今明かされる、トム・ハワード「ほふく前進」誕生秘話!
■団体:UPW(アルティメット・プロ・レスリング)
■日時:2001年9月25日
■会場:カリフォルニア州サンタアナ ギャラクシーシアター
■書き手:ひねリン(名前をクリックするとプロフィールの欄に飛びます)

先月初めて観戦して、そのレベルの高さに驚いたUPWの定期興行を今回も観てきました。このUPW、今月15日から念願のテレビ定期放送(ローカルですが)が開始、さらに来月からはLAでの定期戦も決定(つまり、従来のここサンタアナでの定期戦と加えて月二回となります)。また、みなさんご存じの通り、ゼロワンとの交流も深まっています。

・・・なんて書くとあたかも現在UPWは波に乗りまくってるようですが、実はそんなに明るい要素ばかりでもないんです。なにより、開始したテレビ番組の低クオリティーさが凄い。いくらローカル局の深夜枠と言え、あんなチープなプロレス番組は今まで見たことありません。B級(あるいはC級D級)マニアなら感激して涙をこぼすでしょう。編集の荒さ、カメラのひどさ、画面の汚さ、番組構成の無軌道さ・・・どれをとっても文句の付けようがない悶絶ぶりです。実際俺、先週の放送を観て、笑ったり絶句したりしながら一時間全然飽きなかった。この番組は本当に凄いので、いずれ稿を改めて詳しく紹介したいです。それに値するだけのモノと信じます。

また、本日の興行も火曜日開催ということもあって、前回に比べれば客入りも低調でした。今回俺は開始15分前くらいに到着。その前に、前回も一緒に観戦して俺にいろいろ教えて下さった方が先に来てテーブルを確保しておいてくれたのですが、それをするまでもなく空きテーブルがけっこうありました(最終的にはだいたい埋ってた)。あ、ここは食事やドリンクを楽しみながらプロレスを観れるダイニングシアターなんですよ。その他会場の細かい様子などについては、前回の観戦記をご覧ください。その前回の観戦記では、UPW興行の進行や全体の雰囲気等を強調して書いたので、今回は個々の試合や選手の動きに触れていこうと思います。特に日本向けと思える選手を強調しながら。

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約15分ほど遅れて興行開始。気が付いたらいきなり全選手が花道に整列してる。一瞬なにごとかと思ったけど、ようするに例のテロ事件に関するセレモニー。全員が厳粛な顔で目を閉じる中、アメリカ国家のテープが流れる。当然観客も全員起立。当然俺もこの雰囲気&ご時世でひとり座ってるわけにはいきません。

第一試合 アル・カトラズ vs キッド・ビシャス(←笑)
パワーファイターのアラカトラスが、カナダ出身と紹介され、クロスフェースや高速ブレーンバスターやベノワ式ダイビングヘッドなどを繰り出すカルガリー志向のキッドを制す。試合は例によってハードヒットで展開の早いRAWスタイル。

第二試合 スメリー vs ポール・ロンドン
豚のぬいぐるみをおでこにくっつけてるアホキャラのスメリー(smelly=悪臭男)は、前UPWチャンプで会場人気高し。小柄ながら、切れのあるラフファイト&観客挑発で沸かす。ムーンソルトなどの空中戦で闘う正統派のロンドンをフルネルソンバスターで制す。

第三試合 トリプルスレッドタッグ アーバンアウトローズ vs G.A.Y. vs クルーエル・インテンションズ
動ける大型タッグのアーバンアウトローズ、でっかいほうが豪快なトップロープ越しのトペを放って敵四人人全員で受けさせたりして見せ場を作り、最後は二人して対角線のコーナーに上り、ギロチン+セントーンボムのダブル重爆で勝利。でも、さらにおすすめなのはオカマタッグのG.A.Y.ですね。まあこの手のキャラってのは定番なんだけど、この人達はゲイが細かい(駄洒落じゃなくて本当に)。隙あれば対戦相手のケツに触るし、ロープへの走り方もなよなよおかまっぽいし、(他の四人が試合してて)二人で傍観してる時も、いかにもゲイっぽいしぐさで楽しそうに話してるし、味方がやられているときは片方がおおげさにリアクションするし。日本でもウケるでしょう。

第四試合 ハードコアキッド vs ルッカス
かつてはWWFのディールを持っていたけど、結局一軍になれなかったハードコアキッド。ルックス抜群。背が高くすらっと筋肉質で顔もいい。マイクもうまい。でも肝心のプロレスが・・・。なんかぎくしゃく殴り合ってノーコンテストに。

第五試合 ホーシュー&ハリウッド vs ネイティブ・ブラッド(←というチーム)
ホーシュー(Hoshu)は、ゼロワンで大谷にデクノボーよばわりされたホース・シューその人。しかしここだとホームグラウンドのせいか、いつも一緒に練習してる相手だからか、豪快なラリアットやバスターをがんがん決める。おおド迫力!(リング下に設置されてるマイクの効果で過剰なまでに音が響くせいもあるが)。最後は相棒のハリウッドが一回転ギロチンで勝利。ホーシュー試合後も客(サクラ?)を挑発する寸劇で沸かす。

