「ベイダーは膝の手術とか言ってるが、俺から逃げたのだ。俺はトミー・ドリーマーもショーン・オヘールもマサト・タナカも倒した。俺の敵はいない。」等とアピールしたところでサプライズとしてコナンが登場。試合内容はどうでもいいでしょう。コナンが登場したことと、元ECW王者、マサトタナカの名前が出された事実を伝えたかっただけ。なんかのろのろペースの攻防の末、サモアの持ち込んだイスで、コナンの反則負け。コナン、前より肥ったみたいでTシャツを着て試合してた。サモアが4の字を出してくれたので、「WHOO!!」と叫べて良かったです。

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さて、この試合の後、(ごく一部の観客にとってだけ)待ってましたのハカイオー登場。再び日本の雑誌のカメラマン達がリングを囲み、Samuraiのカメラも回る。「スペシャルゲスト。NWAチャンピオン。シンヤ・ハシモートー!」とリングアナに紹介され、ベルトを肩に破壊王入場。いきなりマイクを掴むと

「Listen! Listen! You guys suck! You have no heart! UPW chicken wrestlers! Tom Howard, chicken shit! Samoa Joe, chicken shit!」
と笑顔?で挑発(アメリカ人にはともかく、日本人の耳にはものすごく聞き取りやすい発音で)。観客はそんなハカイオーに別に怒るでもなく、テキトーにひゅーひゅーからかって楽しんでいる感じ。

その後、通訳?のおねいちゃんを使って改めて橋本が「UPWのレスラーは弱い」とアピールすると、怒ったUPWの中堅レスラー達がわらわら出てきてリングに上がり、橋本と睨み合う。そのうち突っかける者が出てきて、それを橋本がえいやっと受けて蹴り返したり、バックハンドチョップを決めたりして、まるで時代劇のチャンバラシーンのような寸劇に。やっぱ橋本の和風テイストは際立っている(もっともアメリカの観客が、まったくこの呼吸を理解したり応じたりせず、ただ騒いでるだけなのも言うまでもない)。

そのうちUPW社長のリック・バスマンが出てきて、配下の選手達をマイクでなだめ、ハワードを呼ぶ。登場したハワードが改めて橋本に挑戦を迫
る。二人は突き飛ばし合い、やがて一対一の乱闘に。まずハワードが橋本を殴り蹴り倒し、倒れた橋本もタメてから反撃。よっ、よっと蹴った後、ニールキック炸裂。怒りに上半身裸となった橋本に、観客のその肉体への驚きやからかいや「スモー!」という声が飛ぶ中、「橋本負けないでー!」という日本人女性の異質な叫びも響く。復活したハワードも橋本のバックに回り、日本でウケた例の「膝裏を蹴ってのテイクダウン」。それを食らった橋本、単にあっさり膝を付くのではなく、「最初は必死でこらえるものの、とうとう力尽きて膝を付く」という動きで魅せるも、アメリカの客はやっぱりこの橋本桃太郎侍の受けの様式美の味をまったく理解せず、ただ騒ぐ。そのうち橋本がサブミッションに入り、ハワードが噂のほふく前進でエスケープするも、アメリカではハワードはグリーンベレーでもなんでもなく、ほふく前進なんて一切やっていないので観客無反応。そのうちサモアも入ってきて、バスマンが「1月6日、日本で決着をつけぁuトやる!」と適当に収めてこの幕終了。橋本侍は花道のまん中に立ち再びマイクを掴み、

「I'll be back!!」

とキメて(?)颯爽と去ってゆく。よっ破壊王! なんか違うぞ!

いや個人的に、この寸劇は面白かった。なんていうか、リング上のパフォーマンスと観客の反応の微妙な(露骨な?)ズレが。明らかにこの幕は、目の前にいる観客ではなく、Samuraiのテレビカメラと、ゴングや週プロや東スポのカメラに対して行われたもの。橋本もバスマンもハワードみんな(建て前だけ、UPWの観客にアピールするという形をとりながら)、実際にはメディアを通して日本の客に向けて、日本の文脈でパフォーマンスをしてた。日本の状況など知ったこっちゃないUPWの観客は、とても場違いなものを見せられているにもかかわらず、別に文句を言うでもなく、かといって日本の文脈を理解してそれに沿って観るでもなく、テキトーに騒いで楽しんでいた。おそらく観客の多くは、ハシモトが誰なのか知らないし興味もないけど、ジャパンのプロモーションとの提携がUPWにとって大事なことであることくらいは、なんとなく理解しているのかも。だからま、こういうあまり興味のない日本人たちが現われて、不自然に自分とこのスター達も大騒ぎして奇妙なジダイゲキが展開した末、自分達となんの関係のない日本のショーが宣伝されていっても特に・文句も言わないのかも。ま、観客にもいろいろな見方をする人がいるだろうけど。

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ってことで、けっこう楽しかったUPW観戦記でした(第十二試合がメインだったんだけど、略します)。UPWの会場にいながら、完全に日本向けの寸劇を見れて得した気分だし、なんとか日本のスカウトの目に止まろうと、あえて日本スタイルをやるいつもと違う若手たちの姿も見れた(タダVももらえたし)。なんかプロレス界における奇妙な日米関係がみれた気分です。現状では今回のようなゼロワン軍フ出場は、UPWファンのニーズとは全く無関係で、興行の観客動員にもほとんど影響しないものだけど、ゼロワンとの提携そのものは、WWFに捨てられたUPWにはいまや命綱の一つでしょう。提携料をもらえるし、配下のレスラー達にも夢が広がるし、経営するレスリングスクールへの呼び物にも(少しは)なるかもしれない。
ま、俺は今後も橋本が来るなら行こうっと。今のところ、こういう人間は超少数派だけど、日本人が他の日本人の知り合いを巻き込んで会場に連れてったりすれば、ちょっと状況が変わってくるかも???




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