UFC古参マーク・ホール主催の、初期UFCの野蛮な香り残る大会
■団体:コブラ・チャレンジ
■日時:2001年10月6日
■会場:カリフォルニア州アンザ カヒラ・クリーク・カジノ屋外特設金網
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

数カ月前ちょっとした理由で、かつてのキングダムの常連で、UFCで北尾を倒したこともあるマーク・"コブラ"・ホールについてネットで調べる機会がありました。そのうちに、一年半くらい前のマーク・ホール主催のコブラ・オープンという興行についての記事が見つかったんですが、これがとんでもなく興味深かった。

会場内で客同士のケンカが始まって、そこにプロモーターが割って入って即二人と契約して試合させちゃう(もちろん仕込み)とか、それとは無関係にガチで客が喧嘩をはじめて警官がスプレーを発射したとか、平気でちっちゃな子供を入場させてるのに、会場にいる女性をリングに上げて盛り上げて脱がせたとか、酔っ払った老人vs酔っ払った巨女の試合を敢行したとか、格闘技をなにも知らないキャットファイターに試合させたとか。とにかく、「この興行は我々のスポーツにとって恥であり、発展の妨げている」みたいな感じでけちょんけちょんに書かれてました。

こりゃ面白そーだ、とばかりにマーク・ホールのホームページに行ってこの大会の歴史を調べてみると、その後もこのマーク・ホール主催興行は継続的に行われていることが分かりました。女子の試合もやってるし、「フルコンタクト・スティックファイト(棒を使っての試合)」なんてのまでやってる。これまでの出場メンバーをチェックしてみると、聞いたことのない選手ばかりの中に、知ってる選手も混ざってた。リングスUSAやUFCに出たアーロン・ブリンク。やはりUFCでジョルジュ・バーネットに激戦の末破れた巨漢のガン・マクギー。こないだUFCで中尾受太郎にまさかの敗戦を喫したトニー・デソウザ。KOTCライト級の強豪で、今度ジョン・ルイス主催興行であのビトー・"シャオリン"・ヒベイロと闘う予定のチャーリー・コーラー。KOTCフェザー級チャンピオンのチャーリー・ヴァレンシアなどなど(うーんやっぱB級)。

そしてこの10/6にも興行があり、メインで主催のマーク・ホールが直々に復活戦を行うとありました。マーク・ホールは1961年生まれだからもう(ほとんど)40才で、ここ3、4年はほとんど試合してません。ただし1、2年前に、KOTCのバックステージでケンシャムにぼこられて血まみれの惨敗という番外レコードはありますが(確か、電話でケンシャムの奥さんに暴言を吐いたのが原因とか)。うーん闘えるのか? とにかくこれは一回いってみようってことで、車を飛ばしてこの興行を観に行ってきました。

会場は、カリフォルニア州のアンザという所にあるカヒラ・クリーク(Cahuilla Creek:発音は適当)カジノというところ。KOTCの常設会場のソボバカジノと同じく、やっぱりインディアン居留区なんですが、これがまた超ド田舎。ソボバもかなりの田舎だけど、そんなもんじゃないです。馬やら牛やら岩やら草木やら以外にはなにもない風景をさんざん横目で見ながら走り、さらに山道をくねくね進んだ揚げ句に、高所にぽつんとあるボロカジノがそれでした。そのカジノの横に屋外イベント用ステージ付き広場があって、そこで試合は行われました。開場は5時半ってことだったけど、6時近くになってやっと開き、入ってみるとどこでもほぼリングサイド状態。テーブル付きのVIP席の他には、ひな壇なしでイスがケージ(KOTCのよりちょっとでかい)を囲んで設置してあります。全部で6、700席でしょうか。とにかく、$30の自由席の券でもリングサイド5列目くらいの場所を余裕で確保できました。

それはいいんだけど、俺は一つ誤算をしていました。ここは山の中のせいか、とにかく寒いんです。風もぴゅーぴゅー吹いている。同じカリフォルニアでも、普段の俺の住む場所では真冬でないと味わえないような寒さ。上着を持ってこなかった自分の甘さを呪いました。仕方ないんで、しょーがないんで売店で10ドルのマークホールTシャツを買ってその場で重ねて着ました(あとこの売店では、初めて聞く名前のNHB専用ブランドの製品(帽子、T等)が売られてました。こっちの格闘技雑誌を見ると、最近はTapoutやRage 以外にも、NHB選手やファンをターゲットにしたブランドが出てきて、各種団体や大会を公演しているようです。こういうビジネスを観察するのも、NHB普及の度合いも測る一つの目安になるかも)。とにかく試合開始予定の7時を15分くらい回ったところで、すっかりお馴染みの国家セレモニーから試合開始。この地点では席はほぼ埋まり、その回りを立ち見がずらっと囲んでた。観衆は全部で1000人近くいたと思う。

試合に関しては、あまりレベルの高くない草MMAという点では予想通りでした。でも予想外だったのは、MMAというよりもむしろVTというか、初期UFC度が相当高かったこと。つまり、それなりに総合の闘い方を身につけてる選手もいれば、露骨にそうでないと選手もいて異種格闘技度が妙に高かった。ほとんど寝技できないと思われるテコンドー選手とか、全空連スタイルで構えて前蹴りや中段突きを繰り出そうとする空手の選手とかがいたりしました(当然両方とも一方的に負けた)。主催者側もそのへんを意識してるのか、かつてのUFCのようにリングガールに「Karate」「Tea kwon do」「Jiu-jitsu」等と書かれたプラカードを持って歩かせたりしてた。ストリートファイティングを名乗る選手、所属不明の選手、こいつはどー見ても単なるそこらへんのデブの兄ちゃんだろう、としか思えない選手もいた。故に秒殺や1R決着の割合も高し。マイク・ボーグの仲間が二人出てて、二人ともボーグ的な体型&サイズだったのも笑った(二人とも負けた)。