第六試合 男女混合タッグ フランキー・カザリアン&ルーニー・レーン vs シャノン・バラッド&チアリーダー・メリサ
男子の二人が試合を引っぱり、何種類ものツープラトンを両チームとも披露。それを男が受けたり女が受けたりする、男女の混同度の高い好試合に。男子は二人とも優秀なジュニア戦士だけど、特にフランキー・カザリアンは自在に飛べるし、切れもバネも抜群。ジェフはともかく、マット・ハーディーになら勝ってるかもしれない。

第七試合 ジャック・ザ・ブル vs メイトリックス
残念ながらこの日最高退屈試合。労働者キャラのババがとろい。そのとろい方が勝つ。

ここでちょっと、興行の進行について説明を。とにかく試合はテンポ良く早い決着で、さくさく先に進みます。段取りも良く、一試合終わるごとにDJ風のリングアナが、アルティメットユニバーシティ(UPWのプロレス学校)の宣伝だの、スポンサーの宣伝だの、テレビ放送の宣伝だのを短くはさんでは、どんどん次の試合を進めて行く。ただ、第七試合でちょっとだれたせいか、この試合の後リングアナが静かになった観客に「Make some noise!」連発して半ば強制的に盛り上げ、力業でUPWコールまで発生させる。白けずにきちんと応えて盛り上がる客もエライ。

第八試合 マイキー・ヘンダーソン&ビニー・マサロ vs ロス・キューバニトス(←チーム名)
とにかく有望な選手の多いUPW軽量級の中で、いま一人光っているのがマイキー・ヘンダーソン。動きが鋭い。本日はパートナーと同士打ちを連発し、試合に負けた後仲間割れ・・・と思いきやなぜかサモア・ジョーが入ってきてなだめて仲直り。意味ねー。

パワーボム(UPWガールズ)のダンス。ナイトロガールズに比べると華がない。ましてやセーケンドーのロシアンダンサーに対抗するすべはない。品川さんが観ても半勃ち程度と思われ。

そのあと、次回のUPW興行にハシモトとティトが来ることがアナウンスされる(当然ティトの方がリアクション高し)。どーせならハシモトvsティトやってよー。で、トム・ハワードが出てきて社長のリック・バスマンにハシモトへの挑戦を直訴。ひゅーひゅーと歓声を上げる客ちらほら。君達「ハシモト」が誰なのか分かってる?

第九試合 ケイジ・サコダ vs シルベスタ・プレデター・ターキー
ターキーってのはつまりゼロワンに出てたプレデター。でもこの試合を作ったのは、プレデターの腕をいろんな方法で攻めた佐古田(タイツに漢字でそう書いてある。日系4世の彼が自分で一生懸命書いたのか?)。渋好みの試合展開に加え、フジワラアームバーとか、ミサワ式エルボーなどで日本人をアピール(?)するも、最後にセコンドの名物男シュワッグが毒霧を忘れて渡してくれずに困っているところに、チョークスラムを食らって敗北。佐古田の試合は、こういう短いRAWスタイルではない形でもっとじっくりみてみたい。ゼロワンでもなく、ふつうに日本のプロレススタイルで。

第十試合 マニラ・スリラーズ (B-Boy & ファンキー・ビリー・キム)vs スパンキー&プロディジー
アジア系タッグ、マニラスリラーズのB-Boy(前回はベニー・チョンの名で紹介)はUPWライトヘビー王者。つまりレベルの超高いUPW軽量級の頂点がこの人。彼はそれにふさわしいレスラーです。前回SUWA選手ばりと書いたけどやっぱ間違ってないと思う。パートナーのキムとの呼吸も良く、流れるように連携攻撃を繰り出す。キムはモッチーばりに要所でキックを使って試合をするし、相手チームもがんがん飛べるので(特にスパンキーがいい)、ホント闘龍門の試合を観てるようでした。時間は全然短いけど。そのB-Boy、今日は試合前に「俺をフォールした奴に次回の挑戦権を与える」とやったもんだから、パートナーに裏切られてフォールされてんの。なんにしてもイチオシの選手。WWFにもいないタイプ。ただ、プロモ(マイクアピール)がアメプロメジャーレベルに達してない・・・。日本に呼ぶべし。

第十一試合 UPWヘビー級タイトルマッチ
サモア・ジョー vs トニー・シューター・ジョーンズ
日本でも好評だったサモアと、北カリフォルニアのAPWの選手にして、映画『ビヨンド・ザ・マット』でマイク・モデストとコンビで登場したジョーンズ(映画の中で、JRに「もっと上半身の筋肉を付けろ」とアドヴァイスされてたけど、今は大きくなってる)。この試合はサモアの一人舞台だったような。多彩な技をよどみなく繰り出して、最後はサイドバスターの体勢から相手をくるっと回して頭から落す技で勝利。タイトルマッチにしてはちょっとあっさり。