さらにルールも初期UFCぽくて、グローブなしの拳で殴るのも合法のようでした(実際には一人を除いた全ての選手がグラブをつけていた)。また、グラウンドでのエルボーも頭突きもアリのようでした。こんなルールが、今アメリカで許されるなんて考えてもいなかった。いや、普通は許されてないんだけど、ここは治外法権的なインディアン居留区だし、こんなマイナー大会まで文句を言って来る者はいないのでしょう。初期UFCと違うのは、グラウンドでの膠着ブレイクがけっこう速いこと。そうしないと、観客がブーブー文句言い出しますから。あと、レフェリーの試合ストップもけっこう速かった。あ、女子試合とか棒試合とかはありませんでした。ラウンドガールの露出も少なかった。

観客は、やっぱやる側とその関係者中心なんだけど、カジノによくいる一般客というか、日本で言えば競馬場とかによくいそうな、賭事とビールとタバコとビーフジャーキーの好きそうなおっさん達もけっこういました(←もちろんイメージだけで語ってるんだけど、実際会場での喫煙率は普段アメリカではあまり体験できない高さでした)。で、全体的にやはり態度は荒っぽかった。会場で売られてるビールを食らっては、四文字語のがんがんまざる野次が飛ぶ飛ぶ。一方的な展開でどう見ても妥当なレフェリーストップとかに対しても、わけのわかんない文句をがなりたてる客もいる。また、休憩中なんかテクノ系の音楽が鳴ってて、とにかく寒い俺が体を暖めるために席を立ってジャンプしてたら、後ろにいた酔ってる兄ちゃんが「いえーい!お前が踊るなら俺も踊るぜ!」とか言って踊り出した。そのうち、その兄ちゃんの仲間(もっと酔ってる)が、競馬場親父の一人になにやらがなり立てて、俺のすぐ近くで喧嘩が勃発しそうになる場面も。俺は荷物を持っていつでも安全地帯に避難できる態勢で見守ってたけど、警棒を持ったガードマンがのしのし歩いてきたので喧嘩は起こらず。惜しい。

そんなこんなでメインなんですが。観衆に総立ちで迎えられた英雄ホールは、2Rでこてんぱんにやられてしまいました。1Rから、打撃ではやや有利に立つものの、何度もタックルを取られてはガードで凌ぐ苦しい展開。最後はタックルで豪快に金網際に落とされて、そのまま金網とサンドイッチ状態で顔や上半身に膝を浴びまくりたまらずタップ。相手が離れると、左肩を抑えて苦悶するホールの顔が見えました。ちなみに対戦相手は、シャーク・タンク所属のジョン・コールという無名の若者。ホールも4年ぶりの登場にしてはグッドシェイプでしたが(以前のホールにひとまわりゼイ肉がついたくらいで、筋肉の衰えとかは見えなかった)、相手のコールは、ステロイド疑惑をかけたくなるくらい若くてぴちぴちムキムキでした。ちなみにセコンドにはボビー・ホフマンとビクトー・ハンセイカーがついていた。

(註:ここでひとつ確かになったことが。UPWのレスラーのマット・ホールと、マーク・ホールは別人でした。今日俺がメインで観た人は、独得の体型と顔にUFC時のマークの面影がくっきりあり、マットとは違いました。そして何より入れ墨がUFC時のマークのと同じです。一応証拠写真?も撮ってあります。もっともこの二人、体のサイズ、顔の輪郭、キャリア、住んでるところ、名前、トラブルを起こす性格等、似てる部分が多いのも確かです。)

ということで、コブラ・クラシック初体験記でした。今でもこんなルールで、こんな総合の闘い方を分かってない選手を集めて堂々NHBやってる所が米国にあるのか! と叫びたくなるような荒っぽい面もあると同時に、俺が記事で読んだようなハチャメチャさはすでに消えていて、いろいろな面で大会がだんだん成熟していってる(KOTCぽくなっている)のも確かのようでした。進行などもけっこうサマになってたし(おかしなところもあった)、マーク・ホール道場の選手はしっかり総合ができてるみたいだったし、観客数もだんだん増えてきたらしい。今後も続くのなら、さらに選手は総合化しレベルアップし、異種格闘技テイストは薄れていくでしょう。演出やセキュリティーのノウハウもさらに確立していけば、自然と観客の荒っぽさも削がれてゆくでしょう。もしうまく発展して興行全体の規模が大きくなってゆき、あわよくば一緒にやってるNHBブランドビジネスも拡大していけたりしたなら、インディアン区でも今のルールを続けることは難しくなるかもしれません(実際KOTCはネバダコミッションの認可を得るようになったし)。そうなるのは当然いいことなんだけど、発展することってのはつまり他と同じになってゆくことであって、NHB興行も均質化してゆくのかなーとも思いました。ま、俺がこーゆーふーに考えちゃうこと自体、NHBがこの国に登場して8年で、UFCやKOTCなどの先行例を通して、その成熟過程のおおざっぱなプロトタイプが出来てきているということなんですかね。ま、でも日本で実験されてるように音楽やクラブとコラボレーションっていう方向もあるし(ジョン・ルイスが今度ベガスでやるらしい)、今後もなるたけいろんな興行に顔を出して、このNHBっていう文化の動きを追っていきたいと思います。では。




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