第十二試合 ノヴァ vs シェーン・バラッド
なぜかメインのこの試合、いろんな選手が乱入して盛り上がった揚げ句のトリック決着でお客も満足(すみません、全部説明するのはめんどくさい)。なるほど、セミのタイトルマッチより、こっちのほうが内容的に凝っててトリにふさわしいということで最後に持って来たのか。

ということで、そんなに目玉カードは無く、前回に比べれば低調な今回のUPWでした。でも、やっぱり選手レベルは高い(特に軽量級)し、試合はさくさく終わっていくし、興行シナリオがきちっとしてて進行がとにかくいいの。で、コーラを飲みながらリングサイドで快適に観戦できて、これで入場料15ドル+ドリンク代3ドル(チップ込み)だけと考えるとやっぱり超お得だと思う。まじめな話、テレビ用に特化してるRAWやSMACKDOWNを30ドルほど出して二階から観るより、俺的にはこっちのほうが楽しいです。よーし次回はハカイオートン平を観に来よう、と思って帰ろうとしたところ、試合後に思わぬ個人的メインイベントが待ってました。

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前回も書いたように、UPWのここの興行では、試合後に建物内のカフェで選手がファンと気さくに交流を深めます。で、一緒に観戦した方とちょっとそこに行って覗いたら、トム・ハワードがいて、彼が「ハイ、トム!」と言って話しかけるとハワードは気さくにこっちと話してくれたんです(こっちのレスラーや格闘家は、別に知り合いじゃなくても、話しかければたいてい気さくに応じてくれます)。ハワードは日本スタイルがとにかくお気に入りのようで、露骨に寸止めのアメリカンスタイルよりも、がんがん当てる日本のほうがいい、生徒にも日本でやれるように教えているんだ、と言ってました(ハワードはUPW道場の先生)。次回の橋本戦もアメリカンスタイルでなく「ストロングスタイル(本人がそう言った)」でやるそうです。

日本でブレイクしたグリーンベレーギミック(実はハワードはアメリカではそんなキャラを演じていない)に関しては、実は本当に彼にはその経験があるとのこと。ゼロワンに履歴書を提出したら、彼らがそこに目につけて、ぜひこれをキャラにしてくれとハワードに提案してきたんだそうです。本物だったのか・・・。でも、あの大ヒットのほふく前進はハワード自身のアイディアだそう。さらに別のヴァージョンの、ロープを掴んでの移動も日本でやったと言ってたけど、見た人いますか?

 *:9月8日のZeppTokyo大会です。見ました(笑)。画像もあります。(編集者注)

また驚いたことには、俺が「日本で一番いいと思ったレスラーは誰?」と聞いてみたらなんとハワードの答えは「フジタ。」俺が思わず「はああ? 藤田あ? めちゃくちゃプロレス下手じゃないですかー」と言うと、ハワードは笑って「オーケーオーケー。ワーカーとしては、うーん、いい選手いっぱいいるけど、そーだな、オータニもホシカワもいいし、ハシモトはあまり動かないけど(リング)サイコロジーのマスターだ。フジワラも年だがポジショニングがいい・・・」等。

とにかく、シュートスタイルと藤田が好きなのは本気らしくて、その後もハワードは「藤田とあのキックボクサーの試合(ミルコ戦)を観たか? 藤田の額がぱっくり割れたやつ」と楽しそうに話してました。でも小川は好きではないようで「オガワはジュードーチャンピオンだからって自分を過大評価してるんだ。日本で俺と試合が決まりかけたのに、あいつはなんだかんだ言って断ったんだ。」と、やっぱり楽しそうに話してくれました。で、最後には握手してくれました。なんて気さくな人なんでしょう。ちくしょーこんな手軽に選手達と話せるんなら、もっと質問考えとくんだった・・・。ちなみにハワードの隣にホーシューもいたんだけど、さすがに「大谷があなたのことをデクノボーと言ってましたがどう思いますか?」と質問するわけにもいかず、話せずしまいでした。

そんな感じですね。UPWやっぱお得ですよ。20ドル以下でこんだけの体験ができるんだから。万能レスラーにして尊敬を集める先生、さらに本当に軍の経験もあって超ナイスガイでもあるトム・ハワードについてもっと知りたいならヴィデオ「Inside Pro Wrestling School」をアマゾンで買おう。あるいはハワード先生が親切にプロレスの基礎を教えてくれるヴィデオ「Ultimate Pro Wrestling Training vol. 1-3」もハワードマニアにはオススメ・・・と今回は、ほとんどUPWのマワシ者のようなコメントで終わりにしましょう。まあ、悶絶のUPWテレビ中継を紹介する時が来たら、けちょんけちょんに笑う予定ですが。




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